§E6.22半単純加群・半単純環

最終更新

体上のベクトル空間では、どの部分空間にも補空間が存在し、どの短完全列も分裂する。一般の環上の加群では、補加群の存在と短完全列の分裂は自動的には成り立たない。半単純加群は、単純加群の直和に分解する加群であり、部分加群がすべて直和因子になる加群でもある。半単純環は、左正則加群の分解性がすべての左加群へ及ぶ環である。

本記事ではRRを単位元をもつ結合環とし、零環を許す。特に断らない限り、加群は左RR加群、準同型は左RR線形写像とする。単純加群は§E6.20 定義 4.1の定義、すなわち非零であり、部分加群が零加群と加群自身だけである加群を指す。部分加群の和には§E6.2 命題 6.1、内部直和には§E6.2 命題 6.6、片側イデアルによる商加群には§E6.3 命題 2.1、短完全列には§E6.9 定義 1.1の規約を用いる。

1 単純加群と極大左イデアル

単純加群は一つの非零元で生成される。生成元を一つ固定すると、単純加群を左正則加群の商として表すことができる。

命題 1.1.RRを単位元をもつ結合環とし、LLをRRの左イデアルとする。商左加群R/LR/Lが単純であることと、LLが極大左イデアル、すなわちLLが真の左イデアルであり、

L⊆I⊆RL\subseteq I\subseteq R

を満たす左イデアルIIがLLまたはRRに限られることは同値である。

また、任意の単純左RR加群SSに対して、ある極大左イデアルLLが存在して

S≅R/LS\cong R/L

となる。

証明.R/LR/Lが単純であるとする。R/L≠0R/L\neq0であるからL≠RL\neq Rである。L⊆I⊆RL\subseteq I\subseteq Rを満たす左イデアルIIに対して、I/LI/LはR/LR/Lの部分加群である。単純性によりI/L=0I/L=0またはI/L=R/LI/L=R/Lであるため、I=LI=LまたはI=RI=Rとなる。よってLLは極大左イデアルである。

逆にLLが極大左イデアルであるとする。R/L≠0R/L\neq0である。部分加群N⊆R/LN\subseteq R/Lを取り、商写像をq ⁣:R→R/Lq\colon R\to R/Lと書く。逆像q−1(N)q^{-1}(N)はLLを含む左イデアルであるから、極大性によりq−1(N)=Lq^{-1}(N)=Lまたはq−1(N)=Rq^{-1}(N)=Rとなる。qqは全射であるため、前者ならN=0N=0、後者ならN=R/LN=R/Lである。したがってR/LR/Lは単純である。

SSを単純左RR加群とし、0≠s∈S0\neq s\in Sを取る。写像

φs ⁣:R⟶S,r⟼rs\varphi_s\colon R\longrightarrow S, \qquad r\longmapsto rs

は左RR線形である。その像RsRsはSSの非零部分加群であるから、Rs=SRs=Sであり、φs\varphi_sは全射である。L:=ker⁡φsL:=\ker\varphi_sは左イデアルであり、加群の第一同型定理§E6.2 定理 7.1によって

R/L≅SR/L\cong S

となる。既に証明した同値からLLは極大左イデアルである。▨

零環では、単位的な左加群は零加群だけである。零加群は単純加群ではなく、零環には真の左イデアルもないため、命題の最後の存在主張を適用する単純加群は存在しない。

左正則加群RR{}_RRの部分加群は、定義§E6.3 定義 1.1によって左イデアルである。したがって、単純な左イデアルを包含関係だけで特徴づけることができる。

定義 1.2.RRの非零左イデアルIIが極小左イデアル (minimal left ideal) であるとは、

0⊆J⊆I0\subseteq J\subseteq I

を満たす左イデアルJJが00またはIIに限られることをいう。

命題 1.3.RRの非零左イデアルIIに対して、IIが極小左イデアルであることと、IIが左正則加群RR{}_RRの単純部分加群であることは同値である。

証明.IIの左RR部分加群は、IIに含まれるRRの左イデアルと同じものである。したがって、IIの部分加群が00とIIだけであるという条件は、IIの中に非零の真の左イデアルがないという条件に一致する。I≠0I\neq0も両方の定義に含まれるため、二条件は同値である。▨

2 半単純加群

単純加群を任意個並べた直和を考える。直和の各元は有限個の成分しかもたないが、直和因子の添字集合自体は無限集合でもよい。

定義 2.1. 左RR加群MMが半単純加群 (semisimple module) であるとは、単純左RR加群からなるある族(Si)i∈I(S_i)_{i\in I}に対して

M=⨁i∈ISiM=\bigoplus_{i\in I}S_i

と内部直和表示されることをいう。

零加群は、空族の内部直和として半単純加群である。

半単純性の中心的な特徴は、どの部分加群も補加群をもつことである。この補加群の構成には Zorn の補題を用いるため、有限生成性や有限長を仮定しない一般の場合にも適用することができる。

補題 2.2.MMを左RR加群とし、MMが単純部分加群全体の和であるとする。任意の部分加群N⊆MN\subseteq Mに対して、単純部分加群の内部直和として表される部分加群P⊆MP\subseteq Mであって

M=N⊕PM=N\oplus P

を満たすものが存在する。

証明.MMの単純部分加群からなる族F\mathcal Fで、次の二条件を満たすもの全体をP\mathfrak Pとする。

  1. ∑S∈FS\sum_{S\in\mathcal F}Sは内部直和である。
  2. N∩∑S∈FS=0N\cap\sum_{S\in\mathcal F}S=0である。

P\mathfrak PはMMの冪集合の冪集合に含まれる集合であり、族の包含関係によって半順序集合になる。空族は二条件を満たすため、P\mathfrak Pは空でない。

C⊆P\mathfrak C\subseteq\mathfrak Pを鎖とし、

F∗:=⋃F∈CF\mathcal F_*:=\bigcup_{\mathcal F\in\mathfrak C}\mathcal F

と置く。C\mathfrak Cが空ならばF∗\mathcal F_*は空族であり、P\mathfrak Pに属する上界である。以下ではC≠∅\mathfrak C\neq\varnothingとする。F∗\mathcal F_*に属する相異なる有限個の単純部分加群S1,…,SnS_1,\ldots,S_nを取る。各SjS_jは鎖C\mathfrak Cのある元Fj\mathcal F_jに属する。C\mathfrak Cは包含関係に関する鎖であり、F1,…,Fn\mathcal F_1,\ldots,\mathcal F_nは有限個であるから、この有限族のすべてを含むF0∈C\mathcal F_0\in\mathfrak Cが存在する。F0\mathcal F_0の和は内部直和であるため、

x1+⋯+xn=0,xj∈Sjx_1+\cdots+x_n=0, \qquad x_j\in S_j

ならば、すべてのxjx_jが零である。したがってF∗\mathcal F_*の和も内部直和である。

次にx∈N∩∑S∈F∗Sx\in N\cap\sum_{S\in\mathcal F_*}Sとする。xxの表示には有限個のS∈F∗S\in\mathcal F_*だけが現れるため、それらをすべて含むF0∈C\mathcal F_0\in\mathfrak Cが存在する。すると

x∈N∩∑S∈F0S=0x\in N\cap\sum_{S\in\mathcal F_0}S=0

である。よってF∗∈P\mathcal F_*\in\mathfrak Pであり、F∗\mathcal F_*は鎖C\mathfrak Cの上界である。

Zorn の補題§E1.20 定理 2.1により、P\mathfrak Pは極大元F\mathcal Fをもつ。

P:=⨁S∈FSP:=\bigoplus_{S\in\mathcal F}S

と置くと、構成からN∩P=0N\cap P=0である。N+P≠MN+P\neq Mと仮定する。すべての単純部分加群がN+PN+Pに含まれるならば、MMが単純部分加群全体の和であることからM⊆N+PM\subseteq N+Pとなり、仮定に反する。したがって、N+PN+Pに含まれない単純部分加群T⊆MT\subseteq Mが存在する。

T∩(N+P)T\cap(N+P)はTTの部分加群であり、TTは単純である。TTはN+PN+Pに含まれないため、T∩(N+P)≠TT\cap(N+P)\neq Tであり、

T∩(N+P)=0T\cap(N+P)=0

となる。特にT∩P=0T\cap P=0であるから、P+T=P⊕TP+T=P\oplus Tである。また、x=p+t∈N∩(P⊕T)x=p+t\in N\cap(P\oplus T)とすると、t=x−p∈T∩(N+P)=0t=x-p\in T\cap(N+P)=0であり、続いてp∈N∩P=0p\in N\cap P=0となる。したがって

N∩(P⊕T)=0N\cap(P\oplus T)=0

である。よってF∪{T}\mathcal F\cup\{T\}はP\mathfrak Pの元であり、F\mathcal Fを真に含む。極大元F\mathcal Fを真に拡大する元の存在は、F\mathcal Fの極大性に反する。以上からN+P=MN+P=Mであり、M=N⊕PM=N\oplus Pとなる。▨

証明では、定理 2.3 (1)⇒\Rightarrow(3)には補題 2.2の Zorn の補題による補加群構成を用いる。定理 2.3 (3)⇒\Rightarrow(1)には、非零巡回部分加群の極大真部分加群を Zorn の補題で取り、その単純商を分裂によって単純部分加群として実現する。定理 2.3 (1)⇔\Leftrightarrow(2)は同じ補加群構成で結び、定理 2.3 (3)⇔\Leftrightarrow(4)は分裂補題によって結ぶ。

定理 2.3.RRを単位元をもつ結合環とし、MMを左RR加群とする。次の四条件は同値である。

  1. MMは単純部分加群全体の和である。
  2. MMは単純加群の内部直和である。すなわち、MMは半単純加群である。
  3. MMの任意の部分加群NNに対して、ある部分加群PPが存在してM=N⊕PM=N\oplus Pとなる。
  4. MMを中央項とする任意の短完全列 0⟶A→iM→pC⟶00\longrightarrow A\xrightarrow{i}M \xrightarrow{p}C\longrightarrow0 が分裂する。

(4)は、任意の部分加群N⊆MN\subseteq Mに対する標準短完全列

0⟶N⟶M⟶M/N⟶00\longrightarrow N\longrightarrow M \longrightarrow M/N\longrightarrow0

が分裂することと同値である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(3)を示す。補題 2.2を任意の部分加群N⊆MN\subseteq Mに適用すると、M=N⊕PM=N\oplus Pとなる部分加群PPを得る。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。MMの単純部分加群全体の和をTTとする。(3)により

M=T⊕UM=T\oplus U

となる部分加群UUが存在する。U≠0U\neq0と仮定し、0≠u∈U0\neq u\in Uを取る。

巡回部分加群RuRuの真の部分加群全体を包含関係で順序づけた半順序集合をQ\mathfrak Qとする。u≠0u\neq0であるからRu≠0Ru\neq0であり、零部分加群はQ\mathfrak Qに属する。Q\mathfrak Qの空の鎖は、零部分加群をQ\mathfrak Q内の上界にもつ。以下、Q\mathfrak Qの非空な鎖D\mathfrak Dに対して、その和集合

L∗:=⋃L∈DLL_*:=\bigcup_{L\in\mathfrak D}L

は部分加群である。L∗=RuL_*=Ruならばu∈L∗u\in L_*であるため、あるL∈DL\in\mathfrak Dがuuを含む。uuはRuRuの生成元であるからL=RuL=Ruとなり、L∈QL\in\mathfrak Qに反する。したがってL∗L_*は真の部分加群であり、鎖D\mathfrak Dの上界としてQ\mathfrak Qに属する。

Zorn の補題§E1.20 定理 2.1により、RuRuは極大真部分加群LLをもつ。商Ru/LRu/Lは単純である。実際、その部分加群の逆像はLLとRuRuの間の部分加群であり、LLの極大性からLLまたはRuRuに限られる。

LLはMMの部分加群でもあるため、(3)によってM=L⊕CM=L\oplus Cとなる部分加群CCが存在する。任意のx∈Rux\in Ruをx=l+cx=l+c、l∈Ll\in L、c∈Cc\in Cと書くと、c=x−l∈Ruc=x-l\in Ruでもある。したがって

Ru=L⊕(Ru∩C)Ru=L\oplus(Ru\cap C)

となる。S:=Ru∩CS:=Ru\cap Cと置く。商写像Ru→Ru/LRu\to Ru/LのSSへの制限は、表示した直和分解によって同型S≅Ru/LS\cong Ru/Lを与える。よってSSは単純である。またS⊆Ru⊆US\subseteq Ru\subseteq Uである。一方、SSはMMの単純部分加群であるからS⊆TS\subseteq Tである。したがって

S⊆T∩U=0S\subseteq T\cap U=0

となり、S≠0S\neq0に反する。よってU=0U=0であり、M=TM=Tとなる。

(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。(2)ならば、定義からMMは単純部分加群の和である。逆に(1)を仮定すると、既に示した(3)が成り立つ。補題 2.2の証明でN=0N=0と置けば、MM自身が単純部分加群の内部直和として表される。よって(2)が成り立つ。

(3)⇒\Rightarrow(4)を示す。短完全列

0⟶A→iM→pC⟶00\longrightarrow A\xrightarrow{i}M \xrightarrow{p}C\longrightarrow0

を取る。i(A)i(A)はMMの部分加群であるから、M=i(A)⊕PM=i(A)\oplus Pとなる部分加群PPが存在する。対応する射影π ⁣:M→i(A)\pi\colon M\to i(A)と同型i ⁣:A→i(A)i\colon A\to i(A)の逆写像を用いて

r:=i−1∘π ⁣:M⟶Ar:=i^{-1}\circ\pi\colon M\longrightarrow A

と置くと、r∘i=1Ar\circ i=1_Aである。分裂補題§E6.9 命題 3.2により短完全列は分裂する。

(4)⇒\Rightarrow(3)を示す。部分加群N⊆MN\subseteq Mに対する標準短完全列

0⟶N⟶M⟶M/N⟶00\longrightarrow N\longrightarrow M \longrightarrow M/N\longrightarrow0

へ(4)を適用する。分裂補題によりM≅N⊕M/NM\cong N\oplus M/Nとなり、より具体的には包含N→MN\to Mの像を第一因子とする内部直和M=N⊕PM=N\oplus Pが得られる。したがって(3)が成り立つ。

最後に、(4)が成り立てば標準短完全列はすべて分裂する。逆に標準短完全列がすべて分裂すれば、分裂補題によって(3)が従い、(4)が従う。▨

定理の(4)では、中央項が固定した加群MMである。射影加群の特徴づけに現れる「終域が固定した加群である短完全列がすべて分裂する」という量化とは異なる。

3 半単純加群の閉性

部分加群、商加群および任意直和は半単純性を保つ。証明では、半単純加群の内部直和表示を直接操作する代わりに、全部分加群が直和因子であるという同値条件と、単純部分加群の和による同値条件を使い分ける。

命題 3.1.MMを半単純左RR加群とする。

  1. MMの任意の部分加群NNは半単純である。
  2. MMの任意の商加群M/NM/Nは半単純である。

証明.(1)を示す。N⊆MN\subseteq Mとする。K⊆NK\subseteq Nを任意の部分加群とする。定理 2.3により、M=K⊕LM=K\oplus Lとなる部分加群LLが存在する。x∈Nx\in Nをx=k+lx=k+l、k∈Kk\in K、l∈Ll\in Lと書くと、l=x−k∈N∩Ll=x-k\in N\cap Lである。したがって

N=K⊕(N∩L)N=K\oplus(N\cap L)

となる。NNの任意の部分加群がNNの直和因子であるため、同じ定理からNNは半単純である。

(2)を示す。再び同値定理により、M=N⊕PM=N\oplus Pとなる部分加群PPが存在する。商写像のPPへの制限

P⟶M/N,p⟼p+NP\longrightarrow M/N, \qquad p\longmapsto p+N

は同型である。(1)からPPは半単純であるため、M/NM/Nも半単純である。▨

命題 3.2.(Mj)j∈J(M_j)_{j\in J}を、一つの左RR加群MMに含まれる半単純部分加群の族とする。このとき、部分加群の和

∑j∈JMj\sum_{j\in J}M_j

は半単純である。

また、半単純左RR加群の任意の族(Mj)j∈J(M_j)_{j\in J}に対して、外部直和

⨁j∈JMj\bigoplus_{j\in J}M_j

は半単純である。

証明. 各MjM_jは定理 2.3により単純部分加群の和である。したがって∑jMj\sum_jM_jも単純部分加群の和であり、同じ定理から半単純である。

外部直和の場合には、各MjM_jを座標包含によって⨁jMj\bigoplus_jM_jの部分加群とみなす。各像はMjM_jと同型であるから半単純であり、外部直和はこれらの像の和である。前半の主張を適用すると、⨁jMj\bigoplus_jM_jは半単純である。▨

例 3.3 (有限次元空間と無限直和).kkを体とする。左正則加群kk{}_kkは単純であるから、knk^nはnn個の単純加群の直和として半単純である。例えば

k2=k(1,0)⊕k(0,1)=k(1,1)⊕k(0,1)k^2=k(1,0)\oplus k(0,1) =k(1,1)\oplus k(0,1)

である。二つの表示は実際の直和因子が一意ではないことを示す。

一方、

⨁n≥1k\bigoplus_{n\geq1}k

も半単純であるが、Artin 加群でも有限長加群でもない。実際、最初のmm個の座標だけを許す部分加群をVmV_m、第mm座標以降だけを許す部分加群をWmW_mとすると、

0⊊V1⊊V2⊊⋯0\subsetneq V_1\subsetneq V_2\subsetneq\cdots

は停止しない真の昇鎖であり、

W1⊋W2⊋W3⊋⋯W_1\supsetneq W_2\supsetneq W_3\supsetneq\cdots

は停止しない真の降鎖である。

4 左半単純環

半単純性を左正則加群へ適用する。左右を区別する必要があるため、本記事では左側を定義に採用する。

定義 4.1. 単位元をもつ結合環RRが左半単純環 (left semisimple ring) であるとは、左正則加群RR{}_RRが半単純左RR加群であることをいう。

本記事で単に半単純環という場合には、左半単純環を意味する。

証明では、定理 4.2 (1)⇔\Leftrightarrow(2)を左正則加群の部分加群が左イデアルであることによって結ぶ。定理 4.2 (1)⇒\Rightarrow(3)には1R1_Rの有限台を用い、逆向きには極小左イデアルの単純性を用いる。定理 4.2 (1)⇒\Rightarrow(4)には各巡回部分加群を半単純な正則加群の商として表し、それらの和が任意の左加群を尽くすことを用いる。逆向きには左正則加群を代入し、定理 4.2 (4)⇔\Leftrightarrow(5)は加群版の同値定理による短完全列の分裂で結ぶ。

定理 4.2.RRを単位元をもつ結合環とする。次の五条件は同値である。

  1. RRは左半単純環である。
  2. RRの任意の左イデアルは左正則加群RR{}_RRの直和因子である。
  3. RRは有限個の極小左イデアルの内部直和である。
  4. すべての左RR加群は半単純である。
  5. 左RR加群からなるすべての短完全列が分裂する。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。RR{}_RRの部分加群はRRの左イデアルである。したがって定理 2.3をM=RRM={}_RRへ適用すると、この同値を得る。

(1)⇒\Rightarrow(3)を示す。(1)により、単純左イデアルからなる族(Li)i∈I(L_i)_{i\in I}が存在して

R=⨁i∈ILiR=\bigoplus_{i\in I}L_i

となる。直和の元1R1_Rは有限台をもつため、有限部分集合F⊆IF\subseteq Iと元ei∈Lie_i\in L_iによって

1R=∑i∈Fei1_R=\sum_{i\in F}e_i

と書くことができる。任意のr∈Rr\in Rに対して

r=r1R=∑i∈Freir=r1_R=\sum_{i\in F}re_i

であり、各LiL_iは左イデアルであるからrei∈Lire_i\in L_iである。よって

R=⨁i∈FLiR=\bigoplus_{i\in F}L_i

となる。j∈I∖Fj\in I\setminus Fが存在すれば、Lj⊆R=⨁i∈FLiL_j\subseteq R=\bigoplus_{i\in F}L_iである一方、もとの和の直和性からLj∩⨁i∈FLi=0L_j\cap\bigoplus_{i\in F}L_i=0となり、Lj=0L_j=0という矛盾を得る。したがってI=FI=Fは有限集合である。各LiL_iは命題 1.3によって極小左イデアルである。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。極小左イデアルは命題 1.3によって単純左加群である。したがって、極小左イデアルの有限内部直和であるRR{}_RRは半単純である。

(1)⇒\Rightarrow(4)を示す。MMを任意の左RR加群とする。各m∈Mm\in Mに対して

φm ⁣:R⟶Rm,r⟼rm\varphi_m\colon R\longrightarrow Rm, \qquad r\longmapsto rm

は全射な左RR線形写像である。(1)と命題 3.1 (2)により、RR{}_RRの商と同型な巡回部分加群RmRmは半単純である。さらに

M=∑m∈MRmM=\sum_{m\in M}Rm

である。命題 3.2により、この和は半単純である。よってすべての左RR加群が半単純である。

(4)⇒\Rightarrow(1)を示す。(4)を左正則加群M=RRM={}_RRに適用すると、RR{}_RRは半単純である。よってRRは左半単純環である。

(4)⇒\Rightarrow(5)を示す。左RR加群の短完全列

0⟶A⟶B⟶C⟶00\longrightarrow A\longrightarrow B\longrightarrow C\longrightarrow0

を取る。(4)により中央項BBは半単純である。定理 2.3 (4)をM=BM=Bへ適用すると、この短完全列は分裂する。

(5)⇒\Rightarrow(4)を示す。左RR加群MMと部分加群N⊆MN\subseteq Mを任意に取る。標準短完全列

0⟶N⟶M⟶M/N⟶00\longrightarrow N\longrightarrow M \longrightarrow M/N\longrightarrow0

は(5)によって分裂する。よって定理 2.3によりMMは半単純である。MMは任意であったから(4)が成り立つ。以上ですべての条件が同値である。▨

固定した加群MMに対する定理 2.3 (4)は、中央項がMMである短完全列だけを量化する。一方、環に関する(5)は、左RR加群からなるすべての短完全列を量化する。(1)⇒\Rightarrow(4)を経由することによって、左正則加群一つの半単純性が全左加群の分裂性へ広がる。

系 4.3. 左半単純環RRの左正則加群RR{}_RRは有限長である。したがって、RRは左 Noether 環かつ左 Artin 環である。

証明.定理 4.2により、ある有限個の極小左イデアルL1,…,LnL_1,\ldots,L_nが存在して

R=L1⊕⋯⊕LnR=L_1\oplus\cdots\oplus L_n

となる。n=0n=0の場合にはRRは零環であり、空の組成列をもつ。n≥1n\geq1の場合、各LiL_iは単純であるから、部分和からなる列

0⊊L1⊊L1⊕L2⊊⋯⊊L1⊕⋯⊕Ln=R0\subsetneq L_1\subsetneq L_1\oplus L_2 \subsetneq\cdots\subsetneq L_1\oplus\cdots\oplus L_n=R

は組成列である。いずれの場合にも、有限長の特徴づけ§E6.20 定理 4.3によりRR{}_RRは有限長であり、Noether 加群かつ Artin 加群である。左正則加群に対する二つの鎖条件は、RRが左 Noether 環かつ左 Artin 環であることを意味する。▨

例 4.4 (斜体の有限直積).n≥1n\geq1とし、D1,…,DnD_1,\ldots,D_nを斜体として、

R=D1×⋯×DnR=D_1\times\cdots\times D_n

と置く。LiL_iを第ii成分だけが零とは限らない元全体とする。LiL_iは左イデアルであり、左RR加群として単純である。実際、LiL_iの非零元xxを含む左部分加群は、第ii成分でxi−1x_i^{-1}を左から掛ける環の元を作用させることによって第ii成分の単位元を含み、LiL_i全体を含む。さらに

R=L1⊕⋯⊕LnR=L_1\oplus\cdots\oplus L_n

であるから、RRは左半単純環である。n=1n=1の場合は、斜体自身が左半単純環であることを表す。

右RR加群は左RopR^{\mathrm{op}}加群として読み替えることができるため、右半単純加群と右半単純環は反対環上で同じ定義によって扱うことができる。ただし、左半単純性と右半単純性が同値であることは本記事では証明しない。左半単純性と右半単純性の同値、原始冪等元、単純 Artin 環の行列環表示および半単純 Artin 環の分類は、後続記事「Artin–Wedderburn の定理」が扱う。

5 有限長半単純加群の分解型

半単純加群の直和因子そのものは一意ではない。しかし有限長を仮定すると、現れる単純加群の同型類とその重複度は一意になる。

定理 5.1.MMを半単純左RR加群とする。次の二条件は同値である。

  1. MMは有限長である。
  2. MMは有限個の単純加群の内部直和である。

さらに、二つの分解

M=S1⊕⋯⊕Sn=T1⊕⋯⊕TmM=S_1\oplus\cdots\oplus S_n =T_1\oplus\cdots\oplus T_m

が単純加群による内部直和分解であるならば、n=mn=mであり、ある置換σ\sigmaが存在して

Si≅Tσ(i)(1≤i≤n)S_i\cong T_{\sigma(i)} \qquad(1\leq i\leq n)

となる。したがって、単純加群の各同型類が現れる重複度は分解の選択に依存しない。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。MMが有限長であるとし、半単純分解

M=⨁i∈ISiM=\bigoplus_{i\in I}S_i

を取り、d:=ℓR(M)<∞d:=\ell_R(M)<\inftyと置く。IIがd+1d+1個以上の相異なる元i1,…,id+1i_1,\ldots,i_{d+1}を含むならば、

0⊊Si1⊊Si1⊕Si2⊊⋯⊊Si1⊕⋯⊕Sid+1⊆M0\subsetneq S_{i_1} \subsetneq S_{i_1}\oplus S_{i_2} \subsetneq\cdots\subsetneq S_{i_1}\oplus\cdots\oplus S_{i_{d+1}} \subseteq M

は長さd+1d+1の真の昇鎖となり、長さの定義に反する。したがってIIは有限集合であり、(2)が成り立つ。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。逆にM=0M=0ならば、空の組成列を用いる。M≠0M\neq0であり、

M=S1⊕⋯⊕SnM=S_1\oplus\cdots\oplus S_n

と有限直和表示されているとする。部分和からなる列

0⊊S1⊊S1⊕S2⊊⋯⊊M0\subsetneq S_1\subsetneq S_1\oplus S_2 \subsetneq\cdots\subsetneq M

では、連続する二項の商が対応するSiS_iと同型である。したがって、この列は組成列である。§E6.20 定理 4.3によりMMは有限長である。

最後に、表示した二つの単純直和分解から部分和の組成列をそれぞれ作る。第一の組成列の組成因子はS1,…,SnS_1,\ldots,S_nと同型であり、第二の組成列の組成因子はT1,…,TmT_1,\ldots,T_mと同型である。加群の Jordan–Hölder の定理§E6.20 定理 5.2により、二つの組成列は同じ個数の組成因子をもち、順序を並べ替えた組成因子がそれぞれ同型になる。よってn=mn=mであり、表示した置換σ\sigmaが存在する。▨

命題 5.2. 半単純左RR加群MMに対して、次の三条件は同値である。

  1. MMは Artin 加群である。
  2. MMは有限個の単純加群の内部直和である。
  3. MMは有限長加群である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。(1)を仮定する。半単純性から、単純部分加群SiS_iによる内部直和表示

M=⨁i∈ISiM=\bigoplus_{i\in I}S_i

が存在する。IIが無限集合であると仮定し、相異なる元i1,i2,…i_1,i_2,\ldotsを取る。各n≥1n\geq1に対して

Nn:=⨁i∈I∖{i1,…,in−1}SiN_n:=\bigoplus_{i\in I\setminus\{i_1,\ldots,i_{n-1}\}}S_i

と置く。Sin⊆NnS_{i_n}\subseteq N_nである一方、内部直和性からSin∩Nn+1=0S_{i_n}\cap N_{n+1}=0であるため、

N1⊋N2⊋N3⊋⋯N_1\supsetneq N_2\supsetneq N_3\supsetneq\cdots

は停止しない真の降鎖となる。これはMMの Artin 性に反する。したがってIIは有限集合であり、(2)が成り立つ。

(2)⇔\Leftrightarrow(3)を示す。この同値は定理 5.1の前半で証明した。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。(3)ならば§E6.20 定理 4.3によりMMは Artin 加群であるから、(1)も成り立つ。▨

注意 5.3 (Jordan–Hölder の定理との比較). Jordan–Hölder の定理§E6.20 定理 5.2は、任意の有限長加群について組成因子の同型類と重複度を分類する。しかし、組成列の短完全列が分裂することや、加群が組成因子の直和になることは主張しない。例えばZ/4Z\mathbb Z/4\mathbb Zの組成因子は二つともZ/2Z\mathbb Z/2\mathbb Zと同型であるが、Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Zはその二つの直和ではない。

Jordan–Hölder の定理が組成因子の型と重複度だけを分類するのに対し、定理 5.1は半単純性を仮定するため、組成因子を実際の直和因子として実現し、その同型類ごとの重複度を一意にする。ただし、k2k^2の異なる一次元補空間が示すように、MMに埋め込まれた個々の直和因子そのものまでは一意にしない。この定理の一意性は Jordan–Hölder の定理から従うものであり、後続の直既約分解の一意性とは分類する因子の種類が異なる。

例 5.4 (有限長と半単純性の相違).Z\mathbb Z加群Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Zでは、

Z/6Z=3Z/6Z⊕2Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Z =3\mathbb Z/6\mathbb Z\oplus2\mathbb Z/6\mathbb Z

となる。二つの直和因子はそれぞれ位数22と位数33の単純Z\mathbb Z加群であるため、Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Zは半単純である。

一方、M:=Z/4ZM:=\mathbb Z/4\mathbb ZとN:=2Z/4ZN:=2\mathbb Z/4\mathbb Zを考える。MMの位数22の部分加群はNNだけである。NNの補加群PPが存在するならば、位数からPPも位数22でなければならず、P=NP=Nとなる。しかしN∩P=N≠0N\cap P=N\neq0であるから、補加群は存在しない。したがってMMは半単純ではない。

しかし、

0⊊N⊊M0\subsetneq N\subsetneq M

は組成列であるため、MMは長さ22の有限長加群である。この例は、有限長であることだけでは半単純性が従わず、組成因子の一意性だけでは組成列が直和分解になるとは限らないことを示す。

6 演習

問題 6.1. 次の九つを、本記事の定義と定理を用いて証明する。

  1. 単純左RR加群SSと0≠s∈S0\neq s\in Sに対してRs=SRs=Sであることを示し、S≅R/LS\cong R/Lとなる極大左イデアルLLを構成せよ。
  2. 補題 2.2の証明で、鎖の和が上界になることを示す際に有限性を用いた箇所を特定せよ。また、極大族の和PPがNNの補加群になる最後の矛盾を再構成せよ。
  3. 半単純加群MMの部分加群NNとK⊆NK\subseteq Nに対して、M=K⊕LM=K\oplus LからN=K⊕(N∩L)N=K\oplus(N\cap L)を導け。
  4. 左半単純環RRと左RR加群MMに対して、各巡回部分加群RmRmが半単純であることを示し、MMが半単純であると結論せよ。
  5. RRが左半単純であり、R=⨁i∈ILiR=\bigoplus_{i\in I}L_iが単純左イデアルによる分解であるとする。1R1_Rの有限台からIIが有限集合であることを証明せよ。
  6. 体kkと集合IIに対して⨁i∈Ik\bigoplus_{i\in I}kが半単純であることを示せ。IIが無限集合ならば、停止しない真の降鎖を構成し、この加群が Artin 加群でも有限長加群でもないことを示せ。
  7. k2k^2の二つの単純直和分解を挙げ、直和因子そのものが一意でないことと、定理 5.1による分解型の一意性が両立する理由を説明せよ。
  8. Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Zの標準短完全列 0⟶2Z/4Z⟶Z/4Z⟶Z/2Z⟶00\longrightarrow2\mathbb Z/4\mathbb Z \longrightarrow\mathbb Z/4\mathbb Z \longrightarrow\mathbb Z/2\mathbb Z \longrightarrow0 が分裂しないことを、切断が存在しないことから直接証明せよ。
  9. 固定した半単純加群MMを中央項とする短完全列がすべて分裂するという主張と、左半単純環上の左加群からなる短完全列がすべて分裂するという主張の量化の違いを説明せよ。
解答 (演習の解答).
  1. RsRsはssを含む非零部分加群であるから、単純性によりRs=SRs=Sである。写像φs ⁣:R→S\varphi_s\colon R\to S、r↦rsr\mapsto rsは全射であり、L:=ker⁡φsL:=\ker\varphi_sと置くと第一同型定理からR/L≅SR/L\cong Sを得る。L⊆I⊆RL\subseteq I\subseteq Rを満たす左イデアルIIに対してI/LI/LはR/LR/Lの部分加群であるため、単純性からI=LI=LまたはI=RI=Rとなる。よってLLは極大左イデアルである。

  2. 鎖に属する有限個の族は、包含関係によってそのすべてを含む鎖の一元に収まる。内部直和の判定に現れる関係式と、NNとの共通部分に属する元の表示はいずれも有限個の単純部分加群だけを用いるため、鎖の一元に帰着することができる。極大族の和をPPとし、N+P≠MN+P\neq Mと仮定すると、N+PN+Pに含まれない単純部分加群TTが存在する。単純性からT∩(N+P)=0T\cap(N+P)=0であり、P⊕TP\oplus TもNNと零で交わる。したがって極大族へTTを追加することができ、極大性に反する。

  3. x∈Nx\in Nをx=k+lx=k+l、k∈Kk\in K、l∈Ll\in Lと一意に書く。k∈K⊆Nk\in K\subseteq Nであるからl=x−k∈N∩Ll=x-k\in N\cap Lであり、N=K+(N∩L)N=K+(N\cap L)となる。さらにK∩(N∩L)⊆K∩L=0K\cap(N\cap L)\subseteq K\cap L=0であるため、この和は内部直和である。

  4. m∈Mm\in Mに対してR→RmR\to Rm、r↦rmr\mapsto rmは全射である。RR{}_RRは半単純であり、半単純加群の商は半単純であるからRmRmは半単純である。M=∑m∈MRmM=\sum_{m\in M}Rmであり、半単純部分加群の和は半単純であるため、MMは半単純である。

  5. 1R=∑i∈Fei1_R=\sum_{i\in F}e_i、ei∈Lie_i\in L_iとなる有限集合F⊆IF\subseteq Iを取る。任意のr∈Rr\in Rについてr=∑i∈Freir=\sum_{i\in F}re_iであり、rei∈Lire_i\in L_iであるからR=⨁i∈FLiR=\bigoplus_{i\in F}L_iとなる。j∈I∖Fj\in I\setminus FならばLj⊆⨁i∈FLiL_j\subseteq\bigoplus_{i\in F}L_iであるが、直和性から両者の共通部分は零である。したがってLj=0L_j=0となり、単純加群LjL_jが非零であることに反するため、I=FI=Fである。

  6. 各座標のkkは単純左kk加群であるため、M:=⨁i∈IkM:=\bigoplus_{i\in I}kは定義によって半単純である。IIが無限集合ならば相異なる元i1,i2,…i_1,i_2,\ldotsを取り、NnN_nをi1,…,in−1i_1,\ldots,i_{n-1}の座標が零である元全体とする。このとき

    N1⊋N2⊋N3⊋⋯N_1\supsetneq N_2\supsetneq N_3\supsetneq\cdots

    は停止しない真の降鎖であるため、MMは Artin 加群ではない。有限長加群は Artin 加群であるから、MMは有限長でもない。

  7. 例えばk2=k(1,0)⊕k(0,1)=k(1,1)⊕k(0,1)k^2=k(1,0)\oplus k(0,1)=k(1,1)\oplus k(0,1)である。第一因子は二つの表示で異なる部分空間であるため、実際の直和因子は一意でない。一方、四つの因子はいずれも単純加群kkと同型であり、どちらの分解でも同型類[k][k]の重複度は22である。有限長分解の一意性が主張するのは後者であり、部分加群としての一致ではない。

  8. 商写像をq ⁣:Z/4Z→Z/2Zq\colon\mathbb Z/4\mathbb Z\to\mathbb Z/2\mathbb Zとする。切断ssが存在すれば、x:=s(1‾)x:=s(\overline1)は2x=s(21‾)=02x=s(2\overline1)=0を満たし、q(x)=1‾q(x)=\overline1を満たす。Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Zで2x=02x=0を満たす元は0‾\overline0と2‾\overline2だけであり、いずれもqqによって0‾\overline0へ写る。したがってq(x)=1‾q(x)=\overline1を満たすxxは存在せず、切断も存在しないため、短完全列は分裂しない。

  9. 固定したMMに関する主張では、短完全列の中央項がMMであるものだけを対象とし、MMの全部分加群がMMの直和因子であることと同値になる。環に関する主張では、中央項を含む三つの加群を任意に動かし、左RR加群からなるすべての短完全列を対象とする。左正則加群RR{}_RRの半単純性からすべての左RR加群の半単純性を導く環の同値定理が、この量化の拡張を正当化する。

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7 範囲と後続記事への接続

本記事は、一般の単位的結合環上で、半単純左加群の補加群による特徴づけ、左半単純環の同値条件および有限長半単純加群の分解型を扱った。単純環は両側イデアルによる条件であり、左正則加群の分解性を表す半単純環とは別の概念である。

後続記事「有限次元結合代数と中心単純代数」は、固定した基礎体上の代数、反対代数、単純代数、中心単純代数、代数のテンソル積およびスカラー拡大を扱う。本記事は、基礎体上の有限次元性や中心単純性を仮定しない。

後続記事「Artin–Wedderburn の定理」は、半単純 Artin 環を斜体上の全行列環の有限直積として分類し、単純 Artin 環、原始冪等元および自己準同型環との対応を扱う。左半単純性と右半単純性の一致も、Artin–Wedderburn 分類とともに扱う。本記事は Artin–Wedderburn 分類を証明の根拠として用いていない。Jacobson 根基による特徴づけ、森田理論、Ext、Tor および導来関手も本記事の範囲外である。

参考文献

  1. T. Y. Lam, Lectures on Modules and Rings, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1999.半単純加群の補加群による特徴づけ、半単純環および任意の左加群に関する同値条件を参考にした。
  2. Frank W. Anderson and Kent R. Fuller, Rings and Categories of Modules, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, 1992.単純加群、極大左イデアル、半単純加群の閉性および有限長分解を参考にした。
  3. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.半単純加群の直和分解と組成因子による分解型の一意性を参考にした。

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