1 多項式射影の構成
定理 1.1 (一次分解定理).T:V→Vの最小多項式を
mT(t)=i=1∏rmi(t),mi(t)=fi(t)aiとする。ただしf1,…,frは相異なるモニック既約多項式、ai≥1とする。このとき
V=i=1⨁rVi,Vi=kermi(T)である。各ViはT-不変である。
証明.qi=mT/miとおく。miとqiは互いに素なので、Bézout の等式により
uiqi+vimi=1となるui,vi∈K[t]が存在する。ei=uiqi、Pi=ei(T)とおく。eiはj=iの全てのmjで割り切れ、ei≡1(modmi)を満たす。
まず∑iPi=Iを示す。固定したkについて、ek≡1(modmk)であり、i=kならei≡0(modmk)である。したがって∑iei−1は全てのmkで割り切れる。mkは二つずつ互いに素なので、その積mTが∑iei−1を割る。作用素へ評価しmT(T)=0を用いると
i∑Pi=Iを得る。
次にimPi=Viを示す。
mi(T)Pi=mi(T)ui(T)qi(T)=ui(T)mT(T)=0なのでimPi⊆Viである。一方、x∈Viならei=1−vimiから
Pix=x−vi(T)mi(T)x=xとなる。よってVi⊆imPiである。
任意のx∈Vはx=∑iPixと書け、各Pix∈ViなのでV=∑iViである。この和が直和であることを示す。i=jのとき、eiejは全てのmkで割り切れるためPiPj=0である。またPiはVi上で恒等写像なのでPi2=Piである。∑ixi=0、xi∈Viとし、両辺にPkを施すとxk=0を得る。したがって和は直和である。
最後にViは多項式作用素mi(T)の核なので、§E3.19 命題 2.1によりT-不変である。▨
定義 1.2.定理 1.1のViをfiに対応する一次成分 (primary component) といい、Piを一次射影 (primary projector) という。
命題 1.3. 一次射影は
Pi2=Pi,PiPj=0 (i=j),i∑Pi=I,TPi=PiTを満たす。また
imPi=Vi,kerPi=j=i⨁Vjである。
証明. 最初の三式と像の等式は定理 1.1の証明で示した。Pi=ei(T)はTの多項式なのでTと可換する。直和分解x=∑jxjに対してPix=xiであるから、Pix=0であるための必要十分条件はxi=0である。したがって核は他の成分の直和である。▨
命題 1.4. 制限作用素Ti=T∣Viの最小多項式はmi=fiaiである。
証明.mi(T)はVi上で零なのでmTi∣miである。直和分解に関するTの最小多項式は、各制限の最小多項式の最小公倍多項式である。実際、多項式pがTを零化するための必要十分条件は、全てのVi上の制限を零化することである。したがって
mT=lcm(mT1,…,mTr).mTiはfiの冪であり、その指数がaiより小さければ、右辺におけるfiの指数もaiより小さくなり、mT=∏ifiaiに反する。よってmTi=miである。▨
2 一次因子でない成分
例 2.1 (実数上の二つの一次成分).V=R4とし、ある基底に関するTの行列を
10001100000100−10とする。最小多項式は
mT(t)=(t−1)2(t2+1)である。m1=(t−1)2、m2=t2+1はR[t]で互いに素である。
e1(t)=(1−2t)(t2+1)とおくとe1≡1(mod(t−1)2)かつe1≡0(modt2+1)である。e2=1−e1とすれば、Pi=ei(T)が二つの一次射影になる。
V1=ker(T−I)2は最初の二基底ベクトルが張り、V2=ker(T2+I)は後の二基底ベクトルが張る。t2+1は実数上で既約なので、V2は実固有値に対応する成分ではない。係数を複素数へ拡大した後に初めてt2+1=(t−i)(t+i)と分かれ、さらに二つの固有値成分へ分解される。
3 演習
問題 3.1 (Bézout 射影の証明確認).Pi=ei(T)の像がVi=kermi(T)に一致することを示す二つの包含を、それぞれ用いる多項式等式とともに述べよ。
解答.
ei=uiqiかつmiqi=mTなのでmi(T)Pi=ui(T)mT(T)=0となり、imPi⊆kermi(T)を得る。一方、Bézout の等式からei=1−vimiである。x∈kermi(T)ならPix=x−vi(T)mi(T)x=xなのでkermi(T)⊆imPiである。▨