§E5.1複素関数の極限

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複素数z=x+iyz=x+iyを実平面の点(x,y)(x,y)と対応させると、複素関数は実二変数の写像として表すことができる。ただし、複素変数が一点へ近づく経路は実軸方向に限られないため、極限の定義は平面内のすべての近づき方を同時に扱う必要がある。その定式化には、複素数間の距離を与える複素絶対値と、関数の定義域を記述する開集合および領域が必要になる。例えばf(z)=z2f(z)=z^2は、実部と虚部からなる実二変数写像としても、複素数の乗法が定める写像としても記述することができる。本記事では、複素平面上の複素関数とその基本的な性質について解説する。

1 複素平面の開集合と領域

定義 1.1.z=x+iyz=x+iy(x,y∈Rx,y\in\mathbb R)に対して

∣z∣=zzˉ=x2+y2|z|=\sqrt{z\bar z}=\sqrt{x^2+y^2}

と定め、∣z∣|z|をzzの複素絶対値 (complex modulus) という。平方根は非負実数の平方根を表す。

命題 1.2.z=x+iy,w=u+ivz=x+iy,w=u+iv(x,y,u,v∈Rx,y,u,v\in\mathbb R)とする。共役について

zˉ‾=z,z+w‾=zˉ+wˉ,zw‾=zˉwˉ\overline{\bar z}=z,\qquad \overline{z+w}=\bar z+\bar w,\qquad \overline{zw}=\bar z\bar w

が成り立つ。さらに、複素絶対値について次が成り立つ。

  1. ∣z∣≥0|z|\ge0であり、∣z∣=0|z|=0とz=0z=0は同値である。
  2. ∣zˉ∣=∣z∣|\bar z|=|z|および∣zw∣=∣z∣ ∣w∣|zw|=|z|\,|w|である。w≠0w\ne0ならば∣z/w∣=∣z∣/∣w∣|z/w|=|z|/|w|である。
  3. ∣x∣≤∣z∣|x|\le|z|、∣y∣≤∣z∣|y|\le|z|および∣z∣≤∣x∣+∣y∣|z|\le|x|+|y|である。
  4. ∣z+w∣≤∣z∣+∣w∣|z+w|\le|z|+|w|および∣∣z∣−∣w∣∣≤∣z−w∣\bigl||z|-|w|\bigr|\le|z-w|である。

証明. 共役の定義と四則演算から

zˉ‾=x−iy‾=x+iy=z,z+w‾=(x+u)+i(y+v)‾=(x+u)−i(y+v)=zˉ+wˉ\overline{\bar z}=\overline{x-iy}=x+iy=z, \qquad \overline{z+w}=\overline{(x+u)+i(y+v)}=(x+u)-i(y+v)=\bar z+\bar w

である。また、

zw‾=(xu−yv)+i(xv+yu)‾=(xu−yv)−i(xv+yu)=(x−iy)(u−iv)=zˉwˉ\overline{zw} =\overline{(xu-yv)+i(xv+yu)} =(xu-yv)-i(xv+yu) =(x-iy)(u-iv)=\bar z\bar w

である。

定義に用いた平方根は非負であるから∣z∣≥0|z|\ge0である。また、∣z∣=0|z|=0とx2+y2=0x^2+y^2=0は同値であり、後者はx=y=0x=y=0、すなわちz=0z=0と同値である。上で示した共役に関する法則から

∣zˉ∣2=zˉz=∣z∣2,∣zw∣2=zwzw‾=zzˉ wwˉ=∣z∣2∣w∣2|\bar z|^2=\bar z z=|z|^2, \qquad |zw|^2=zw\overline{zw}=z\bar z\,w\bar w=|z|^2|w|^2

を得る。両辺が非負であることから∣zˉ∣=∣z∣|\bar z|=|z|および∣zw∣=∣z∣ ∣w∣|zw|=|z|\,|w|が従う。w≠0w\ne0のときはz=w(z/w)z=w(z/w)と∣w∣>0|w|>0を用いると∣z/w∣=∣z∣/∣w∣|z/w|=|z|/|w|を得る。

x2≤x2+y2x^2\le x^2+y^2とy2≤x2+y2y^2\le x^2+y^2から∣x∣≤∣z∣|x|\le|z|と∣y∣≤∣z∣|y|\le|z|が従う。また、

∣z∣2=x2+y2≤x2+2∣x∣ ∣y∣+y2=(∣x∣+∣y∣)2|z|^2=x^2+y^2\le x^2+2|x|\,|y|+y^2=(|x|+|y|)^2

であるから∣z∣≤∣x∣+∣y∣|z|\le|x|+|y|である。

任意のq∈Cq\in\mathbb Cについて(3)からRe⁡q≤∣Re⁡q∣≤∣q∣\operatorname{Re}q\le|\operatorname{Re}q|\le|q|である。q=zwˉq=z\bar wとおくと、上で示した共役に関する法則からqˉ=zˉw=wzˉ\bar q=\bar z w=w\bar zであり、共役の定義からq+qˉ=2Re⁡qq+\bar q=2\operatorname{Re}qである。したがって、(2)も用いると

∣z+w∣2=∣z∣2+2Re⁡(zwˉ)+∣w∣2≤∣z∣2+2∣zwˉ∣+∣w∣2=(∣z∣+∣w∣)2|z+w|^2 =|z|^2+2\operatorname{Re}(z\bar w)+|w|^2 \le |z|^2+2|z\bar w|+|w|^2 =(|z|+|w|)^2

となる。両辺が非負であるから三角不等式∣z+w∣≤∣z∣+∣w∣|z+w|\le|z|+|w|を得る。三角不等式をz=(z−w)+wz=(z-w)+wとw=(w−z)+zw=(w-z)+zに適用すると∣z∣−∣w∣≤∣z−w∣|z|-|w|\le|z-w|と∣w∣−∣z∣≤∣w−z∣|w|-|z|\le|w-z|を得る。(2)から∣w−z∣=∣−1∣ ∣z−w∣=∣z−w∣|w-z|=|-1|\,|z-w|=|z-w|であるため、逆三角不等式も従う。▨

定義 1.3.a∈Ca\in\mathbb Cとr>0r>0に対して

D(a,r)={z∈C:∣z−a∣<r}D(a,r)=\{z\in\mathbb C: |z-a|<r\}

を、中心aa、半径rrの開円板 (open disk) という。集合U⊆CU\subseteq\mathbb Cが開集合 (open set) であるとは、各a∈Ua\in Uに対してD(a,r)⊆UD(a,r)\subseteq Uを満たすr>0r>0が存在することをいう。

開集合UUが連結 (connected) であるとは、U=A∪BU=A\cup B、A∩B=∅A\cap B=\varnothingを満たす開集合A,B⊆CA,B\subseteq\mathbb Cに対して、AAとBBの少なくとも一方が空集合であることをいう。

空でない連結な開集合を領域 (domain) という。

連続写像γ:[0,1]→U\gamma:[0,1]\to Uが有限個の区間上でアフィン写像であるとき、γ\gammaをUU内の折れ線 (polygonal path) という。

命題 1.4.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを空でない開集合とする。次の二条件は同値である。

  1. UUは連結である。
  2. UUの任意の二点a,ba,bに対して、aaを始点、bbを終点とし、UUに含まれる折れ線が存在する。

証明.(2)を仮定し、結論を否定してUUが連結でないとする。このとき、U=A∪BU=A\cup B、A∩B=∅A\cap B=\varnothingを満たす開集合A,BA,Bで、どちらも空でないものが存在する。a∈Aa\in Aとb∈Bb\in Bを取り、γ(0)=a\gamma(0)=a、γ(1)=b\gamma(1)=bを満たすUU内の折れ線γ:[0,1]→U\gamma:[0,1]\to Uを取る。

S={t∈[0,1]:γ([0,t])⊆A}S=\{t\in[0,1] : \gamma([0,t])\subseteq A\}

とおく。AAの開性とγ\gammaの連続性からSSは正の元をもつ。SSは上に有界であるから、§D1.4 定義 1.2によりs=sup⁡Ss=\sup Sが存在し、0<s≤10<s\le1を満たす。

γ(s)∈A\gamma(s)\in Aと仮定する。AAの開性とγ\gammaの連続性により、∣t−s∣<η|t-s|<\etaならばγ(t)∈A\gamma(t)\in Aとなるη>0\eta>0が存在する。§D1.4 命題 1.6によりs−η<t0≤ss-\eta<t_0\le sを満たすt0∈St_0\in Sが存在するので、γ([0,s])⊆A\gamma([0,s])\subseteq Aである。s=1s=1ならばb=γ(1)∈A∩Bb=\gamma(1)\in A\cap Bとなるからs<1s<1である。さらにs<t1<min⁡(1,s+η)s<t_1<\min(1,s+\eta)を満たすt1t_1を取るとt1∈St_1\in Sとなり、ssが上界であることに反する。

γ(s)∈B\gamma(s)\in Bと仮定する。BBの開性とγ\gammaの連続性により、∣t−s∣<η|t-s|<\etaならばγ(t)∈B\gamma(t)\in Bとなるη>0\eta>0が存在する。§D1.4 命題 1.6によりs−η<t0≤ss-\eta<t_0\le sを満たすt0∈St_0\in Sを取る。t0=st_0=sならばγ(s)∈A∩B\gamma(s)\in A\cap Bであり、t0<st_0<sならばγ(t0)∈A∩B\gamma(t_0)\in A\cap Bである。いずれもA∩B=∅A\cap B=\varnothingに反する。ところがγ(s)∈U=A∪B\gamma(s)\in U=A\cup Bであるから、AAとBBがともに空でないという仮定は成り立たない。ゆえにUUは連結である。

(1)を仮定する。a∈Ua\in Uを固定し、

A={z∈U:a を始点、z を終点とする U 内の折れ線が存在する},B=U∖AA=\{z\in U : a \text{ を始点、} z \text{ を終点とする } U \text{ 内の折れ線が存在する}\}, \qquad B=U\setminus A

とおく。a∈Aa\in Aである。C\CをR2\R^2と同一視すると、p,q∈Cp,q\in\Cに対する線分の標準パラメータt↦(1−t)p+tqt\mapsto(1-t)p+tqは§E4.1 命題 4.1 (1)により連続である。終点がppである折れ線とこの線分をそれぞれ[0,1/2][0,1/2]と[1/2,1][1/2,1]へ線形に再パラメータ化すると、二つの式はt=1/2t=1/2で値ppを取り、各片の連続性からt→1/2t\to1/2の両側でppへ収束する。したがって、つないだ写像は連続であり、有限個の区間上でアフィン写像であるから折れ線である。

z∈Az\in Aとし、D(z,r)⊆UD(z,r)\subseteq Uを満たすr>0r>0を取る。w∈D(z,r)w\in D(z,r)ならば、0≤t≤10\le t\le1に対して

∣(1−t)z+tw−z∣=t∣w−z∣<r|(1-t)z+tw-z|=t|w-z|<r

である。したがって、aaからzzへの折れ線にzzとwwを結ぶ線分をつなぐことによりw∈Aw\in Aを得る。ゆえにD(z,r)⊆AD(z,r)\subseteq Aであり、AAは開集合である。

z∈Bz\in Bとし、D(z,r)⊆UD(z,r)\subseteq Uを満たすr>0r>0を取る。w∈D(z,r)∩Aw\in D(z,r)\cap Aが存在すると、aaからwwへの折れ線にwwとzzを結ぶ線分をつなぐことによりz∈Az\in Aとなる。したがってD(z,r)⊆BD(z,r)\subseteq Bであり、BBも開集合である。U=A∪BU=A\cup B、A∩B=∅A\cap B=\varnothingであり、UUは連結かつA≠∅A\ne\varnothingであるからB=∅B=\varnothingである。任意のz∈Uz\in UがAAに属するので、(2)が成り立つ。▨

命題 1.5.D⊆CD\subseteq\mathbb Cを領域とし、g:D→Cg:D\to\mathbb Cが次を満たすと仮定する。各z∈Dz\in Dに対してr>0r>0が存在し、ggはD(z,r)∩DD(z,r)\cap Dの上で定数である。このときggはDDの上で定数である。

証明.w0∈Dw_{0}\in Dを一つ固定し、c=g(w0)c=g(w_{0})とおく。

A={z∈D:g(z)=c},B={z∈D:g(z)≠c}A=\{z\in D : g(z)=c\},\qquad B=\{z\in D: g(z)\ne c\}

とおく。z∈Az\in Aを取り、仮定のr>0r>0を取ると、DDは開集合であるからrrを小さくしてD(z,r)⊆DD(z,r)\subseteq Dとしてよく、ggはD(z,r)D(z,r)の上で定数g(z)=cg(z)=cである。ゆえにD(z,r)⊆AD(z,r)\subseteq Aであり、AAは開集合である。同じ議論により、z∈Bz\in Bに対してggはD(z,r)D(z,r)の上で定数g(z)≠cg(z)\ne cであるからD(z,r)⊆BD(z,r)\subseteq Bとなり、BBも開集合である。D=A∪BD=A\cup B、A∩B=∅A\cap B=\varnothing、w0∈Aw_{0}\in Aであり、DDは連結であるからB=∅B=\varnothingである。▨

2 複素関数と実二変数表示

定義 2.1.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを空でない開集合とする。UUからC\mathbb Cへの写像をUU上の複素関数 (complex-valued function) という。複素関数f:U→Cf:U\to\mathbb Cに対し、z=x+iyz=x+iyと表示して

u(x,y)=Re⁡f(x+iy),v(x,y)=Im⁡f(x+iy)u(x,y)=\operatorname{Re}f(x+iy),\qquad v(x,y)=\operatorname{Im}f(x+iy)

と定める。uuとvvは実数値関数であり、f(x+iy)=u(x,y)+iv(x,y)f(x+iy)=u(x,y)+iv(x,y)が成り立つ。uuとvvをそれぞれffの実部 (real part) と虚部 (imaginary part) という。C\mathbb CをR2\mathbb R^2と同一視すると、ffと実二変数写像

F(x,y)=(u(x,y),v(x,y))∈R2F(x,y)=(u(x,y),v(x,y))\in\mathbb R^{2}

は同じ写像を表す。

例 2.2 (平方写像).f(z)=z2f(z)=z^2とする。z=x+iyz=x+iyならば

f(x+iy)=(x2−y2)+i(2xy)f(x+iy)=(x^2-y^2)+i(2xy)

であるから、対応する実二変数写像はF(x,y)=(x2−y2,2xy)F(x,y)=(x^2-y^2,2xy)である。とくに

F(x,0)=(x2,0),F(0,y)=(−y2,0)F(x,0)=(x^2,0),\qquad F(0,y)=(-y^2,0)

であるから、実軸は非負実軸へ、虚軸は非正実軸へ写る。また

F(x,x)=(0,2x2),F(x,−x)=(0,−2x2)F(x,x)=(0,2x^2),\qquad F(x,-x)=(0,-2x^2)

であるから、直線y=xy=xは非負虚軸へ、直線y=−xy=-xは非正虚軸へ写る。

3 極限と連続性

定義 3.1.S⊆CS\subseteq\mathbb Cとする。点a∈Ca\in\mathbb CがSSの集積点 (accumulation point) であるとは、各δ>0\delta>0に対して0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaを満たすz∈Sz\in Sが存在することをいう。集積点はSSに属さなくてもよい。

f:S→Cf:S\to\mathbb C、aaをSSの集積点、L∈CL\in\mathbb Cとする。

lim⁡z→af(z)=L\lim_{z\to a}f(z)=L

とは、各ε>0\varepsilon>0に対してδ>0\delta>0が存在して、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaを満たすすべてのzzについて∣f(z)−L∣<ε|f(z)-L|<\varepsilonが成り立つことをいう。LLをz→az\to aにおけるffの極限 (limit) という。

a∈Sa\in Sとする。ffがaaで連続 (continuous) であるとは、各ε>0\varepsilon>0に対してδ>0\delta>0が存在して、z∈Sz\in Sかつ∣z−a∣<δ|z-a|<\deltaを満たすすべてのzzについて∣f(z)−f(a)∣<ε|f(z)-f(a)|<\varepsilonが成り立つことをいう。aaがSSの集積点でもあるとき、この条件はlim⁡z→af(z)=f(a)\lim_{z\to a}f(z)=f(a)と同値である。SSの各点で連続なffを、SSの上で連続であるという。

命題 3.2.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合とする。各a∈Ua\in UはUUの集積点である。

証明.a∈Ua\in Uを取る。開集合の定義により、D(a,r)⊆UD(a,r)\subseteq Uを満たすr>0r>0が存在する。任意のδ>0\delta>0に対してz=a+12min⁡(r,δ)z=a+\tfrac{1}{2}\min(r,\delta)とおくと、z∈Uz\in Uかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaである。したがって、aaはUUの集積点である。▨

命題 3.3.f:S→Cf:S\to\mathbb C、aaをSSの集積点とする。LLとL′L'がともに定義 3.1の条件を満たすならばL=L′L=L'である。

証明.L≠L′L\ne L'と仮定し、ε=∣L−L′∣/2>0\varepsilon=|L-L'|/2>0とおく。LLについての条件からδ1>0\delta_{1}>0が、L′L'についての条件からδ2>0\delta_{2}>0が定まる。δ=min⁡(δ1,δ2)>0\delta=\min(\delta_{1},\delta_{2})>0とおく。aaはSSの集積点であるから、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaを満たすzzが存在する。このzzについて

∣L−L′∣≤∣L−f(z)∣+∣f(z)−L′∣<ε+ε=∣L−L′∣|L-L'|\le|L-f(z)|+|f(z)-L'|<\varepsilon+\varepsilon=|L-L'|

となり、矛盾する。ゆえにL=L′L=L'である。▨

命題 3.4.f:S→Cf:S\to\mathbb C、aaをSSの集積点とし、lim⁡z→af(z)=L\lim_{z\to a}f(z)=Lとする。T⊆ST\subseteq Sがaaを集積点にもつならば、ffのTTへの制限についてlim⁡z→af∣T(z)=L\lim_{z\to a}f|_{T}(z)=Lが成り立つ。

証明.ε>0\varepsilon>0に対して、定義のδ>0\delta>0を取る。z∈Tz\in Tかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaならばz∈Sz\in Sでもあるから∣f(z)−L∣<ε|f(z)-L|<\varepsilonである。したがって、制限f∣Tf|_Tは極限の定義を満たす。▨

命題 3.5.S⊆CS\subseteq\mathbb C、f=u+iv:S→Cf=u+iv:S\to\mathbb C、a=α+iβa=\alpha+i\betaをSSの集積点、L=λ+iμL=\lambda+i\mu(α,β,λ,μ∈R\alpha,\beta,\lambda,\mu\in\mathbb R)とする。lim⁡z→af(z)=L\lim_{z\to a}f(z)=Lが成り立つことと、

lim⁡(x,y)→(α,β)u(x,y)=λかつlim⁡(x,y)→(α,β)v(x,y)=μ\lim_{(x,y)\to(\alpha,\beta)}u(x,y)=\lambda \quad\text{かつ}\quad \lim_{(x,y)\to(\alpha,\beta)}v(x,y)=\mu

が成り立つことは同値である。ここでu,vu,vの極限は、SSに対応するR2\mathbb R^{2}の部分集合の上で取る。さらにa∈Sa\in Sのとき、ffがaaで連続であることと、uuとvvがともに(α,β)(\alpha,\beta)で連続であることは同値である。

証明.lim⁡z→af(z)=L\lim_{z\to a}f(z)=Lを仮定する。ε>0\varepsilon>0に対して定義のδ>0\delta>0を取れば、0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaのとき∣u(x,y)−λ∣≤∣f(z)−L∣<ε|u(x,y)-\lambda|\le|f(z)-L|<\varepsilonかつ∣v(x,y)−μ∣≤∣f(z)−L∣<ε|v(x,y)-\mu|\le|f(z)-L|<\varepsilonである。∣z−a∣|z-a|は(x,y)(x,y)と(α,β)(\alpha,\beta)の Euclid 距離に等しく、成分の評価には命題 1.2を用いた。したがって、§E4.1 定義 1.1によりuuとvvの極限が従う。

逆にuuとvvの極限を仮定する。ε>0\varepsilon>0に対して、0<∣z−a∣<δ10<|z-a|<\delta_{1}ならば∣u(x,y)−λ∣<ε/2|u(x,y)-\lambda|<\varepsilon/2、0<∣z−a∣<δ20<|z-a|<\delta_{2}ならば∣v(x,y)−μ∣<ε/2|v(x,y)-\mu|<\varepsilon/2となるδ1,δ2>0\delta_{1},\delta_{2}>0を取り、δ=min⁡(δ1,δ2)\delta=\min(\delta_{1},\delta_{2})とおく。0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaのとき

∣f(z)−L∣≤∣u(x,y)−λ∣+∣v(x,y)−μ∣<ε|f(z)-L|\le|u(x,y)-\lambda|+|v(x,y)-\mu|<\varepsilon

である。ここでも命題 1.2の三角不等式を用いた。連続性の主張は、L=f(a)L=f(a)の場合として得られる。▨

命題 3.6.S⊆CS\subseteq\mathbb C、f,g:S→Cf,g:S\to\mathbb C、aaをSSの集積点とし、lim⁡z→af(z)=L\lim_{z\to a}f(z)=L、lim⁡z→ag(z)=M\lim_{z\to a}g(z)=Mとする。このとき次が成り立つ。

  1. lim⁡z→a(f(z)+g(z))=L+M\lim_{z\to a}\bigl(f(z)+g(z)\bigr)=L+M。
  2. lim⁡z→af(z)g(z)=LM\lim_{z\to a}f(z)g(z)=LM。
  3. M≠0M\ne0とする。このときδ0>0\delta_{0}>0が存在して、S0={z∈S:0<∣z−a∣<δ0}S_{0}=\{z\in S:0<|z-a|<\delta_{0}\}の上でggは00をとらない。aaはS0S_{0}の集積点であり、S0S_{0}の上で定義されたf/gf/gについてlim⁡z→af(z)/g(z)=L/M\lim_{z\to a}f(z)/g(z)=L/Mである。

証明.(1)を示す。ε>0\varepsilon>0に対して、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ10<|z-a|<\delta_{1}ならば∣f(z)−L∣<ε/2|f(z)-L|<\varepsilon/2、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ20<|z-a|<\delta_{2}ならば∣g(z)−M∣<ε/2|g(z)-M|<\varepsilon/2となるδ1,δ2>0\delta_{1},\delta_{2}>0を取り、δ=min⁡(δ1,δ2)\delta=\min(\delta_{1},\delta_{2})とおく。z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaのとき

∣(f+g)(z)−(L+M)∣≤∣f(z)−L∣+∣g(z)−M∣<ε|(f+g)(z)-(L+M)|\le|f(z)-L|+|g(z)-M|<\varepsilon

である。

(2)を示す。ε=1\varepsilon=1に対するδ3>0\delta_{3}>0をggについて取ると、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ30<|z-a|<\delta_{3}のとき∣g(z)∣≤∣M∣+1|g(z)|\le|M|+1である。K=max⁡(∣M∣+1,∣L∣)+1K=\max(|M|+1,|L|)+1とおく。ε>0\varepsilon>0に対して、z∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaのとき∣f(z)−L∣<ε/(2K)|f(z)-L|<\varepsilon/(2K)かつ∣g(z)−M∣<ε/(2K)|g(z)-M|<\varepsilon/(2K)かつδ≤δ3\delta\le\delta_{3}となるようにδ>0\delta>0を取る。

f(z)g(z)−LM=(f(z)−L)g(z)+L(g(z)−M)f(z)g(z)-LM=\bigl(f(z)-L\bigr)g(z)+L\bigl(g(z)-M\bigr)

であるから、そのようなzzについて

∣f(z)g(z)−LM∣≤∣f(z)−L∣ ∣g(z)∣+∣L∣ ∣g(z)−M∣<ε2KK+ε2KK=ε|f(z)g(z)-LM|\le|f(z)-L|\,|g(z)|+|L|\,|g(z)-M|<\frac{\varepsilon}{2K}K+\frac{\varepsilon}{2K}K=\varepsilon

である。

(3)を示す。ε=∣M∣/2>0\varepsilon=|M|/2>0に対するδ0>0\delta_{0}>0をggについて取ると、z∈S0z\in S_{0}のとき∣g(z)−M∣<∣M∣/2|g(z)-M|<|M|/2であり、したがって∣g(z)∣≥∣M∣−∣g(z)−M∣>∣M∣/2>0|g(z)|\ge|M|-|g(z)-M|>|M|/2>0である。aaはSSの集積点であるから、各δ>0\delta>0についてz∈Sz\in Sかつ0<∣z−a∣<min⁡(δ,δ0)0<|z-a|<\min(\delta,\delta_{0})を満たすzzが存在し、そのzzはS0S_{0}に属する。ゆえにaaはS0S_{0}の集積点である。

S0S_{0}の上で

1g(z)−1M=M−g(z)g(z)M,∣1g(z)−1M∣≤2∣M∣2 ∣g(z)−M∣\frac{1}{g(z)}-\frac{1}{M}=\frac{M-g(z)}{g(z)M},\qquad \left|\frac{1}{g(z)}-\frac{1}{M}\right|\le\frac{2}{|M|^{2}}\,|g(z)-M|

である。ε>0\varepsilon>0に対して、z∈S0z\in S_{0}かつ0<∣z−a∣<δ0<|z-a|<\deltaのとき∣g(z)−M∣<ε∣M∣2/2|g(z)-M|<\varepsilon|M|^{2}/2となるδ>0\delta>0を取れば、∣1/g(z)−1/M∣<ε|1/g(z)-1/M|<\varepsilonである。すなわちlim⁡z→a1/g(z)=1/M\lim_{z\to a}1/g(z)=1/Mである。命題 3.4によりffの極限はS0S_{0}へ制限してもLLのままであるから、(2)をffと1/g1/gへ適用してlim⁡z→af(z)/g(z)=L/M\lim_{z\to a}f(z)/g(z)=L/Mを得る。▨

命題 3.7.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、f,g:U→Cf,g:U\to\mathbb Cをa∈Ua\in Uで連続な複素関数とする。このときf+gf+gとfgfgはaaで連続である。g(a)≠0g(a)\ne0ならば、ggが00にならないaaの近傍の上でf/gf/gが定義され、aaで連続である。さらに、V⊆CV\subseteq\mathbb Cを開集合、h:V→Ch:V\to\mathbb Cをf(a)∈Vf(a)\in Vで連続な複素関数とすると、ffが値をVVに取るaaの近傍の上でh∘fh\circ fが定義され、aaで連続である。

証明.命題 3.2によりaaはUUの集積点であり、連続性の定義からlim⁡z→af(z)=f(a)\lim_{z\to a}f(z)=f(a)およびlim⁡z→ag(z)=g(a)\lim_{z\to a}g(z)=g(a)が成り立つ。命題 3.6を適用すると、f+gf+gとfgfgの極限はそれぞれf(a)+g(a)f(a)+g(a)とf(a)g(a)f(a)g(a)である。したがってf+gf+gとfgfgはaaで連続である。

g(a)≠0g(a)\ne0とする。ggの連続性により、∣z−a∣<δ0|z-a|<\delta_0ならば∣g(z)−g(a)∣<∣g(a)∣/2|g(z)-g(a)|<|g(a)|/2となるδ0>0\delta_0>0が存在する。このとき∣g(z)∣>∣g(a)∣/2>0|g(z)|>|g(a)|/2>0であるからf/gf/gはD(a,δ0)∩UD(a,\delta_0)\cap Uの上で定義される。命題 3.6の商の場合を適用し、必要ならδ0\delta_0を小さくすると、D(a,δ0)∩UD(a,\delta_0)\cap U上でlim⁡z→af(z)/g(z)=f(a)/g(a)\lim_{z\to a}f(z)/g(z)=f(a)/g(a)であるから、f/gf/gはaaで連続である。

合成については、VVが開集合でhhがf(a)f(a)で連続であるから、ε>0\varepsilon>0に対して∣w−f(a)∣<η|w-f(a)|<\etaかつw∈Vw\in Vならば∣h(w)−h(f(a))∣<ε|h(w)-h(f(a))|<\varepsilonとなるη>0\eta>0が存在し、D(f(a),η)⊆VD(f(a),\eta)\subseteq Vとなるようにη\etaを小さく取ることができる。ffの連続性により、∣z−a∣<δ|z-a|<\deltaならば∣f(z)−f(a)∣<η|f(z)-f(a)|<\etaとなるδ>0\delta>0が存在する。このδ\deltaに対して、∣z−a∣<δ|z-a|<\deltaを満たすzzについてf(z)∈Vf(z)\in Vかつ∣h(f(z))−h(f(a))∣<ε|h(f(z))-h(f(a))|<\varepsilonである。▨

例 3.8 (方向によって値が変わるために極限が存在しない例).S=C∖{0}S=\mathbb C\setminus\{0\}の上でf(z)=zˉ/zf(z)=\bar z/zと定める。00はSSに属さないがSSの集積点であるから、定義 3.1によりz→0z\to0の極限を論じることができる。任意のr>0r>0に対して

f(r)=rr=1,f(ir)=ir‾ir=−irir=−1f(r)=\frac{r}{r}=1,\qquad f(ir)=\frac{\overline{ir}}{ir}=\frac{-ir}{ir}=-1

である。極限LLが存在するとすれば、ε=1\varepsilon=1に対するδ>0\delta>0を取り、0<r<δ0<r<\deltaとしてz=rz=rとz=irz=irを代入することにより、∣1−L∣<1|1-L|<1かつ∣−1−L∣<1|-1-L|<1を得る。ところが三角不等式により

2=∣1−(−1)∣≤∣1−L∣+∣L−(−1)∣<1+1=22=|1-(-1)|\le|1-L|+|L-(-1)|<1+1=2

となり、2<22<2という矛盾が生じる。ゆえにlim⁡z→0f(z)\lim_{z\to0}f(z)は存在しない。

4 演習

問題 4.1.

  1. D(−2,1)∪D(2,1)D(-2,1)\cup D(2,1)の上で局所定数であるが定数ではない複素関数を構成し、各点で局所定数であることを定義から示せ。
  2. f(z)=z3f(z)=z^3をf=u+ivf=u+ivと表示し、uuとvvをx,yx,yの多項式として求めよ。さらに命題 3.5を用いてffがC\mathbb Cの上で連続であることを示せ。
  3. S=C∖{0}S=\mathbb C\setminus\{0\}上の関数 g(x+iy)=x2x2+y2g(x+iy)=\frac{x^2}{x^2+y^2} について、z→0z\to0の極限が存在しないことを二つの経路を用いて示せ。
解答 (解答).
  1. D(−2,1)D(-2,1)上で値00、D(2,1)D(2,1)上で値11を取る関数ggを定める。二つの円板は交わらないのでggは定義される。任意のzzは二つの円板の一方に属し、その円板の開性によりD(z,r)D(z,r)が同じ円板に含まれるようなr>0r>0が存在する。したがってggはD(z,r)D(z,r)上で定数である。しかし、g(−2)=0g(-2)=0、g(2)=1g(2)=1であるからggは定数ではない。
  2. 二項展開により (x+iy)3=(x3−3xy2)+i(3x2y−y3)(x+iy)^3=(x^3-3xy^2)+i(3x^2y-y^3) である。したがってu(x,y)=x3−3xy2u(x,y)=x^3-3xy^2、v(x,y)=3x2y−y3v(x,y)=3x^2y-y^3である。任意のa=α+iβ∈Ca=\alpha+i\beta\in\mathbb Cに対して ∣Re⁡z−Re⁡a∣≤∣z−a∣,∣Im⁡z−Im⁡a∣≤∣z−a∣|\operatorname{Re}z-\operatorname{Re}a|\le |z-a|,\qquad |\operatorname{Im}z-\operatorname{Im}a|\le |z-a| であるから、座標関数z↦Re⁡zz\mapsto\operatorname{Re}zとz↦Im⁡zz\mapsto\operatorname{Im}zはaaで連続である。定数関数の連続性は定義から従うので、命題 3.7を有限回適用すると、これらの座標関数の和と積であるuuとvvは(α,β)(\alpha,\beta)で連続である。したがって命題 3.5によりffはaaで連続である。aaは任意であるから、ffはC\mathbb Cの上で連続である。
  3. 実軸上ではg(x)=1g(x)=1、虚軸上ではg(iy)=0g(iy)=0である。00が両方の軸から00を除いた集合の集積点であることと命題 3.4により、ggの極限が存在すればその値は11かつ00でなければならない。この二つの値は異なるので、z→0z\to0におけるg(z)g(z)の極限は存在しない。

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参考文献

  1. Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., AMS Chelsea Publishing 385, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2021, originally published 1979.複素平面の位相と複素関数の連続性を参考にした。
  2. John B. Conway, Functions of One Complex Variable I, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1978.平面の開集合の連結性と折れ線による結合の同値を参考にした。

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