1 逆像による連続性
定義 1.1. 位相空間(X,OX)、(Y,OY)と写像f:X→Yに対して、fが連続写像 (continuous map) であるとは、任意のV∈OYについてf−1(V)∈OXが成り立つことをいう。
定義 1.3. 位相空間X、Y、写像f:X→Yと点a∈Xに対して、fがaで連続 (continuity at a point) であるとは、f(a)の任意の近傍Wに対してf−1(W)がaの近傍であることをいう。
命題 1.4. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、fが連続写像であることと、定義 1.3に従ってfがXのすべての点で連続であることは同値である。
証明.fを連続とし、a∈Xとf(a)の近傍Wをとる。§E2.11 定義 6.1によりf(a)∈V⊆Wを満たすYの開集合Vが存在する。f−1(V)はXの開集合であり、a∈f−1(V)⊆f−1(W)であるから、f−1(W)はaの近傍である。したがってfはaで連続である。
逆に、fがXのすべての点で連続であるとし、VをYの開集合とする。a∈f−1(V)をとると、Vはf(a)の開近傍であるからf(a)の近傍であり、aにおける連続性によりf−1(V)はaの近傍である。よってa∈U⊆f−1(V)を満たすXの開集合Uが存在する。aはf−1(V)の任意の点であったから、§E2.11 補題 2.6によりf−1(V)はXの開集合である。したがってfは連続である。▨
命題 1.6. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、次の二条件は同値である。
- fは連続である。
- Yの任意の閉集合Fに対して、f−1(F)はXの閉集合である。
証明. 逆像は補集合と交換するから、任意のA⊆Yについてf−1(Y∖A)=X∖f−1(A)である(§E1.1 命題 4.4)。fが連続でFが閉ならば、Y∖Fは開であり、X∖f−1(F)=f−1(Y∖F)は開である。したがってf−1(F)は閉である。逆に、VがYの開集合ならばY∖Vは閉であり、X∖f−1(V)=f−1(Y∖V)は閉である。よってf−1(V)は開であり、fは連続である。▨
命題 1.7. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、次の二条件は同値である。閉包は、Xの部分集合についてはXの位相に関して、Yの部分集合についてはYの位相に関してとる。
- fは連続である。
- 任意のA⊆Xに対してf(A)⊆f(A)が成り立つ。
証明.(1)⇒(2)を示す。A⊆Xとする。f(A)はYの閉集合であるから、命題 1.6 (2)によりf−1(f(A))はXの閉集合である。f(A)⊆f(A)からA⊆f−1(f(A))であり、§E2.11 命題 2.5 (1)によりA⊆f−1(f(A))である。両辺の像をとってf(A)⊆f(A)を得る。
(2)⇒(1)を示す。FをYの閉集合とし、A=f−1(F)とおく。f(A)⊆Fであるから§E2.11 命題 2.5 (1)によりf(A)⊆Fであり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりF=Fである。仮定とあわせてf(A)⊆Fであり、A⊆f−1(F)=Aを得る。A⊆AとあわせてA=Aであるから、§E2.11 命題 2.5 (2)によりAはXの閉集合である。ゆえに命題 1.6によりfは連続である。▨
補題 1.8.Xを位相空間、(Y,dY)を距離空間とし、h:X→Yを写像とする。hが連続であることと、任意のx0∈Xと任意のε>0に対して、x0を含むXの開集合Uであって、すべてのx∈UがdY(h(x),h(x0))<εを満たすものが存在することは、同値である。
証明.hが連続であるとし、x0∈Xとε>0をとる。§E2.2 補題 1.2により開球B(h(x0),ε)はYの開集合であるから、定義 1.1によりU=h−1(B(h(x0),ε))はXの開集合である。dY(h(x0),h(x0))=0<εであるからx0∈Uであり、x∈UならばdY(h(x),h(x0))<εである。
逆に、上の条件を満たす開集合が常に存在すると仮定する。VをYの開集合とし、x0∈h−1(V)をとる。Vは開集合であるから、§E2.2 命題 2.6によりB(h(x0),ε)⊆Vを満たすε>0が存在する。このεに対して仮定が与える開集合をUとすると、x∈Uに対してdY(h(x),h(x0))<ε、すなわちh(x)∈Vであるから、x0∈U⊆h−1(V)である。§E2.11 補題 2.6によりh−1(V)はXの開集合である。よってhは連続である。▨
補題 1.9.(X,O)を位相空間、w:X→Rを写像とする。次の二条件は同値である。
- wは連続である。
- 任意のx∈Xとε>0に対して、xの開近傍Wであって、すべてのy∈Wについて∣w(y)−w(x)∣<εを満たすものが存在する。
証明.(1)⇒(2)を示す。x∈Xとε>0をとる。開集合(w(x)−ε,w(x)+ε)の逆像をWとすれば、Wはxの開近傍であり、y∈Wについて∣w(y)−w(x)∣<εである。
(2)⇒(1)を示す。V⊆Rを開集合とする。x∈w−1(V)に対して、B(w(x),ε)⊆Vを満たすε>0をとることができる。(2)が与える開近傍WはW⊆w−1(V)を満たす。したがってw−1(V)の各点はその内点であり、§E2.11 補題 2.6によりw−1(V)は開集合である。よってwは連続である。▨
命題 1.10. 位相空間X、Y、Zと連続写像f:X→Y、g:Y→Zに対して、g∘f:X→Zは連続である。
証明.WをZの開集合とする。(g∘f)−1(W)=f−1(g−1(W))であり、g−1(W)はYの開集合、さらにそのfによる逆像はXの開集合である。▨
例 1.11.Xを集合とし、Xに離散位相を入れる。任意の位相空間Yと任意の写像f:X→Yについて、Yの開集合Vの逆像f−1(V)はXの部分集合であり、離散位相ではXのすべての部分集合が開集合であるから、fは連続である。
Yを集合とし、Yに密着位相を入れる。任意の位相空間Xと任意の写像f:X→Yについて、密着位相に属するYの部分集合は∅とYの二つであり、f−1(∅)=∅とf−1(Y)=XはいずれもXの開集合であるから、fは連続である。
(X,O)を位相空間とする。任意のU∈OについてidX−1(U)=U∈Oであるから、恒等写像idX:(X,O)→(X,O)は連続である。
例 1.12. 位相空間X、Yと点c∈Yに対して、定値写像f:X→Y、f(x)=cは連続である。実際、Yの開集合Vの逆像f−1(V)は、c∈VならばX、c∈/Vならば∅であり、いずれもXの開集合である。
2 上半連続性と下半連続性
定義 2.1 (上半連続性、下半連続性).Xを位相空間、f:X→Rを写像とする。任意のa∈Rに対して
{x∈X∣f(x)>a}がXの開集合であるとき、fは 下半連続 (lower semicontinuous) であるという。任意のa∈Rに対して
{x∈X∣f(x)<a}がXの開集合であるとき、fは 上半連続 (upper semicontinuous) であるという。
命題 2.2.定義 2.1の記号のもとで、次の二条件が成り立つ。
- fが下半連続であることと、任意のa∈Rに対して{x∈X∣f(x)≤a}が閉集合であることは同値である。
- fが上半連続であることと、任意のa∈Rに対して{x∈X∣a≤f(x)}が閉集合であることは同値である。
証明. 各a∈Rについて
X∖{x∈X∣f(x)>a}={x∈X∣f(x)≤a}である。したがって、(1)は開集合と閉集合が補集合で対応することから従う。
同様に
X∖{x∈X∣f(x)<a}={x∈X∣a≤f(x)}であるから、(2)も同値である。▨
命題 2.3.Xを位相空間、f:X→Rを写像とする。fが下半連続であることと、−fが上半連続であることは同値である。fが上半連続であることと、−fが下半連続であることも同値である。
証明.a∈Rに対して
{x∈X∣−f(x)<a}={x∈X∣f(x)>−a}である。aがRを走ることと−aがRを走ることは同値であるから、fが下半連続であることと−fが上半連続であることは同値である。fを−fで置き換えれば、もう一つの同値も従う。▨
命題 2.4.Xを位相空間、f:X→Rを写像とする。fが連続であることと、fが下半連続かつ上半連続であることは同値である。
証明.fが連続であるとする。各a∈Rに対して(a,∞)と(−∞,a)はRの開集合であるから、定義 1.1により、それぞれのfによる逆像は開集合である。したがってfは下半連続かつ上半連続である。
逆に、fが下半連続かつ上半連続であるとする。VをRの開集合とし、x∈f−1(V)をとる。§E2.2 定義 1.1により、B(f(x),ε)⊆Vを満たすε>0が存在する。このとき
x∈{y∈X∣f(y)>f(x)−ε}∩{y∈X∣f(y)<f(x)+ε}⊆f−1(V)である。中央の集合は二つの開集合の共通部分であるから開集合である。したがってf−1(V)の各点は内点であり、§E2.11 補題 2.6によりf−1(V)は開集合である。よってfは連続である。▨
命題 2.5.Xを位相空間、Λを空でない集合、(fλ)λ∈ΛをXからRへの写像の族とする。
- 各fλが下半連続であり、各x∈Xに対して{fλ(x)∣λ∈Λ}が上に有界であるとする。このとき、f(x)=supλ∈Λfλ(x)(x∈X)で定める写像f:X→Rは下半連続である。
- 各fλが上半連続であり、各x∈Xに対して{fλ(x)∣λ∈Λ}が下に有界であるとする。このとき、g(x)=infλ∈Λfλ(x)(x∈X)で定める写像g:X→Rは上半連続である。
証明.(1)を示す。x∈Xに対して{fλ(x)∣λ∈Λ}は空でなく上に有界であるから、§D1.4 定義 1.2によりf(x)が存在する。a∈Rに対して
{x∈X∣f(x)>a}=λ∈Λ⋃{x∈X∣fλ(x)>a}が成り立つ。実際、右辺の各点ではf(x)がfλ(x)の上界であることからf(x)>aである。逆にf(x)>aならば、aは{fλ(x)∣λ∈Λ}の上界でないから、fλ(x)>aを満たすλ∈Λが存在する。右辺は開集合の任意和であるから開集合であり、fは下半連続である。
(2)を示す。hλ=−fλとおく。命題 2.3により各hλは下半連続である。各x∈Xに対して{hλ(x)∣λ∈Λ}は上に有界であり、§D1.4 命題 1.4により
λ∈Λsuphλ(x)=−g(x)が成り立つ。したがって(1)により−gは下半連続であり、命題 2.3によりgは上半連続である。▨
系 2.6.Xを位相空間、Λを空でない集合、(fλ)λ∈ΛをXからRへの連続写像の族とする。
- 各x∈Xに対して{fλ(x)∣λ∈Λ}が上に有界ならば、写像x↦supλ∈Λfλ(x)は下半連続である。
- 各x∈Xに対して{fλ(x)∣λ∈Λ}が下に有界ならば、写像x↦infλ∈Λfλ(x)は上半連続である。
定義 2.7 (指示関数).Xを位相空間、A⊆Xとする。Aの 指示関数 (indicator function) を
1A(x)={10(x∈A),(x∈X∖A)で定める。
命題 2.8.定義 2.7の記号のもとで、1Aが下半連続であることとAが開集合であることは同値であり、1Aが上半連続であることとAが閉集合であることは同値である。
証明.a∈Rに対して
{x∈X∣1A(x)>a}=⎩⎨⎧XA∅(a<0),(0≤a<1),(1≤a)である。したがってAが開集合ならば1Aは下半連続であり、1Aが下半連続ならばa=0としてAは開集合である。
また
{x∈X∣a≤1A(x)}=⎩⎨⎧XA∅(a≤0),(0<a≤1),(1<a)である。命題 2.2により、Aが閉集合ならば1Aは上半連続であり、1Aが上半連続ならばa=1としてAは閉集合である。▨
例 2.9.Rに通常の位相を入れる。(0,∞)は開集合で閉集合でなく、[0,∞)は閉集合で開集合でない。したがって命題 2.8により、1(0,∞)は下半連続であるが上半連続でなく、1[0,∞)は上半連続であるが下半連続でない。
3 始位相と終位相
定義 3.2 (始位相).Xを集合、{(Yλ,Oλ)}λ∈Λを位相空間の族、fλ:X→Yλ(λ∈Λ)を写像の族とする。すべてのfλを連続にするXの位相の全体をTとし、
I=T∈T⋂Tを、族(fλ)λ∈Λによる 始位相 (initial topology) という。
命題 3.3.定義 3.2のIはXの位相であり、次が成り立つ。
- すべてのλ∈Λに対して、fλ:(X,I)→(Yλ,Oλ)は連続である。
- O′をXの位相とする。すべてのλ∈Λに対してfλ:(X,O′)→(Yλ,Oλ)が連続ならば、I⊆O′である。
すなわちIは、すべてのfλを連続にするXの位相のうち最も粗いものである。
証明.Xの離散位相はすべてのfλを連続にするので、Tは空でない。各T∈Tは∅とXを含むから、Iも両者を含む。Iの元からなる集合族の和集合と有限個の元の共通部分は、すべてのT∈Tに属するから、Iに属する。したがってIはXの位相である。
(1)を示す。λ∈ΛとV∈Oλをとる。各T∈Tに関してfλは連続であるからfλ−1(V)∈Tであり、fλ−1(V)∈Iである。よってfλはIに関して連続である。
(2)を示す。すべてのfλを連続にするXの位相O′はTに属するから、I⊆O′である。▨
定理 3.4.定義 3.2の記号のもとでXに始位相Iを入れる。位相空間Zと写像g:Z→Xに対して、次の二条件は同値である。
- g:Z→(X,I)は連続である。
- すべてのλ∈Λに対してfλ∘g:Z→Yλは連続である。
証明.gが連続ならば、命題 3.3 (1)と命題 1.10により各fλ∘gは連続である。
逆に、すべてのfλ∘gが連続であるとする。Zの位相をOZとし、
T={U⊆X∣g−1(U)∈OZ}とおく。逆像は任意和と有限共通部分を保ち、g−1(∅)=∅、g−1(X)=Zであるから、TはXの位相である。λ∈ΛとV∈Oλに対して
g−1(fλ−1(V))=(fλ∘g)−1(V)∈OZであり、fλ−1(V)∈Tである。したがって各fλ:(X,T)→Yλは連続であり、命題 3.3 (2)によりI⊆Tである。ゆえにU∈Iならばg−1(U)∈OZであり、gは連続である。▨
系 3.5.定義 3.2の記号のもとで、Xの位相O′が次の性質をもつとする——任意の位相空間Zと任意の写像g:Z→Xに対して、g:Z→(X,O′)が連続であることと、すべてのλ∈Λに対してfλ∘g:Z→Yλが連続であることが同値である。このときO′=Iである。
証明.Z=(X,O′)としgを恒等写像とする。gは連続であるから、仮定によりすべてのfλ:(X,O′)→Yλは連続であり、命題 3.3 (2)によりI⊆O′である。
Z=(X,I)としgを恒等写像とする。命題 3.3 (1)によりすべてのfλ∘g=fλ:(X,I)→Yλは連続であるから、仮定によりg:(X,I)→(X,O′)は連続である。U∈O′に対してg−1(U)=UであるからO′⊆Iである。以上によりO′=Iである。▨
補題 3.6.Xを集合、(Y,OY)を位相空間、f:X→Yを写像とする。fによるXの始位相は
I={f−1(V)∣V∈OY}である。
証明. 右辺の集合族をTとする。f−1(∅)=∅、f−1(Y)=Xであるから、Tは∅とXを含む。W⊆Tに対してV={V∈OY∣f−1(V)∈W}とおくと、
⋃W=f−1(⋃V)∈Tである。またV1,V2∈OYに対してf−1(V1)∩f−1(V2)=f−1(V1∩V2)であるから、Tは有限共通部分についても閉じている。よってTはXの位相である。
Tの定義によりf:(X,T)→Yは連続であり、fを連続にするXの任意の位相はTを含む。したがって命題 3.3によりT=Iである。▨
命題 3.7.Xを集合、(Yλ)λ∈Λを集合の族、fλ:X→Yλ(λ∈Λ)を写像の族とする。各λ∈Λに対して、位相空間の族{(Zλ,μ,Oλ,μ)}μ∈Mλと写像の族gλ,μ:Yλ→Zλ,μ(μ∈Mλ)が与えられており、Yλの位相Oλは族(gλ,μ)μ∈Mλによる始位相であるとする。このとき、族(fλ)λ∈ΛによるXの始位相は、族(gλ,μ∘fλ)(λ,μ)(添字はλ∈Λとμ∈Mλの対を走る)によるXの始位相に一致する。
証明.Iを族(fλ)λ∈ΛによるXの始位相とする。位相空間Wと写像h:W→Xに対して、定理 3.4を二度適用すると、h:W→(X,I)が連続であることは、すべてのλ∈Λとμ∈Mλに対してgλ,μ∘fλ∘hが連続であることと同値である。したがって系 3.5により、Iは族(gλ,μ∘fλ)(λ,μ)による始位相に一致する。▨
定義 3.8 (終位相).Xを集合、{(Yλ,Oλ)}λ∈Λを位相空間の族、fλ:Yλ→X(λ∈Λ)を写像の族とする。
F={W⊆X∣すべての λ∈Λ に対して fλ−1(W)∈Oλ}を、族(fλ)λ∈Λによる 終位相 (final topology) という。
命題 3.9.定義 3.8のFはXの位相であり、次が成り立つ。
- すべてのλ∈Λに対して、fλ:(Yλ,Oλ)→(X,F)は連続である。
- O′をXの位相とする。すべてのλ∈Λに対してfλ:(Yλ,Oλ)→(X,O′)が連続ならば、O′⊆Fである。
すなわちFは、すべてのfλを連続にするXの位相のうち最も細かいものである。
証明. 各λについてfλ−1(∅)=∅∈Oλとfλ−1(X)=Yλ∈Oλであるから、∅,X∈Fである。Fの元からなる集合族(Wi)i∈Iに対して、§E1.2 定理 4.1により
fλ−1(i∈I⋃Wi)=i∈I⋃fλ−1(Wi)であり、右辺はOλに属する。W1,W2∈Fに対しても、§E1.1 命題 4.4によりfλ−1(W1∩W2)=fλ−1(W1)∩fλ−1(W2)∈Oλであり、帰納法により有限共通部分についても同じ結論が従う。したがってFは§E2.11 定義 1.1の三公理を満たす。
(1)はFの定義そのものである。(2)を示す。すべてのfλがO′に関して連続であるとすると、W∈O′に対してfλ−1(W)∈Oλがすべてのλについて成り立つ。Fの定義からW∈Fであり、O′⊆Fである。▨
定理 3.10.定義 3.8の記号のもとでXに終位相Fを入れる。位相空間Zと写像h:X→Zに対して、次の二条件は同値である。
- h:(X,F)→Zは連続である。
- すべてのλ∈Λに対してh∘fλ:Yλ→Zは連続である。
証明.hが連続であるとする。命題 3.9 (1)により各fλは連続であるから、命題 1.10により各h∘fλは連続である。
逆に、すべてのh∘fλが連続であるとする。Zの開集合Vに対して、§E1.1 命題 4.8により
fλ−1(h−1(V))=(h∘fλ)−1(V)であり、右辺はYλの開集合である。これがすべてのλについて成り立つので、Fの定義によりh−1(V)∈Fである。したがってhは連続である。▨
系 3.11.定義 3.8の記号のもとで、Xの位相O′が次の性質をもつとする——任意の位相空間Zと任意の写像h:X→Zに対して、h:(X,O′)→Zが連続であることと、すべてのλ∈Λに対してh∘fλ:Yλ→Zが連続であることが同値である。このときO′=Fである。
証明.Z=(X,O′)としhを恒等写像とする。hは連続であるから、仮定によりすべてのfλ:Yλ→(X,O′)は連続であり、命題 3.9 (2)によりO′⊆Fである。
Z=(X,F)としhを恒等写像とする。命題 3.9 (1)によりすべてのh∘fλ=fλ:Yλ→(X,F)は連続であるから、仮定によりh:(X,O′)→(X,F)は連続である。W∈Fに対してh−1(W)=WであるからF⊆O′である。以上によりO′=Fである。▨
4 相対位相と部分空間
定義 4.1 (部分空間位相、部分空間).(X,O)を位相空間とし、A⊆Xとする。
OA={U∩A∣U∈O}で定める集合族をAの 部分空間位相 (subspace topology) といい、(A,OA)をXの 部分空間 (subspace) という。部分空間位相は 相対位相 (relative topology) ともいう。
定義 4.2 (包含写像).(X,O)を位相空間、A⊆Xとする。各a∈Aにa自身を対応させる写像ιA:A→Xを、Aの 包含写像 (inclusion map) という。
命題 4.3.定義 4.1のOAは、包含写像ιA:A→X一本による始位相である。とくにOAはAの位相である。
証明.U∈Oに対してιA−1(U)=U∩Aであるから、{ιA−1(U)∣U∈O}=OAである。補題 3.6により、ιAによる始位相はこの集合族に等しい。始位相はAの位相であるから、OAはAの位相である。▨
定理 4.4.(X,O)を位相空間、A⊆Xとし、ιA:A→Xを包含写像とする。
- ιA:(A,OA)→(X,O)は連続である。
- O′をAの位相とし、ιA:(A,O′)→(X,O)が連続ならばOA⊆O′である。
- 位相空間(Z,OZ)と写像f:Z→Aに対して、f:Z→(A,OA)が連続であることと、ιA∘f:Z→Xが連続であることは同値である。
証明.命題 4.3によりOAはιAによる始位相である。第一項と第二項は命題 3.3を、第三項は定理 3.4を、この始位相へ適用したものである。▨
系 4.5.(X,O)を位相空間とし、B⊆A⊆Xとする。AにXからの部分空間位相OAを入れたとき、Bに(A,OA)から定まる部分空間位相と、Bに(X,O)から定まる部分空間位相は一致する。
証明. 包含写像B→AとA→Xの合成は包含写像B→Xである。部分空間位相は包含写像による始位相であるから、命題 3.7により二つの部分空間位相は一致する。▨
命題 4.6.(X,O)を位相空間、A⊆Xとする。C⊆AがAの閉集合であることと、C=F∩Aを満たすXの閉集合Fが存在することは同値である。
証明.CがAで閉であるとすると、A∖C∈OAである。A∖C=U∩Aを満たすU∈Oをとり、F=X∖Uとおく。FはXで閉であり、C⊆Aを用いると
F∩A=(X∖U)∩A=A∖(U∩A)=A∖(A∖C)=Cである。逆にC=F∩AでありFがXで閉であるとする。U=X∖Fは開であり、A∖C=U∩A∈OAであるからCはAで閉である。▨
命題 4.7.(X,O)を位相空間、A⊆X、B⊆Aとする。このとき次が成り立つ。
- clA(B)=clX(B)∩A。
- intA(B)=A∖clX(A∖B)。
- intX(B)∩A⊆intA(B)。この包含は一般に等号でない。
- 任意のC⊆Xについて、∂A(C∩A)⊆A∩∂XCである。
- AがXの開集合ならば、任意のC⊆Xについて∂A(C∩A)=A∩∂XCである。
証明.(1)を示す。clX(B)∩Aは命題 4.6によりAで閉であり、Bを含む。閉包の最小性(§E2.11 命題 2.5 (1))からclA(B)⊆clX(B)∩Aである。逆に、命題 4.6によりclA(B)=F∩Aを満たすXの閉集合Fが存在する。B⊆Fであるから閉包の最小性よりclX(B)⊆Fであり、clX(B)∩A⊆F∩A=clA(B)を得る。
(2)を示す。§E2.11 命題 2.5 (3)が与える補集合による内部の表示を部分空間Aで用い、(1)をA∖Bに適用すると
intA(B)=A∖clA(A∖B)=A∖(clX(A∖B)∩A)=A∖clX(A∖B)である。
(3)を示す。intX(B)∩AはAの開集合である。§E2.11 命題 2.5 (1)によりintX(B)⊆Bであるから、intX(B)∩A⊆Bである。内部の最大性(§E2.11 命題 2.5 (1))から所要の包含を得る。
(4)と(5)を示す。C⊆Xとする。(1)により
clA(C∩A)=A∩clX(C∩A)⊆A∩clX(C)である。Aが開集合であるとき、x∈A∩clX(C)のAにおける任意の開近傍はXの開集合でもあるのでC∩Aと交わる。したがって、この包含は等号である。X∖Cにも同じことが成り立つから、二つの閉包の共通部分をとると
∂A(C∩A)=clA(C∩A)∩clA(A∖C)⊆A∩clX(C)∩clX(X∖C)=A∩∂XCを得る。Aが開集合ならば、包含は等号である。▨
命題 4.8.(X,d)を距離空間とし、Odをdが生じる位相とする。A⊆Xに制限距離dAを入れると、dAが生じるAの位相はOdの部分空間位相(Od)Aに一致する。
証明.§E2.1 命題 2.2により、a∈Aとε>0に対してBdA(a,ε)=Bd(a,ε)∩Aである。
VをdAが生じる位相の開集合とする。各a∈Vに対してBdA(a,ε)⊆Vを満たすε>0が存在する。したがって
U=⋃{Bd(a,ε)∣a∈V, ε>0, BdA(a,ε)⊆V}はXの開集合であり、U∩A=Vである。よってV∈(Od)Aである。
逆にU∈Odとa∈U∩Aをとる。§E2.2 定義 1.1によりBd(a,ε)⊆Uを満たすε>0が存在する。両辺とAの共通部分をとるとBdA(a,ε)⊆U∩Aである。aはU∩Aの任意の元であったから、§E2.2 定義 1.1によりU∩AはdAが生じる位相で開である。▨
例 4.9.X=Rに通常の位相を入れ、A=[0,1]、B=[0,1/2)とおく。U=(−1,1/2)はXの開集合でありU∩A=Bであるから、BはAで開である。
BはXで開でない。実際、0∈Bであるが、任意のε>0に対して−ε/2∈B(0,ε)∖Bであるから、§E2.2 定義 1.1の条件を0で満たさない。
したがってintA(B)=Bである一方、intX(B)=(0,1/2)である。ゆえにintX(B)∩A⊊intA(B)となる。またclX(B)=[0,1/2]であるから、命題 4.7 (1)によりclA(B)=[0,1/2]である。
命題 4.10.(X,O)を位相空間、(Ai)i∈IをX=⋃i∈IAiを満たす部分集合の族とし、各Aiに部分空間位相を入れる。包含写像の族(ιAi)i∈Iによる終位相をFとする。
- O⊆Fである。
- すべてのAiがXの開集合ならばF=Oである。
- Iが有限集合であり、すべてのAiがXの閉集合ならば、F=Oである。
証明は演習とする(問題 9.3)。等号が一般には成り立たないことは、問題 9.4で確かめる。
系 4.11.X、Yを位相空間、(Ai)i∈IをX=⋃i∈IAiを満たすXの部分集合の族とし、各Aiに部分空間位相を入れる。連続写像fi:Ai→Yが、任意のi,j∈IについてAi∩Aj上で一致するとする。各Aiへの制限がfiとなる写像f:X→Yは一意に定まる。次のいずれかの条件が成り立つとき、fは連続である。
- 各i∈Iに対してAiはXの開集合である。
- Iは有限集合であり、各i∈Iに対してAiはXの閉集合である。
証明.X=⋃i∈IAiと重なりでの一致により、各Ai上でfiと一致する写像f:X→Yが一意に定まる。(1)または(2)が成り立つとき、命題 4.10 (2)または命題 4.10 (3)により、Xの位相は包含写像の族による終位相である。したがって定理 3.10によりfは連続である。▨
5 開写像と閉写像
定義 5.1. 位相空間X、Yと写像f:X→Yに対して、fが開写像 (open map) であるとは、Xの任意の開集合Uに対してf(U)がYの開集合であることをいう。fが閉写像 (closed map) であるとは、Xの任意の閉集合Fに対してf(F)がYの閉集合であることをいう。
命題 5.3. 位相空間X、Y、Zと写像f:X→Y、g:Y→Zについて、次が成り立つ。
- fとgがともに開写像ならば、g∘fは開写像である。
- fとgがともに閉写像ならば、g∘fは閉写像である。
証明. 任意のA⊆Xについて(g∘f)(A)=g(f(A))が成り立つ(§E1.1 命題 4.8)。UをXの開集合とすると、fが開写像であるからf(U)はYの開集合であり、gが開写像であるからg(f(U))はZの開集合である。FをXの閉集合とすると、fが閉写像であるからf(F)はYの閉集合であり、gが閉写像であるからg(f(F))はZの閉集合である。▨
補題 5.4.Xを位相空間とする。
- 任意の開集合U⊂Xに対し、包含写像U→Xは開連続写像である。
- 任意の閉集合F⊂Xに対し、包含写像F→Xは閉連続写像である。
補題 5.5.X、Yを集合、f:X→Yを写像、B⊆Yとし、A=f−1(B)、g:A→B、g(x)=f(x)とする。任意のS⊆Xに対して
g(A∩S)=B∩f(S)が成り立つ。
証明.A∩S⊆Sであるからg(A∩S)=f(A∩S)⊆f(S)であり、gの終域がBであることからg(A∩S)⊆Bである。よってg(A∩S)⊆B∩f(S)である。
逆にy∈B∩f(S)とすると、y=f(x)を満たすx∈Sが存在する。f(x)=y∈Bであるからx∈f−1(B)=Aであり、x∈A∩Sである。ゆえにy=g(x)∈g(A∩S)である。▨
補題 5.6. 位相空間X、Yと写像f:X→Y、部分集合B⊆Yに対してA=f−1(B)とおき、値域と終域を制限した写像をg:A→B、g(x)=f(x)とする。x∈Aに対してf(x)∈Bであるからgは写像として定まり、次が成り立つ。
- fが連続ならばgは連続である。
- fが開写像ならばgは開写像である。
- fが閉写像ならばgは閉写像である。
証明.(1)を示す。包含写像をιA:A→X、ιB:B→Yと書くと、Aの各元xに対して(ιB∘g)(x)=f(x)=(f∘ιA)(x)であるからιB∘g=f∘ιAである。定理 4.4によりιAは連続であり、fは連続であるから、命題 1.10によりιB∘gは連続である。ゆえに定理 4.4によりgは連続である。
(2)を示す。U⊆Aを部分空間Aの開集合とする。このとき、Xの開集合U′でU=A∩U′を満たすものが存在する。補題 5.5をS=U′へ適用するとg(U)=g(A∩U′)=B∩f(U′)が従う。fは開写像であるからf(U′)はYの開集合であり、よってg(U)=B∩f(U′)は部分空間Bの開集合である。以上よりgは開写像である。
(3)を示す。F⊆Aを部分空間Aの閉集合とする。このとき、Xの閉集合F′でF=A∩F′を満たすものが存在する。補題 5.5をS=F′へ適用するとg(F)=g(A∩F′)=B∩f(F′)が従う。fは閉写像であるからf(F′)はYの閉集合であり、よってg(F)=B∩f(F′)は部分空間Bの閉集合である。以上よりgは閉写像である。▨
命題 5.7. 集合X上の二つの位相O1、O2と恒等写像idX:(X,O1)→(X,O2)について、次が成り立つ。
- idXが連続であることと、終域の位相O2が定義域の位相O1より粗いこと、すなわちO2⊆O1が成り立つことは同値である。
- idXが開写像であることと、idXが閉写像であることと、定義域の位相O1が終域の位相O2より粗いこと、すなわちO1⊆O2が成り立つことは同値である。
証明.(1)を示す。任意のA⊆XについてidX−1(A)=Aである。したがってidXが連続であることは、O2の任意の元がO1に属すること、すなわちO2⊆O1と同値である。
(2)を示す。任意のA⊆XについてidX(A)=Aである。したがってidXが開写像であることは、O1の任意の元がO2に属すること、すなわちO1⊆O2と同値である。またidXが閉写像であることは、O1に関する任意の閉集合がO2に関する閉集合であることと同値である。F⊆XがO1に関する閉集合であることはX∖F∈O1と同値であり、O2に関する閉集合であることはX∖F∈O2と同値である。FがXの部分集合全体を動くときX∖FもXの部分集合全体を動くから、この条件もまたO1⊆O2と同値である。▨
命題 5.8. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、次が成り立つ。内部と閉包は、Xの部分集合についてはXの位相に関して、Yの部分集合についてはYの位相に関してとる。
- fが開写像であることと、任意のA⊆Xに対してf(int(A))⊆int(f(A))が成り立つこととは同値である。
- fが閉写像であることと、任意のA⊆Xに対してf(A)⊆f(A)が成り立つこととは同値である。
証明は演習とする(問題 9.8)。
命題 5.9. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、次の四条件は同値である。
- fは開写像かつ連続写像である。
- 任意のB⊆Yについてf−1(intY(B))=intX(f−1(B))である。
- 任意のB⊆Yについてf−1(clY(B))=clX(f−1(B))である。
- 任意のB⊆Yについてf−1(∂YB)=∂Xf−1(B)である。
証明は演習とする(問題 9.9)。
定理 5.10. 位相空間X、Yと写像f:X→Yについて、次の三条件は同値である。閉包は、Xの部分集合についてはXの位相に関して、Yの部分集合についてはYの位相に関してとる。
- fは閉写像である。
- 任意のA⊆Xに対してf(A)⊆f(A)が成り立つ。
- 任意のy∈Yと、f−1({y})⊆Uを満たすXの任意の開集合Uに対して、y∈Vかつf−1(V)⊆Uを満たすYの開集合Vが存在する。
証明.(1)⇔(2)は命題 5.8 (2)である。
(1)⇒(3)を示す。y∈Yと、f−1({y})⊆Uを満たすXの開集合Uをとり、F=X∖Uとおく。FはXの閉集合であるからf(F)はYの閉集合であり、V=Y∖f(F)はYの開集合である。y∈f(F)とするとf(x)=yを満たすx∈Fが存在し、x∈f−1({y})⊆Uとなってx∈X∖Uと両立しないから、y∈Vである。x∈f−1(V)かつx∈/Uとするとx∈Fであるからf(x)∈f(F)となり、f(x)∈Vと両立しない。ゆえにf−1(V)⊆Uである。
(3)⇒(1)を示す。FをXの閉集合とし、y∈Y∖f(F)をとる。x∈f−1({y})がFに属するとするとy=f(x)∈f(F)となってyの取り方に反するから、f−1({y})⊆X∖Fである。X∖FはXの開集合であるから、仮定によりy∈Vかつf−1(V)⊆X∖Fを満たすYの開集合Vが存在する。y′∈V∩f(F)とするとf(x)=y′を満たすx∈Fが存在し、f(x)∈Vからx∈f−1(V)⊆X∖Fとなってx∈Fと両立しない。ゆえにV⊆Y∖f(F)であり、Vはyを含む開集合であるから、§E2.11 補題 2.6によりY∖f(F)はYの開集合である。したがってf(F)はYの閉集合である。▨
(3)は、f−1({y})を含む開集合の内側にyの近傍の全逆像をとることを要求する。この条件を管状条件とよぶ。
系 5.11. 位相空間X、Yと閉写像f:X→Y、部分集合B⊆Yに対して、f−1(B)⊆Uを満たすXの任意の開集合Uをとると、B⊆Wかつf−1(W)⊆Uを満たすYの開集合Wが存在する。
証明.f−1(V)⊆Uを満たすYの開集合Vの全体をVとおき、W=⋃Vとおく。§E2.11 定義 1.1 条件 (b)によりWはYの開集合であり、§E1.2 定理 4.1 (1)によりf−1(W)=⋃V∈Vf−1(V)⊆Uである。y∈Bをとるとf−1({y})⊆f−1(B)⊆Uであるから、定理 5.10 (3)によりy∈Vかつf−1(V)⊆Uを満たすYの開集合Vが存在し、V∈Vであるからy∈Wである。ゆえにB⊆Wである。▨
系 5.12. 位相空間X、Yと全射な閉写像f:X→Yについて、任意のy∈Yと、f−1({y})⊆Uを満たすXの任意の開集合Uに対してy∈int(f(U))が成り立つ。
証明.定理 5.10 (3)により、y∈Vかつf−1(V)⊆Uを満たすYの開集合Vが存在する。fは全射であるから、§E1.1 命題 4.10 (3)によりV=f(f−1(V))であり、f−1(V)⊆UとあわせてV⊆f(U)である。Vはf(U)に含まれる開集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりV⊆int(f(U))であり、y∈Vからy∈int(f(U))が従う。▨
例 5.14.X=Rとし、Ouを§E2.11 例 1.4に従って通常の距離d(s,t)=∣s−t∣から生じる位相、Odを離散位相とする。離散位相はXのすべての部分集合を開集合とするからOu⊆Odである。{0}はOdに属する。他方、任意のε>0に対してε/2∈B(0,ε)かつε/2∈/{0}であるから、{0}は§E2.2 定義 1.1で定める条件を点0で満たさず、Ouに属さない。したがってOd⊆Ouは成り立たない。
恒等写像idX:(X,Od)→(X,Ou)は、命題 5.7 (1)により連続であり、命題 5.7 (2)により開写像でも閉写像でもない。恒等写像idX:(X,Ou)→(X,Od)は、命題 5.7 (2)により開写像かつ閉写像であり、命題 5.7 (1)により連続でない。したがって、開写像であることは連続であることを含意せず、連続であることは開写像であることを含意しない。同じ二つの写像により、閉写像であることと連続であることも互いに他を含意しない。
例 5.15.Y={a,c}にOY={∅,{a},Y}を入れる。OYは∅とYを含み、OYの元の任意個の和集合と有限個の共通部分はふたたびOYに属するから、OYはYの位相である。Yの閉集合は補集合がOYに属する部分集合であるから、Y、{c}、∅の三つである。
P={p}を一点集合とし、Pに位相{∅,P}を入れる。Pの開集合は∅とPであり、Pの閉集合も∅とPである。写像u:P→Yをu(p)=aで定めると、u(∅)=∅とu(P)={a}はいずれもYの開集合であるからuは開写像であり、{a}がYの閉集合でないからuは閉写像でない。写像v:P→Yをv(p)=cで定めると、v(∅)=∅とv(P)={c}はいずれもYの閉集合であるからvは閉写像であり、{c}がOYに属さないからvは開写像でない。したがって、開写像であることと閉写像であることも互いに他を含意しない。
命題 5.16.(X,O)を位相空間、A⊆Xとし、ιA:A→Xを包含写像とする。
- ιAが開写像であることと、AがXの開集合であることは同値である。
- ιAが閉写像であることと、AがXの閉集合であることは同値である。
証明.V⊆Aに対してιA(V)=Vである。
(1)を示す。ιAが開写像であるとする。AはOAに属するから、ιA(A)=AはXの開集合である。逆向きの証明は問題 9.2とし、その解答で与える。
(2)を示す。ιAが閉写像であるとする。AはAの閉集合であるから、ιA(A)=AはXの閉集合である。逆向きの証明も同じ問題の解答で与える。▨
命題 5.17. 位相空間X、Yと写像f:X→Y、部分集合A⊆Xに対してAに部分空間位相を入れ、制限をf∣A:A→Y、f∣A(x)=f(x)とする。
- AがXの開集合でありfが開写像ならば、f∣Aは開写像である。
- AがXの閉集合でありfが閉写像ならば、f∣Aは閉写像である。
証明. 包含写像をιA:A→Xと書くと、x∈Aに対して(f∘ιA)(x)=f(x)であるからf∣A=f∘ιAである。
(1)を示す。AがXの開集合であるから、命題 5.16 (1)によりιAは開写像である。fも開写像であるから、命題 5.3によりf∣Aは開写像である。
(2)を示す。AがXの閉集合であるから、命題 5.16 (2)によりιAは閉写像である。fも閉写像であるから、命題 5.3によりf∣Aは閉写像である。▨
命題 5.18. 位相空間X、Yと写像f:X→Y、部分集合B⊆Yに対してA=f−1(B)とおき、値域と終域を制限した写像をg:A→B、g(x)=f(x)とする。AとBには部分空間位相を入れる。fが開写像ならばgは開写像である。
例 5.19.Rに通常の位相を入れ、部分集合には部分空間位相を入れる。
- 包含写像ι:(0,1)→Rは開写像であって閉写像でない。
- 包含写像ι:[0,1]→Rは閉写像であって開写像でない。
証明.(1)を示す。(0,1)=B(1/2,1/2)であるから、§E2.2 補題 1.2により(0,1)はRの開集合であり、命題 5.16 (1)によりιは開写像である。(0,1)は部分空間(0,1)の閉集合でありι((0,1))=(0,1)である。0∈R∖(0,1)であり、任意のε>0に対してmin{ε,1}/2∈B(0,ε)∩(0,1)であるから、R∖(0,1)は§E2.2 定義 1.1で定める条件を点0で満たさず、Rの開集合でない。したがって(0,1)はRの閉集合でなく、ιは閉写像でない。
(2)を示す。[0,1]={t∈R∣∣t−1/2∣≤1/2}は1/2を中心とする半径1/2の閉球であるから、§E2.2 補題 2.5によりRの閉集合であり、命題 5.16 (2)によりιは閉写像である。[0,1]は部分空間[0,1]の開集合でありι([0,1])=[0,1]である。任意のε>0に対して−ε/2∈B(0,ε)∖[0,1]であるから、[0,1]は§E2.2 定義 1.1で定める条件を点0で満たさず、Rの開集合でない。したがってιは開写像でない。▨
命題 5.21. 位相空間X、Yと写像f:X→Y、およびYの開集合からなる族(Vi)i∈IでY=⋃i∈IViを満たすものをとる。各i∈Iに対してAi=f−1(Vi)とおき、値域と終域を制限した写像をgi:Ai→Vi、gi(x)=f(x)とする。すべてのgiが閉写像ならば、fは閉写像である。
証明は演習とする(問題 9.5)。
6 同相写像と位相的埋め込み
定義 6.1. 位相空間X、Yと写像f:X→Yに対して、fが同相写像 (homeomorphism) であるとは、fが全単射であり、fと逆写像f−1:Y→Xがともに連続であることをいう。同相写像X→Yが存在するとき、XとYは同相 (homeomorphic) であるといい、X≅Yと書く。
命題 6.2. 位相空間X、Y、Zについて、次が成り立つ。
- X≅Xである。
- X≅YならばY≅Xである。
- X≅YかつY≅ZならばX≅Zである。
証明.(1)を示す。idXは自分自身を逆写像にもつから、§E1.1 命題 3.8により全単射である。例 1.11によりidXは連続であるから、idXは同相写像でありX≅Xである。
(2)を示す。f:X→Yを同相写像とする。fはf−1の逆写像であるから、§E1.1 命題 3.8によりf−1は全単射である。定義 6.1によりf−1と、その逆写像であるfはともに連続であるから、f−1は同相写像でありY≅Xである。
(3)を示す。f:X→Yとg:Y→Zを同相写像とする。合成の結合法則により(f−1∘g−1)∘(g∘f)=idXかつ(g∘f)∘(f−1∘g−1)=idZであるから、f−1∘g−1はg∘fの逆写像であり、§E1.1 命題 3.8によりg∘fは全単射である。命題 1.10をfとgに適用するとg∘fは連続であり、g−1とf−1に適用するとf−1∘g−1は連続である。したがってg∘fは同相写像でありX≅Zである。▨
命題 6.3. 位相空間X、Yと連続な全単射f:X→Yについて、次の六条件は同値である。
- fは同相写像である。
- fは開写像である。
- fは閉写像である。
- 任意のA⊆Xについてf(clX(A))=clY(f(A))である。
- 任意のA⊆Xについてf(intX(A))=intY(f(A))である。
- 任意のA⊆Xについてf(∂XA)=∂Yf(A)である。
証明.fは全単射なので、U⊆Xに対するf−1:Y→Xの逆像はf(U)である。したがって、f−1の連続性は(2)と同値であり、(1)と(2)は同値である。さらにfの単射性と全射性からf(X∖A)=Y∖f(A)が任意のA⊆Xについて成り立つ。補集合をとることは開集合と閉集合を交換するので、(2)と(3)は同値である。
命題 1.7 (2)により、任意のA⊆Xについてf(clX(A))⊆clY(f(A))である。逆の包含がすべてのAについて成り立つことは、命題 5.8 (2)によりfが閉写像であることと同値である。したがって(3)と(4)は同値である。
fは全単射であるから、AがXの部分集合全体を動くとき、B=f(A)はYの部分集合全体を動き、f−1(B)=Aである。したがって、命題 5.9 (2)と命題 5.9 (4)の等式に像をとると、それぞれ(5)と(6)の等式を得る。fは連続であるから、命題 5.9により、(2)はこれら二条件のそれぞれと同値である。▨
定義と判定条件を具体的な写像に当てはめる。実数直線は、その部分集合である開区間と同相である。
補題 6.4.
φ(t)=1+∣t∣t(t∈R),ψ(s)=1−∣s∣s(s∈(−1,1))と定める。φはRから(−1,1)への同相写像であり、その逆写像はψである。
証明は演習とする(問題 9.7)。
定義 6.5. 位相空間についての性質Pが位相的性質 (topological property) であるとは、任意の位相空間X、Yについて、XがPを満たしX≅YならばYもPを満たすことをいう。
定義 6.6. 位相空間(X,O)が距離化可能 (metrizable) であるとは、X上の距離dであって、§E2.11 例 1.4に従ってdから生じる位相がOに一致するものが存在することをいう。
命題 6.7. 位相空間X、Y、同相写像f:X→Yと、Xの位相を定めるX上の距離dについて、
e(y,y′)=d(f−1(y),f−1(y′))はY上の距離であり、eが定める位相はYの位相に一致する。
証明.fは全単射でありf自身がf−1の逆写像であるから、§E1.1 命題 3.8によりf−1:Y→Xは全単射である。
eが距離の三条件を満たすことを示す。y,y′∈Yについてe(y,y′)=0とするとd(f−1(y),f−1(y′))=0であり、dの第一条件によりf−1(y)=f−1(y′)であるから、f−1の単射性によりy=y′である。逆にy=y′ならばe(y,y′)=d(f−1(y),f−1(y))=0である。対称性はdの対称性からe(y,y′)=d(f−1(y),f−1(y′))=d(f−1(y′),f−1(y))=e(y′,y)として従う。y,y′,y′′∈Yについて、dの三角不等式により
e(y,y′′)=d(f−1(y),f−1(y′′))≤d(f−1(y),f−1(y′))+d(f−1(y′),f−1(y′′))=e(y,y′)+e(y′,y′′)である。したがってeはY上の距離である。
任意のy∈Yとr>0について
Be(y,r)=f(Bd(f−1(y),r))が成り立つ。実際、y′∈Yについて、y′∈Be(y,r)はd(f−1(y),f−1(y′))<rと同値であり、これはf−1(y′)∈Bd(f−1(y),r)と同値である。f−1が全単射であるから、f−1(y′)∈Bd(f−1(y),r)はy′∈f(Bd(f−1(y),r))と同値である。
dが定める位相はXの位相に一致するから、Xの開集合は§E2.2 定義 1.1に従ってdに関する開集合である部分集合にほかならない。VをYの開集合とし、y∈Vとする。fは連続であるからf−1(V)はXの開集合であり、§E2.2 定義 1.1によりBd(f−1(y),r)⊆f−1(V)を満たすr>0が存在する。上の等式と、fが全射であることによるf(f−1(V))=V(§E1.1 命題 4.10)からBe(y,r)⊆Vである。よってVはeについて開集合である。
逆に、Vをeについて開集合とし、y∈Vとする。§E2.2 定義 1.1によりBe(y,r)⊆Vを満たすr>0が存在する。Bd(f−1(y),r)は§E2.2 補題 1.2によりdについて開集合であり、したがってXの開集合である。fは同相写像であるから命題 6.3により開写像であり、Be(y,r)=f(Bd(f−1(y),r))はYの開集合である。e(y,y)=0<rからy∈Be(y,r)⊆Vであるので、§E2.11 補題 2.6によりVはYの開集合である。
以上により、V⊆YがYの開集合であることとeについて開集合であることは同値であり、eが定める位相はYの位相に一致する。▨
例 6.8. 離散的であることは位相的性質である。実際、f:X→Yが同相写像でXが離散的ならば、任意のV⊆Yに対してf−1(V)はXで開であり、fが全射であることからV=f(f−1(V))(§E1.1 命題 4.10)であるから、命題 6.3によりVはYで開である。
距離化可能であることは位相的性質である。実際、Xが距離化可能でありf:X→Yが同相写像ならば、定義 6.6によりXの位相を定める距離dをとることができる。命題 6.7はYの位相を定めるY上の距離を与えるから、Yは距離化可能である。
離散的であることが位相的性質であることから、例 5.14の(R,Od)と(R,Ou)は同相でない。実際、(R,Od)は離散的である一方、{0}はOuに属さないから(R,Ou)は離散的でない。
例 6.9.例 5.14の位相をとり、X=(R,Od)、Y=(R,Ou)とおいて、恒等写像f:X→Yを考える。fは全単射であり、命題 5.7 (1)により連続である。{0}は例 5.14によりOdに属してOuに属さないから、{0}はXの開集合でありf({0})={0}はYの開集合でない。したがってfは開写像でなく、命題 6.3により同相写像でない。定義域がコンパクトであり終域が Hausdorff であるならば連続な全単射がつねに同相写像であることは、後続の記事が証明する。
定義 6.10 (位相的埋め込み). 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yに対して、fが 位相的埋め込み (topological embedding) であるとは、fが単射であり、終域を像へ制限した写像X→f(X)が同相写像であることをいう。ここでf(X)にはYからの部分空間位相を入れる。
補題 6.11.f:X→Yを位相空間の間の写像とする。このとき、fが位相的埋め込みであるための必要十分条件は、fが単射連続写像であり、さらに任意の開集合U⊂Xに対し、ある開集合V⊂Yが存在してU=f−1(V)となることである。
証明. 必要性はfが引き起こすX→f(X)が同相であることと相対位相の定義から明らかである。十分性を示す。fが引き起こすX→f(X)は連続全単射であり、仮定されている条件と相対位相の定義からX→f(X)は開写像であるため、これは同相である。▨
補題 6.12. 位相空間(Y,OY)と部分集合C⊆Yに対して、CにYからの相対位相(OY)Cを入れ、ιC:C→Yを包含写像とする。このときιCは位相的埋め込みである。
命題 6.13. 位相空間X、Y、Zと連続写像f:X→Y、g:Y→Zが与えられているとする。このとき、次の主張が成り立つ:
- f,gがどちらも位相的埋め込みであるとすると、合成g∘f:X→Zも位相的埋め込みである。
- 合成g∘f:X→Zが位相的埋め込みであれば、f:X→Yは位相的埋め込みである。
証明.(1)は明らかである。(2)を示す。fは連続なので、fがf(X)への開写像であることを証明すれば良い。U⊂Xを開集合とする。g∘fは位相的埋め込みなので、単射であり、よってfも単射である。さらに、g∘fが位相的埋め込みであることから、ある開集合W⊂Zが存在してU=(g∘f)−1(W)が成り立つ。gの連続性よりg−1(W)⊂Yは開集合であって、さらにf−1(g−1(W))=(g∘f)−1(W)=Uを満たすので、補題 6.11よりfは位相的埋め込みである。▨
7 位相的直和
定義 7.1 (位相的直和).Iを集合、(Xi)i∈Iを位相空間の族とする。非交和
i∈I∐Xi={(i,x)∣i∈I, x∈Xi}に、写像ιi:Xi→∐j∈IXj、ιi(x)=(i,x)の族による終位相を入れた空間を、族(Xi)i∈Iの 位相的直和 (topological sum) という。
命題 7.2. 位相空間の族(Xi)i∈Iの位相的直和をS=∐i∈IXiとし、ιi:Xi→Sをιi(x)=(i,x)で定める。次が成り立つ。
- A⊆Sが開集合であることと、すべてのi∈Iに対してιi−1(A)がXiの開集合であることは同値である。閉集合についても同じ同値が成り立つ。
- 各i∈Iについてιiは位相的埋め込みであり、ιi(Xi)はSの開かつ閉な部分集合である。
- 位相空間Yと写像f:S→Yに対して、fが連続であることと、すべてのi∈Iに対してf∘ιiが連続であることは同値である。したがって、連続写像の族(fi:Xi→Y)i∈Iに対して、すべてのi∈Iについてf∘ιi=fiを満たす連続写像f:S→Yが一意に存在する。
証明.A⊆Sについて、終位相の定義により、Aが開集合であることと、すべてのi∈Iに対してιi−1(A)が開集合であることは同値である。ιi−1(S∖A)=Xi∖ιi−1(A)であるから、補集合にこの判定を適用すれば閉集合についての同値も得られる。
i∈IとXiの開集合Uをとる。j∈Iに対して、ιj−1(ιi(U))はj=iならばU、j=iならば空集合である。したがって(1)によりιi(U)はSの開集合である。ιiは終位相の定義により連続であり、単射であるから、終域を像へ制限すると連続な全単射かつ開写像となる。命題 6.3によりこの制限は同相写像であり、ιiは位相的埋め込みである。U=Xiとすれば像は開集合であり、各成分への逆像がXiまたは空集合であることから、閉集合でもある。
定理 3.10により、fが連続であることと各f∘ιiが連続であることは同値である。連続写像の族(fi)i∈Iに対してf(i,x)=fi(x)と定めれば、各f∘ιi=fiが連続であるからfは連続である。f∘ιi=fiという条件は各(i,x)∈Sにおけるfの値を定めるので、fは一意である。▨
8 商写像と商位相
定義 8.1. 位相空間X、Yと全射q:X→Yに対して、qが商写像 (quotient map) であるとは、任意のV⊆Yについて、VがYの開集合であることとq−1(V)がXの開集合であることが同値になることをいう。
命題 8.3. 位相空間X、Yと連続な全射q:X→Yについて、qが開写像であるか、または閉写像であるならば、qは商写像である。
証明.V⊆Yとする。qは連続であるから、VがYの開集合ならばq−1(V)はXの開集合である。逆にq−1(V)がXの開集合であるとする。qは全射であるから、§E1.1 命題 4.10によりYの任意の部分集合Bについてq(q−1(B))=Bが成り立つ。qが開写像である場合には、V=q(q−1(V))はYの開集合である。qが閉写像である場合には、§E1.1 命題 4.4によりq−1(Y∖V)=X∖q−1(V)はXの閉集合であり、その像q(q−1(Y∖V))=Y∖VはYの閉集合であるから、VはYの開集合である。いずれの場合にも、VがYの開集合であることとq−1(V)がXの開集合であることは同値である。▨
命題 8.4. 位相空間X、Y、Zと商写像p:X→Y、q:Y→Zに対して、q∘p:X→Zは商写像である。
証明.pとqは全射であるから、§E1.1 命題 3.5 (2)によりq∘pは全射である。W⊆Zとする。§E1.1 命題 4.8により(q∘p)−1(W)=p−1(q−1(W))である。pが商写像であるから、p−1(q−1(W))がXの開集合であることとq−1(W)がYの開集合であることは同値である。qが商写像であるから、q−1(W)がYの開集合であることとWがZの開集合であることは同値である。したがって(q∘p)−1(W)がXの開集合であることとWがZの開集合であることは同値である。▨
命題 8.5. 位相空間X、Yと全単射q:X→Yについて、qが商写像であるならばqは同相写像である。
証明は演習とする(問題 9.10)。
例 8.6.例 5.15のY={a,c}と位相OY={∅,{a},Y}をとる。Rに通常の位相を入れ、写像q:R→Yを
q(x)={ac(x>0),(x≤0)で定める。qは全射である。Yの部分集合は∅、{a}、{c}、Yの四つであり、その逆像はそれぞれ∅、(0,∞)、(−∞,0]、Rである。∅、(0,∞)、RはRの開集合である。(−∞,0]は0を含むが、0を含む開区間はつねに正の数を含むから(−∞,0]に含まれず、(−∞,0]はRの開集合でない。OYに属するYの部分集合は∅、{a}、Yの三つであるから、V⊆YがYの開集合であることとq−1(V)がRの開集合であることは同値であり、qは商写像である。
(−1,0)はRの開集合でありq((−1,0))={c}であるが、{c}はOYに属さない。したがってqは開写像でない。[1,2]はRの閉集合でありq([1,2])={a}であるが、Y∖{a}={c}はOYに属さないから{a}はYの閉集合でない。したがってqは閉写像でない。以上により、命題 8.3の逆は成り立たない。
定義 8.7 (商位相).(X,OX)を位相空間、Yを集合、p:X→Yを全射とする。一元からなる写像の族(p)による終位相
Op={W⊆Y∣p−1(W)∈OX}を、pによる 商位相 (quotient topology) という。Yに商位相を入れるとき、pは商写像である。
命題 8.8.定義 8.7のOpはYの位相である。
証明.Opは一元からなる写像の族(p)による終位相であり、命題 3.9により終位相は位相である。▨
命題 8.9.p:(X,OX)→(Y,Op)は連続である。さらに、p:(X,OX)→(Y,O′)が連続となるYの任意の位相O′はO′⊆Opを満たす。
証明.Opは一元からなる写像の族(p)による終位相であるから、命題 3.9をこの終位相へ適用すればよい。▨
定理 8.10.定義 8.7の記号のもとでYに商位相を入れる。(Z,OZ)を位相空間、f:X→Zを写像とすると、次の二条件は同値である。
- p(x)=p(x′)ならばf(x)=f(x′)であり、fは連続である。
- g∘p=fを満たす連続写像g:(Y,Op)→Zが存在する。
このgは一意である。
証明. 第一の条件を仮定する。各y∈Yに対して、pの全射性により逆像p−1({y})は空でなく、仮定によりfはp−1({y})の上で定数である。その唯一の値をg(y)と定める。したがって写像g:Y→Zが定まり、g∘p=fである。g∘p=fは連続であるから、定理 3.10を一元からなる写像の族(p)による終位相へ適用するとgは連続である。
第二の条件を仮定する。p(x)=p(x′)ならばf(x)=g(p(x))=g(p(x′))=f(x′)である。また命題 8.9によりpは連続であるから、命題 1.10によりf=g∘pは連続である。
g1∘p=g2∘p=fを満たす写像g1,g2:Y→Zに対して、y∈Yをとる。pの全射性によりp(x)=yを満たすx∈Xが存在し、g1(y)=f(x)=g2(y)である。よってg1=g2であり、第二条件を満たす写像は一意である。▨
補題 8.12.Xを位相空間、C⊆Xを閉集合とし、x∼x′を、x=x′であるか、またはxとx′がともにCに属することと定める。このとき∼はX上の同値関係であり、X/∼に標準全射π:X→X/∼による商位相を入れると、πは連続な全射な閉写像である。さらに、x∈X∖Cに対してπ−1({π(x)})={x}であり、C=∅のときc∈Cに対してπ−1({π(c)})=Cである。
証明. 反射律と対称律は∼の定義から従う。x∼x′かつx′∼x′′とする。x=x′ならばx∼x′′であり、x′=x′′ならばx∼x′からx∼x′′である。いずれでもない場合には、xとx′がともにCに属し、x′とx′′がともにCに属するから、xとx′′はともにCに属してx∼x′′である。ゆえに∼は同値関係である。x∈X∖Cの同値類は{x}であり、c∈Cの同値類はCであるから、全逆像についての二つの等式が従う。
定義 8.7によりπは連続な全射である。F⊆Xを閉集合とする。F∩C=∅ならばπ−1(π(F))=Fであり、F∩C=∅ならばπ−1(π(F))=F∪Cである。Cは閉集合であるから、いずれの場合にもπ−1(π(F))はXの閉集合である。§E1.1 命題 4.4により
π−1((X/∼)∖π(F))=X∖π−1(π(F))はXの開集合であるから、定義 8.7により(X/∼)∖π(F)はX/∼の開集合であり、π(F)はX/∼の閉集合である。したがってπは閉写像である。▨
例 8.13 (区間の両端を貼り合わせる).X=[0,1]にRからの部分空間位相を入れ、0∼1と各点自身との同値だけで定まる同値関係を考える。S1={(u,v)∈R2∣u2+v2=1}に部分空間位相を入れ、
q(t)=(cos(2πt),sin(2πt))とおく。
一次関数t↦2πtは連続であり、余弦関数と正弦関数は§D1.24 定理 1.3と§D1.14 命題 1.2により連続である。q1(t)=cos(2πt)、q2(t)=sin(2πt)とおく。t0∈[0,1]とε>0に対して、q1とq2の連続性により、∣t−t0∣<δを満たすt∈[0,1]について∣qj(t)−qj(t0)∣<ε/2(j=1,2)となるδ>0が存在する。このとき Euclid 距離について
d(q(t),q(t0))=∣q1(t)−q1(t0)∣2+∣q2(t)−q2(t0)∣2<εである。したがってq:[0,1]→S1は連続である。
(u,v)∈S1に対して、§D1.24 定理 4.5の第2項により(cosθ,sinθ)=(u,v)を満たすθ∈Rが存在する。§D1.4 命題 2.1によりN>∣θ∣/(2π)を満たす正の整数Nをとると−N<θ/(2π)<Nである。E={k∈Z∣−N≤k≤N, k≤θ/(2π)}は−Nを含む有限集合であるから最大元nをもつ。n+1≤θ/(2π)とするとn+1<Nでありn+1∈Eとなって最大性に反するので、n≤θ/(2π)<n+1である。t=θ/(2π)−nとおくと0≤t<1であり、2πt−θ=−2πn∈2πZであるから、同定理の第3項によりq(t)=(cosθ,sinθ)=(u,v)である。したがってqは全射である。
同定理の第3項により、t,t′∈[0,1]に対してq(t)=q(t′)であることはt−t′∈Zであることと同値である。∣t−t′∣≤1であるから、この条件はt=t′または{t,t′}={0,1}であることと同値である。したがってqは同値類の上で定まり、定理 8.10によりg∘π=qを満たす連続写像g:X/∼→S1が一意に存在する。qの全射性と、q(t)=q(t′)が成り立つ条件の記述から、gは全単射である。
例 8.16.例 8.13の標準全射π:[0,1]→[0,1]/∼も開写像でない。実際、U=[0,1/2)は[0,1]の開集合であるが、π(0)=π(1)であるから
π−1(π(U))=[0,1/2)∪{1}である。π−1(π(U))が[0,1]の開集合であると仮定する。定義 4.1によりπ−1(π(U))=O∩[0,1]を満たすRの開集合Oが存在し、1∈Oである。§E2.2 定義 1.1により(1−ε,1+ε)⊆Oを満たすε>0が存在し、ε<1/2としてよい。このとき1−ε/2∈O∩[0,1]=π−1(π(U))である。一方、ε<1/2から1/2<1−ε/2<1であり、1−ε/2は[0,1/2)∪{1}に属さない。これは矛盾であるからπ−1(π(U))は[0,1]の開集合でなく、商位相の定義によりπ(U)は[0,1]/∼の開集合でない。
9 演習
問題 9.1.Rに通常の位相を入れ、Z⊆Rに部分空間位相を入れる。この位相がZの離散位相であることを示せ。
解答.
各k∈Zに対して(k−1/2,k+1/2)はRの開集合であり、(k−1/2,k+1/2)∩Z={k}である。したがって各一点集合はZで開である。任意のS⊆ZはS=⋃k∈S{k}と書くことができるので、§E2.11 定義 1.1の任意和公理からSは開である。よってすべての部分集合が開であり、部分空間位相は離散位相である。▨
問題 9.2.Aを位相空間Xの部分集合とする。AがXで開であるとき、Aの開集合はXでも開であることを示せ。また、AがXで閉であるとき、Aの閉集合はXでも閉であることを示せ。この二つの主張が命題 5.16の残りの向きを与えることを確かめよ。
解答.
VをAの開集合とする。定義 4.1によりV=U∩Aを満たすXの開集合Uが存在する。AがXで開ならばVは二つの開集合の共通部分であるからXで開である。
CをAの閉集合とする。命題 4.6によりC=F∩Aを満たすXの閉集合Fが存在する。AがXで閉ならばCは二つの閉集合の共通部分であり、§E2.11 定理 2.3 条件 (b)によりXで閉である。
包含写像ιAはV⊆Aに対してιA(V)=Vを満たす。したがって第一の主張は、AがXで開ならばιAが開写像であることを述べており、命題 5.16 (1)の残りの向きである。第二の主張は、AがXで閉ならばιAが閉写像であることを述べており、命題 5.16 (2)の残りの向きである。
補題 5.4の連続性は、包含写像の連続性から従う。▨
解答.
命題 4.10 (1)を示す。U∈Oとi∈Iに対してιAi−1(U)=U∩Aiであり、これは定義 4.1によりAiの開集合である。したがって定義 3.8によりU∈Fである。
命題 4.10 (2)を示す。W∈Fとすると、各iについてW∩AiはAiの開集合である。AiがXの開集合であるから、問題 9.2によりW∩AiはXの開集合である。X=⋃iAiからW=⋃i∈I(W∩Ai)であり、§E2.11 定義 1.1の任意和公理によりW∈Oである。よってF⊆Oであり、命題 4.10 (1)と合わせてF=Oである。
命題 4.10 (3)を示す。FをFに関する閉集合とすると、各F∩AiはAiの閉集合である。AiはXの閉集合であるから、問題 9.2によりF∩AiはXの閉集合である。F=⋃i∈I(F∩Ai)は閉集合の有限和であるからXの閉集合である。したがってF⊆Oであり、命題 4.10 (1)と合わせて等号を得る。▨
問題 9.4.命題 4.10 (2)が課す「すべてのAiがXの開集合である」という仮定を落とすと結論が成り立たなくなることを、F=Oとなる例を挙げて示せ。
解答.
X=Rに通常の位相を入れ、I=R、Ax={x}とする。Axの部分空間位相は{∅,{x}}であるから、任意のW⊆RについてιAx−1(W)=W∩{x}はAxの開集合である。したがってFはRの離散位相である。任意のε>0に対してε/2∈B(0,ε)∖{0}であるから、§E2.2 定義 1.1により{0}はOに属さない。一方{0}∈FであるからF=Oである。▨
解答.
定理 5.10 (3)を検証する。y∈Yと、f−1({y})⊆Uを満たすXの開集合Uをとる。Y=⋃i∈IViであるからy∈Viを満たすi∈Iが存在する。
y∈Viからf−1({y})⊆f−1(Vi)=Aiであり、gi−1({y})=f−1({y})である。定義 4.1によりU∩Aiは部分空間Aiの開集合であり、gi−1({y})⊆U∩Aiである。giは閉写像であるから、定理 5.10 (3)により、y∈V′かつgi−1(V′)⊆U∩Aiを満たす部分空間Viの開集合V′が存在する。
ViはYの開集合であるから、問題 9.2によりV′はYの開集合である。V′⊆Viからf−1(V′)⊆f−1(Vi)=Aiであり、Aiの上でgiとfは一致するからf−1(V′)=gi−1(V′)⊆Uである。yとUは任意であったから、定理 5.10 (3)によりfは閉写像である。▨
問題 9.6 (二点空間の同相).X={a,b}にO1={∅,{a},X}とO2={∅,{b},X}を入れる。f(a)=b、f(b)=aで定めた写像f:(X,O1)→(X,O2)が同相写像であることを示せ。
解答.
fは全単射でf−1=fである。O2の三つの開集合のfによる逆像は、それぞれ∅、{a}、Xであり、すべてO1に属する。逆向きも同じ計算であるから、fとf−1は連続である。▨
問題 9.7 (実数直線と開区間の同相).補題 6.4の証明を完成させよ。
解答.
t∈Rに対して∣φ(t)∣=∣t∣/(1+∣t∣)<1である。s∈(−1,1)に対して1−∣s∣>0であるからψ(s)は定まる。さらに
1+∣ψ(s)∣=1−∣s∣1,1−∣φ(t)∣=1+∣t∣1であるから、φ(ψ(s))=s、ψ(φ(t))=tである。したがってφとψは互いに逆な全単射である。
0≤s≤tならば
∣φ(t)−φ(s)∣=(1+s)(1+t)t−s≤∣t−s∣.s≤t≤0の場合はφ(−t)=−φ(t)を用い、s≤0≤tの場合は0を経由すると、任意のs,t∈Rについて同じ評価を得る。よってφ:R→(−1,1)はL=1として Lipschitz 条件を満たし、§E2.4 命題 3.4と注意 1.2により連続である。
s0∈(−1,1)とε>0をとり、∣s0∣<c<1を満たすcを選ぶ。∣s∣,∣t∣≤cならば、sとtの符号によって場合を分け、同符号の場合は分数を通分し、異符号の場合は0を経由することにより
∣ψ(s)−ψ(t)∣≤(1−c)2∣s−t∣を得る。δ<min{c−∣s0∣,ε(1−c)2}を満たすδ>0をとる。(−1,1)∩(s0−δ,s0+δ)はs0の開近傍であり、この近傍の各点sについて∣s∣<cかつ∣ψ(s)−ψ(s0)∣<εである。よって補題 1.9によりψは連続である。ゆえにφは同相写像である。▨
解答.
命題 5.8 (1)を示す。必要性を示す。fを開写像とし、A⊆Xとする。int(A)は開集合であるからf(int(A))はYの開集合であり、int(A)⊆Aからf(int(A))⊆f(A)である。§E2.11 命題 2.5 (1)によりint(f(A))はf(A)に含まれる最大の開集合であるから、f(int(A))⊆int(f(A))が成り立つ。十分性を示す。UをXの開集合とする。§E2.11 命題 2.5 (2)によりint(U)=Uであるから、仮定をA=Uに適用してf(U)⊆int(f(U))を得る。int(f(U))⊆f(U)とあわせてint(f(U))=f(U)であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりf(U)はYの開集合である。
命題 5.8 (2)を示す。必要性を示す。fを閉写像とし、A⊆Xとする。Aは閉集合であるからf(A)はYの閉集合であり、A⊆Aからf(A)⊆f(A)である。§E2.11 命題 2.5 (1)によりf(A)はf(A)を含む最小の閉集合であるから、f(A)⊆f(A)が成り立つ。十分性を示す。FをXの閉集合とする。§E2.11 命題 2.5 (2)によりF=Fであるから、仮定をA=Fに適用してf(F)⊆f(F)を得る。f(F)⊆f(F)とあわせてf(F)=f(F)であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりf(F)はYの閉集合である。▨
解答.
命題 5.9 (1)⇒(2)を示す。B⊆Yとする。連続性によりf−1(intY(B))はf−1(B)に含まれる開集合であるから、f−1(intY(B))⊆intX(f−1(B))である。逆にU=intX(f−1(B))とおくと、fは開写像であるからf(U)はBに含まれる開集合である。したがってf(U)⊆intY(B)であり、U⊆f−1(intY(B))を得る。
命題 5.9 (2)⇒(1)を示す。VをYの開集合とすると、intY(V)=Vであるからf−1(V)=intX(f−1(V))であり、f−1(V)は開集合である。したがってfは連続である。次にUをXの開集合とし、B=f(U)とおく。U⊆f−1(B)であるから、U⊆intX(f−1(B))=f−1(intY(B))である。したがってB=f(U)⊆intY(B)となり、Bは開集合である。ゆえにfは開写像でもある。
命題 5.9 (2)⇔(3)を示す。内部と閉包の双対性および逆像と補集合の交換により、Y∖Bに対する内部の等式はBに対する閉包の等式と同値である。
命題 5.9 (3)⇒(4)を示す。前段により内部の等式も成り立つから、∂YB=clY(B)∖intY(B)に逆像をとると境界の等式を得る。逆に命題 5.9 (4)が成り立つならば、clY(B)=B∪∂YBに逆像をとることにより
f−1(clY(B))=f−1(B)∪∂Xf−1(B)=clX(f−1(B))となり、命題 5.9 (3)を得る。▨
解答.
q:X→Yを全単射である商写像とする。注意 8.2によりqは連続である。UをXの開集合とする。qは単射であるから、§E1.1 命題 4.10によりq−1(q(U))=Uである。UはXの開集合であるから、qが商写像であることによりq(U)はYの開集合である。したがってqは開写像であり、命題 6.3によりqは同相写像である。▨
問題 9.11.X=Rに通常の位相を入れ、Y={0,1}とする。x<0でp(x)=0、x≥0でp(x)=1と定めるとき、pによる商位相を求めよ。
解答.
∅,{0},{1},Yの逆像は順に∅,(−∞,0),[0,∞),Rである。[0,∞)は0を含むが、0を含むRの開集合はつねに負の数を含むから[0,∞)に含まれず、[0,∞)は開集合でない。他の三つは開集合であるから、商位相は{∅,{0},Y}である。▨
問題 9.12.p:R→[0,∞)をp(x)=∣x∣とし、[0,∞)にpによる商位相を入れる。連続な偶関数f:R→Rがf=g∘pを満たす連続写像gをただ一つもつことを示せ。
解答.
pは全射である。p(x)=p(x′)ならばx′=xまたはx′=−xであり、fは偶関数であるからf(x)=f(x′)である。定理 8.10 (1)が成り立つので、f=g∘pを満たす連続写像gが存在し、一意である。▨