1 Bernoulli 数と偶数冪の逆数和
Bernoulli 数を母関数によって定め、偶数乗の逆数の総和との関係と、後続で用いる積分の値を求める。
定義 1.1.g(w)=∑k≥0(k+1)!wkとおくと、gは整関数であり、指数関数の級数(§E5.3 定義 1.3)によりew−1=wg(w)が成り立つ。g(0)=1であり、w=0についてg(w)=0となるのはew=1となるとき、すなわちw=2πik(kは0でない整数)のときに限る(§E5.3 命題 1.7)。したがって
ew−1w:=g(w)1は円板∣w∣<2πの上で正則である。その原点を中心とする Taylor 展開(§E5.7 定理 2.1)の係数によって Bernoulli 数Bn (Bernoulli numberBn) を
ew−1w=n≥0∑n!Bnwn(∣w∣<2π)と定める。
補題 1.2.B1=−21であり、3以上の奇数nについてBn=0である。さらに正の整数mについて
n≥1∑n2m1=2(2m)!(−1)m−1(2π)2mB2mが成り立つ。とくに(−1)m−1B2m>0であり、(−1)m−1B2m=∣B2m∣である。
証明.E(w)=ew−1w+2wとおく。ew−1wew=w+ew−1wであるから
E(−w)=e−w−1−w−2w=ew−1wew−2w=w+ew−1w−2w=E(w)であり、Eは偶関数である。Taylor 係数の一意性(§E5.7 系 2.2)によりEの奇数次の係数は0である。1次の係数はB1+21であるからB1=−21であり、3以上の奇数nについてはBn=0である。
∣w∣<1のとき∣2πiw∣<2πであるから、u=2πiwをEの展開へ代入することができる。§E5.20 補題 2.1 (2)によるC(w)=πcot(πw)の指数表示と合わせると、
E(2πiw)=πiw(e2πiw−12+1)=πiw⋅e2πiw−1e2πiw+1=πwcot(πw)である。したがって∣w∣<1で
πwcot(πw)=j≥0∑(2j)!B2j(2πiw)2j=j≥0∑(2j)!(−1)jB2j(2π)2jw2jである。
C(w)=πcot(πw)とおく。§E5.20 補題 2.1 (1)によりCはC∖Zの上で正則である。正の整数mを固定しFm(w)=C(w)/w2mとおく。nを0でない整数とする。§E5.20 補題 2.1 (3)のHnを用いると、D(n,1)の上でHnは正則、Hn(n)=1であり、0<∣w−n∣<1では
Fm(w)=w−nHn(w)/w2mである。n=0であるからHn(w)/w2mはnの近傍で正則であり、そのnにおける値はn−2mである。したがって§E5.12 命題 1.2によりRes(Fm,n)=n−2mである。
w=0を考える。h(w)=E(2πiw)とおくと、Eは∣u∣<2πの上で正則であるからhは∣w∣<1の上で正則であり、上で示した等式により0<∣w∣<1でh(w)=πwcot(πw)である。またew−1w=1/g(w)のw=0における値は1/g(0)=1であるからB0=1であり、h(0)=E(0)=B0=1=0である。0<∣w∣<1でFm(w)=h(w)/w2m+1であるから、§E5.11 命題 3.4により0はFmの位数2m+1の極であり、その Laurent 係数はk≥0についてck−(2m+1)=h(k)(0)/k!である。k=2mとおき、hの上のべき級数展開の係数が
Taylor 係数に一致すること(§E5.7 系 2.2)を用いると
Res(Fm,0)=c−1=(2m)!h(2m)(0)=(2m)!(−1)mB2m(2π)2mである。
Nを正の整数とし、QNを頂点±(N+21)±i(N+21)をもつ閉正方形、∂QNをその正の向きの境界とする。U=C、A=ZとするとAはCの中に集積点をもたず、FmはC∖Zの上で正則であり、∂QNはCの内部で零ホモローグである。§E5.5 命題 5.6によりn(∂QN,n)は∣n∣≤Nで1、∣n∣>Nで0であるから、§E5.12 定理 2.2により
∫∂QNFm(w)dw=2πi[(2m)!(−1)mB2m(2π)2m+2n=1∑Nn2m1]である。
§E5.20 補題 2.2により、c0=eπ−1eπ+1とおくと∂QNの上で∣C(w)∣≤πc0である。また∣w∣≥N+21であり、∂QNの長さは8(N+21)であるから、
ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により
∫∂QNFm≤πc0⋅(N+21)2m8(N+21)である。2m≥2であるから右辺はN→∞で0へ収束する。ゆえに
(2m)!(−1)mB2m(2π)2m+2n≥1∑n2m1=0であり、主張の等式を得る。左辺の和は正であるから(−1)m−1B2m>0である。▨
2 Bernoulli 多項式と周期 Bernoulli 関数
Bernoulli 数の母関数へ指数関数を掛けると、和公式で用いる多項式族が得られる。
定義 2.1.x∈Rについて、wの原点における Taylor 展開
ew−1wexw=n≥0∑n!Bn(x)wn(∣w∣<2π)によって Bernoulli 多項式Bn(x) (Bernoulli polynomialBn(x)) を定める。Bn=Bn(0)である。
t∈Rに対して{t}=t−⌊t⌋∈[0,1)とおき、
Bn(t)=Bn({t})によって 周期 Bernoulli 関数Bn (periodic Bernoulli functionBn) を定める。
補題 2.2. 非負整数nについて
Bn(x)=j=0∑n(jn)Bjxn−jが成り立つ。正の整数nについて
Bn′(x)=nBn−1(x),Bn(1)−Bn(0)={1,0,n=1,n=1である。したがってn≥2のときBnは連続な周期1の関数であり、整数を含まない各開区間の上でBn′=nBn−1を満たす。
さらに
Cn=j=0∑n(jn)∣Bj∣とおくと、すべての実数tについて∣Bn(t)∣≤Cnである。
証明.定義 1.1の母関数と指数関数の積を、絶対収束する級数の Cauchy 積(§D1.21 定理 5.3)で展開すると
ew−1wexw=(j≥0∑j!Bjwj)(ℓ≥0∑ℓ!xℓwℓ)=n≥0∑(j=0∑nj!(n−j)!Bjxn−j)wnである。Taylor 係数の一意性(§E5.7 系 2.2)により第一の等式を得る。とくにBn(x)は多項式である。
第一の等式を項ごとに微分し、(jn)(n−j)=n(jn−1)を用いると
Bn′(x)=nj=0∑n−1(jn−1)Bjxn−1−j=nBn−1(x)である。また
ew−1wew−ew−1w=wであるから、係数を比較すると端点の差に関する等式を得る。
n≥2ではBn(1)=Bn(0)であるから、各区間[k,k+1)に置いたBn(t−k)の両端の値が一致する。したがってBnは連続であり、定義から周期1をもつ。整数を含まない各開区間では多項式と同じ微分関係が成り立つ。
最後に0≤{t}<1と第一の等式から
∣Bn(t)∣≤j=0∑n(jn)∣Bj∣{t}n−j≤j=0∑n(jn)∣Bj∣=Cnを得る。▨
とくにB1(x)=x−21であるから、整数でないtについてB1(t)={t}−21である。B1は整数で跳躍するため、最初の部分積分だけは各単位区間で行う。二回目以降は連続なBnを用いることができる。
3 Euler–Maclaurin の和公式
証明. 整数jがa≤j<bを満たすとする。区間[j,j+1]の内部ではB1(x)=x−j−21であるから、実部と虚部へ通常の部分積分を適用すると
∫jj+1B1(x)f′(x)dx=2f(j+1)+f(j)−∫jj+1f(x)dxである。j=a,…,b−1について加えると
j=a∑bf(j)=∫abf(x)dx+2f(a)+f(b)+∫abB1(x)f′(x)dx(1)を得る。
補題 2.2によりB2は連続であり、各単位区間の内部でB2′=2B1を満たす。したがって各単位区間で部分積分して加えると、中間の整数における境界項は連続性によって相殺し、
∫abB1f′=2!B2(f′(b)−f′(a))−2!1∫abB2f′′(2)である。
一般に、1≤r<mとする。B2r+1=0(補題 1.2)であるからB2r+1は両端で0となり、
−(2r)!1∫abB2rf(2r)=(2r+1)!1∫abB2r+1f(2r+1)である。次にB2r+2を用いて部分積分すると
(2r+1)!1∫abB2r+1f(2r+1)=(2r+2)!B2r+2(f(2r+1)(b)−f(2r+1)(a))−(2r+2)!1∫abB2r+2f(2r+2)となる。式 (2) からこの操作をm−1回繰り返し、式 (1) へ代入すると主張の等式を得る。
剰余項の評価は補題 2.2の∣B2m∣≤C2mと積分の三角不等式から従う。▨
注意 3.2 (剰余項を残す意味).定理 3.1は無限級数についての主張ではない。正の整数mを一つ固定した有限の等式であり、打切り後の差を積分Rmが正確に表している。mを増やすときに右辺の有限和が収束するとは限らない。漸近展開へ適用するときは、mを固定して剰余積分を別に評価する必要がある。
補題 3.3. 非負整数kについて
∫0∞e2πt−1t2k+1dt=4k+4∣B2k+2∣が成り立つ。
証明.λ>0とs>0について、§E4.15 定義 1.1の積分でt=u/λと置換すると∫0∞ts−1e−λtdt=Γ(s)/λsである。s=2k+2とすると∫0∞t2k+1e−2πmtdt=(2πm)2k+2(2k+1)!である。
t>0と正の整数Mについて、等比数列の有限和により
m=1∑Me−2πmt=e2πt−11−e−2πMtであるから
∫0∞e2πt−1t2k+1dt−m=1∑M(2πm)2k+2(2k+1)!=∫0∞e2πt−1t2k+1e−2πMtdtである。§E5.21 補題 1.3 (1)によりe2πt−1≥2πtであるから右辺は2π1∫0∞t2ke−2πMtdt=2π(2πM)2k+1(2k)!以下であり、M→∞で0へ収束する。ゆえに
∫0∞e2πt−1t2k+1dt=(2π)2k+2(2k+1)!n≥1∑n2k+21である。補題 1.2をm=k+1として用いると、右辺は
(2π)2k+2(2k+1)!⋅2(2k+2)!(−1)k(2π)2k+2B2k+2=2(2k+2)(−1)kB2k+2=4k+4∣B2k+2∣である。最後の等号では(−1)kB2k+2=∣B2k+2∣(同じ補題)を用いた。▨
4 演習
問題 4.1.
- 定義 1.1は母関数を∣w∣<2πの上でだけ定めている。この半径がどこから来るのかを、ew−1の零点の位置に照らして述べる。
- 補題 1.2の証明が§E5.20 補題 2.2のどの評価を用いて境界積分を0へ収束させたかを、正方形の周長と∣w∣−2mの次数を含めて説明する。
- 補題 3.3の証明では、項ごとの積分を無条件には行わず、部分和との差を明示的に評価した。この評価がないと何が保証されないかを述べる。
- 補題 2.2でn≥2という条件を付けた理由を、B1(1)−B1(0)の値と周期化した関数の整数点における左右の極限を用いて説明する。
- 定理 3.1の一回目の部分積分を単位区間ごとに行う理由と、二回目以降の境界項が中間の整数で相殺する理由を、それぞれ述べる。
- 注意 3.2に従い、有限項の恒等式と無限級数の収束に関する主張の違いを説明する。