1 Artin 整域は体である
整域では非零元を消去することができるため、主イデアルの降鎖が停止すると非零元の逆元が得られる。
命題 1.1. 非零可換 Artin 環Aが整域ならば、Aは体である。
証明.0=a∈Aを取る。主イデアルの降鎖
(a)⊇(a2)⊇(a3)⊇⋯は停止するため、あるn≥1に対して
(an)=(an+1)となる。したがって、あるb∈Aが存在して
an=ban+1となる。Aは整域でan=0であるため、§E6.4 命題 1.2によってanを消去すると
1=baを得る。可換性からbはaの逆元である。任意の非零元が単元であるため、Aは体である。▨
2 素イデアルは極大イデアルである
素イデアルによる商は整域であり、商環にもイデアルの降鎖条件が遺伝する。
定理 2.1.Rが零環でないとする。このときRのすべての素イデアルは極大イデアルである。
証明.pをRの素イデアルとする。§E6.4 命題 3.2によりR/pは非零整域である。R/pのイデアルの降鎖を取ると、商写像による逆像はpを含むRのイデアルの降鎖になる。Rは Artin 環であるため逆像の降鎖は停止し、もとの降鎖も停止する。したがってR/pは Artin 環である。
命題 1.1によりR/pは体である。再び§E6.4 命題 3.2を用いると、pは極大イデアルである。▨
3 極大イデアルの有限性
有限個の極大イデアルの共通部分全体から極小のものを取ると、新たな極大イデアルとの共通部分によってそれ以上小さくすることができない。
定理 3.1.Rが零環でないとする。このときRの極大イデアルは有限個である。
証明. 非零単位的環には§E6.7 命題 3.2により極大左イデアルが存在し、Rは可換であるため、得られた極大左イデアルは極大イデアルである。極大イデアルの有限個の空でない族について、その共通部分全体を
S:={m1∩⋯∩ms ∣ s≥1, mi は極大イデアル}とする。Sは空でない。§E6.20 命題 2.2により、Sは包含関係に関する極小元をもつ。その一つを
I=m1∩⋯∩msとする。
任意の極大イデアルmを取る。I∩mもSに属し、I∩m⊆Iである。Iの極小性から
I∩m=Iであり、I⊆mとなる。特に
m1⋯ms⊆I⊆mである。
§E6.4 命題 3.3によりmは素イデアルである。もしすべてのiについてmi⊈mならば、各iについてai∈mi∖mを選ぶことができる。積a1⋯asはm1⋯ms⊆mに属するが、mの素性から少なくとも一つのaiがmに属する。ai∈mという結論は、ai∈mi∖mという選び方に反する。したがって、あるiに対してmi⊆mである。両者は極大イデアルであるためmi=mとなる。よって極大イデアルはm1,…,msに限られる。▨
4 Jacobson 根基の冪零性
一般の左 Artin 環については、socle 列が環全体に達することと Jacobson 根基の冪による零化部分加群との一致から、根基の冪零性を直接導いた。さらに、有限長性と Noether 性を証明した後には、中山の補題による独立な第二の証明も与えた。可換環は両方の証明の特別な場合である。
系 4.1. 任意の可換 Artin 環Rに対して、ある整数N≥1が存在して
J(R)N=0となる。
5 極大イデアルの冪
異なる極大イデアルは互いに素である。その冪についても、二項展開の各項に十分高い一方の冪が現れるため、互いに素性が保たれる。
補題 5.1.Rを零環でない可換 Artin 環とし、相異なる極大イデアルを
m1,…,msとする。任意のN≥1とi=jに対して
miN+mjN=Rとなる。
証明. 相異なる極大イデアルについて
mi+mj=Rである。実際、この和が真のイデアルならば、極大性からmi+mj=miとなってmj⊆miを得るため、両者が等しくなってしまう。したがって、あるu∈miとv∈mjが存在して
u+v=1となる。
二項展開
1=(u+v)2N−1=q=0∑2N−1(q2N−1)uqv2N−1−qを考える。q≥Nなら対応する項はmiNに属する。q<Nなら2N−1−q≥Nであるため、対応する項はmjNに属する。よって展開の全体がmiN+mjNに属し、
1∈miN+mjNとなる。したがって和はRである。▨
有限個の二つずつ互いに素なイデアルでは、共通部分と積が一致する。
補題 5.2. 可換環AのイデアルI1,…,Isが二つずつ互いに素であるとする。このとき
I1∩⋯∩Is=I1⋯Isとなる。s=0の場合には、共通部分と積をともにAとする。
証明.s=0,1では規約と定義から成り立つ。二つの互いに素なイデアルI,Jを考える。u∈I、v∈J、u+v=1を選ぶ。x∈I∩Jなら
x=xu+xvであり、xu,xv∈IJとなる。よってI∩J⊆IJであり、逆包含はイデアル積の定義から従う。したがってI∩J=IJである。
s−1個まで主張が成り立つと仮定し、P:=I1⋯Is−1と置く。各i<sについて
ui+vi=1,ui∈Ii,vi∈Isと選ぶ。u:=u1⋯us−1と置くとu∈Pである。また、各ui=1−viはIsを法として1と合同であるため
1−u∈Isとなる。したがってP+Is=Aである。二イデアルの場合と帰納法の仮定を用いると
I1∩⋯∩Is=(I1∩⋯∩Is−1)∩Is=P∩Is=PIs=I1⋯Isとなる。▨
6 中国剰余定理による局所因子分解
証明では、まず有限個の極大イデアルを列挙し、それらの冪が二つずつ互いに素であることから、有限共通部分を積に置き換える。この積をJ(R)N=0と同一視して中国剰余写像の核を零にする。各商が非零の Artin 環であることを商写像から示した後、商の極大イデアルをRへ逆像し、miNを含む素イデアルがmiを含むことによって極大イデアルの一意性を示す。零環は空直積として別に扱う。
定理 6.1.Rが零環でないとし、相異なる極大イデアルをm1,…,msとする。J(R)N=0となるN≥1を取る。このとき
i=1⋂smiN=i=1∏smiN=J(R)N=0であり、中国剰余写像は単位的環同型
R ∼ i=1∏sR/miNを与える。各因子Ri:=R/miNは零でない可換 Artin 局所環であり、その唯一の極大イデアルは
ni:=mi/miNである。
Rが零環の場合にはs=0とし、表示した直積を空直積とする。
証明.Rが零環でない場合を考える。定理 3.1により、極大イデアルの族は表示した有限族で尽くされる。§E6.7 定理 5.1と可換性により
J(R)=i=1⋂smiである。異なる極大イデアルは互いに素であるため、補題 5.2から
J(R)=i=1∏smiを得る。
補題 5.1により、miNも二つずつ互いに素である。再び共通部分と積の補題を用い、可換性によって因子を並べ替えると
i=1⋂smiN=i=1∏smiN=(i=1∏smi)N=J(R)N=0となる。§E6.8 定理 3.1により中国剰余写像は全射であり、その核は共通部分である。核が零であるため、表示した環同型を得る。
Ri=R/miNは零でない。実際、miN⊆mi=Rである。Riのイデアルの降鎖を商写像で逆像に取ると、Rのイデアルの降鎖になるため停止する。よってRiは Artin 環である。
Ri/ni≅R/miは体であるため、niはRiの極大イデアルである。
Riの極大イデアルqを取り、商写像による逆像をqとする。qはRの極大イデアルであり、
miN⊆qを満たす。極大イデアルは素イデアルである。任意のx∈miについてxN∈miN⊆qであるため、素性を反復してx∈qを得る。したがって
mi⊆qであり、miの極大性からq=miとなる。よってq=niであり、Riは局所環である。
Rが零環の場合には、注意 1の規約により、極大イデアル族は空であり、空直積がRに一致する。▨
7 直積分解に付随する冪等元
局所因子の各座標の単位元をRへ戻すと、互いに直交する冪等元が得られる。
系 7.1.Rが零環でないとし、定理 6.1の同型を
Φ:R∼i=1∏sRiとする。第i座標だけが1で他の座標が零である元の逆像をei∈Rとする。このとき
ei2=ei,eiej=0(i=j),i=1∑sei=1である。また、eiRは単位元eiをもつ環であり、
eiR≅Ri,R≅i=1∏seiRとなる。
証明. 直積環で第i座標だけが1である元をεiとする。座標ごとの計算から
εi2=εi,εiεj=0(i=j),i=1∑sεi=1である。Φは単位的環同型であるため、ei:=Φ−1(εi)は同じ関係を満たす。
ΦはeiRを、第i座標以外が零である直積環のイデアルへ写す。第i座標への射影を制限すると、単位元eiを1Riへ送る環同型
eiR∼Riを得る。これらをすべてのiについて合わせると、もとの同型R≅∏iRiをR≅∏ieiRと書き直すことができる。▨
8 直交冪等元による加群分解
直交冪等元は、環だけでなく任意の加群を同じ個数の成分へ分解する。
命題 8.1.Rが零環でないとし、e1,…,esを系 7.1の冪等元とする。任意のR加群Mに対して
M=i=1⨁seiMとなる。具体的には、写像
M⟶i=1⨁seiM,x⟼(e1x,…,esx)と
i=1⨁seiM⟶M,(x1,…,xs)⟼i=1∑sxiは互いに逆なR加群同型である。各eiMはeiR≅Ri上の加群である。
証明.∑iei=1であるため、任意のx∈Mは
x=1x=i=1∑seixと各eiMの元の和に書くことができる。xi∈eiMが∑ixi=0を満たすとする。xi=eixiであり、j=iならejei=0である。等式へejを作用させると
0=eji=1∑sxi=ejxj=xjとなる。よって和は内部直和であり、表示した二写像が互いに逆であることも同じ計算から従う。
a∈eiRとx∈eiMに対してax∈eiMであり、eiはeiMに恒等的に作用する。したがってeiMは単位元eiをもつ環eiR上の加群である。▨
零環上の単位的加群では1=0が恒等写像と零写像の双方として作用するため、加群は零加群に限られる。この場合の分解は空直和である。
9 一般の Artin 環の定理の適用
可換 Artin 環は左 Artin 環であるため、一般の定理から有限長性と Noether 性が直ちに従う。
系 9.1. 可換 Artin 環Rは左正則加群として有限長であり、Noether 環である。
10 有限生成加群の局所成分
一般の左 Artin 環上の定理によって有限生成加群の有限長性を得る。ここでは可換 Artin 環の局所直積分解に沿って、加群も有限個の局所成分へ分解することを確認する。
定理 10.1.Rを可換 Artin 環、Mを有限生成R加群とする。このときMは有限長加群であり、特に Noether 加群かつ Artin 加群である。
Rが零環でない場合には、局所因子に対応する冪等元によって
M=i=1⨁seiMとなる。各eiMは Artin 局所環eiR≅Ri上の有限生成加群であり、有限長である。
証明.§E6.24 系 4.1をA=Rへ適用すると、Mは有限長である。§E6.20 定理 4.3からMは Noether 加群かつ Artin 加群でもある。
Rが零環でない場合、分解M=⨁ieiMは命題 8.1で証明した。Mの生成元をx1,…,xtとする。y=eim∈eiMに対してm=∑jrjxjと書けば
y=eij=1∑trjxj=j=1∑t(eirj)(eixj)となる。よってeiMはeiR加群としてeix1,…,eixtで生成される。
eiR≅Riは定理 6.1により可換 Artin 局所環である。§E6.24 系 4.1を環eiRとその有限生成加群eiMへ適用すると、eiMは有限長eiR加群になる。eiMにおけるRの作用は全射R↠eiRを経由するため、R部分加群とeiR部分加群は一致する。したがって、この局所成分の有限長性はR加群としての有限長性とも一致する。▨
11 体と切断多項式環
体は根基が零である基本的な局所例であり、切断多項式環では非零な冪零根基の全層を見ることができる。
例 11.1 (体と切断多項式環). 体kはイデアル0,kだけをもつため Artin 環である。唯一の極大イデアルは0であり、
J(k)=0,ℓk(k)=1となる。局所因子分解は因子を一つだけもつ恒等同型である。
n≥1とし、
A:=k[x]/(xn)と置く。Aは1,x,…,xn−1を基底とする有限次元kベクトル空間である。イデアルの降鎖はk部分空間の降鎖でもあるため、次元が真に減少する回数は有限であり、Aは Artin 環である。
f=a0+h、a0∈k、h∈(x)と書く。a0=0ならhn=0であるため
f−1=a0−1j=0∑n−1(−a0−1h)jとなる。a0=0ならf∈(x)であり、fは冪零なので単元ではない。したがって非単元全体は唯一の極大イデアル
n=(x)をなし、Aは局所環である。また
J(A)=n,nn=0である。各0≤q<nについてnq/nq+1はk上一次元であるため
ℓA(A)=nとなる。
12 整数剰余環の局所分解
例 12.1 (Z/(12)の局所分解).R:=Z/(12)は有限環であるため、イデアルの降鎖は有限回で停止する。極大イデアルは
m2=(2),m3=(3)である。実際、それぞれによる商はF2とF3である。また、Zの極大イデアル(p)が(12)を含むのは素数pが2または3の場合に限られるため、イデアル対応によって他の極大イデアルは存在しない。
共通部分と根基は
J(R)=m2∩m3=(6),J(R)2=0となる。N=2を用いると
m22=(4),m32=(9)=(3)である。中国剰余写像は
Z/(12)∼R/(4)×R/(3)≅Z/(4)×Z/(3)を与える。対応する直交冪等元として
e1=9,e2=4を選ぶことができる。実際、e1+e2=1、e1e2=0、ei2=eiである。
13 体の有限直積と零環
例 13.1 (体の有限直積). 体k1,…,ksの有限直積
R=i=1∏skiを考える。各イデアルは、それぞれの座標で0またはkiを選んだ直積であるため、イデアルは有限個しか存在せず、Rは Artin 環である。極大イデアルは各座標射影の核であり、
J(R)=0となる。座標単位元eiは系 7.1の直交冪等元であり、根基冪フィルトレーションは0⊂Rだけである。したがって
ℓR(R)=sとなる。
s=0の場合、体の族は空であり、その空直積は零環である。極大イデアル族、局所因子族および冪等元族はいずれも空であり、零環の正則加群の長さは0である。
14 有限生成仮定を外した場合
例 14.1 (Artin 環上で有限長でない加群). 体kは Artin 環であるが、可算無限直和
M:=j≥1⨁kejは有限生成でない。部分空間
Mn:=spank{e1,…,en}は停止しない真の昇鎖
M1⊊M2⊊M3⊊⋯を与える。また、
Nn:=j≥n⨁kejは停止しない真の降鎖
N1⊋N2⊋N3⊋⋯を与える。したがってMは Noether 加群でも Artin 加群でもなく、有限長でもない。定理 10.1では有限生成という仮定を除くことができない。
15 演習
問題 15.1 (可換 Artin 環とその加群の確認). 次の各問に答えよ。
- 非零 Artin 整域が体であることを主イデアル(an)の降鎖から証明せよ。その結果を商環へ適用し、可換 Artin 環の素イデアルが極大であることを示せ。零環では素イデアルと極大イデアルが存在しないことも確認せよ。
- 零でない可換 Artin 環の極大イデアルが有限個であることを、極大イデアルの有限共通部分からなる族の極小元を用いて証明せよ。極小な共通部分Iが任意の極大イデアルmに含まれることと、m1⋯ms⊆mからm=miが従うことを省略するな。
- 一般の左 Artin 環に関する§E6.24 定理 2.1と§E6.24 系 3.1を可換 Artin 環へ適用することができる理由を説明し、有限長性、Noether 性およびJ(R)N=0を導け。
- 異なる極大イデアルmi,mjとN≥1に対してmiN+mjN=Rとなることを二項展開から示せ。さらに
i⋂miN=i∏miN=J(R)N=0
を証明し、中国剰余定理から局所 Artin 環の有限直積分解を導け。各商の極大イデアルが一つだけであることも証明せよ。
- 局所因子に対応する直交冪等元e1,…,esに対して、任意のR加群Mが⨁ieiMに同型であることを、互いに逆な写像を明示して証明せよ。Mが有限生成なら各eiMがeiR上有限生成であること、および各局所成分が有限長であることを示せ。
- 体k、k[x]/(xn)、Z/(12)および体の有限直積について、極大イデアル、Jacobson 根基または局所因子分解を計算せよ。零環を体の空直積として扱った場合の極大イデアル族と Jacobson 根基も答えよ。
- Artin 環上の加群から有限生成仮定を除くと有限長性が失敗する例を挙げよ。本記事と、一般の Artin 環の定理、半単純加群の一般論、および後続の可換環論との境界を説明せよ。
解答 (演習の解答).
-
0=aに対する降鎖(a)⊇(a2)⊇⋯は停止するため、あるn≥1で(an)=(an+1)となる。an=ban+1と書き、整域で非零元anを消去すると1=baとなる。よってすべての非零元が単元であり、環は体である。素イデアルpに対してR/pは非零整域であり、そのイデアルの降鎖は逆像によってRのイデアルの降鎖へ移る。したがって商は Artin 整域、ゆえに体であり、pは極大である。零環の唯一のイデアルは環全体であり、素イデアルと極大イデアルは真のイデアルでなければならないため、どちらも存在しない。
-
非零単位的環には極大イデアルが存在する。極大イデアルの有限個の空でない族の共通部分全体から、降鎖条件によって極小元
I=m1∩⋯∩ms
を取る。任意の極大イデアルmに対してI∩mも同じ族に属し、I∩m⊆Iである。極小性から等号となるためI⊆mである。よって
m1⋯ms⊆I⊆m
となる。mは素イデアルである。すべてのmiがmに含まれないなら、ai∈mi∖mを選ぶと、積a1⋯asはmに属するが各因子は属さず、素性に反する。したがって、あるiでmi⊆mであり、極大性から等号となる。
-
可換環のイデアルは左イデアルでもあるため、Rが可換 Artin 環なら左正則加群は Artin 加群であり、Rは左 Artin 環である。したがって§E6.24 定理 2.1から左正則加群の有限長性とRの Noether 性が従い、§E6.24 系 3.1からあるN≥1に対するJ(R)N=0が従う。この適用では可換性は一般定理の証明には用いず、左イデアルを通常のイデアルとして読み替えるためだけに用いる。
-
相異なる極大イデアルは互いに素であるため、u∈mi、v∈mj、u+v=1と選ぶ。(u+v)2N−1の各項では、uの指数がN以上であるか、vの指数がN以上である。よって1∈miN+mjNである。二つずつ互いに素な有限個のイデアルでは共通部分と積が一致するため、
J(R)=i⋂mi=i∏mi
であり、可換性を用いて
i⋂miN=i∏miN=(i∏mi)N=J(R)N=0
となる。中国剰余写像は核が零の全射であるからR≅∏iR/miNを与える。商R/miNの極大イデアルの逆像qはmiNを含む極大イデアルである。x∈miならxN∈qであり、素性からx∈qとなる。よってmi⊆qであり、極大性から等号である。したがって商の極大イデアルはmi/miNだけである。
-
写像
x⟼(e1x,…,esx),(x1,…,xs)⟼i∑xi
を考える。∑iei=1とeiej=0から二写像は互いに逆になる。Mがx1,…,xtで生成されるなら、eiMはeix1,…,eixtによってeiR上生成される。各eiRは Artin 局所環であるから、一般の左 Artin 環上の有限生成加群の定理§E6.24 系 4.1により各eiMは有限長である。
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体kの唯一の極大イデアルは0であり、J(k)=0である。A=k[x]/(xn)の非単元全体は(x)であり、これが唯一の極大イデアルかつ Jacobson 根基である。Z/(12)の極大イデアルは(2)と(3)であり、
J=(6),Z/(12)≅Z/(4)×Z/(3)
となる。体の有限直積では極大イデアルは座標射影の核で、Jacobson 根基は零である。零環は空直積であり、極大イデアル族は空、空共通部分としての Jacobson 根基は環全体R=0である。
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体k上の可算無限次元ベクトル空間⨁j≥1kejは、有限次元部分空間の停止しない昇鎖と、末尾部分空間の停止しない降鎖をもつため有限長ではない。本記事は一般の Artin 環について既に証明された有限長性、Noether 性および根基の冪零性を再証明せず、可換性に固有な素イデアル、極大イデアルおよび局所直積分解を扱う。半単純加群の直和分解と短完全列の分裂は先行する半単純加群の一般論が扱い、より高度な局所可換環論は後続単元が扱う。
▨
16 仮定と後続範囲の境界
本記事の有限局所直積分解では、可換性、イデアルの降鎖条件および単位元をすべて用いた。非可換 Artin 環では片側イデアルと両側イデアルを区別する必要があり、本記事の素イデアル、極大イデアルおよび可換な中国剰余分解の証明をそのまま適用することはできない。無限生成加群についても有限長性を主張しない。
根基が零である可換 Artin 環が体の有限直積になることは本記事の局所分解から従うが、単純加群の直和分解、分裂完全列および半単純性の一般的な同値は先行する半単純加群の一般論が扱う。積閉集合による基本的な局所化と、素イデアルにおける局所化から得られる局所環は既習内容である。素スペクトル、Krull 次元、準素分解、完備化および正則局所環を含む高度な局所可換環論は後続単元が扱う。本記事はそれらを前提とせず、可換 Artin 環に固有の有限分解と有限長性に範囲を限定する。