1 位相的支援:コンパクト集合の上の一様収束
まず、本記事を通じて用いる収束の意味を定める。
この収束は、Ωの全体での一様収束より弱い。次の例は、両者が実際に異なることを示す。
以下の議論では、閉円板と円周がコンパクトであることを繰り返し用いる。これを補題として先に置く。
補題 1.3.a∈Cとr>0に対して、閉円板D(a,r)と円周S(a,r)={z∈C∣∣z−a∣=r}は、どちらもコンパクトである。
証明. どちらの集合も、そのすべての点zについて∣z∣≤∣a∣+rを満たすので有界である。
D(a,r)が閉集合であることを示す。∣z0−a∣>rとし、ε0=∣z0−a∣−r>0とおく。∣z−z0∣<ε0を満たすzについて∣z−a∣≥∣z0−a∣−∣z−z0∣>∣z0−a∣−ε0=rであるから、zはD(a,r)に属さない。ゆえに補集合は開集合である。
S(a,r)が閉集合であることを示す。∣z0−a∣=rとし、ε0=∣z0−a∣−r>0とおく。∣z−z0∣<ε0を満たすzについて、三角不等式により∣z−a∣−∣z0−a∣≤∣z−z0∣<ε0であるから∣z−a∣=rであり、zはS(a,r)に属さない。ゆえに補集合は開集合である。
どちらの集合も有界かつ閉であるから、§E2.9 定理 4.3(n=2)によりコンパクトである。▨
次の命題は、コンパクト集合の上の一様収束が、各点の近くでの一様収束と同じ内容であることを示す。これが「局所一様収束」という名称の根拠である。
証明.(1)⇒(2)を示す。a∈Ωとする。Ωは開集合であるからD(a,s)⊆Ωを満たすs>0が存在する。r=s/2とおくとD(a,r)⊆D(a,s)⊆Ωである。補題 1.3によりD(a,r)はコンパクトである。(1)をこのコンパクト集合へ適用すると、D(a,r)⊆D(a,r)であるから、(fn)はD(a,r)の上で一様収束する。
(2)⇒(1)を示す。K⊆Ωをコンパクト集合、ε>0とする。K=∅のときはN=1が条件を満たすので、K=∅とする。
V={D(a,r) a∈Ω, r>0, D(a,r)⊆Ω, (fn) は D(a,r) の上で f へ一様収束する}とおく。Vの元はすべて開集合である。(2)により、Kの各点aはVのある元に属するから、K⊆⋃V∈VVである。Kはコンパクトであるから、§E2.19 命題 2.6により有限個のV1,…,Vp∈VでK⊆V1∪⋯∪Vpを満たすものが存在する。各Viについて、n≥Niとz∈Viならば∣fn(z)−f(z)∣<εを満たす番号Niが存在する。N=max{N1,…,Np}とおく。z∈Kをとるとz∈Viを満たすiが存在し、n≥N≥Niについて∣fn(z)−f(z)∣<εである。▨
以下の証明では、与えられたコンパクト集合を少しだけ膨らませたコンパクト集合を、定義域の中にとる操作を繰り返し用いる。この操作を補題として独立に置く。
補題 1.5.Ω⊆Cを開集合、K⊆Ωを空でないコンパクト集合とする。このときρ>0が存在して、
Kρ={z∈C ∣ d(z,K)≤ρ}が次の三つを満たす。
- K⊆Kρ⊆Ωである。
- Kρはコンパクトである。
- Kの各点zについてD(z,ρ)⊆Kρである。
証明. まずρを定める。Ω=Cの場合はρ=1とおく。Ω=Cの場合、F=C∖Ωは空でない閉集合である。§E2.10 命題 5.2 (1)によりz↦d(z,F)は連続であるから、−d(⋅,F)へ§E5.9 命題 1.1を適用すると、d(⋅,F)は空でないコンパクト集合Kの上で最小値をとる。その最小値をmとする。K⊆ΩでありFは閉集合であるから、Kの各点wについて§E2.10 命題 5.2 (2)によりd(w,F)>0であり、したがってm>0である。ρ=m/2とおく。
(1)を示す。Kの各点zについてd(z,K)=0≤ρであるからK⊆Kρである。Kρ⊆Ωを示す。Ω=Cの場合、KρはCの部分集合でありΩ=Cであるから、Kρ⊆Ωが成り立つ。Ω=Cの場合、z∈Fとすると、Kの各点wについて∣z−w∣≥d(w,F)≥mであるからd(z,K)≥m>ρであり、z∈/Kρである。対偶によりKρ⊆Ωである。
(2)を示す。Kはコンパクトであるから§E2.9 系 4.1により有界であり、Kのすべての点wについて∣w∣≤Rを満たすRが存在する。z∈Kρとするとd(z,K)≤ρ<ρ+1であるから、下限の性質により∣z−w∣<ρ+1を満たすw∈Kが存在し、∣z∣≤R+ρ+1である。よってKρは有界である。次にKρが閉集合であることを示す。z0∈/Kρとするとd(z0,K)>ρであるからε0=d(z0,K)−ρ>0とおくことができる。∣z−z0∣<ε0を満たすzについて、§E2.10 命題 5.2 (1)によりd(z,K)≥d(z0,K)−∣z−z0∣>d(z0,K)−ε0=ρであるからz∈/Kρである。ゆえにKρの補集合は開集合であり、Kρは閉集合である。有界かつ閉であるから§E2.9 定理 4.3(n=2)によりKρはコンパクトである。
(3)を示す。z∈Kと∣ζ−z∣≤ρとすると、z∈Kであるからd(ζ,K)≤∣ζ−z∣≤ρであり、ζ∈Kρである。▨
次の補題は、開集合をコンパクト集合の増大列で尽くす。Montel の定理の証明では、この列に沿って部分列を取り直す。本記事のどの証明も、補題の主張のうち補題 1.6 (2)と補題 1.6 (3)だけを用いる。補題 1.6 (1)は用いないが、コンパクト集合による尽くしの標準的な形が内部への包含を含むので、その形のままで述べる。
補題 1.6.Ω⊆Cを空でない開集合とする。このとき、Ωに含まれるコンパクト集合の列(Kn)n≥1で、次の三つを満たすものが存在する。
- 各nについて、KnはKn+1の内部に含まれる。すなわちKnの各点zに対してη>0が存在してD(z,η)⊆Kn+1が成り立つ。
- Ω=⋃n≥1Knである。
- Ωに含まれる任意のコンパクト集合Kに対して、K⊆KNを満たすN∈Z≥1が存在する。
証明.Ω=Cの場合とΩ=Cの場合に分ける。
Ω=Cの場合、Kn=D(0,n)とおく。補題 1.3によりKnはコンパクトである。(1)は、∣z∣≤nを満たすzについてD(z,1)⊆D(0,n+1)であることによる。(2)は、各z∈Cについて∣z∣≤nを満たすnが存在することによる。(3)は、コンパクト集合Kが§E2.9 系 4.1により有界であることから、Kのすべての点の絶対値を超える整数Nをとればよい。
Ω=Cの場合、F=C∖Ωは空でない閉集合である。
Kn={z∈C ∣z∣≤n かつ d(z,F)≥n1}とおく。
Kn⊆Ωを示す。z∈Knとするとd(z,F)≥1/n>0であるから、§E2.10 命題 5.2 (2)によりz∈/F=Fであり、z∈Ωである。
Knがコンパクトであることを示す。Knは∣z∣≤nにより有界である。閉集合であることを示す。z0∈/Knとする。∣z0∣>nの場合、ε0=∣z0∣−n>0とおくと∣z−z0∣<ε0を満たすzについて∣z∣>nでありz∈/Knである。d(z0,F)<1/nの場合、ε0=1/n−d(z0,F)>0とおくと、§E2.10 命題 5.2 (1)により∣z−z0∣<ε0を満たすzについてd(z,F)≤d(z0,F)+∣z−z0∣<1/nでありz∈/Knである。ゆえにKnの補集合は開集合であり、Knは有界かつ閉であるから§E2.9 定理 4.3(n=2)によりコンパクトである。
(1)を示す。z∈Knとし、η=1/(n(n+1))とおく。η>0でありη≤1/2≤1である。∣w−z∣<ηを満たすwについて、∣w∣≤∣z∣+η≤n+1であり、§E2.10 命題 5.2 (1)により
d(w,F)≥d(z,F)−∣w−z∣>n1−n(n+1)1=n+11である。よってw∈Kn+1であり、D(z,η)⊆Kn+1である。
(2)を示す。Kn⊆Ωは上で示した。逆にz∈Ωとすると、§E2.10 命題 5.2 (2)によりd(z,F)>0である。Archimedes の性質によりn≥∣z∣かつ1/n≤d(z,F)を満たす正の整数nをとることができ、z∈Knである。
(3)を示す。K⊆Ωをコンパクト集合とする。K=∅のときはN=1でよい。K=∅とする。§E2.9 系 4.1によりKは有界であるから、Kのすべての点zについて∣z∣≤Rを満たすRが存在する。また§E2.10 命題 5.2 (1)によりd(⋅,F)は連続であるから、§E5.9 命題 1.1を−d(⋅,F)へ適用して、d(⋅,F)はKの上で最小値mをとる。K⊆Ωと§E2.10 命題 5.2 (2)によりm>0である。
Archimedes の性質によりN≥Rかつ1/N≤mを満たす正の整数Nをとると、Kのすべての点zについて∣z∣≤R≤Nかつd(z,F)≥m≥1/Nであり、K⊆KNである。▨
最後に、一様収束する連続関数列の極限が連続であることを、複素数値の場合について確かめる。「ε-論法と基礎解析」の§D1.22 定理 2.1は定義域がRの部分集合で値が実数の場合を、§E2.16 定理 2.4は定義域が位相空間で値が実数の場合を扱っており、どちらも値が複素数である場合をそのまま含まない。そこで次の補題を置く。
証明.a∈Sとε>0をとる。仮定により、n≥Nとz∈Sについて∣gn(z)−g(z)∣<ε/3を満たす番号Nが存在する。gNはaで連続であるから、§E5.1 定義 3.1によりδ>0が存在して、z∈Sかつ∣z−a∣<δを満たすすべてのzについて∣gN(z)−gN(a)∣<ε/3である。このとき
∣g(z)−g(a)∣≤∣g(z)−gN(z)∣+∣gN(z)−gN(a)∣+∣gN(a)−g(a)∣<3ε+3ε+3ε=εである。よってgはaで連続であり、a∈Sは任意であったからSの上で連続である。▨
2 解析的支援:極限の正則性と導関数列の収束
定理 2.1 (Weierstrass の収束定理).Ω⊆Cを開集合、fn(n∈Z≥1)をΩの上の正則関数とし、f:Ω→Cとする。(fn)がΩの上でfへ定義 1.1の意味で収束するならば、次の二つが成り立つ。
- fはΩの上で正則である。
- 各k∈Z≥1について、導関数の列(fn(k))n≥1はΩの上でf(k)へ定義 1.1の意味で収束する。
証明.(1)を示す。a∈Ωをとる。Ωは開集合であるからD(a,s)⊆Ωを満たすs>0が存在し、r=s/2とおくとD(a,r)⊆Ωである。Crを円周∣ζ−a∣=rの反時計回りの閉曲線とし、これを一本の閉曲線からなるサイクル(§E5.4 定義 3.1)とみなす。補題 1.3により、閉円板D(a,r)と、Crの台∣Cr∣={ζ∣∣ζ−a∣=r}は、どちらもコンパクトである。
仮定により(fn)は∣Cr∣の上でfへ一様収束する。各fnは正則であるから§E5.1 定義 3.1の意味で連続であり、補題 1.7によりfは∣Cr∣の上で連続である。
z∈D(a,r)を固定する。§E5.6 定理 2.1の後半をfnと閉円板D(a,r)⊆Ωへ適用すると
fn(z)=2πi1∮Crζ−zfn(ζ)dζである。εn=supζ∈∣Cr∣∣fn(ζ)−f(ζ)∣とおく。∣fn−f∣は∣Cr∣の上で連続であり∣Cr∣は空でないコンパクト集合であるから、§E5.9 命題 1.1によりεnは最大値として実数の値をとる。(fn)が∣Cr∣の上で一様収束することからεn→0である。∣Cr∣の上で∣ζ−z∣≥r−∣z−a∣>0であるから、∣Cr∣の上の連続関数(fn(ζ)−f(ζ))/(ζ−z)に§E5.4 命題 3.2を適用して
2πi1∮Crζ−zfn(ζ)dζ−2πi1∮Crζ−zf(ζ)dζ≤2π1⋅r−∣z−a∣εn⋅2πr=r−∣z−a∣rεnを得る。ここで円周Crの長さが2πrであることを用いた。右辺はn→∞で0へ収束する。一方、z∈D(a,r)でありD(a,r)はΩに含まれるコンパクト集合であるから、fn(z)→f(z)である。極限の一意性(§E2.3 命題 1.3)により
f(z)=2πi1∮Crζ−zf(ζ)dζがD(a,r)のすべての点zで成り立つ。fは∣Cr∣の上で連続であるから、§E5.6 補題 3.1をΓ=Cr、φ=f∣∣Cr∣、m=1として適用すると、右辺はC∖∣Cr∣の上で正則であり、とくにD(a,r)の上で正則である。ゆえにfはD(a,r)の上で正則であり、aで複素微分可能である。a∈Ωは任意であったから、fはΩの上で正則である。
(2)を示す。k∈Z≥1と、Ωに含まれるコンパクト集合Kをとる。K=∅のときは主張が空虚に成り立つので、K=∅とする。補題 1.5によりρ>0をとり、Kρ⊆Ωをコンパクト集合とする。(1)によりfは正則であるから、gn=fn−fはΩの上の正則関数である。z∈Kとすると、補題 1.5 (3)によりD(z,ρ)⊆Kρ⊆Ωである。円周∣ζ−z∣=ρはKρに含まれるから、
μn=ζ∈Kρsup∣gn(ζ)∣とおくと、この円周の上で∣gn(ζ)∣≤μnである。∣gn∣はKρの上で連続でありKρは空でないコンパクト集合であるから、§E5.9 命題 1.1によりμnは最大値として実数の値をとる。KρはΩに含まれるコンパクト集合であるから、仮定によりμn→0である。§E5.6 系 4.2をgn、中心z、半径ρ、M=μn、m=kとして適用すると
fn(k)(z)−f(k)(z)=gn(k)(z)≤ρkk!μnである。右辺はz∈Kによらず、n→∞で0へ収束する。よってε>0に対してk!μn/ρk<εを満たす番号Nをとれば、n≥Nとz∈Kについて∣fn(k)(z)−f(k)(z)∣<εである。▨
3 Hurwitz の定理
定理 3.1 (Hurwitz の定理).Ω⊆Cを領域、fn(n∈Z≥1)をΩの上の正則関数とし、(fn)がΩの上でfへ定義 1.1の意味で収束するとする。a∈Ωとr>0がD(a,r)⊆Ωを満たし、円周∣z−a∣=rの上でfが零点をもたないとする。このとき番号Nが存在して、n≥Nを満たすすべてのnについて、fnがD(a,r)の中にもつ零点の個数と、fがD(a,r)の中にもつ零点の個数は等しい。ここでどちらの個数も、零点の位数(§E5.8 定義 1.1)を込めて数えたものである。
証明.fは定理 2.1 (1)によりΩの上で正則である。
まず、D(a,r)を含む開円板をΩの中にとる。K=D(a,r)は補題 1.3によりコンパクトである。K=∅であるから補題 1.5によりρ>0をとり、Kρ⊆Ωとする。r′=r+ρとおくと、∣z−a∣<r′を満たすzについて、∣z−a∣≤rならばz∈K⊆Kρであり、r<∣z−a∣<r′ならばw=a+r(z−a)/∣z−a∣が∣w−a∣=rを満たしてKに属し、∣z−w∣=∣z−a∣1−r/∣z−a∣=∣z−a∣−r<r′−r=ρであるからd(z,K)≤∣z−w∣<ρとなってz∈Kρである。よってD=D(a,r′)⊆Kρ⊆Ωである。Dは空でない開集合であり、凸であるから任意の二点がDに含まれる線分で結ばれ、§E5.1 命題 1.4により連結である。ゆえにDは領域である。
Γを円周∣z−a∣=rの反時計回りの閉曲線からなるサイクルとする。台∣Γ∣は補題 1.3によりコンパクトであり、半径r>0の円周であるから空でない。p∈/Dならば∣p−a∣≥r′>rであるから、§E5.5 命題 5.6 (1)によりn(Γ,p)=0である。よってΓはDの内部で零ホモローグ(§E5.5 定義 1.2)である。
∣f∣は∣Γ∣の上で連続であり、∣Γ∣は空でないコンパクト集合であるから、§E5.9 命題 1.1を−∣f∣へ適用して、∣f∣は∣Γ∣の上で最小値mをとる。仮定によりfは∣Γ∣の上で零点をもたないのでm>0である。∣Γ∣はΩに含まれるコンパクト集合であるから、仮定により番号Nが存在して、n≥Nとz∈∣Γ∣について
∣fn(z)−f(z)∣<m≤∣f(z)∣が成り立つ。
n≥Nを固定し、g=fn−fとおく。fとgはDの上の正則関数であり、∣Γ∣の上で∣g∣<∣f∣であり、∣Γ∣=∅である。ゆえに§E5.14 定理 4.1を領域DとサイクルΓへ適用することができ、fとf+g=fnはどちらもDの上で恒等的に0ではなく、
b∑n(Γ,b)ord(f,b)=b∑n(Γ,b)ord(fn,b)が成り立つ。ここでordは§E5.14 定義 1.1の記号であり、極をもたない正則関数については零点の位数(§E5.8 定義 1.1)に一致する。和はそれぞれのDにおける零点にわたる。§E5.5 命題 5.6 (1)により、∣b−a∣<rのときn(Γ,b)=1、∣b−a∣>rのときn(Γ,b)=0である。また∣b−a∣=rを満たす点は∣Γ∣に属し、そこではf=0かつ∣fn∣≥∣f∣−∣g∣>0であるから、fの零点でもfnの零点でもない。したがって左辺はfがD(a,r)の中にもつ零点を位数込みで数えた個数、右辺はfnがD(a,r)の中にもつ零点を位数込みで数えた個数であり、両者は等しい。▨
Hurwitz の定理は、円周を一つ固定した局所的な形で述べた。極限が定数でない場合には、極限の各零点のまわりにこの形を適用することができる。次の系がその形である。
系 3.2.Ω⊆Cを領域、fnをΩの上の正則関数とし、(fn)がΩの上でfへ定義 1.1の意味で収束するとする。fがΩの上で定数でないと仮定する。a∈Ωをfの零点とし、その位数(§E5.8 定義 1.1)をk≥1とする。このときr0>0が存在して、0<r≤r0を満たすすべてのrについて次が成り立つ。番号Nが存在して、n≥Nを満たすすべてのnについて、fnはD(a,r)の中に位数を込めてちょうどk個の零点をもつ。とくにfnはD(a,r)の中に零点をもつ。
証明.fは定理 2.1 (1)によりΩの上で正則である。fは定数でないから、Ωの上で恒等的に0ではない。ゆえに§E5.8 命題 2.2により、ρ1>0が存在して、0<∣z−a∣<ρ1を満たすz∈Ωの全体でf(z)=0である。またΩは開集合であるからD(a,ρ2)⊆Ωを満たすρ2>0が存在する。r0=21min(ρ1,ρ2)とおく。
0<r≤r0とする。D(a,r)⊆D(a,ρ2)⊆Ωであり、円周∣z−a∣=rの上では0<∣z−a∣=r≤r0<ρ1であるからfは零点をもたない。ゆえに定理 3.1を適用することができ、番号Nが存在して、n≥NについてfnがD(a,r)の中にもつ零点の個数は、fがD(a,r)の中にもつ零点の個数に等しい。fのD(a,r)における零点はaだけであり、その位数はkであるから、この個数はkである。k≥1であるからfnはD(a,r)の中に零点をもつ。▨
系 3.3.Ω⊆Cを領域、fnをΩの上の正則関数とし、各nについてfnはΩの上で零点をもたないとする。(fn)がΩの上でfへ定義 1.1の意味で収束するならば、fはΩの上で恒等的に0であるか、またはΩの上で零点をもたない。
証明.fがΩの上で恒等的に0でないと仮定し、fが零点a∈Ωをもつとして矛盾を導く。fは定理 2.1 (1)により正則である。fは恒等的に0でないから、§E5.8 命題 2.2によりρ1>0が存在して、0<∣z−a∣<ρ1を満たすz∈Ωの全体でf(z)=0である。D(a,ρ2)⊆Ωを満たすρ2>0をとり、r=21min(ρ1,ρ2)とおくと、D(a,r)⊆Ωであり、円周∣z−a∣=rの上でfは零点をもたない。またr<ρ1であるから、fのD(a,r)における零点はaだけである。定理 3.1により、ある番号Nが存在して、n≥NについてfnがD(a,r)の中にもつ零点の個数は、fがD(a,r)の中にもつ零点の個数に等しい。後者はaの位数(§E5.8 定義 1.1)であり1以上であるから、fNはD(a,r)の中に零点をもつ。これはfNがΩの上で零点をもたないという仮定に反する。▨
次の系は、後続の記事で Riemann の写像定理を証明するときに用いる形である。
系 3.4.Ω⊆Cを領域、fnをΩの上の単射な正則関数とし、(fn)がΩの上でfへ定義 1.1の意味で収束するとする。このときfはΩの上で単射であるか、またはΩの上で定数である。
証明.fは定理 2.1 (1)によりΩの上で正則である。fが定数でないと仮定して、fが単射であることを示す。
fが単射でないと仮定する。すなわちz1,z2∈Ωが存在してz1=z2かつf(z1)=f(z2)である。w=f(z1)とおき、g=f−w、gn=fn−wとおく。gnはΩの上の正則関数であり、(gn)はΩの上でgへ定義 1.1の意味で収束する。実際、gn−g=fn−fであるから、収束の条件は(fn)についてのものと同じである。fは定数でないからgも定数でなく、z1とz2はどちらもgの零点である。
系 3.2をg、(gn)、零点z1へ適用してr1>0を、零点z2へ適用してr2>0を得る。r=31min(r1,r2,∣z1−z2∣)とおくと0<r≤r1、0<r≤r2である。同系により、番号N1が存在してn≥N1についてgnはD(z1,r)の中に零点をもち、番号N2が存在してn≥N2についてgnはD(z2,r)の中に零点をもつ。n∗=max(N1,N2)とし、gn∗のD(z1,r)の中の零点をζ1、gn∗のD(z2,r)の中の零点をζ2とする。
∣ζ1−ζ2∣≥∣z1−z2∣−∣ζ1−z1∣−∣ζ2−z2∣>∣z1−z2∣−2r≥∣z1−z2∣−32∣z1−z2∣>0であるからζ1=ζ2である。一方gn∗(ζ1)=gn∗(ζ2)=0、すなわちfn∗(ζ1)=fn∗(ζ2)=wである。これはfn∗が単射であることに反する。
ゆえにfが定数でなければfは単射である。▨
例 3.5 (極限が定数になる単射関数の列).系 3.4の結論から「定数である」という場合を落とすことはできない。Ω=C、fn(z)=z/nとおくと、各fnは正則であり、fn(z)=fn(z′)からz=z′が従うので単射である。K⊆Cをコンパクト集合とすると、§E2.9 系 4.1によりKは有界であるから、Kのすべての点zについて∣z∣≤Rを満たすRが存在する。ε>0に対してR/N<εを満たすNをとると、n≥Nとz∈Kについて∣fn(z)−0∣=∣z∣/n≤R/N<εである。よって(fn)は定数関数0へコンパクト集合の上で一様収束する。極限は定数であり、単射ではない。
4 Montel の定理に対する解析的支援
定義 4.1.Ω⊆Cを開集合とし、FをΩの上の正則関数からなる集合とする。Fが正規族 (normal family) であるとは、Fの元からなる任意の列(fn)n≥1に対して、狭義単調増加な写像κ:Z≥1→Z≥1と関数g:Ω→Cが存在して、部分列(fκ(k))k≥1がΩの上でgへ定義 1.1の意味で収束することをいう。
正規族であるための十分条件として、本記事が扱うのは次の条件である。
定義 4.3.Ω⊆Cを開集合とし、FをΩからCへの関数からなる集合とする。Fが局所一様有界 (locally uniformly bounded) であるとは、Ωの各点aに対してr>0と実数Mが存在して、D(a,r)⊆Ωであり、かつFのすべての元fとD(a,r)のすべての点zについて
∣f(z)∣≤Mが成り立つことをいう。rとMは点aに依存してよいが、Mは族の元fにも点zにも依存しない。
命題 4.4.Ω⊆Cを開集合、FをΩからCへの関数からなる集合とする。次の二つは同値である。
- Fは定義 4.3の意味で局所一様有界である。
- Ωに含まれるすべてのコンパクト集合Kに対して実数MKが存在して、Fのすべての元fとKのすべての点zについて∣f(z)∣≤MKが成り立つ。
証明.(1)⇒(2)を示す。K⊆Ωをコンパクト集合とする。K=∅のときはMK=0でよい。K=∅とする。
V={D(a,r) a∈Ω, r>0, D(a,r)⊆Ω, F は D(a,r) の上で一様有界である}とおく。ここで「FがD(a,r)の上で一様有界である」とは、実数Mが存在してFのすべての元fとD(a,r)のすべての点zについて∣f(z)∣≤Mが成り立つことをいう。(1)により、Kの各点はVのある元に属するからK⊆⋃V∈VVである。§E2.19 命題 2.6により有限個のV1,…,Vp∈VでK⊆V1∪⋯∪Vpを満たすものが存在する。各ViについてFをViの上で押さえる実数Miを一つずつとる。MK=max{M1,…,Mp}とおくと、Fの各元fとKの各点zについて、z∈Viを満たすiをとって∣f(z)∣≤Mi≤MKである。
(2)⇒(1)を示す。a∈Ωとする。D(a,s)⊆Ωを満たすs>0をとり、r=s/2とおくとD(a,r)⊆Ωである。補題 1.3によりD(a,r)はコンパクトである。(2)をこのコンパクト集合へ適用してM=MD(a,r)とおくと、D(a,r)⊆D(a,r)であるから、Fのすべての元fとD(a,r)のすべての点zについて∣f(z)∣≤Mである。▨
次の命題が、Montel の定理の証明のうち正則性を用いる部分である。局所一様有界性という値についての仮定から、族全体に共通のδをとることができるという同程度連続性が従う。この含意は正則性に依存する。実数の上の連続関数については、§E2.31 例 1.7が、[0,1]の上で値が0以上1以下の連続関数からなる族であって同程度連続でないものを与えている。
命題 4.5.Ω⊆Cを開集合、FをΩの上の正則関数からなる定義 4.3の意味で局所一様有界な集合とし、K⊆Ωを空でないコンパクト集合とする。このときρ>0と実数L>0が存在して、Fのすべての元fと、∣z−w∣≤ρを満たすKのすべての二点z,wについて
∣f(z)−f(w)∣≤L∣z−w∣が成り立つ。とくに、制限からなる族F∣K={f∣K∣f∈F}は、Kに制限距離を入れたとき§E2.31 定義 1.4の意味で一様に同程度連続であり、§E2.31 定義 1.2の意味で同程度連続である。
証明.補題 1.5をKへ適用してρ>0をとり、Kρ⊆Ωをコンパクト集合とする。KρはKを含むから空でない。ふたたび同補題をKρへ適用してσ>0をとり、(Kρ)σ⊆Ωをコンパクト集合とする。命題 4.4 (1)⇒(2)により、実数M≥0が存在して、Fのすべての元fと(Kρ)σのすべての点ζについて∣f(ζ)∣≤Mである。
Fの元fをとる。Kρの各点ζについて、補題 1.5 (3)によりD(ζ,σ)⊆(Kρ)σ⊆Ωであり、円周∣ξ−ζ∣=σの上で∣f(ξ)∣≤Mである。§E5.6 系 4.2をf、中心ζ、半径σ、m=1として適用すると
∣f′(ζ)∣≤σMである。この評価はKρのすべての点で成り立ち、Fの元fにも依存しない。
L=max(M/σ, 1)とおく。z,w∈Kが∣z−w∣≤ρを満たすとする。γ(t)=z+t(w−z)(t∈[0,1])は始点z、終点wの区分的に一階連続微分可能な曲線(§E5.4 定義 2.1)であり、その長さは∣w−z∣である。γの台はKρに含まれる。実際t∈[0,1]について∣γ(t)−z∣=t∣w−z∣≤ρであり、z∈Kであるからd(γ(t),K)≤ρである。fはΩの上で正則であるから§E5.6 定理 4.1によりf′もΩの上で正則であり、とくに連続である。fはf′の原始関数であるから、§E5.4 定理 4.2により
f(w)−f(z)=∫γf′(ζ)dζである。γの台の上で∣f′∣≤M/σ≤Lであるから、§E5.4 命題 3.2により
∣f(w)−f(z)∣≤L∣w−z∣である。
最後の主張を示す。ε>0をとり、δ=min(ρ, ε/(L+1))とおく。δ>0である。Fの元fと、∣z−w∣<δを満たすKの二点z,wについて、∣z−w∣<δ≤ρであるから上の評価を用いることができ、
∣f(z)−f(w)∣≤L∣z−w∣<Lδ≤L+1Lε<εである。δはfにもz,wにも依存しないから、§E2.31 定義 1.4の意味でF∣Kは一様に同程度連続である。一様に同程度連続な族が§E2.31 定義 1.2の意味で同程度連続であることは、後者の条件が前者の条件で基準点zを固定したものであることによる。▨
5 Montel の定理
定理 5.1 (Montel の定理).Ω⊆Cを開集合とし、FをΩの上の正則関数からなる定義 4.3の意味で局所一様有界な集合とする。このときFは定義 4.1の意味で正規族である。
証明.Ω=∅の場合、Ωの上の関数は空写像だけであり、Ωに含まれるコンパクト集合は∅だけである。任意の列に対して恒等写像κと空写像gをとれば、定義 1.1の条件は空虚に成り立つ。以下Ω=∅とする。
(fj)j≥1をFの元からなる列とする。
補題 1.6により、Ωに含まれるコンパクト集合の列(Kn)n≥1で補題 1.6 (2)と補題 1.6 (3)を満たすものをとる。
まず、一つのコンパクト集合の上で部分列を取り出す。n∈Z≥1と狭義単調増加な写像τ:Z≥1→Z≥1に対して、狭義単調増加な写像υ:Z≥1→Z≥1が存在して、列(fτ(υ(k)))k≥1はKnの上で一様収束する。ここで「Knの上で一様収束する」とは、ある関数h:Kn→Cが存在して、すべてのε>0に対して番号Nが存在し、k≥Nとz∈Knについて∣fτ(υ(k))(z)−h(z)∣<εが成り立つことをいう。
Kn=∅のときはυを恒等写像、hを空写像とすればよい。以下Kn=∅とする。KnにCの距離の制限を入れると、§E2.12 命題 4.8により制限距離が生じる位相は部分空間位相に一致するので、Knはコンパクト距離空間である。値域はCであり、これは Euclid 距離を入れたR2と同一視される(§E1.14 定義 4.1、§E2.1 定義 3.2)から、§E2.5 命題 4.2により完備距離空間である。Fの各元はΩの上で正則であり、とくに連続であるから、制限からなる族F∣KnはC(Kn,C)の部分集合である。
F∣Knが同程度連続であることは命題 4.5による。各点で全有界(§E2.31 定義 2.1)であることを示す。命題 4.4 (1)⇒(2)により、実数M≥0が存在して、Fのすべての元fとKnのすべての点zについて∣f(z)∣≤Mである。z∈Knを固定すると、F∣Kn(z)={f(z):f∈F}⊆D(0,M)である。D(0,M)は有界かつ閉であるから§E2.9 定理 4.3(n=2)によりコンパクトであり、§E2.9 系 3.3により、制限距離を入れた距離空間として全有界である。§E2.8 命題 3.1によりその部分集合F∣Kn(z)も全有界であり、制限距離の制限はもとの距離の制限であるから、F∣Kn(z)はCの部分集合として全有界である。
ゆえに§E2.31 系 4.5を、定義域Kn、値域C、族F∣Kn、点列(fτ(k)∣Kn)k≥1へ適用することができ、この点列の部分列とh∈C(Kn,C)で、部分列がhへ§E2.31 定義 4.3の意味で一様収束するものが存在する。部分列をとることは、狭義単調増加な写像υによる添字の合成にほかならない。また§E2.30 定義 2.5の一様距離はKnの上の最大値として定まるから、limk→∞d∞(fτ(υ(k))∣Kn,h)=0が成り立つことと、上に述べたεとNによる条件が成り立つことは同じ内容である。
この部分列抽出をK1,K2,…に対して帰納的に適用する。TをZ≥1からZ≥1への狭義単調増加写像の全体とする。τ0=idとし、各n≥0について、Kn+1の上で一様収束する部分列を与える狭義単調増加写像υn+1を直前の列(fτn(k))k≥1に対して取り、τn+1=τn∘υn+1とおく。したがって
τn+1=τn∘υn+1(υn+1∈T),(fτn+1(k))k≥1 は Kn+1 の上で一様収束するを満たす列(τn)を得る。
κ(k)=τk(k)(k∈Z≥1)とおく。κが狭義単調増加であることを示す。υk+1は狭義単調増加な写像であるからυk+1(k+1)≥k+1であり、τkも狭義単調増加であるから
κ(k+1)=τk+1(k+1)=τk(υk+1(k+1))≥τk(k+1)>τk(k)=κ(k)である。
次に、各m∈Z≥1について、列(fκ(k))k≥mが(fτm(j))j≥1の部分列であることを示す。k≥mに対してωm,k=υm+1∘υm+2∘⋯∘υkとおく(k=mのときは恒等写像とする)。狭義単調増加な写像の合成は狭義単調増加であるからωm,k∈Tであり、τk=τm∘ωm,kである。jk=ωm,k(k)とおくとκ(k)=τm(jk)である。jkがk≥mについて狭義単調増加であることは、
jk+1=ωm,k+1(k+1)=ωm,k(υk+1(k+1))≥ωm,k(k+1)>ωm,k(k)=jkによる。jkは正の整数からなる狭義単調増加な列であるから、k≥mについてjk≥jm+(k−m)≥k−m+1が成り立つ。(fτm(j))j≥1はKmの上である関数hmへ一様収束するから、ε>0に対して番号Nをとり、k0=m+Nとおく。k≥k0ならばjk≥k−m+1≥N+1>Nであるから、k≥k0とz∈Kmについて∣fκ(k)(z)−hm(z)∣=∣fτm(jk)(z)−hm(z)∣<εである。ゆえに(fκ(k))k≥1はKmの上でhmへ一様収束する。
z∈Ωとすると、補題 1.6 (2)によりz∈Kmを満たすmが存在する。上で示した一様収束により(fκ(k)(z))k≥1はhm(z)へ収束する。z∈Km∩Km′であれば、§E2.3 命題 1.3によりhm(z)=hm′(z)である。したがって
g(z)=k→∞limfκ(k)(z)(z∈Ω)はΩの上の関数を定め、Kmの上でg=hmである。
K⊆Ωをコンパクト集合、ε>0とする。補題 1.6 (3)によりK⊆KNを満たすNが存在する。番号N′が存在して、k≥N′とz∈KNについて∣fκ(k)(z)−hN(z)∣<εである。K⊆KNかつKNの上でhN=gであるから、k≥N′とz∈Kについて∣fκ(k)(z)−g(z)∣<εである。ゆえに(fκ(k))はΩの上でgへ定義 1.1の意味で収束する。κは狭義単調増加であるから、Fは正規族である。▨
例 5.2 (有界な正則関数の族).Ω=D(0,1)、M>0とし、
F={f:Ω→C ∣ f は Ω の上で正則であり、 Ω のすべての点 z について ∣f(z)∣≤M}とおく。Ωの各点aに対して、D(a,r)⊆Ωを満たすr>0をとれば、Fのすべての元とD(a,r)のすべての点について∣f(z)∣≤Mであるから、Fは定義 4.3の意味で局所一様有界である。ゆえに定理 5.1によりFは正規族である。
M=1とした族は、単位円板から単位円板への正則写像をすべて含む。実際、そのような写像fはΩのすべての点zについて∣f(z)∣<1を満たし、とくに∣f(z)∣≤1である。したがって§E5.16 定理 2.1が扱う関数は、すべてこの族に属する。
例 5.3 (正規族でない族).Ω=D(0,1)とし、fn(z)=nz、F={fn∣n∈Z≥1}とおく。各fnはΩの上で正則である。この族は正規族でない。
実際、列(fn)n≥1と狭義単調増加な写像κをとる。K=D(0,1/2)は補題 1.3によりコンパクトであり、K⊆Ωである。(fκ(k))がΩの上のある関数gへ定義 1.1の意味で収束すると仮定する。Kへ条件を適用し、z=1/2∈Kをとると、複素数の列(fκ(k)(1/2))k≥1=(κ(k)/2)k≥1はg(1/2)へ収束する。ε=1に対して番号Nをとると、k≥Nについてκ(k)/2<∣g(1/2)∣+1である。κは狭義単調増加な正の整数の列であるから、kについての帰納法によりκ(k)≥kが成り立ち、k≥Nについてk/2<∣g(1/2)∣+1となる。ところが
Archimedes の性質によりk/2≥∣g(1/2)∣+1を満たすk≥Nが存在するので、これは矛盾である。ゆえに一様収束する部分列は存在せず、Fは正規族でない。
この族が定理 5.1の仮定を満たさないことも直接確かめることができる。定義 4.3の条件を点a=1/2について見ると、D(1/2,r)⊆Ωを満たすどのようなr>0をとっても、1/2∈D(1/2,r)であり∣fn(1/2)∣=n/2はnについて上に有界でないから、条件にある実数Mは存在しない。よってFは局所一様有界でない。
6 演習
問題 6.1.
- 例 1.2で、K⊆D(0,1)がコンパクトであることからmaxz∈K∣z∣<1を導いた。Kを単に有界な部分集合としたとき、この不等式が成り立たない例を一つ挙げる。
- 定理 2.1 (1)の証明で、fが円周∣Cr∣の上で連続であることを先に確かめた。この段を飛ばすと、どの結果を適用することができなくなるかを述べる。
- 定理 2.1 (2)の証明で、コンパクト集合Kの各点を中心として§E5.6 系 4.2を適用した。半径ρをKのすべての点に共通にとることができた根拠を述べる。
- 定理 3.1の証明で、Rouché の定理を適用する領域としてD(a,r)ではなくD(a,r+ρ)をとった。D(a,r)では適用することができない理由を、§E5.14 定理 4.1の仮定に照らして述べる。
- 系 3.3の結論から「恒等的に0である」という場合を落とすことはできない。Ω=D(0,1)の上のfn(z)=1/nについて、このことを確かめる。
- 系 3.4の証明で、二つの零点のまわりの円板が交わらないように半径rをとった。この条件がなければ矛盾を導くことができない理由を述べる。
- 命題 4.5の証明で、補題 1.5を二度用いた。一度だけの適用では足りない理由を、線分[z,w]と導関数の評価が必要になる集合の違いとして述べる。
- 定理 5.1の証明で、対角線の列(fκ(k))がKmの上で一様収束することを、番号m以降だけを見て示した。有限個の初項が一様収束の結論に影響しない理由を述べる。
- 定理 5.1の証明で、Kn+1の上で収束する列を、Knの上で収束する列の部分列として取る必要がある理由を、対角線の列を固定したKmへ制限したときの振る舞いから説明する。