1 開集合系の公理
定義 1.1 (位相、開集合、位相空間).Xを集合とし、O⊆P(X)とする。OがXの位相 (topology) であるとは、次の三つがすべて成り立つことをいう。
- ∅∈OかつX∈Oである。
- §E1.2 定義 2.1に従って{Uλ}λ∈ΛをOの元からなる集合族とすると、⋃λ∈ΛUλ∈Oである。
- 正の整数nとU1,…,Un∈Oに対して、⋂i=1nUi∈Oである。
Oの元を 開集合 (open set) といい、組(X,O)を位相空間 (topological space) という。位相が文脈から定まっている場合には、集合X自体を位相空間と呼ぶことがある。
定義 1.3.(X,d)を距離空間とし、Odを§E2.2 定義 1.1に従って開集合となるXの部分集合の全体とする。Odを、X上の距離から生じる位相 (metric topology) という。
例 1.4.(X,d)を距離空間とする。§E2.2 定理 1.3により、Odは定義 1.1に掲げた三つの公理を満たす。したがって、OdはXの位相である。
定義 1.6.Rに§E2.1 例 1.6で定めた距離d(s,t)=∣s−t∣を入れる。この距離から定義 1.3によって生じる位相Odを、Rの通常の位相 (usual topology) という。
定義 1.7.Xを集合とする。
- P(X)をX上の離散位相 (discrete topology) という。
- {∅,X}をX上の密着位相 (indiscrete topology) という。
- 集合族Occ={∅}∪{U⊆X∣X∖U は高々可算である}をX上の補可算位相 (cocountable topology) という。
例 1.8.Xを集合とする。離散位相P(X)、密着位相{∅,X}、および補可算位相Occは、いずれもXの位相である。また、§E2.2 例 5.2で扱った離散距離から生じる位相は、離散位相に一致する。
証明.P(X)については、∅とXはいずれもXの部分集合であるから定義 1.1 条件 (a)が成り立つ。また、Xの部分集合の任意個の和集合も有限個の共通部分もXの部分集合であるから、定義 1.1 条件 (b)と定義 1.1 条件 (c)が成り立つ。
{∅,X}については、∅とXが定義によりこの族に属するから定義 1.1 条件 (a)が成り立つ。{∅,X}の部分族の和集合は、その部分族がXを含むならばXであり、含まないならば∅である。同じ部分族の空でない有限個の元の共通部分も、XだけからなるならばXであり、∅を含むならば∅である。したがって定義 1.1 条件 (b)と定義 1.1 条件 (c)が成り立つ。
Occについて、∅は定義により属し、X∖X=∅は高々可算であるからX∈Occである。{Uλ}λ∈ΛをOccの元からなる集合族とする。すべてのUλが空集合ならば、その和集合も空集合である。空でないUλ0が存在するならば、
X∖λ∈Λ⋃Uλ⊆X∖Uλ0であり、右辺は高々可算である。したがって、和集合はOccに属する。
有限個の元U1,…,Unのいずれかが空集合ならば、その共通部分も空集合である。すべてが空でない場合には、§E1.2 定理 3.2が与える一般のド・モルガン則により
X∖i=1⋂nUi=i=1⋃n(X∖Ui)である。右辺は§E1.18 定理 5.1により高々可算である。したがって、有限個の元の共通部分もOccに属する。
離散距離が定める開集合について、§E2.2 例 5.2によりXの任意の部分集合が開集合である。したがって、離散距離から生じる位相はP(X)に一致する。▨
例 1.9.Xを二つ以上の元をもつ集合とする。X上のどの距離dについても、距離から生じる位相Odは密着位相{∅,X}と異なる。すなわち、密着位相は距離から生じる位相ではない。
証明.dをX上の距離とし、Od={∅,X}であると仮定する。Xは二つ以上の元をもつから、x=yを満たすx,y∈Xをとることができる。§E2.1 定義 1.1 条件 (a)と§E2.1 命題 1.2によりr=d(x,y)>0である。§E2.2 補題 1.2により開球B(x,r)はOdに属し、§E2.1 注意 1.5によりx∈B(x,r)であるからB(x,r)=∅である。仮定によりB(x,r)=Xとなり、とくにy∈B(x,r)、すなわちd(x,y)<rである。これはr=d(x,y)に反する。▨
定義 1.10 (粗い位相、細かい位相).O1とO2を同じ集合X上の位相とする。O1⊆O2であるとき、O1はO2より粗い (coarser) といい、O2はO1より細かい (finer) という。
定義 1.12 (孤立点). 位相空間Xの点xについて、{x}がXの開集合であるとき、xをXの 孤立点 (isolated point) という。
2 閉集合系と内部、閉包、境界、稠密性
定義 2.1 (閉集合).(X,O)を位相空間とし、F⊆Xとする。X∖F∈Oであるとき、Fを 閉集合 (closed set) という。
定理 2.3.Xを集合とし、F⊆P(X)とする。FがX上のある位相の閉集合の全体であるための必要十分条件は、次の三つがすべて成り立つことである。
- ∅∈FかつX∈Fである。
- {Fλ}λ∈ΛをFの元からなる任意の集合族とすると、⋂λ∈ΛFλ∈Fである。
- 正の整数nとF1,…,Fn∈Fに対して、⋃i=1nFi∈Fである。
三つがすべて成り立つとき、閉集合の全体がFである位相は
OF={X∖F∣F∈F}ただ一つである。
証明. 必要性を示す。Fを位相Oの閉集合の全体とする。∅とXの補集合はそれぞれXと∅であり、いずれも開集合であるから、条件 (a)が成り立つ。
{Fλ}λ∈Λを閉集合からなる任意の集合族とする。§E1.2 定理 3.2が与える一般のド・モルガン則により
X∖λ∈Λ⋂Fλ=λ∈Λ⋃(X∖Fλ)である。右辺は開集合の任意個の和集合であるから開集合である。したがって⋂λ∈ΛFλは閉集合であり、条件 (b)が成り立つ。
閉集合F1,…,Fnに対して
X∖i=1⋃nFi=i=1⋂n(X∖Fi)である。右辺は有限個の開集合の共通部分であるから開集合である。したがって、⋃i=1nFiは閉集合であり、条件 (c)が成り立つ。
十分性を示す。Fが三つをすべて満たすと仮定し、OFを定理文の式で定める。条件 (a)により
∅=X∖X∈OF,X=X∖∅∈OFである。
{Uλ}λ∈ΛをOFの元からなる集合族とする。各λに対してFλ=X∖Uλとおくと、Fλ∈Fである。条件 (b)と、§E1.2 定理 3.2が与える一般のド・モルガン則により
λ∈Λ⋃Uλ=X∖λ∈Λ⋂Fλ∈OFである。また、Ui=X∖Fiと書けば、条件 (c)により
i=1⋂nUi=X∖i=1⋃nFi∈OFである。したがって、OFはXの位相である。
OFについて閉集合であるF⊆Xは、X∖F∈OFを満たす。定義により、これはX∖F=X∖F′を満たすF′∈Fが存在することと同値である。補集合を再びとるとF=F′となるので、OFの閉集合の全体はFである。
一意性を示す。閉集合の全体がFである位相では、開集合はその補集合として必ずOFの元になり、逆にOFの元はFの元の補集合として開集合である。したがって、この位相はOFに一致する。▨
定義 2.4 (内部、閉包、境界).(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。
- Aに含まれる開集合の全体の和集合をAの 内部 (interior) といい、int(A)と書く。
- Aを含む閉集合の全体の共通部分をAの 閉包 (closure) といい、Aと書く。
- A∩X∖AをAの 境界 (boundary) といい、∂Aと書く。
XはAを含む閉集合であるため、閉包を定める共通部分には少なくとも一つの集合が現れる。
内部と閉包をとる全体集合を明示する必要があるときは、int(A)をintX(A)と書き、AをclX(A)と書く。
命題 2.5.(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。
- int(A)はAに含まれる最大の開集合であり、AはAを含む最小の閉集合である。
- Aが開集合であることとint(A)=Aであることは同値であり、Aが閉集合であることとA=Aであることは同値である。
- X∖int(A)=X∖AかつX∖A=int(X∖A)である。
証明.(1)を示す。int(A)は開集合の族の和集合であるから開集合であり、和をとる各集合がAに含まれるためint(A)⊆Aである。UがAに含まれる開集合ならば、Uは内部を定める和集合の一員であるからU⊆int(A)である。したがって、int(A)はAに含まれる最大の開集合である。Aは閉集合の族の共通部分であるから、定理 2.3 条件 (b)により閉集合である。共通部分をとる各閉集合がAを含むため、A⊆Aである。FがAを含む閉集合ならば、Fは閉包を定める共通部分の一員であるからA⊆Fである。したがって、AはAを含む最小の閉集合である。
(2)を示す。Aが開集合ならば、(1)の最大性によりA⊆int(A)であり、int(A)⊆Aと合わせて等号を得る。逆にint(A)=Aならば、内部が開集合であることからAは開集合である。Aが閉集合ならば、(1)の最小性によりA⊆Aであり、A⊆Aと合わせて等号を得る。逆にA=Aならば、閉包が閉集合であることからAは閉集合である。
(3)を示す。int(A)は開集合であるから、X∖int(A)は閉集合である。また、int(A)⊆Aであるから
X∖A⊆X∖int(A)である。よって、(1)の最小性により
X∖A⊆X∖int(A)である。逆に、FをX∖Aを含む閉集合とする。この包含の補集合をとると、X∖FはAに含まれる開集合である。(1)の最大性によりX∖F⊆int(A)であり、再び補集合をとるとX∖int(A)⊆Fを得る。これはX∖int(A)がX∖Aを含むすべての閉集合に含まれることを示すので、
X∖int(A)⊆X∖Aである。したがって、第一の等式が成り立つ。第一の等式でAをX∖Aに置き換えると
X∖int(X∖A)=Aを得る。両辺の補集合をとることにより、第二の等式が従う。▨
補題 2.6.(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。任意のx∈Aに対してx∈U⊆Aを満たすU∈Oが存在するならば、Aは開集合である。
証明. 任意のx∈Aをとり、仮定を満たす開集合Uをとる。このUはAに含まれるので、命題 2.5 (1)によりU⊆int(A)である。とくにx∈int(A)である。xはAの任意の元であったからA⊆int(A)であり、命題 2.5 (1)が与えるint(A)⊆Aと合わせてA=int(A)を得る。よって命題 2.5 (2)によりAは開集合である。▨
定義 2.7 (稠密).(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。A=Xが成り立つとき、AはXで 稠密 (dense) であるという。
命題 2.8.(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。
- ∂A=A∖int(A)である。
- ∂A=∂(X∖A)である。
- ∂Aは閉集合である。
- A=A∪∂Aである。
証明.(1)を示す。命題 2.5 (3)によりX∖A=X∖int(A)であるから、
∂A=A∩X∖A=A∩(X∖int(A))=A∖int(A)である。
(2)を示す。X∖(X∖A)=Aであるから、∂(X∖A)=X∖A∩A=∂Aである。
(3)を示す。AとX∖Aは閉集合であり、定理 2.3 条件 (b)により有限個の閉集合の共通部分は閉集合であるから、∂Aは閉集合である。
(4)を示す。A⊆Aかつ∂A⊆Aであるから、A∪∂A⊆Aである。逆にx∈Aとする。x∈Aならばx∈A∪∂Aである。x∈/Aならばx∈X∖A⊆X∖Aであるから、x∈A∩X∖A=∂Aである。したがってA⊆A∪∂Aである。▨
命題 2.9.(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。次の三つは同値である。
- AはXで稠密である。
- Xの任意の空でない開集合はAと交わる。
- int(X∖A)=∅である。
証明.(1)⇒(2)を示す。A=Xと仮定し、Uを空でない開集合とする。U∩A=∅であると仮定すると、A⊆X∖Uであり、X∖Uは閉集合である。命題 2.5 (1)によりA⊆X∖Uとなる。一方A=XであるからU=∅となり、Uが空でないことに反する。
(2)⇒(1)を示す。A=Xであると仮定すると、U=X∖Aは空でない開集合である。A⊆AであるからU∩A=∅となり、(2)に反する。したがってA=Xである。
(1)と(3)が同値であることを示す。命題 2.5 (3)によりX∖A=int(X∖A)である。したがって、A=Xであることとint(X∖A)=∅であることは同値である。▨
命題 2.10.(Z,O)を位相空間、D⊆Zを稠密な部分集合、V⊆Zを開集合とする。このときV⊆V∩Dである。
証明.z∈Vをとり、Wをzの近傍とする。定義 6.1によりz∈W0⊆Wを満たす開集合W0が存在する。W0∩Vはzを含む空でない開集合であるから、Dの稠密性と命題 2.9 (2)によりW0∩V∩D=∅である。W0∩V∩D⊆W∩(V∩D)であるからWはV∩Dと交わり、命題 7.2 (2)によりz∈V∩Dである。▨
3 開核作用素による記述
定義 3.1 (開核作用素).Xを集合とする。写像I:P(X)→P(X)がX上の開核作用素 (interior operator) であるとは、任意のA,B⊆Xに対して次の四つがすべて成り立つことをいう。
- I(X)=Xである。
- I(A)⊆Aである。
- I(I(A))=I(A)である。
- I(A∩B)=I(A)∩I(B)である。
補題 3.2.(X,O)を位相空間とし、A⊆Xに対してIO(A)=int(A)と定める。このとき、IOはX上の開核作用素である。
証明.X自身はXに含まれる開集合であるから、命題 2.5 (1)によりIO(X)=Xである。命題 2.5 (1)の最大性に含まれる包含から、任意のA⊆XについてIO(A)⊆Aである。IO(A)は開集合であるから、命題 2.5 (2)によりIO(IO(A))=IO(A)である。
IO(A)∩IO(B)は二つの開集合の共通部分であるから開集合であり、A∩Bに含まれる。よって命題 2.5 (1)の最大性によりIO(A)∩IO(B)⊆IO(A∩B)である。逆にIO(A∩B)はAに含まれる開集合であり、Bに含まれる開集合でもあるから、同じ最大性によりIO(A∩B)⊆IO(A)かつIO(A∩B)⊆IO(B)である。したがってIO(A∩B)=IO(A)∩IO(B)である。▨
補題 3.3.Xを集合とし、IをX上の開核作用素とする。
- A⊆B⊆XならばI(A)⊆I(B)である。
- OI={U⊆X∣I(U)=U}はXの位相である。
証明.(1)を示す。A⊆BならばA=A∩Bであるから、定義 3.1 条件 (d)によりI(A)=I(A)∩I(B)であり、I(A)⊆I(B)を得る。
(2)を示す。定義 3.1 条件 (b)をA=∅に適用するとI(∅)=∅であり、定義 3.1 条件 (a)と合わせて∅∈OIかつX∈OIである。{Uλ}λ∈ΛをOIの元からなる集合族とし、U=⋃λ∈ΛUλとおく。各λ∈ΛについてUλ⊆Uであるから、(1)によりUλ=I(Uλ)⊆I(U)である。したがってU⊆I(U)であり、定義 3.1 条件 (b)と合わせてI(U)=Uを得る。正の整数nとU1,…,Un∈OIに対しては、定義 3.1 条件 (d)をn−1回用いて
I(i=1⋂nUi)=i=1⋂nI(Ui)=i=1⋂nUiを得る。したがってOIはXの位相である。▨
補題 3.4.Xを集合とする。Xの任意の位相OとX上の任意の開核作用素Iに対して、
OIO=O,IOI=Iが成り立つ。
証明.U⊆Xに対して、U∈OであることとIO(U)=Uであることは命題 2.5 (2)により同値である。したがってOIO=Oである。
A⊆Xをとる。定義 3.1 条件 (c)によりI(A)∈OIであり、定義 3.1 条件 (b)によりI(A)⊆Aである。U∈OIかつU⊆Aならば、補題 3.3 (1)によりU=I(U)⊆I(A)である。したがってI(A)はOIに属してAに含まれる集合のうち最大のものであり、命題 2.5 (1)を位相OIに適用するとIOI(A)=I(A)を得る。▨
定理 3.5.Xを集合とする。位相Oに開核作用素IOを対応させる写像は、Xの位相の全体からX上の開核作用素の全体への全単射であり、その逆写像は開核作用素Iに位相OIを対応させる写像である。
証明.補題 3.2により、O↦IOはXの位相の全体からX上の開核作用素の全体への写像である。補題 3.3 (2)により、I↦OIは逆向きの写像である。補題 3.4は、二つの写像の合成がどちらの順序でも恒等写像であることを与える。したがって、二つの写像は互いに逆な全単射である。▨
4 閉包作用素による記述
定義 4.1 (Kuratowski 閉包作用素).Xを集合とする。写像C:P(X)→P(X)がX上の
Kuratowski 閉包作用素 (Kuratowski closure operator) であるとは、任意のA,B⊆Xに対して次の四つがすべて成り立つことをいう。
- C(∅)=∅である。
- A⊆C(A)である。
- C(C(A))=C(A)である。
- C(A∪B)=C(A)∪C(B)である。
定義 4.2 (共役作用素).Xを集合とし、F:P(X)→P(X)を写像とする。A⊆Xに対して
F∗(A)=X∖F(X∖A)と定めて得られる写像F∗:P(X)→P(X)を、Fの共役作用素 (conjugate operator) という。
補題 4.3.Xを集合とする。
- 任意の写像F:P(X)→P(X)に対して(F∗)∗=Fである。
- 写像F:P(X)→P(X)がX上の開核作用素であることと、F∗がX上の Kuratowski 閉包作用素であることは同値である。
- 開核作用素IにI∗を対応させる写像は、X上の開核作用素の全体からX上の Kuratowski 閉包作用素の全体への全単射であり、その逆写像は Kuratowski 閉包作用素CにC∗を対応させる写像である。
- OをXの位相とし、A⊆Xに対してCO(A)=Aと定める。このときCO=(IO)∗であり、COはX上の Kuratowski 閉包作用素である。
証明.(1)を示す。写像F:P(X)→P(X)と任意のA⊆Xに対して
(F∗)∗(A)=X∖F∗(X∖A)=X∖(X∖F(X∖(X∖A)))=F(A)である。
(2)を示す。補集合をとる写像A↦X∖AはP(X)からそれ自身への全単射であるから、AがP(X)を動くときX∖AもP(X)を動く。F∗(∅)=X∖F(X)であるから、F∗(∅)=∅であることとF(X)=Xであることは同値である。任意のA⊆Xに対して、A⊆F∗(A)であることはF(X∖A)⊆X∖Aであることと同値であるから、任意のA⊆XについてA⊆F∗(A)であることと、任意のA⊆XについてF(A)⊆Aであることは同値である。X∖F∗(A)=F(X∖A)であるから
F∗(F∗(A))=X∖F(X∖F∗(A))=X∖F(F(X∖A))であり、任意のA⊆XについてF∗(F∗(A))=F∗(A)であることと、任意のA⊆XについてF(F(A))=F(A)であることは同値である。任意のA,B⊆Xに対して、§E1.2 定理 3.2により
F∗(A∪B)=X∖F((X∖A)∩(X∖B)),F∗(A)∪F∗(B)=X∖(F(X∖A)∩F(X∖B))であるから、任意のA,B⊆XについてF∗(A∪B)=F∗(A)∪F∗(B)であることと、任意のA,B⊆XについてF(A∩B)=F(A)∩F(B)であることは同値である。以上の四つの同値により、Fが定義 3.1の四つをすべて満たすことと、F∗が定義 4.1の四つをすべて満たすことは同値である。
(3)を示す。(2)により、I↦I∗はX上の開核作用素の全体からX上の Kuratowski 閉包作用素の全体への写像である。Cを Kuratowski
閉包作用素とすると、(1)により(C∗)∗=Cであるから、(2)をF=C∗へ適用してC∗は開核作用素である。よってC↦C∗は逆向きの写像である。(1)は、二つの写像の合成がどちらの順序でも恒等写像であることを与える。したがって、二つの写像は互いに逆な全単射である。
(4)を示す。命題 2.5 (3)により、任意のA⊆Xに対してA=X∖int(X∖A)である。よってCO(A)=X∖IO(X∖A)=(IO)∗(A)であり、CO=(IO)∗である。補題 3.2によりIOは開核作用素であるから、(2)によりCOは Kuratowski 閉包作用素である。▨
補題 4.4.Xを集合とし、CをX上の Kuratowski 閉包作用素とする。
- A⊆B⊆XならばC(A)⊆C(B)である。
- FC={F⊆X∣C(F)=F}は定理 2.3の三つをすべて満たす。
- 定理 2.3により、閉集合の全体がFCである位相OC={X∖F∣F∈FC}がただ一つ定まる。この位相は、補題 3.3 (2)を開核作用素C∗に適用して得られる位相OC∗に一致する。
証明.補題 4.3 (1)により(C∗)∗=Cであり、Cは Kuratowski 閉包作用素であるから、補題 4.3 (2)によりC∗はX上の開核作用素である。また、任意のA⊆Xに対してC∗(X∖A)=X∖C(A)である。
(1)を示す。A⊆B⊆XとするとX∖B⊆X∖Aであるから、補題 3.3 (1)をC∗へ適用するとC∗(X∖B)⊆C∗(X∖A)であり、直前の等式によりX∖C(B)⊆X∖C(A)を得る。両辺の補集合をとるとC(A)⊆C(B)である。
(2)を示す。U⊆Xに対して、C∗(U)=UであることはX∖C(X∖U)=Uであることと同値であり、これはC(X∖U)=X∖U、すなわちX∖U∈FCであることと同値である。補題 3.3 (2)をC∗へ適用するとOC∗={U⊆X∣C∗(U)=U}はXの位相であり、いま示したことによりFCは位相OC∗の閉集合の全体である。したがって定理 2.3の必要性により、FCは三つをすべて満たす。
(3)を示す。定理 2.3により、閉集合の全体がFCである位相はOCただ一つである。直前に示したとおりOC∗もこの性質をもつから、OC=OC∗である。▨
補題 4.5.Xを集合とする。Xの任意の位相OとX上の任意の Kuratowski 閉包作用素Cに対して、
OCO=O,COC=Cが成り立つ。
証明.補題 4.3 (4)によりCO=(IO)∗であるから、補題 4.4 (3)と補題 4.3 (1)により
OCO=O(CO)∗=O((IO)∗)∗=OIOである。補題 3.4により右辺はOに等しい。
補題 4.4 (3)によりOC=OC∗であり、補題 4.3 (1)と補題 4.3 (2)によりC∗は開核作用素であるから、補題 3.4によりIOC=IOC∗=C∗である。よって補題 4.3 (4)と補題 4.3 (1)により
COC=(IOC)∗=(C∗)∗=Cである。▨
定理 4.6.Xを集合とする。位相Oに Kuratowski 閉包作用素COを対応させる写像は、Xの位相の全体からX上の Kuratowski 閉包作用素の全体への全単射であり、その逆写像は Kuratowski
閉包作用素Cに位相OCを対応させる写像である。
証明.補題 4.3 (4)により、O↦COはXの位相の全体からX上の Kuratowski 閉包作用素の全体への写像である。補題 4.4 (3)により、C↦OCは逆向きの写像である。補題 4.5は、二つの写像の合成がどちらの順序でも恒等写像であることを与える。したがって、二つの写像は互いに逆な全単射である。▨
5 境界作用素による記述
例 5.1. 境界は包含に関して単調ではない。実際、通常の位相を入れたRでは{0}⊆Rであるが、∂{0}={0}かつ∂R=∅である。
証明.x∈Rがx=0を満たすとき、y∈B(x,∣x∣)ならば∣x−y∣<∣x∣であるからy=0である。したがってB(x,∣x∣)⊆R∖{0}であり、§E2.2 定義 1.1によりR∖{0}は通常の位相の開集合である。よって{0}は閉集合であり、命題 2.5 (2)により{0}={0}である。
命題 2.5 (1)によりint({0})⊆{0}であるから、int({0})=∅であると仮定するとint({0})={0}であり、命題 2.5 (2)により{0}は開集合である。このとき§E2.2 定義 1.1によりB(0,ε)⊆{0}を満たす実数ε>0が存在するが、∣0−ε/2∣=ε/2<εであるからε/2∈B(0,ε)であり、ε/2=0である。これはB(0,ε)⊆{0}に反する。よってint({0})=∅であり、命題 2.8 (1)により∂{0}={0}∖int({0})={0}である。
定義 1.1 条件 (a)により∅とRはいずれも通常の位相の開集合であるから、Rは開集合かつ閉集合である。したがって命題 2.5 (2)によりint(R)=R=Rであり、命題 2.8 (1)により∂R=R∖R=∅である。▨
定義 5.2 (境界作用素).Xを集合とする。写像D:P(X)→P(X)がX上の境界作用素 (boundary operator) であるとは、任意のA,B⊆Xに対して次の五つがすべて成り立つことをいう。
- D(∅)=∅である。
- D(D(A))⊆D(A)である。
- D(A∪B)⊆D(A)∪D(B)である。
- A⊆BならばD(A)⊆B∪D(B)である。
- D(A)=D(X∖A)である。
補題 5.4.Xを集合とし、CをX上の Kuratowski 閉包作用素とする。A⊆Xに対してDC(A)=C(A)∩C(X∖A)と定めると、DCはX上の境界作用素である。
証明.定義 4.1 条件 (b)をA=Xに適用するとX⊆C(X)⊆XであるからC(X)=Xであり、定義 4.1 条件 (a)と合わせてDC(∅)=C(∅)∩C(X)=∅である。したがって定義 5.2 条件 (a)が成り立つ。X∖(X∖A)=AであるからDC(X∖A)=C(X∖A)∩C(A)=DC(A)であり、定義 5.2 条件 (e)が成り立つ。
定義 4.1 条件 (c)によりC(A)とC(X∖A)はいずれも補題 4.4 (2)のFCに属する。FCは定理 2.3 条件 (b)を満たすから、共通部分DC(A)もFCに属する。したがって
DC(DC(A))⊆C(DC(A))=DC(A)であり、定義 5.2 条件 (b)が成り立つ。
x∈DC(A∪B)とする。定義 4.1 条件 (d)によりx∈C(A)∪C(B)である。また、X∖(A∪B)はX∖AとX∖Bの双方に含まれるから、補題 4.4 (1)によりx∈C(X∖A)∩C(X∖B)である。x∈C(A)ならばx∈DC(A)であり、x∈C(B)ならばx∈DC(B)であるから、定義 5.2 条件 (c)が成り立つ。
A⊆Bとし、x∈DC(A)とする。x∈Bならばx∈B∪DC(B)である。x∈/Bの場合には、補題 4.4 (1)によりx∈C(A)⊆C(B)であり、x∈X∖Bと定義 4.1 条件 (b)によりx∈C(X∖B)である。したがってx∈DC(B)であり、定義 5.2 条件 (d)が成り立つ。▨
補題 5.5.Xを集合とし、DをX上の境界作用素とする。A⊆Xに対してCD(A)=A∪D(A)と定めると、CDはX上の Kuratowski 閉包作用素である。
証明.定義 5.2 条件 (a)によりCD(∅)=∅であり、定義からA⊆CD(A)である。
定義 5.2 条件 (c)により
CD(A∪B)=A∪B∪D(A∪B)⊆CD(A)∪CD(B)である。逆に、定義 5.2 条件 (d)をA⊆A∪BとB⊆A∪Bに適用するとD(A)⊆CD(A∪B)かつD(B)⊆CD(A∪B)であり、A∪B⊆CD(A∪B)と合わせてCD(A)∪CD(B)⊆CD(A∪B)を得る。したがってCD(A∪B)=CD(A)∪CD(B)である。
定義 5.2 条件 (b)によりCD(D(A))=D(A)∪D(D(A))=D(A)である。直前に示した有限和の等式を用いると
CD(CD(A))=CD(A∪D(A))=CD(A)∪CD(D(A))=CD(A)∪D(A)=CD(A)である。したがってCDは Kuratowski 閉包作用素である。▨
補題 5.6.Xを集合とする。X上の任意の Kuratowski 閉包作用素CとX上の任意の境界作用素Dに対して、CDC=CかつDCD=Dが成り立つ。
証明.A⊆Xをとる。定義 4.1 条件 (b)により
CDC(A)=A∪(C(A)∩C(X∖A))⊆C(A)である。逆にx∈C(A)とする。x∈Aならばx∈CDC(A)である。x∈/Aならばx∈X∖A⊆C(X∖A)であるからx∈DC(A)であり、やはりx∈CDC(A)である。したがってCDC(A)=C(A)である。
A⊆Xをとる。定義 5.2 条件 (e)により
DCD(A)=(A∪D(A))∩((X∖A)∪D(A))である。D(A)は右辺の二つの集合の双方に含まれるからD(A)⊆DCD(A)である。逆に、右辺に属してD(A)に属さない点はAとX∖Aの双方に属することになり、そのような点は存在しない。したがってDCD(A)=D(A)である。▨
定理 5.7.Xを集合とする。Kuratowski 閉包作用素Cに境界作用素DCを対応させる写像は、X上の
Kuratowski 閉包作用素の全体からX上の境界作用素の全体への全単射であり、その逆写像は境界作用素Dに Kuratowski 閉包作用素CDを対応させる写像である。とくに、X上の境界作用素Dに対してCDが定める位相OCDはただ一つ定まり、その位相における境界はDに一致する。
証明.補題 5.4によりC↦DCはX上の Kuratowski 閉包作用素の全体からX上の境界作用素の全体への写像であり、補題 5.5によりD↦CDは逆向きの写像である。補題 5.6は、二つの写像の合成がどちらの順序でも恒等写像であることを与える。したがって、二つの写像は互いに逆な全単射である。
Dを境界作用素とする。定理 4.6により、位相OCDはただ一つ定まり、この位相の閉包作用素はCDである。よって、A⊆Xに対するこの位相における境界は
A∩X∖A=CD(A)∩CD(X∖A)=DCD(A)であり、補題 5.6によりD(A)に等しい。▨
6 近傍系による記述
定義 6.1 (近傍、開近傍、近傍系).(X,O)を位相空間とし、x∈Xとする。部分集合V⊆Xがxの近傍 (neighborhood) であるとは、x∈U⊆Vを満たす開集合U∈Oが存在することをいう。近傍V自身が開集合であるとき、Vをxの開近傍 (open neighborhood) という。
xの近傍の全体からなる集合
NO(x)={V⊆X∣x∈U⊆V を満たす U∈O が存在する}を、位相Oが定めるxの近傍系 (neighborhood system) という。
命題 6.3.(X,d)を距離空間とし、Xに距離dから生じる位相Odを入れる。任意のx∈XとV⊆Xに対して、次の二つは同値である。
- V∈NOd(x)である。
- B(x,ε)⊆Vを満たす実数ε>0が存在する。
証明.(1)を仮定すると、x∈U⊆Vを満たすU∈Odが存在する。§E2.2 定義 1.1によりB(x,ε)⊆Uを満たす実数ε>0が存在するため、(2)が成り立つ。逆に(2)を仮定すると、§E2.2 補題 1.2によりB(x,ε)はxの開近傍であるため、(1)が成り立つ。▨
例 6.4.Xを二つ以上の元をもつ集合とし、x∈Xとする。離散位相ではNO(x)={V⊆X∣x∈V}であり、密着位相ではNO(x)={X}である。とくに、離散位相が定めるxの近傍系と密着位相が定めるxの近傍系は異なる。
証明. 離散位相ではXの任意の部分集合が開集合である。x∈VならばV自身がx∈V⊆Vを満たす開集合であるからV∈NO(x)であり、逆に定義 6.1によりxの近傍はxを含む。したがってNO(x)={V⊆X∣x∈V}である。
密着位相の開集合は∅とXだけであり、x∈/∅であるから、xを含む開集合はXだけである。したがってV∈NO(x)であることはX⊆Vであることと同値であり、NO(x)={X}である。
Xは二つ以上の元をもつから、y=xを満たすy∈Xをとることができ、y∈/{x}から{x}=Xである。{x}は離散位相が定めるxの近傍系に属し、密着位相が定めるxの近傍系{X}に属さない。したがって二つの近傍系は異なる。▨
定義 6.5 (近傍系の公理).Xを集合とし、各x∈Xに対して部分集合族N(x)⊆P(X)が与えられているとする。割り当てx↦N(x)が近傍系の公理 (neighborhood system axioms) を満たすとは、任意のx∈Xと任意のV,W⊆Xに対して次の五つがすべて成り立つことをいう。
- X∈N(x)である。
- V∈N(x)ならばx∈Vである。
- V∈N(x)かつV⊆WならばW∈N(x)である。
- V,W∈N(x)ならばV∩W∈N(x)である。
- V∈N(x)ならば{y∈X∣V∈N(y)}∈N(x)である。
条件 (e)を 局所性 (locality) という。
補題 6.6.Xを集合とし、OをXの位相とする。このとき、割り当てx↦NO(x)は近傍系の公理を満たす。
証明.x∈Xを固定する。X自身がxを含む開集合であるためX∈NO(x)であり、近傍の定義から各V∈NO(x)はxを含む。V∈NO(x)かつV⊆Wのとき、x∈U⊆Vを満たす開集合Uはx∈U⊆Wも満たすため、W∈NO(x)である。
V,W∈NO(x)のとき、x∈UV⊆Vとx∈UW⊆Wを満たす開集合UV,UWをとる。開集合UV∩UWはx∈UV∩UW⊆V∩Wを満たすため、V∩W∈NO(x)である。
V∈NO(x)とし、
GV={y∈X∣V∈NO(y)}とおく。x∈U⊆Vを満たす開集合Uをとると、各y∈Uに対して同じUがy∈U⊆Vを満たす。したがってx∈U⊆GVであり、GV∈NO(x)である。以上で五つがすべて成り立つ。▨
補題 6.7.Xを集合とし、割り当てx↦N(x)が近傍系の公理を満たすとする。このとき、
ON={U⊆X∣任意の x∈U に対して U∈N(x)}はXの位相である。
証明.∅について定義中の条件は空虚に成り立つため∅∈ONであり、定義 6.5 条件 (a)によりX∈ONである。{Uλ}λ∈ΛをONの元からなる集合族とし、U=⋃λ∈ΛUλとおく。各x∈Uに対してx∈Uλ0を満たすλ0∈Λが存在し、Uλ0∈N(x)かつUλ0⊆Uである。定義 6.5 条件 (c)からU∈N(x)となるため、U∈ONである。
nを正の整数とし、U1,…,Un∈ONとする。各x∈⋂i=1nUiに対してUi∈N(x)がすべてのiについて成り立ち、定義 6.5 条件 (d)をn−1回用いると⋂i=1nUi∈N(x)を得る。したがって⋂i=1nUi∈ONであり、ONはXの位相である。▨
補題 6.8.Xを集合とする。Xの任意の位相Oと、近傍系の公理を満たす任意の割り当てx↦N(x)に対して、
ONO=O,NON(x)=N(x)(x∈X)が成り立つ。
証明.U∈Oとx∈Uに対して、U自身がxの開近傍であるためU∈NO(x)であり、O⊆ONOを得る。逆にU∈ONOとすると、各x∈UについてU∈NO(x)であり、近傍の定義によりx∈G⊆Uを満たす開集合Gが存在する。補題 2.6によりUは開集合であり、ONO⊆Oを得る。以上の二つの包含からONO=Oである。
x∈XとV∈N(x)を固定し、
GV={y∈X∣V∈N(y)}とおく。定義 6.5 条件 (e)からGV∈N(x)であり、定義 6.5 条件 (b)からx∈GV⊆Vである。各y∈GVに定義 6.5 条件 (e)を適用するとGV∈N(y)を得るため、GV∈ONである。したがってV∈NON(x)であり、N(x)⊆NON(x)が成り立つ。
V∈NON(x)とすると、x∈U⊆Vを満たすU∈ONが存在する。U∈N(x)と定義 6.5 条件 (c)からV∈N(x)を得るため、逆の包含も成り立つ。▨
定理 6.9.Xを集合とする。位相Oに割り当てx↦NO(x)を対応させる写像は、Xの位相の全体から、近傍系の公理を満たすX上の割り当ての全体への全単射であり、その逆写像は割り当てNに位相ONを対応させる写像である。
証明.補題 6.6により、O↦(x↦NO(x))はXの位相の全体から、近傍系の公理を満たす割り当ての全体への写像である。補題 6.7により、N↦ONは逆向きの写像である。補題 6.8は、二つの写像の合成がどちらの順序でも恒等写像であることを与える。したがって、二つの写像は互いに逆な全単射である。▨
例 6.10.X={a,b,c}とし、
N(a)={{a,b},X},N(b)=N(c)={X}と定める。この割り当ては定義 6.5 条件 (a)、定義 6.5 条件 (b)、定義 6.5 条件 (c)、および定義 6.5 条件 (d)を満たすが、定義 6.5 条件 (e)を満たさない。また
{U⊆X∣任意の x∈U に対して U∈N(x)}={∅,X}であり、密着位相{∅,X}が定めるaの近傍系は{X}であってN(a)と異なる。したがって、定理 6.9が与える全単射性は、定義 6.5 条件 (e)を除いた四つだけを満たす割り当てへは及ばない。
証明. 各x∈XについてX∈N(x)であるから定義 6.5 条件 (a)が成り立つ。a∈{a,b}、a∈X、b∈X、c∈Xであるから定義 6.5 条件 (b)が成り立つ。{a,b}を含むXの部分集合は{a,b}とXであり、いずれもN(a)に属する。Xを含むXの部分集合はXだけであり、Xは三つの族のいずれにも属する。したがって定義 6.5 条件 (c)が成り立つ。{a,b}∩{a,b}={a,b}、{a,b}∩X={a,b}、X∩X=Xであるから定義 6.5 条件 (d)が成り立つ。
V={a,b}とおくとV∈N(a)である。VはN(b)にもN(c)にも属さないから{y∈X∣V∈N(y)}={a}であり、この集合はN(a)に属さない。したがって定義 6.5 条件 (e)は成り立たない。
O={U⊆X∣任意の x∈U に対して U∈N(x)}とおく。∅については定義中の条件が空虚に成り立ち、Xは三つの族のいずれにも属するから、∅とXはOに属する。U∈Oがa∈UかつU=Xを満たすとすると、U∈N(a)からU={a,b}であり、b∈UとU∈N(b)={X}からU=XとなってU=Xに反する。U∈Oがa∈/UかつU=∅を満たすとすると、b∈Uまたはc∈Uであり、N(b)=N(c)={X}からU=Xとなってa∈/Uに反する。したがってO={∅,X}である。
密着位相{∅,X}においてaを含む開集合はXだけであるから、定義 6.1によりaの近傍系は{X}である。{a,b}∈N(a)かつ{a,b}=Xであるから、N(a)={X}である。▨
7 近傍による特徴づけと集積点
定義 7.1.(X,O)を位相空間とし、A⊆X、x∈Xとする。xの任意の近傍Vが
V∩(A∖{x})=∅を満たすとき、xをAの 集積点 (accumulation point) という。
命題 7.2.(X,O)を位相空間とし、A⊆X、x∈Xとする。
- x∈int(A)であることとA∈NO(x)であることは同値である。
- x∈Aであることと、任意のV∈NO(x)に対してV∩A=∅であることは同値である。
- x∈∂Aであることと、任意のV∈NO(x)に対してV∩A=∅かつV∩(X∖A)=∅であることは同値である。
- x∈Aであることと、x∈AであるかxがAの集積点であるかの少なくとも一方が成り立つことは同値である。
証明.(1)を示す。x∈int(A)ならば、開集合int(A)がx∈int(A)⊆Aを満たすためA∈NO(x)である。逆にA∈NO(x)ならば、x∈U⊆Aを満たす開集合Uが存在し、命題 2.5 (1)によりU⊆int(A)であるためx∈int(A)である。
(2)を示す。x∈/Aならば、A⊆Fかつx∈/Fを満たす閉集合Fが存在し、開近傍X∖FはAと交わらない。逆にV∈NO(x)かつV∩A=∅を満たすVが存在するならば、x∈U⊆Vを満たす開集合Uに対してX∖UはAを含む閉集合である。したがって命題 2.5 (1)によりA⊆X∖Uであり、x∈/Aである。対偶を合わせると主張を得る。
(3)を示す。境界の定義∂A=A∩X∖Aと(2)をAおよびX∖Aに適用すると、x∈∂Aであることは、xの任意の近傍がAとX∖Aの双方に交わることと同値である。
(4)を示す。x∈Aならば、xの任意の近傍Vはxを含むためV∩A=∅であり、(2)によりx∈Aである。xがAの集積点ならば、xの任意の近傍VについてV∩(A∖{x})=∅であり、とくにV∩A=∅であるから、(2)によりx∈Aである。逆にx∈Aかつx∈/Aとすると、A∖{x}=Aであり、(2)によりxの任意の近傍VについてV∩(A∖{x})=V∩A=∅である。したがってxはAの集積点である。▨
証明. 二つの定義における開集合の全体はOdに一致する。閉集合は開集合の補集合として定まり、内部は含まれる開集合の全体の和集合として定まり、閉包は含む閉集合の全体の共通部分として定まるため、それぞれ一致する。境界については、距離空間における§E2.2 命題 3.2と本記事の命題 2.8 (1)により、いずれの定義もA∖int(A)とA∩X∖Aの同じ集合を与える。▨
命題 7.5.(X,d)を距離空間とし、Xに距離dから生じる位相を入れる。A⊆Xとx∈Xについて、次の二つは同値である。
- 任意の実数ε>0に対して(B(x,ε)∖{x})∩A=∅である。
- xの任意の近傍Vに対してV∩(A∖{x})=∅である。
証明.(2)を仮定し、実数ε>0をとる。命題 6.3 (2)をV=B(x,ε)について適用すると、B(x,ε)はxの近傍である。したがってB(x,ε)∩(A∖{x})=∅である。ここで
B(x,ε)∩(A∖{x})=(B(x,ε)∖{x})∩Aであるから、(1)が成り立つ。
(1)を仮定し、xの近傍Vをとる。命題 6.3 (2)により、B(x,ε)⊆Vを満たす実数ε>0が存在する。仮定から(B(x,ε)∖{x})∩A=∅であり、上の等式とB(x,ε)⊆Vから
(B(x,ε)∖{x})∩A⊆V∩(A∖{x})となる。したがってV∩(A∖{x})=∅であり、(2)が成り立つ。▨
8 位相を定める方法
9 演習
問題 9.1 (有限集合上の位相と内部、閉包、境界).X={a,b,c}とし、O={∅,{a},{a,b},X}とする。Oが位相であることを確かめ、{b}の内部、閉包、および境界を求めよ。
解答.
Oは包含関係について
∅⊆{a}⊆{a,b}⊆Xと並ぶ有限な集合族である。したがって、Oの空でない部分族の和集合はその最大の元に一致し、空の部分族の和集合は∅である。また、Oの空でない有限部分族の共通部分はその最小の元に一致する。よって、Oは位相の三つの公理を満たす。
閉集合の全体は、Oの各元の補集合をとることにより∅,{c},{b,c},Xとなる。{b}に含まれる開集合は∅だけであるため、int({b})=∅である。{b}を含む閉集合のうち最小のものは{b,c}であるため、{b}={b,c}である。したがって、命題 2.8 (1)により∂{b}={b,c}である。▨
問題 9.2 (補可算位相における有理数の内部、閉包、境界).X=Rに補可算位相を入れ、A=Qとする。Aの内部、閉包、および境界を求めよ。
解答.
Aは高々可算であるから閉集合であり、A=Aである。Aに含まれる空でない開集合Uが存在すると仮定する。補可算位相の定義によりR∖Uは高々可算であり、U⊆Aから
R=A∪(R∖U)となる。右辺は高々可算な二つの集合の和集合であるため、§E1.18 定理 5.1によりRは高々可算となる。これは§E1.19 定理 3.3に反する。したがって、int(A)=∅である。命題 2.8 (1)から∂A=Aを得る。▨
問題 9.3 (閉包作用素が定める位相).Xを無限集合とし、A⊆Xに対して
C(A)={AX(A が有限である場合),(A が無限である場合)と定める。CがX上の Kuratowski 閉包作用素であることを示し、補題 4.4 (3)で定めた位相OCを求めよ。
解答.
∅は有限であるからC(∅)=∅であり、定義 4.1 条件 (a)が成り立つ。Aが有限ならばC(A)=Aであり、Aが無限ならばC(A)=XであってA⊆Xであるから、定義 4.1 条件 (b)が成り立つ。Aが有限ならばC(A)=Aは有限であるからC(C(A))=A=C(A)であり、Aが無限ならばC(A)=Xは無限であるからC(C(A))=C(X)=X=C(A)である。よって定義 4.1 条件 (c)が成り立つ。AとBがともに有限ならばA∪Bも有限であり、C(A∪B)=A∪B=C(A)∪C(B)である。AとBの少なくとも一方が無限ならばA∪Bは無限であるからC(A∪B)=Xであり、C(A)とC(B)の少なくとも一方がXであるからC(A)∪C(B)=Xである。よって定義 4.1 条件 (d)が成り立ち、CはX上の Kuratowski 閉包作用素である。
FC={F⊆X∣C(F)=F}を求める。Fが有限ならばC(F)=FであるからF∈FCである。Fが無限ならばC(F)=Xであるから、C(F)=FであることとF=Xであることは同値である。したがって
FC={F⊆X∣F は有限である}∪{X}である。補題 4.4 (3)によりOC={X∖F∣F∈FC}である。Fが有限であるときX∖Fは補集合が有限である部分集合であり、F=XのときX∖F=∅である。逆に、U⊆Xの補集合X∖Uが有限であればX∖U∈FCであり、U=X∖(X∖U)であるからU∈OCである。ゆえに
OC={∅}∪{U⊆X∣X∖U は有限である}である。▨
問題 9.4 (二点集合の近傍系).X={a,b}とし、N(a)={{a},X}、N(b)={X}と定める。この割り当てが近傍系の五つの公理を満たすことを確かめ、ONを求めよ。
解答.
aについて、X∈N(a)であり、N(a)の各元はaを含む。{a}を含むXの部分集合は{a}とXであり、Xを含むXの部分集合はXだけであるため、定義 6.5 条件 (c)が成り立つ。N(a)の二つの元の共通部分も{a}またはXである。V={a}のとき{y∈X∣V∈N(y)}={a}であり、V=Xのとき同じ集合はXである。したがって、aについて五つがすべて成り立つ。
bについて、N(b)={X}であり、Xはbを含む。X⊆W⊆XならばW=Xであり、X∩X=Xである。また、{y∈X∣X∈N(y)}=X∈N(b)である。したがって、bについても五つがすべて成り立つ。
∅は空虚にONに属し、{a}はaの近傍であるため同じ族に属する。{b}はbの近傍でないため属さず、Xは両方の点の近傍であるため属する。ゆえにON={∅,{a},X}である。▨