§E5.13留数による実積分

最終更新

実数の上では初等的に求めることが難しい定積分も、被積分関数を複素平面へ延長すると、孤立した極のまわりの局所情報から値を決定することができる場合がある。ただし、複素冪や対数の枝、経路が極を回る回数、補助的な円弧の寄与、および広義積分の収束を同時に管理しなければならない。

留数定理は、これらの条件を閉曲線の回転数と留数へ集約する。半円、扇形、鍵穴型の経路は、減衰、回転対称性、枝の跳びという異なる性質を実積分へ結び付ける代表的な形である。本記事では、これらの経路による実積分の計算について解説する。

1 留数経路の共通核

補題 1.1.p∈Cp\in\mathbb C、α∈R\alpha\in\mathbb Rとし、γ\gammaを区分的に一階連続微分可能な閉曲線とする。γ\gammaの台が半直線{p+teiα:t≥0}\{p+te^{i\alpha} : t\ge0\}と交わらないならば、n(γ,p)=0n(\gamma,p)=0である。

証明.Dα=C∖{reiα:r≥0}D_{\alpha}=\mathbb C\setminus\{re^{i\alpha} : r\ge0\}とおくと、§E5.3 命題 2.11によりDαD_{\alpha}の上の正則関数ℓα\ell_{\alpha}でℓα′(w)=1/w\ell_{\alpha}'(w)=1/wを満たすものが存在する。V={z:z−p∈Dα}V=\{z : z-p\in D_{\alpha}\}は開集合であり、仮定により∣γ∣⊆V|\gamma|\subseteq Vである。F(z)=ℓα(z−p)F(z)=\ell_{\alpha}(z-p)は§E5.2 命題 1.2によりVVの上で正則でF′(z)=1/(z−p)F'(z)=1/(z-p)である。γ\gammaは閉曲線であるから§E5.4 定理 4.2により∮γdz/(z−p)=0\oint_{\gamma}dz/(z-p)=0、すなわちn(γ,p)=0n(\gamma,p)=0である。▨

命題 1.2 (留数経路の極限原理).U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、A⊆UA\subseteq UをUUの中に集積点をもたない集合とし、ffをU∖AU\setminus Aの上で正則で、AAの各点を極にもつ関数とする。B⊆AB\subseteq Aを有限集合、(ma)a∈B(m_a)_{a\in B}を整数族とする。各正整数kkについて、Γk\Gamma_kをUUの内部で零ホモローグなサイクルで∣Γk∣⊆U∖A|\Gamma_k|\subseteq U\setminus Aを満たし、

n(Γk,a)=ma(a∈B),n(Γk,a)=0(a∈A∖B)n(\Gamma_k,a)=m_a\quad(a\in B),\qquad n(\Gamma_k,a)=0\quad(a\in A\setminus B)

とする。さらに

∫Γkf(z) dz=Ik+Ek,Ik⟶I,Ek⟶E\int_{\Gamma_k}f(z)\,dz=I_k+E_k, \qquad I_k\longrightarrow I, \qquad E_k\longrightarrow E

が成り立つならば、

I+E=2πi∑a∈BmaRes⁡(f,a)I+E=2\pi i\sum_{a\in B}m_a\operatorname{Res}(f,a)

である。

証明.§E5.12 定理 2.2により、各kkについて

Ik+Ek=2πi∑a∈BmaRes⁡(f,a)I_k+E_k=2\pi i\sum_{a\in B}m_a\operatorname{Res}(f,a)

である。右辺はkkに依存しないので、k→∞k\to\inftyとして主張を得る。▨

以下の個別計算では、枝を固定した領域と極が右辺を定め、回転数が各留数の係数を定める。実軸上の積分をIkI_k、補助的な弧の積分をEkE_kと読むと、弧上評価と広義積分の収束が上の命題の極限を与える。小さい円弧が極を避ける場合には、EEが00でなく有限の値になることもある。

以下では、半径RRの円周の反時計回りの閉曲線をCRC_{R}と書く。閉曲線を二つに分けて足すと円周になるという関係を繰り返し用いる。二つの曲線が同じ線分を逆向きに一度ずつ通るとき、その寄与は§E5.4 命題 2.5により相殺する。

2 半円に沿う経路

R>0R>0に対して、実軸上の線分[−R,R][-R,R](左から右へ)と上半円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(0≤θ≤π0\le\theta\le\pi)をつないだ閉曲線をΓR\Gamma_{R}と書く。

命題 2.1.ppを∣p∣<R|p|<RかつIm⁡p>0\operatorname{Im}p>0を満たす点とするとn(ΓR,p)=1n(\Gamma_{R},p)=1である。Im⁡p<0\operatorname{Im}p<0を満たす点、および∣p∣>R|p|>Rを満たす点についてはn(ΓR,p)=0n(\Gamma_{R},p)=0である。

証明.Im⁡p<0\operatorname{Im}p<0のとき、∣ΓR∣|\Gamma_{R}|は{Im⁡z≥0}\{\operatorname{Im}z\ge0\}に含まれ、ppから真下へ伸びる半直線{p−it:t≥0}\{p-it : t\ge0\}はこの集合と交わらないから、補題 1.1によりn(ΓR,p)=0n(\Gamma_{R},p)=0である。∣p∣>R|p|>Rのときは、ppから原点と反対の向きへ伸びる半直線が閉円板{∣z∣≤R}⊇∣ΓR∣\{|z|\le R\}\supseteq|\Gamma_{R}|と交わらないので、同じく00である。

∣p∣<R|p|<RかつIm⁡p>0\operatorname{Im}p>0とする。下半円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(π≤θ≤2π\pi\le\theta\le2\pi)と線分[R,−R][R,-R](右から左へ)をつないだ閉曲線をΓR′′\Gamma_{R}''と書く。ΓR\Gamma_{R}とΓR′′\Gamma_{R}''を合わせると、二つの線分は同じ線分を逆向きに一度ずつ通るので相殺し、残るのは上半円弧と下半円弧、すなわちCRC_{R}である。ゆえに任意のq∉∣ΓR∣∪∣ΓR′′∣q\notin|\Gamma_{R}|\cup|\Gamma_{R}''|について

n(ΓR,q)+n(ΓR′′,q)=n(CR,q)n(\Gamma_{R},q)+n(\Gamma_{R}'',q)=n(C_{R},q)

である。∣ΓR′′∣|\Gamma_{R}''|は{Im⁡z≤0}\{\operatorname{Im}z\le0\}に含まれ、ppから真上へ伸びる半直線はこの集合と交わらないからn(ΓR′′,p)=0n(\Gamma_{R}'',p)=0である。また§E5.5 命題 5.6によりn(CR,p)=1n(C_{R},p)=1である。ゆえにn(ΓR,p)=1n(\Gamma_{R},p)=1である。▨

例 2.2 (有理関数の広義積分).∫−∞∞dx1+x2=π\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^{2}}=\piを示す。f(z)=1/(1+z2)f(z)=1/(1+z^{2})とおくと、ffはC∖{i,−i}\mathbb C\setminus\{i,-i\}の上で正則である。R>1R>1とし、U=CU=\mathbb C、A={i,−i}A=\{i,-i\}として§E5.12 定理 2.2をΓR\Gamma_{R}へ適用する。C\mathbb Cに属さない点はないのでΓR\Gamma_{R}は零ホモローグであり、命題 2.1によりn(ΓR,i)=1n(\Gamma_{R},i)=1、n(ΓR,−i)=0n(\Gamma_{R},-i)=0である。§E5.12 例 1.3によりRes⁡(f,i)=1/(2i)\operatorname{Res}(f,i)=1/(2i)であるから

∫−RRdx1+x2+∫ARf(z) dz=2πi⋅12i=π\int_{-R}^{R}\frac{dx}{1+x^{2}}+\int_{A_{R}}f(z)\,dz=2\pi i\cdot\frac{1}{2i}=\pi

である。ここでARA_{R}は上半円弧であり、線分に沿う積分が実積分に一致することは§E5.4 定義 2.2による。

円弧の上では、∣z∣=R|z|=Rより∣1+z2∣≥∣z∣2−1=R2−1>0|1+z^{2}|\ge|z|^{2}-1=R^{2}-1>0であるから∣f∣≤1/(R2−1)|f|\le1/(R^{2}-1)である。円弧の長さはπR\pi Rであるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣∫ARf(z) dz∣≤πRR2−1→R→∞0\left|\int_{A_{R}}f(z)\,dz\right|\le\frac{\pi R}{R^{2}-1}\xrightarrow[R\to\infty]{}0

である。したがって∫−RRdx/(1+x2)→π\int_{-R}^{R}dx/(1+x^{2})\to\piである。被積分関数は非負で1/(1+x2)≤1/x21/(1+x^{2})\le1/x^{2}(∣x∣≥1|x|\ge1)であるから広義積分は収束し、その値はπ\piである。

例 2.3 (分母の次数が高い場合).∫−∞∞dx1+x4=π2\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^{4}}=\frac{\pi}{\sqrt2}を示す。f(z)=1/(1+z4)f(z)=1/(1+z^{4})の極はz4=−1z^{4}=-1の解であり、上半平面にあるのはz0=eiπ/4z_{0}=e^{i\pi/4}とz1=e3iπ/4z_{1}=e^{3i\pi/4}の二つ、下半平面にあるのはe5iπ/4e^{5i\pi/4}とe7iπ/4e^{7i\pi/4}である。四つの解は相異なるから1+z4=∏k=03(z−wk)1+z^{4}=\prod_{k=0}^{3}(z-w_{k})(wkw_{k}は四つの解)であり、各kkについてhk(z)=∏j≠k(z−wj)−1h_{k}(z)=\prod_{j\ne k}(z-w_{j})^{-1}はwkw_{k}を中心とし他の三点を含まない開円板の上で正則でhk(wk)≠0h_{k}(w_{k})\ne0、その穿孔円板の上でf(z)=hk(z)/(z−wk)f(z)=h_{k}(z)/(z-w_{k})である。ゆえに§E5.11 命題 3.4により、四点はいずれもffの位数11の極である。§E5.12 命題 1.2により

Res⁡(f,zk)=lim⁡z→zkz−zk1+z4=14zk3=zk4zk4=−zk4\operatorname{Res}(f,z_{k})=\lim_{z\to z_{k}}\frac{z-z_{k}}{1+z^{4}} =\frac{1}{4z_{k}^{3}}=\frac{z_{k}}{4z_{k}^{4}}=-\frac{z_{k}}{4}

である。ここで差商の極限が導関数の逆数であること、およびzk4=−1z_{k}^{4}=-1を用いた。z0=(1+i)/2z_{0}=(1+i)/\sqrt2、z1=(−1+i)/2z_{1}=(-1+i)/\sqrt2であるから

Res⁡(f,z0)+Res⁡(f,z1)=−z0+z14=−2i/24=−i22\operatorname{Res}(f,z_{0})+\operatorname{Res}(f,z_{1})=-\frac{z_{0}+z_{1}}{4}=-\frac{2i/\sqrt2}{4} =-\frac{i}{2\sqrt2}

である。R>1R>1について命題 2.1と§E5.12 定理 2.2により

∫−RRdx1+x4+∫ARf(z) dz=2πi(−i22)=π2\int_{-R}^{R}\frac{dx}{1+x^{4}}+\int_{A_{R}}f(z)\,dz=2\pi i\left(-\frac{i}{2\sqrt2}\right) =\frac{\pi}{\sqrt2}

である。円弧の上では∣1+z4∣≥R4−1|1+z^{4}|\ge R^{4}-1であるから、ML 不等式により円弧の積分の絶対値はπR/(R4−1)\pi R/(R^{4}-1)以下であり、R→∞R\to\inftyで00へ収束する。したがって∫−RRdx/(1+x4)→π/2\int_{-R}^{R}dx/(1+x^{4})\to\pi/\sqrt2である。被積分関数は非負であり、∣x∣≥1|x|\ge1のとき1+x4≥x4≥x21+x^{4}\ge x^{4}\ge x^{2}から1/(1+x4)≤1/x21/(1+x^{4})\le1/x^{2}であるから、広義積分は収束し、その値は対称極限の値π/2\pi/\sqrt2に等しい。

3 Jordan の補題と小さい半円

指数因子eiaze^{iaz}(a>0a>0)を含む場合、上半円の上で∣eiaz∣=e−aIm⁡z≤1|e^{iaz}|=e^{-a\operatorname{Im}z}\le1であるものの、一様に小さくなるわけではない。円弧の長さπR\pi Rが発散するため、ML 不等式だけでは積分が消えることを示すことができない。次の補題が、この場合を扱う。

命題 3.1 (Jordan の補題).a>0a>0とする。R>0R>0に対してARA_{R}を上半円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(0≤θ≤π0\le\theta\le\pi)とする。ggがARA_{R}の台を含む開集合の上で連続であり、その台の上で∣g(z)∣≤MR|g(z)|\le M_{R}が成り立つとすると

∣∫ARg(z) eiaz dz∣≤πaMR\left|\int_{A_{R}}g(z)\,e^{iaz}\,dz\right|\le\frac{\pi}{a}M_{R}

が成り立つ。とくにMR→0M_{R}\to0(R→∞R\to\infty)ならば、この積分は00へ収束する。

証明.z=Reiθz=Re^{i\theta}とおくとIm⁡z=Rsin⁡θ\operatorname{Im}z=R\sin\thetaであり、§E5.3 命題 1.7により∣eiaz∣=e−aRsin⁡θ|e^{iaz}|=e^{-aR\sin\theta}である。円弧の径数表示の導関数の絶対値はRRであるから、§E5.4 補題 1.4により

∣∫ARg(z)eiaz dz∣≤MR R∫0πe−aRsin⁡θ dθ=2MR R∫0π/2e−aRsin⁡θ dθ\left|\int_{A_{R}}g(z)e^{iaz}\,dz\right|\le M_{R}\,R\int_{0}^{\pi}e^{-aR\sin\theta}\,d\theta =2M_{R}\,R\int_{0}^{\pi/2}e^{-aR\sin\theta}\,d\theta

である。最後の等号はsin⁡(π−θ)=sin⁡θ\sin(\pi-\theta)=\sin\theta(§D1.24 定理 2.1)による置き換えによる。

0≤θ≤π/20\le\theta\le\pi/2でsin⁡θ≥2θ/π\sin\theta\ge2\theta/\piを示す。φ(θ)=sin⁡θ−2θ/π\varphi(\theta)=\sin\theta-2\theta/\piとおくと、φ\varphiは[0,π/2][0,\pi/2]で連続でφ(0)=φ(π/2)=0\varphi(0)=\varphi(\pi/2)=0であり、φ′(θ)=cos⁡θ−2/π\varphi'(\theta)=\cos\theta-2/\pi、φ′′(θ)=−sin⁡θ\varphi''(\theta)=-\sin\thetaである。開区間(0,π/2)(0,\pi/2)ではsin⁡θ>0\sin\theta>0、すなわちφ′′<0\varphi''<0であるから、§D1.14 系 4.2によりφ′\varphi'は(0,π/2)(0,\pi/2)で狭義減少である。

φ′(0)=1−2/π>0\varphi'(0)=1-2/\pi>0、φ′(π/2)=−2/π<0\varphi'(\pi/2)=-2/\pi<0であるから、−φ′-\varphi'へ§D1.12 定理 1.1を区間[0,π/2][0,\pi/2]で適用すると(−φ′(0)<0<−φ′(π/2)-\varphi'(0)<0<-\varphi'(\pi/2)である)、φ′(θ0)=0\varphi'(\theta_{0})=0を満たすθ0∈(0,π/2)\theta_{0}\in(0,\pi/2)が存在する。φ′\varphi'の狭義減少性により、θ∈(0,θ0)\theta\in(0,\theta_{0})ではφ′(θ)>φ′(θ0)=0\varphi'(\theta)>\varphi'(\theta_{0})=0、θ∈(θ0,π/2)\theta\in(\theta_{0},\pi/2)ではφ′(θ)<0\varphi'(\theta)<0である。ふたたび§D1.14 系 4.2により、φ\varphiは(0,θ0)(0,\theta_{0})で狭義増加、(θ0,π/2)(\theta_{0},\pi/2)で狭義減少である。

[0,π/2][0,\pi/2]でφ≥0\varphi\ge0であることを示す。0<s<t<θ00<s<t<\theta_{0}ならばφ(s)<φ(t)\varphi(s)<\varphi(t)であり、φ\varphiは00で連続でφ(0)=0\varphi(0)=0であるから、s→0+s\to0^{+}として0≤φ(t)0\le\varphi(t)を得る。同様にθ0<s<t<π/2\theta_{0}<s<t<\pi/2ならばφ(s)>φ(t)\varphi(s)>\varphi(t)であり、φ\varphiはπ/2\pi/2で連続でφ(π/2)=0\varphi(\pi/2)=0であるから、t→(π/2)−t\to(\pi/2)^{-}としてφ(s)≥0\varphi(s)\ge0を得る。θ=θ0\theta=\theta_{0}については、(0,θ0)(0,\theta_{0})での値が00以上であることとφ\varphiの連続性による。両端ではφ=0\varphi=0である。ゆえに[0,π/2][0,\pi/2]の全体でφ≥0\varphi\ge0である。

したがってe−aRsin⁡θ≤e−2aRθ/πe^{-aR\sin\theta}\le e^{-2aR\theta/\pi}であり、

2MRR∫0π/2e−2aRθ/π dθ=2MRR⋅π2aR(1−e−aR)≤πaMR2M_{R}R\int_{0}^{\pi/2}e^{-2aR\theta/\pi}\,d\theta =2M_{R}R\cdot\frac{\pi}{2aR}\bigl(1-e^{-aR}\bigr)\le\frac{\pi}{a}M_{R}

である。▨

例 3.2 (小さい半円を避ける経路).∫0∞sin⁡xx dx=π2\displaystyle\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}\,dx=\frac{\pi}{2}を示す。f(z)=eiz/zf(z)=e^{iz}/zとおくと、ffはC∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}の上で正則である。0<ε<R0<\varepsilon<Rとし、次の四つをつないだ閉曲線をΓ\Gammaとする。線分[−R,−ε][-R,-\varepsilon]、半径ε\varepsilonの上半円弧を角π\piから00へ向きを逆にたどるもの(この逆向きの上半円弧を−Aε-A_{\varepsilon}と書く)、線分[ε,R][\varepsilon,R]、上半円弧ARA_{R}。

∣Γ∣|\Gamma|は{Im⁡z≥0}∖{0}\{\operatorname{Im}z\ge0\}\setminus\{0\}に含まれ、原点から真下へ伸びる半直線とは交わらないから、補題 1.1によりn(Γ,0)=0n(\Gamma,0)=0である。U=CU=\mathbb C、A={0}A=\{0\}として§E5.12 定理 2.2を適用すると∫Γf=0\int_{\Gamma}f=0、すなわち

∫−R−εeixx dx+∫εReixx dx+∫ARf(z) dz−∫Aεf(z) dz=0(1)\int_{-R}^{-\varepsilon}\frac{e^{ix}}{x}\,dx+\int_{\varepsilon}^{R}\frac{e^{ix}}{x}\,dx +\int_{A_{R}}f(z)\,dz-\int_{A_{\varepsilon}}f(z)\,dz=0 \tag{1}

である。第一の積分でxxを−x-xに置き換えると

∫−R−εeixx dx=−∫εRe−ixx dx\int_{-R}^{-\varepsilon}\frac{e^{ix}}{x}\,dx=-\int_{\varepsilon}^{R}\frac{e^{-ix}}{x}\,dx

であるから、最初の二つの和は∫εR(eix−e−ix)/x dx=2i∫εR(sin⁡x)/x dx\int_{\varepsilon}^{R}(e^{ix}-e^{-ix})/x\,dx =2i\int_{\varepsilon}^{R}(\sin x)/x\,dxである(§E5.3 定義 1.5)。

大円弧を評価する。g(z)=1/zg(z)=1/zは∣z∣=R|z|=Rの上で∣g∣=1/R|g|=1/Rであるから、命題 3.1をa=1a=1、MR=1/RM_{R}=1/Rとして適用すると∣∫ARf∣≤π/R→0\bigl|\int_{A_{R}}f\bigr|\le\pi/R\to0である。

小円弧を評価する。eiz=1+z u(z)e^{iz}=1+z\,u(z)(uuはC\mathbb Cの上で正則)と書くことができる。実際、§E5.3 定義 1.3の級数からu(z)=∑k≥1ikzk−1/k!u(z)=\sum_{k\ge1}i^{k}z^{k-1}/k!とおけばよい。すると

∫Aεeizz dz=∫Aεdzz+∫Aεu(z) dz\int_{A_{\varepsilon}}\frac{e^{iz}}{z}\,dz=\int_{A_{\varepsilon}}\frac{dz}{z} +\int_{A_{\varepsilon}}u(z)\,dz

である。第一項は、径数表示z=εeiθz=\varepsilon e^{i\theta}(0≤θ≤π0\le\theta\le\pi)により∫0πi dθ=iπ\int_{0}^{\pi}i\,d\theta=i\piである。第二項について、ε<1\varepsilon<1とすると円弧は閉円板{∣z∣≤1}\{|z|\le1\}に含まれる。この閉円板は有界かつ閉であるから、C\mathbb Cを Euclid 距離(§E2.1 定義 3.2)を入れたR2\mathbb R^{2}と同一視すると§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、∣u∣|u|は連続であるから§E5.9 命題 1.1によりそこで最大値MuM_{u}をとる。円弧の長さはπε\pi\varepsilonであるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により第二項の絶対値はπεMu\pi\varepsilon M_{u}以下であり、ε→0+\varepsilon\to0^{+}で00へ収束する。すなわち小円弧の積分はiπi\piへ収束する。ここでは消えるのではなく、有限の極限値をもつ。

(1) で先にR→∞R\to\infty、次にε→0+\varepsilon\to0^{+}とすると2i∫0∞(sin⁡x)/x dx−iπ=02i\int_{0}^{\infty}(\sin x)/x\,dx-i\pi=0を得る。極限を通す順序は、大円弧の評価がε\varepsilonによらず、小円弧の評価がRRによらないことによって正当化される。ゆえに主張を得る。ここで得たのはlim⁡ε→0,R→∞∫εR\lim_{\varepsilon\to0,R\to\infty}\int_{\varepsilon}^{R}であり、(sin⁡x)/x(\sin x)/xは原点で有界に延長されるので、この二重極限は通常の広義積分の値である。

4 扇形に沿う経路

例 4.1 (扇形経路による計算).n≥2n\ge2を整数とする。∫0∞dx1+xn=πnsin⁡(π/n)\displaystyle\int_{0}^{\infty}\frac{dx}{1+x^{n}}=\frac{\pi}{n\sin(\pi/n)}を示す。f(z)=1/(1+zn)f(z)=1/(1+z^{n})とおく。R>1R>1とし、線分[0,R][0,R]、円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(0≤θ≤2π/n0\le\theta\le2\pi/n)、線分Re2πi/nRe^{2\pi i/n}から00への三つをつないだ閉曲線をΓ\Gammaとする。

1+zn=01+z^{n}=0の解はzk=ei(2k+1)π/nz_{k}=e^{i(2k+1)\pi/n}(k=0,1,…,n−1k=0,1,\ldots,n-1)であり、いずれも絶対値が11である(§E5.3 命題 1.7)。偏角(2k+1)π/n(2k+1)\pi/nが(0,2π/n)(0,2\pi/n)に入るのはk=0k=0のときだけであり、k≥1k\ge1では(2k+1)π/n≥3π/n>2π/n(2k+1)\pi/n\ge3\pi/n>2\pi/nかつ(2k+1)π/n≤(2n−1)π/n<2π(2k+1)\pi/n\le(2n-1)\pi/n<2\piである。∣z0∣=1<R|z_{0}|=1<Rである。

回転数を求める。線分[0,Re2πi/n][0,Re^{2\pi i/n}]、円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(2π/n≤θ≤2π2\pi/n\le\theta\le2\pi)、線分[R,0][R,0]をつないだ閉曲線をΓ′′\Gamma''とすると、Γ\GammaとΓ′′\Gamma''を合わせたとき二組の線分が相殺し、残るのはCRC_{R}である。∣Γ′′∣|\Gamma''|は{reiθ:0≤r≤R, 2π/n≤θ≤2π}\{re^{i\theta} : 0\le r\le R,\ 2\pi/n\le\theta\le2\pi\}に含まれ、z0z_{0}から外向きに伸びる半直線{(1+t)eiπ/n:t≥0}\{(1+t)e^{i\pi/n} : t\ge0\}はこの集合と交わらない。実際、その半直線の点は偏角π/n\pi/nをもち、0<π/n<2π/n0<\pi/n<2\pi/nである。ゆえに補題 1.1によりn(Γ′′,z0)=0n(\Gamma'',z_{0})=0であり、§E5.5 命題 5.6と合わせてn(Γ,z0)=1n(\Gamma,z_{0})=1である。

k≥1k\ge1の解についてはn(Γ,zk)=0n(\Gamma,z_{k})=0である。実際、zkz_{k}から外向きに伸びる半直線{(1+t)ei(2k+1)π/n:t≥0}\{(1+t)e^{i(2k+1)\pi/n} : t\ge0\}の点は、絶対値が11以上で偏角が(2k+1)π/n(2k+1)\pi/nである。∣Γ∣|\Gamma|は線分[0,R][0,R]、円弧{Reiθ:0≤θ≤2π/n}\{Re^{i\theta} : 0\le\theta\le2\pi/n\}、線分[0,Re2πi/n][0,Re^{2\pi i/n}]の和であり、二つの線分の上の00でない点の偏角は00または2π/n2\pi/n、円弧の点の絶対値はR>1R>1である。上で見たとおり2π/n<(2k+1)π/n<2π2\pi/n<(2k+1)\pi/n<2\piであるから半直線は二つの線分と交わらず、半直線の点の偏角は円弧の点の偏角の範囲[0,2π/n][0,2\pi/n]に入らないから円弧とも交わらない。ゆえに補題 1.1によりn(Γ,zk)=0n(\Gamma,z_{k})=0である。

1+zn=∏k=0n−1(z−zk)1+z^{n}=\prod_{k=0}^{n-1}(z-z_{k})である。実際、両辺は最高次の係数が11のnn次多項式であり、相異なるnn個の同じ根をもつ。そこでh(z)=∏k≠0(z−zk)−1h(z)=\prod_{k\ne0}(z-z_{k})^{-1}とおくと、hhはz0z_{0}を中心とし他の解を含まない開円板の上で正則でh(z0)≠0h(z_{0})\ne0であり、その穿孔円板の上でf(z)=h(z)/(z−z0)f(z)=h(z)/(z-z_{0})であるから、§E5.11 命題 3.4によりz0z_{0}はffの位数11の極である。§E5.12 命題 1.2によりRes⁡(f,z0)=1/(nz0n−1)=z0/(nz0n)=−z0/n\operatorname{Res}(f,z_{0})=1/(nz_{0}^{n-1})=z_{0}/(nz_{0}^{n})=-z_{0}/nである。したがって§E5.12 定理 2.2により

∫0Rdx1+xn+∫Af(z) dz−e2πi/n∫0Rdt1+tn=2πi(−eiπ/nn)\int_{0}^{R}\frac{dx}{1+x^{n}}+\int_{A}f(z)\,dz-e^{2\pi i/n}\int_{0}^{R}\frac{dt}{1+t^{n}} =2\pi i\left(-\frac{e^{i\pi/n}}{n}\right)

である。ここでAAは円弧であり、第三項はz=te2πi/nz=te^{2\pi i/n}と置いたときにzn=tnz^{n}=t^{n}、dz=e2πi/ndtdz=e^{2\pi i/n}dtとなることによる。

円弧の上では∣1+zn∣≥Rn−1|1+z^{n}|\ge R^{n}-1であり、長さは2πR/n2\pi R/nであるから、ML 不等式により円弧の積分の絶対値は2πR/(n(Rn−1))2\pi R/\bigl(n(R^{n}-1)\bigr)以下であり、n≥2n\ge2よりR→∞R\to\inftyで00へ収束する。ゆえにI=∫0∞dx/(1+xn)I=\int_{0}^{\infty}dx/(1+x^{n})とおくと

(1−e2πi/n)I=−2πineiπ/n\bigl(1-e^{2\pi i/n}\bigr)I=-\frac{2\pi i}{n}e^{i\pi/n}

である。1−e2πi/n=−eiπ/n(eiπ/n−e−iπ/n)=−eiπ/n⋅2isin⁡(π/n)1-e^{2\pi i/n}=-e^{i\pi/n}\bigl(e^{i\pi/n}-e^{-i\pi/n}\bigr)=-e^{i\pi/n}\cdot2i\sin(\pi/n)(§E5.3 定義 1.5)であるから

I=−2πi eiπ/n/n−eiπ/n⋅2isin⁡(π/n)=πnsin⁡(π/n)I=\frac{-2\pi i\,e^{i\pi/n}/n}{-e^{i\pi/n}\cdot2i\sin(\pi/n)}=\frac{\pi}{n\sin(\pi/n)}

である。

5 鍵穴型の経路

冪xa−1x^{a-1}を複素平面へ延長するには、対数の枝を固定する必要がある。ここでは正の実軸を切断とする枝を用いる。

例 5.1 (鍵穴型経路による計算).0<a<10<a<1とする。∫0∞xa−11+x dx=πsin⁡(πa)\displaystyle\int_{0}^{\infty}\frac{x^{a-1}}{1+x}\,dx=\frac{\pi}{\sin(\pi a)}を示す。

D0′=C∖{r:r≥0}D_{0'}=\mathbb C\setminus\{r : r\ge0\}とおく。§E5.3 命題 2.11をα=0\alpha=0として適用すると、D0′D_{0'}の上の対数の枝ℓ0\ell_{0}でℓ0′(z)=1/z\ell_{0}'(z)=1/zを満たすものが存在する。この枝が与える偏角は(−2π,0)(-2\pi,0)に入る。実際、z=reiθz=re^{i\theta}(r>0r>0、0<θ<2π0<\theta<2\pi)とすると−z=rei(θ−π)-z=re^{i(\theta-\pi)}でθ−π∈(−π,π)\theta-\pi\in(-\pi,\pi)であるから、§E5.3 定義 2.7によりLog⁡(−z)=ln⁡r+i(θ−π)\operatorname{Log}(-z)=\ln r+i(\theta-\pi)であり、ℓ0(z)=Log⁡(−z)−iπ=ln⁡r+i(θ−2π)\ell_{0}(z)=\operatorname{Log}(-z)-i\pi=\ln r+i(\theta-2\pi)である。

そこでℓ=ℓ0+2πi\ell=\ell_{0}+2\pi iとおく。e2πi=1e^{2\pi i}=1(§E5.3 命題 1.7)と加法法則(§E5.3 命題 1.6)によりeℓ(z)=eℓ0(z)=ze^{\ell(z)}=e^{\ell_{0}(z)}=zであるから、ℓ\ellもD0′D_{0'}の上の対数の枝であり、定数を足しただけであるからℓ\ellは正則でℓ′(z)=1/z\ell'(z)=1/zである。ℓ(reiθ)=ln⁡r+iθ\ell(re^{i\theta})=\ln r+i\theta(0<θ<2π0<\theta<2\pi)であり、ℓ\ellが与える偏角は(0,2π)(0,2\pi)に入る。§E5.3 命題 2.5によりD0′D_{0'}の上の対数の枝はℓ0\ell_{0}と2πi2\pi iの整数倍だけ異なるものに限られるので、このℓ\ellが偏角の範囲(0,2π)(0,2\pi)を与える唯一の枝である。za−1=e(a−1)ℓ(z)z^{a-1}=e^{(a-1)\ell(z)}と定め、

f(z)=za−11+zf(z)=\frac{z^{a-1}}{1+z}

とおく。ffはD0′∖{−1}D_{0'}\setminus\{-1\}の上で正則である(§E5.2 命題 1.2、§E5.3 命題 1.8)。

0<ε<1<R0<\varepsilon<1<Rと0<η<π/20<\eta<\pi/2を取り、次の四つをつないだ閉曲線をΓ\Gammaとする。線分εeiη\varepsilon e^{i\eta}からReiηRe^{i\eta}、円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(η≤θ≤2π−η\eta\le\theta\le2\pi-\eta)、線分Rei(2π−η)Re^{i(2\pi-\eta)}からεei(2π−η)\varepsilon e^{i(2\pi-\eta)}、円弧θ↦εeiθ\theta\mapsto\varepsilon e^{i\theta}を2π−η2\pi-\etaからη\etaへ向きを逆にたどるもの。

回転数を求める。線分εei(2π−η)\varepsilon e^{i(2\pi-\eta)}からRei(2π−η)Re^{i(2\pi-\eta)}、円弧θ↦Reiθ\theta\mapsto Re^{i\theta}(2π−η≤θ≤2π+η2\pi-\eta\le\theta\le2\pi+\eta)、線分ReiηRe^{i\eta}からεeiη\varepsilon e^{i\eta}、円弧θ↦εeiθ\theta\mapsto\varepsilon e^{i\theta}をη\etaから−η-\etaへたどるものをつないだ閉曲線をΓ′′\Gamma''とすると、Γ\GammaとΓ′′\Gamma''を合わせたとき二組の線分が相殺し、二つの円弧はそれぞれCRC_{R}と−Cε-C_{\varepsilon}を与える。∣Γ′′∣|\Gamma''|は{reiθ:ε≤r≤R, ∣θ∣≤η}\{re^{i\theta} : \varepsilon\le r\le R,\ |\theta|\le\eta\}に含まれ、実部が正である。−1-1から負の実軸方向へ伸びる半直線{−1−t:t≥0}\{-1-t : t\ge0\}は実部が負であるから、この集合と交わらない。ゆえに補題 1.1によりn(Γ′′,−1)=0n(\Gamma'',-1)=0であり、§E5.5 命題 5.6によりn(CR,−1)=1n(C_{R},-1)=1、n(Cε,−1)=0n(C_{\varepsilon},-1)=0であるから、n(Γ,−1)=1n(\Gamma,-1)=1である。

−1=eiπ-1=e^{i\pi}における留数を求める。D(−1,1)D(-1,1)はD0′D_{0'}に含まれ、h(z)=za−1h(z)=z^{a-1}はその上で正則でh(−1)=e(a−1)iπ≠0h(-1)=e^{(a-1)i\pi}\ne0である(§E5.3 命題 1.7)。0<∣z+1∣<10<|z+1|<1でf(z)=h(z)/(z+1)f(z)=h(z)/(z+1)であるから、§E5.11 命題 3.4により−1-1はffの位数11の極である。§E5.12 命題 1.2によりRes⁡(f,−1)=lim⁡z→−1(z+1)f(z)=e(a−1)ℓ(−1)=e(a−1)iπ\operatorname{Res}(f,-1)=\lim_{z\to-1}(z+1)f(z)=e^{(a-1)\ell(-1)}=e^{(a-1)i\pi}である。ここでℓ(−1)=iπ\ell(-1)=i\pi(∣−1∣=1|{-1}|=1、偏角π\pi)を用いた。U=D0′U=D_{0'}、A={−1}A=\{-1\}として§E5.12 定理 2.2を適用する。Γ\GammaはD0′D_{0'}の内部で零ホモローグである。実際、p∉D0′p\notin D_{0'}ならばppは非負の実数であり、ppから正の実軸方向へ伸びる半直線は∣Γ∣|\Gamma|と交わらないのでn(Γ,p)=0n(\Gamma,p)=0である。ゆえに

∫Γf(z) dz=2πi e(a−1)iπ=−2πi eiaπ\int_{\Gamma}f(z)\,dz=2\pi i\,e^{(a-1)i\pi}=-2\pi i\,e^{ia\pi}

である。

二つの線分の寄与を、極座標を通してコンパクトな長方形の上の連続関数へ書き直す。r>0r>0と0<θ<2π0<\theta<2\piについて、ℓ(reiθ)=ln⁡r+iθ\ell(re^{i\theta})=\ln r+i\thetaであるからza−1=e(a−1)(ln⁡r+iθ)=ra−1ei(a−1)θz^{a-1}=e^{(a-1)(\ln r+i\theta)}=r^{a-1}e^{i(a-1)\theta}である。偏角θ\thetaを一定にした線分の径数表示z=reiθz=re^{i\theta}(ε≤r≤R\varepsilon\le r\le R)ではdz=eiθdrdz=e^{i\theta}drであるから、f(z) dzf(z)\,dzはG(r,θ) drG(r,\theta)\,drに等しい。ここで

G(r,θ)=ra−1eiaθ1+reiθG(r,\theta)=\frac{r^{a-1}e^{ia\theta}}{1+re^{i\theta}}

である。GGを、この式によって定まる二つの閉じた長方形

Q+=[ε,R]×[0,π2],Q−=[ε,R]×[3π2,2π]Q_{+}=[\varepsilon,R]\times[0,\tfrac{\pi}{2}],\qquad Q_{-}=[\varepsilon,R]\times[\tfrac{3\pi}{2},2\pi]

の上の関数と見る。Q+Q_{+}とQ−Q_{-}ではcos⁡θ≥0\cos\theta\ge0であるからRe⁡(1+reiθ)=1+rcos⁡θ≥1>0\operatorname{Re}(1+re^{i\theta})=1+r\cos\theta\ge1>0であり、分母は00にならない。ゆえにGGはQ+Q_{+}とQ−Q_{-}の上で連続であり、両端の辺での値は

G(r,0)=ra−11+r,G(r,2π)=e2πia ra−11+rG(r,0)=\frac{r^{a-1}}{1+r},\qquad G(r,2\pi)=e^{2\pi ia}\,\frac{r^{a-1}}{1+r}

と異なる。ここでe2πi=1e^{2\pi i}=1(§E5.3 命題 1.7)を用いた。切断の上下で被積分関数がe2πiae^{2\pi ia}倍だけ違うのは、選んだ枝の偏角が上側で00、下側で2π2\piへ近づくためである。

Q+Q_{+}とQ−Q_{-}はR2\mathbb R^{2}の有界閉集合であるから、Euclid 距離(§E2.1 定義 3.2)について§E2.9 定理 4.3によりコンパクトである。制限距離(§E2.1 命題 2.2)を入れると、Q+Q_{+}とQ−Q_{-}はコンパクト距離空間であり、C\mathbb Cも距離空間であるから、§E2.9 定理 5.1によりGGはQ+Q_{+}とQ−Q_{-}のそれぞれの上で一様連続である。したがってσ>0\sigma>0に対してδ>0\delta>0が存在し、0<η<δ0<\eta<\deltaならばr∈[ε,R]r\in[\varepsilon,R]について∣G(r,η)−G(r,0)∣<σ|G(r,\eta)-G(r,0)|<\sigmaかつ∣G(r,2π−η)−G(r,2π)∣<σ|G(r,2\pi-\eta)-G(r,2\pi)|<\sigmaである。すなわちη→0+\eta\to0^{+}で、二つの線分の上での被積分関数はrrについて一様に、それぞれG(r,0)G(r,0)とG(r,2π)G(r,2\pi)へ収束する。ゆえに二つの線分に沿う積分の和は

∫εRG(r,η) dr−∫εRG(r,2π−η) dr→η→0+(1−e2πia)∫εRra−11+r dr\int_{\varepsilon}^{R}G(r,\eta)\,dr-\int_{\varepsilon}^{R}G(r,2\pi-\eta)\,dr \xrightarrow[\eta\to0^{+}]{}\bigl(1-e^{2\pi ia}\bigr)\int_{\varepsilon}^{R}\frac{r^{a-1}}{1+r}\,dr

へ収束する。差の絶対値が(R−ε)⋅2σ(R-\varepsilon)\cdot2\sigma以下であることによる。

二つの円弧を、η\etaによらない形で評価する。∣za−1∣=∣e(a−1)ℓ(z)∣=∣z∣a−1|z^{a-1}|=|e^{(a-1)\ell(z)}|=|z|^{a-1}である(§E5.3 命題 1.7)。大きい円弧の上では∣z∣=R|z|=Rかつ∣1+z∣≥R−1|1+z|\ge R-1であるから∣f(z)∣≤Ra−1/(R−1)|f(z)|\le R^{a-1}/(R-1)であり、長さは2πR2\pi R以下であるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により積分の絶対値は2πRa/(R−1)2\pi R^{a}/(R-1)以下である。小さい円弧の上では∣z∣=ε|z|=\varepsilonかつ∣1+z∣≥1−ε|1+z|\ge1-\varepsilonであるから∣f(z)∣≤εa−1/(1−ε)|f(z)|\le\varepsilon^{a-1}/(1-\varepsilon)であり、長さは2πε2\pi\varepsilon以下であるから、積分の絶対値は2πεa/(1−ε)2\pi\varepsilon^{a}/(1-\varepsilon)以下である。いずれの上界もη\etaによらない。

Γ\Gammaに沿う積分は、二つの線分の寄与と二つの円弧の寄与の和であり、その値はη\etaによらず−2πi eiaπ-2\pi i\,e^{ia\pi}である。円弧の寄与の和をT(η)T(\eta)と書くと、線分の寄与は−2πi eiaπ−T(η)-2\pi i\,e^{ia\pi}-T(\eta)であり、上で見たとおりη→0+\eta\to0^{+}で収束するから、T(η)T(\eta)も収束する。B=2πRaR−1+2πεa1−εB=\dfrac{2\pi R^{a}}{R-1}+\dfrac{2\pi\varepsilon^{a}}{1-\varepsilon}とおくと、すべてのη\etaについて∣T(η)∣≤B|T(\eta)|\le Bであるから、その極限も∣lim⁡T∣≤B\bigl|\lim T\bigr|\le Bを満たす。線分の寄与の極限と合わせて

∣(1−e2πia)∫εRxa−11+x dx+2πi eiaπ∣≤B\left|\bigl(1-e^{2\pi ia}\bigr)\int_{\varepsilon}^{R}\frac{x^{a-1}}{1+x}\,dx +2\pi i\,e^{ia\pi}\right|\le B

である。0<a<10<a<1より、R→∞R\to\inftyとε→0+\varepsilon\to0^{+}でB→0B\to0である。

ゆえにJ=∫0∞xa−1/(1+x) dxJ=\int_{0}^{\infty}x^{a-1}/(1+x)\,dxとおくと(1−e2πia)J=−2πieiaπ\bigl(1-e^{2\pi ia}\bigr)J=-2\pi ie^{ia\pi}である。1−e2πia=−eiπa⋅2isin⁡(πa)1-e^{2\pi ia}=-e^{i\pi a}\cdot2i\sin(\pi a)であるから

J=−2πi eiπa−eiπa⋅2isin⁡(πa)=πsin⁡(πa)J=\frac{-2\pi i\,e^{i\pi a}}{-e^{i\pi a}\cdot2i\sin(\pi a)}=\frac{\pi}{\sin(\pi a)}

である。積分の収束は、0<x≤10<x\le1でxa−1/(1+x)≤xa−1x^{a-1}/(1+x)\le x^{a-1}、x≥1x\ge1でxa−1/(1+x)≤xa−2x^{a-1}/(1+x)\le x^{a-2}であり、a>0a>0とa<1a<1からどちらの広義積分も収束することによる。

6 演習

問題 6.1.

  • 補題 1.1の証明で、対数の枝の存在をどこで用いたのかを特定する。半直線を取り除かずにC∖{p}\mathbb C\setminus\{p\}の上で同じ議論を行うことができない理由を、§E5.3 命題 2.6に照らして述べる。
  • 命題 2.1の証明で、二つの閉曲線を合わせると円周になるという関係を用いた。線分が相殺する根拠を述べる。
  • 命題 3.1の適用条件は「a>0a>0」と「上半円弧の上で∣g∣≤MR|g|\le M_{R}」である。a<0a<0のときに同じ評価が成り立たない理由を、∣eiaz∣|e^{iaz}|の値から述べる。
  • 例 3.2で、小円弧の積分は00ではなくiπi\piへ収束した。大円弧との違いがどこから生じるのかを、被積分関数の原点近くでのふるまいから説明する。
  • 例 5.1で、上側の線分と下側の線分の被積分関数がe2πiae^{2\pi ia}倍だけ違う理由を、選んだ対数の枝の偏角の範囲から述べる。切断を負の実軸に取ると、この計算がどのように変わるかを述べる。

参考文献

  1. Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., AMS Chelsea Publishing 385, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2021, originally published 1979.半円と鍵穴型の経路による実定積分の計算を参考にした。
  2. Walter Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw Hill, 1987.留数による積分計算と経路の選び方を参考にした。
  3. John B. Conway, Functions of One Complex Variable I, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1978.Jordan の補題と分枝切断を用いる積分を参考にした。

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