§E6.34Skolem–Noether の定理

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中心単純代数の中では、単純部分代数の二つの実現は基底変換に相当する内部自己同型だけ異なる。行列代数の場合、同じ線形作用を異なる基底で表す二つの行列表示が可逆行列によって共役になる。本記事では、行列表示の共役という構成を斜体上のベクトル空間と双加群へ移し、Skolem–Noether の定理を証明する。

本記事を通じてKKは可換体とする。単位的KK-代数準同型、単純KK-代数および中心単純KK-代数には§E6.33 定義 1.3と§E6.33 定義 2.1の規約を用いる。中心単純KK-代数AAでは構造準同型によってKKとK1A=Z(A)K1_A=Z(A)を同一視する。

1 内部自己同型と中心化代数

単元による共役は、基礎体の像が中心にあるためKK-代数自己同型になる。

定義 1.1.AAを単位的KK-代数、u∈A×u\in A^\timesとする。写像

Int⁡(u) ⁣:A⟶A,a⟼uau−1\operatorname{Int}(u)\colon A\longrightarrow A, \qquad a\longmapsto uau^{-1}

をuuが定める内部自己同型 (inner automorphism) という。

部分集合S⊆AS\subseteq Aの中心化代数 (centralizer algebra) を

CA(S):={a∈A∣as=sa for every s∈S}C_A(S):=\{a\in A\mid as=sa\ \text{for every }s\in S\}

で定める。

命題 1.2.AAを単位的KK-代数とする。任意のu,v∈A×u,v\in A^\timesに対して、Int⁡(u)\operatorname{Int}(u)は単位的KK-代数自己同型であり、

Int⁡(u)−1=Int⁡(u−1),Int⁡(u)∘Int⁡(v)=Int⁡(uv)\operatorname{Int}(u)^{-1}=\operatorname{Int}(u^{-1}), \qquad \operatorname{Int}(u)\circ\operatorname{Int}(v) =\operatorname{Int}(uv)

が成り立つ。

証明. 共役写像は加法、乗法および単位元を保つ。c∈Kc\in Kとa∈Aa\in Aに対してc1A∈Z(A)c1_A\in Z(A)であるから

Int⁡(u)(ca)=u(c1A)au−1=(c1A)uau−1=cInt⁡(u)(a)\operatorname{Int}(u)(ca) =u(c1_A)au^{-1} =(c1_A)uau^{-1} =c\operatorname{Int}(u)(a)

となり、KK線形でもある。u−1u^{-1}による共役との二つの合成は恒等写像である。また

Int⁡(u)(Int⁡(v)(a))=uva(uv)−1\operatorname{Int}(u) (\operatorname{Int}(v)(a)) =uv a(uv)^{-1}

であるため、合成の式も従う。▨

2 中心単純代数の斜体因子

Artin–Wedderburn の定理は中心単純代数を斜体上の行列環として表す。環同型だけでなくKK-代数同型として用いるため、斜体の中心へKKを移す。

命題 2.1.AAを有限次元中心単純KK-代数とする。このとき、ある正の整数nnと有限次元斜体DDが存在し、DDには

Z(D)=K1DZ(D)=K1_D

となるKK-代数構造を入れることができる。この構造に関して

A≅Mn(D)A\cong M_n(D)

はKK-代数同型になる。

右DD加群V:=DnV:=D^nに対して、左からの行列作用はKK-代数同型

Mn(D)≅End⁡D(VD)M_n(D)\cong\operatorname{End}_D(V_D)

を与える。したがって、AAをEnd⁡D(VD)\operatorname{End}_D(V_D)とKK-代数として同一視することができる。

証明.AAは有限次元KK-線形空間であるため、左イデアルの任意の降鎖はKK-部分空間の次元が減少する回数を超えて真に減少しない。よってAAは左 Artin 環である。AAは単純環でもあるから、単純 Artin 環の特徴づけ§E6.25 定理 8.2により、ある斜体DDとn≥1n\geq1に対する環同型

θ ⁣:A→ ≅ Mn(D)\theta\colon A\xrightarrow{\ \cong\ }M_n(D)

が存在する。

Mn(D)M_n(D)の中心を計算する。X=(xij)X=(x_{ij})がすべての行列単位EkkE_{kk}と可換すると、XXの非対角成分はすべて零になる。X=diag⁡(d1,…,dn)X=\operatorname{diag}(d_1,\ldots,d_n)と書くと、i≠ji\neq jに対するXEij=EijXXE_{ij}=E_{ij}Xからdi=djd_i=d_jを得る。n=1n=1の場合も含めて、X=dInX=dI_nとなるd∈Dd\in Dが存在する。さらに任意のc∈Dc\in Dと可換する対角行列cE11cE_{11}と比較するとdc=cddc=cdである。逆にd∈Z(D)d\in Z(D)ならばdIndI_nはすべての行列と可換する。したがって

Z(Mn(D))=Z(D)InZ(M_n(D))=Z(D)I_n

である。

環同型θ\thetaは中心を中心へ写す。Z(A)=K1AZ(A)=K1_Aであるため、各c∈Kc\in Kに対して

θ(c1A)=λcIn\theta(c1_A)=\lambda_cI_n

となる一意なλc∈Z(D)\lambda_c\in Z(D)が存在する。写像c↦λcc\mapsto\lambda_cは体同型K≅Z(D)K\cong Z(D)である。実際、環準同型性はθ\thetaから従い、単射性は体KKと1A≠01_A\neq0から従い、全射性はθ\thetaが二つの中心の間の全射を与えることから従う。この同型によってKKをZ(D)Z(D)と同一視し、DDを中心KK-斜体とみなす。このとき

θ(ca)=θ(c1A)θ(a)=λcInθ(a)=cθ(a)\theta(ca)=\theta(c1_A)\theta(a) =\lambda_cI_n\theta(a)=c\theta(a)

であるから、θ\thetaはKK線形である。AAの有限次元性と

dim⁡KMn(D)=n2dim⁡KD\dim_KM_n(D)=n^2\dim_KD

によりDDも有限次元である。

V=DnV=D^nを列ベクトルからなる右DD加群とする。各行列は左乗法によって右DD線形自己準同型を定める。逆にF∈End⁡D(VD)F\in\operatorname{End}_D(V_D)は標準基底ベクトルeje_jの像によって一意に決まり、F(ej)F(e_j)を第jj列とする行列の左乗法に等しい。この対応は加法、合成および単位元を保つ。K⊆Z(D)K\subseteq Z(D)であるためKK線形でもあり、所要のKK-代数同型を得る。▨

3 必要なテンソル積の単純性

後続記事で扱う中心単純代数同士のテンソル積による閉性全体は用いない。Skolem–Noether の証明に必要な、片方の因子だけが中心単純である場合の単純性を直接証明する。

補題 3.1.BBを有限次元単純KK-代数、CCを有限次元中心単純KK-代数とする。このとき、代数のテンソル積

B⊗KCB\otimes_KC

は単純KK-代数である。

証明. 代数のテンソル積の構造には§E6.33 定理 5.1を用いる。I⊆B⊗KCI\subseteq B\otimes_KCを非零両側イデアルとする。IIの非零元のうち、純テンソルの和として表すために必要な項数が最小である元を取り、その最小項数をr≥1r\geq1とする。BB側の係数の張る部分空間の基底を取り直すことにより、この元を

x=∑i=1rbi⊗cix=\sum_{i=1}^r b_i\otimes c_i

と書くことができる。ただしb1,…,brb_1,\ldots,b_rはKK上一次独立であり、各cic_iは非零である。

CCは単純でc1≠0c_1\neq0であるから、c1c_1が生成する両側イデアルはCC全体である。したがって、有限個のpj,qj∈Cp_j,q_j\in Cが存在して

∑jpjc1qj=1C\sum_jp_jc_1q_j=1_C

となる。IIの元

y:=∑j(1B⊗pj)x(1B⊗qj)=∑i=1rbi⊗ci′y:=\sum_j(1_B\otimes p_j)x(1_B\otimes q_j) =\sum_{i=1}^rb_i\otimes c_i'

を考える。ここでc1′=1Cc_1'=1_Cである。bib_iの一次独立性によりy≠0y\neq0であり、yyのテンソル長はrr以下である。rrの最小性からyyのテンソル長もrrである。

任意のc∈Cc\in Cに対して、交換子

y(1B⊗c)−(1B⊗c)y=∑i=2rbi⊗(ci′c−cci′)\begin{aligned} y(1_B\otimes c)-(1_B\otimes c)y &=\sum_{i=2}^rb_i\otimes(c_i'c-cc_i') \end{aligned}

はIIに属する。右辺はr−1r-1個以下の純テンソルの和であるため、rrの最小性により零でなければならない。b2,…,brb_2,\ldots,b_rは一次独立であるから

ci′c=cci′(2≤i≤r,c∈C)c_i'c=cc_i' \qquad (2\leq i\leq r, c\in C)

となる。よってci′∈Z(C)=K1Cc_i'\in Z(C)=K1_Cである。ci′=λi1Cc_i'=\lambda_i1_Cと書くと

y=(b1+∑i=2rλibi)⊗1C=b⊗1Cy=\left(b_1+\sum_{i=2}^r\lambda_ib_i\right)\otimes1_C =b\otimes1_C

となる。bib_iの一次独立性からb≠0b\neq0である。

BBは単純であるから、bbが生成する両側イデアルはBB全体である。したがって、有限個のak,dk∈Ba_k,d_k\in Bが存在して

∑kakbdk=1B\sum_ka_kbd_k=1_B

となる。両側イデアルIIはb⊗1Cb\otimes1_Cを含むため、

1B⊗1C=∑k(ak⊗1C)(b⊗1C)(dk⊗1C)∈I1_B\otimes1_C =\sum_k(a_k\otimes1_C)(b\otimes1_C)(d_k\otimes1_C) \in I

である。よってI=B⊗KCI=B\otimes_KCであり、テンソル積は単純である。▨

4 二つのテンソル積加群

Skolem–Noether の定理では、中心単純代数を右斜体加群の自己準同型代数として表し、二つの代数準同型を同じ線形空間上の二つの加群構造へ変換する。反対斜体を用いる理由は、右乗法を左作用として記述すると積の順序が反転するためである。

命題 4.1.KKを可換体、AAを有限次元中心単純KK-代数とする。DDを有限次元中心KK-斜体、VVを非零有限次元右DD加群とし、KK-代数同型

A≅End⁡D(VD)A\cong\operatorname{End}_D(V_D)

によって両者を同一視する。さらに、BBを有限次元単純KK-代数とし、φ ⁣:B→A\varphi\colon B\to Aを単位的KK-代数準同型とする。

R:=B⊗KDopR:=B\otimes_KD^{\mathrm{op}}

と置く。VV上の作用を

(b⊗dop)⋅φv:=φ(b)(vd)(b∈B, d∈D, v∈V)(b\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v :=\varphi(b)(vd) \qquad (b\in B,\ d\in D,\ v\in V)

によって定めると、VVは左RR加群VφV_\varphiになる。この左RR加群は有限長である。

ψ ⁣:B→A\psi\colon B\to Aも単位的KK-代数準同型ならば、左RR加群として

Vφ≅VψV_\varphi\cong V_\psi

である。

証明. 最初に作用が well-defined であることを確認する。c∈Kc\in Kに対してφ(cb)=cφ(b)\varphi(cb)=c\varphi(b)であり、K=Z(D)K=Z(D)であるから

((cb)⊗dop)⋅φv=cφ(b)(vd),(b⊗(cd)op)⋅φv=φ(b)(v(cd))=cφ(b)(vd)\begin{aligned} ((cb)\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v &=c\varphi(b)(vd),\\ (b\otimes(cd)^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v &=\varphi(b)(v(cd)) =c\varphi(b)(vd) \end{aligned}

となる。したがって表示した双線型写像はKK上で平衡であり、B⊗KDopB\otimes_KD^{\mathrm{op}}からの加法的作用を一意に定める。

DopD^{\mathrm{op}}では

dopeop=(ed)opd^{\mathrm{op}}e^{\mathrm{op}}=(ed)^{\mathrm{op}}

である。φ(b)\varphi(b)とφ(b′)\varphi(b')は右DD線形であるため、純テンソルについて

(b⊗dop)⋅φ((b′⊗eop)⋅φv)=φ(b)(φ(b′)(ve)d)=φ(bb′)(v(ed))=((bb′)⊗(ed)op)⋅φv=((b⊗dop)(b′⊗eop))⋅φv\begin{aligned} (b\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi} \bigl((b'\otimes e^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v\bigr) &=\varphi(b)\bigl(\varphi(b')(ve)d\bigr)\\ &=\varphi(bb')\bigl(v(ed)\bigr)\\ &=((bb')\otimes(ed)^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v\\ &=\bigl((b\otimes d^{\mathrm{op}})(b'\otimes e^{\mathrm{op}})\bigr) \mathbin{\cdot_\varphi}v \end{aligned}

となる。また(1B⊗1Dop)⋅φv=v(1_B\otimes1_D^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v=vである。よってVφV_\varphiは左RR加群である。

反対代数の性質§E6.33 命題 3.1により、DopD^{\mathrm{op}}は有限次元中心単純KK-代数である。補題補題 3.1をBBとDopD^{\mathrm{op}}へ適用すると、RRは単純環である。またRRはKK上有限次元であるため、左イデアルの降鎖はKK-部分空間の次元によって停止する。したがってRRは単純左 Artin 環である。

RRの構造準同型によるc∈Kc\in Kの作用は

((c1B)⊗1Dop)⋅φv=cφ(1B)(v)=cv((c1_B)\otimes1_D^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v =c\varphi(1_B)(v)=cv

であり、VVの通常のKKスカラー倍と一致する。したがってVφV_\varphiの各RR部分加群はKK部分空間である。VVはKK上有限次元であるため、RR部分加群の昇鎖と降鎖はともに停止する。有限長の特徴づけ§E6.20 定理 4.3により、VφV_\varphiは有限長である。同じ議論をψ\psiに適用すると、VψV_\psiも有限長である。

単純 Artin 環上の有限長加群の分類§E6.25 系 8.3により、単純左RR加群SSと非負整数qφ,qψq_\varphi,q_\psiが存在して

Vφ≅S⊕qφ,Vψ≅S⊕qψV_\varphi\cong S^{\oplus q_\varphi}, \qquad V_\psi\cong S^{\oplus q_\psi}

となる。V≠0V\neq0であるからqφ,qψq_\varphi,q_\psiはともに正である。これらのRR加群同型は、RRに含まれるKKの作用が通常のスカラー倍に一致するためKK線形でもある。特にSSはKK上有限次元であり、

dim⁡KV=qφdim⁡KS=qψdim⁡KS\dim_KV=q_\varphi\dim_KS =q_\psi\dim_KS

となる。単純加群SSは非零であるためdim⁡KS>0\dim_KS>0であり、qφ=qψq_\varphi=q_\psiを得る。したがってVφ≅VψV_\varphi\cong V_\psiである。▨

5 Skolem–Noether の定理

証明の方針は次のとおりである。第一に、AAをEnd⁡D(VD)\operatorname{End}_D(V_D)と表示する。第二に、二つの準同型から同じ環B⊗KDopB\otimes_KD^{\mathrm{op}}上の二つの有限長加群Vφ,VψV_\varphi,V_\psiを作る。第三に、前命題による加群同型を右DD線形な可逆写像uuとして読み戻す。最後に、BBの作用との可換性からψ(b)=uφ(b)u−1\psi(b)=u\varphi(b)u^{-1}を導く。

定理 5.1 (Skolem–Noether の定理).KKを可換体、AAを有限次元中心単純KK-代数、BBを有限次元単純KK-代数とする。φ,ψ ⁣:B→A\varphi,\psi\colon B\to Aを単位的KK-代数準同型とする。このとき、ある単元u∈A×u\in A^\timesが存在して、すべてのb∈Bb\in Bに対して

ψ(b)=uφ(b)u−1\psi(b)=u\varphi(b)u^{-1}

となる。すなわち

ψ=Int⁡(u)∘φ\psi=\operatorname{Int}(u)\circ\varphi

である。

証明. 命題命題 2.1により、有限次元中心KK-斜体DDと非零有限次元右DD加群VVが存在して

A≅End⁡D(VD)A\cong\operatorname{End}_D(V_D)

となる。このKK-代数同型によって両者を同一視する。

命題命題 4.1をφ\varphiとψ\psiへ適用する。左B⊗KDopB\otimes_KD^{\mathrm{op}}加群同型

T ⁣:Vφ→ ≅ VψT\colon V_\varphi\xrightarrow{\ \cong\ }V_\psi

が存在する。d∈Dd\in Dとv∈Vv\in Vに対して、1B⊗dop1_B\otimes d^{\mathrm{op}}の作用を比較すると

T(vd)=T((1B⊗dop)⋅φv)=(1B⊗dop)⋅ψT(v)=T(v)dT(vd) =T\bigl((1_B\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v\bigr) =(1_B\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\psi}T(v) =T(v)d

となる。よってTTは右DD線形である。TTは全単射であり、その逆写像も右DD線形であるため、TTはEnd⁡D(VD)=A\operatorname{End}_D(V_D)=Aの単元である。この単元をuuと書く。

b∈Bb\in Bとv∈Vv\in Vに対して、b⊗1Dopb\otimes1_D^{\mathrm{op}}の作用を比較すると

u(φ(b)(v))=T((b⊗1Dop)⋅φv)=(b⊗1Dop)⋅ψT(v)=ψ(b)(u(v))\begin{aligned} u(\varphi(b)(v)) &=T\bigl((b\otimes1_D^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v\bigr)\\ &=(b\otimes1_D^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\psi}T(v)\\ &=\psi(b)(u(v)) \end{aligned}

となる。したがってuφ(b)=ψ(b)uu\varphi(b)=\psi(b)uであり、uuの可逆性から

ψ(b)=uφ(b)u−1\psi(b)=u\varphi(b)u^{-1}

を得る。▨

単純性と単位性により、定理に現れるφ\varphiとψ\psiは自動的に単射である。実際、ker⁡φ\ker\varphiはBBの両側イデアルであり、φ(1B)=1A≠0\varphi(1_B)=1_A\neq0であるためker⁡φ≠B\ker\varphi\neq Bである。BBの単純性からker⁡φ=0\ker\varphi=0となる。ker⁡ψ\ker\psiもBBの両側イデアルであり、ψ(1B)=1A≠0\psi(1_B)=1_A\neq0であるため、同じくker⁡ψ=0\ker\psi=0となる。このため、定理は単純部分代数の二つの埋め込みが内部自己同型によって移り合うことを述べている。

例 5.2 (Hamilton の四元数代数における複素数体の二つの埋め込み).A=HA=\mathbb Hを Hamilton の四元数代数、B=CB=\mathbb Cを実代数とする。二つの単位的実代数埋め込みを

φ(a+bi):=a+bi,ψ(a+bi):=a−bi\varphi(a+bi):=a+b\mathbf i, \qquad \psi(a+bi):=a-b\mathbf i

によって定める。j−1=−j\mathbf j^{-1}=-\mathbf jであり、四元数の積から

jij−1=−i\mathbf j\mathbf i\mathbf j^{-1}=-\mathbf i

となる。したがって

ψ(z)=jφ(z)j−1(z∈C)\psi(z)=\mathbf j\varphi(z)\mathbf j^{-1} \qquad(z\in\mathbb C)

である。定理§E6.33 定理 4.3によってH\mathbb Hは中心単純実代数であり、この計算は Skolem–Noether の定理が与える共役元を具体的に示している。

6 共役元の非一意性

一つの共役元を固定すると、ほかのすべての共役元は、埋め込まれた部分代数を中心化する単元を右から掛けることによって得られる。

命題 6.1.KKを可換体、AAを単位的KK-代数、BBを単位的KK-代数とし、φ,ψ ⁣:B→A\varphi,\psi\colon B\to Aを単位的KK-代数準同型とする。あるu0∈A×u_0\in A^\timesが

ψ=Int⁡(u0)∘φ\psi=\operatorname{Int}(u_0)\circ\varphi

を満たすと仮定する。このとき、φ\varphiをψ\psiへ移す共役元全体は

{u∈A×∣ψ=Int⁡(u)∘φ}=u0CA(φ(B))×=CA(ψ(B))×u0\begin{aligned} \{u\in A^\times\mid \psi=\operatorname{Int}(u)\circ\varphi\} &=u_0C_A(\varphi(B))^\times\\ &=C_A(\psi(B))^\times u_0 \end{aligned}

である。

証明.CA(φ(B))C_A(\varphi(B))はAAの加法、乗法およびKKスカラー倍で閉じ、1A1_Aを含むため、単位的KK-部分代数である。c∈CA(φ(B))c\in C_A(\varphi(B))がAAの単元ならば、cφ(b)=φ(b)cc\varphi(b)=\varphi(b)cの両側からc−1c^{-1}を掛けることによりc−1c^{-1}もφ(B)\varphi(B)を中心化する。したがってCA(φ(B))×=CA(φ(B))∩A×C_A(\varphi(B))^\times=C_A(\varphi(B))\cap A^\timesである。

u∈A×u\in A^\timesもψ=Int⁡(u)∘φ\psi=\operatorname{Int}(u)\circ\varphiを満たすとする。各b∈Bb\in Bに対して

uφ(b)u−1=u0φ(b)u0−1u\varphi(b)u^{-1} =u_0\varphi(b)u_0^{-1}

である。この等式の左からu0−1u_0^{-1}、右からuuを掛けると

(u0−1u)φ(b)=φ(b)(u0−1u)(u_0^{-1}u)\varphi(b) =\varphi(b)(u_0^{-1}u)

を得る。よってu0−1u∈CA(φ(B))×u_0^{-1}u\in C_A(\varphi(B))^\timesであり、u∈u0CA(φ(B))×u\in u_0C_A(\varphi(B))^\timesである。逆にc∈CA(φ(B))×c\in C_A(\varphi(B))^\timesならば

Int⁡(u0c)(φ(b))=u0cφ(b)c−1u0−1=u0φ(b)u0−1=ψ(b)\operatorname{Int}(u_0c)(\varphi(b)) =u_0c\varphi(b)c^{-1}u_0^{-1} =u_0\varphi(b)u_0^{-1} =\psi(b)

である。したがって最初の等式が成り立つ。

ψ(B)=u0φ(B)u0−1\psi(B)=u_0\varphi(B)u_0^{-1}であるため

CA(ψ(B))=u0CA(φ(B))u0−1C_A(\psi(B))=u_0C_A(\varphi(B))u_0^{-1}

となる。両辺の単元群を取り、右からu0u_0を掛けると

CA(ψ(B))×u0=u0CA(φ(B))×C_A(\psi(B))^\times u_0 =u_0C_A(\varphi(B))^\times

を得る。▨

7 自己同型群と PGL

中心単純代数自身を単純部分代数として主定理へ入れると、すべての基礎体代数自己同型が内部的であることが従う。

命題 7.1.KKを可換体、AAを有限次元中心単純KK-代数とする。u,v∈A×u,v\in A^\timesに対して、あるc∈K×c\in K^\timesが存在してv=cuv=cuとなるときu∼vu\sim vと定める。関係∼\simは同値関係であり、A×A^\timesの積と逆元を取る操作に両立する。同値類を[u][u]と書くと、商集合A×/∼A^\times/{\sim}は積

[u][v]:=[uv][u][v]:=[uv]

によって群になる。単位元は[1A][1_A]、[u][u]の逆元は[u−1][u^{-1}]である。

証明.u=1uu=1uよりu∼uu\sim uである。v=cuv=cuならばu=c−1vu=c^{-1}vであるからv∼uv\sim uである。さらにw=dvw=dvならばw=(dc)uw=(dc)uであり、dc∈K×dc\in K^\timesであるからu∼wu\sim wとなる。したがって∼\simは同値関係である。

u′=cuu'=cu、v′=dvv'=dvを満たすc,d∈K×c,d\in K^\timesを取る。K1A⊆Z(A)K1_A\subseteq Z(A)であるから

u′v′=(cu)(dv)=(cd)uv,(u′)−1=(cu)−1=c−1u−1u'v'=(cu)(dv)=(cd)uv, \qquad (u')^{-1}=(cu)^{-1}=c^{-1}u^{-1}

である。cd,c−1∈K×cd,c^{-1}\in K^\timesよりuv∼u′v′uv\sim u'v'およびu−1∼(u′)−1u^{-1}\sim(u')^{-1}が成り立つ。よって積と逆元の同値類は代表元の選び方に依存しない。

§E1.6 定理 3.2をA×A^\timesの積と∼\simに適用する。商集合上の積[u][v]=[uv][u][v]=[uv]は結合律を満たし、[1A][1_A]を単位元とする。各[u][u]は[u−1][u^{-1}]を逆元にもつため、商集合は群である。▨

定義 7.2.KKを可換体、AAを有限次元中心単純KK-代数とする。K×K^\timesを中心の単元全体

{c1A∣c∈K×}\{c1_A\mid c\in K^\times\}

と同一視する。非零スカラー倍による同値類をuK×={cu∣c∈K×}uK^\times=\{cu\mid c\in K^\times\}と書き、命題 7.1によって構成した群を

PGL⁡1(A):=A×/K×\operatorname{PGL}_1(A):=A^\times/K^\times

と書く。この群をPGL⁡1(A)\operatorname{PGL}_1(A) (projective linear group) という。

系 7.3.KKを可換体、AAを有限次元中心単純KK-代数とする。任意の単位的KK-代数自己同型σ\sigmaは内部自己同型である。さらに、写像

PGL⁡1(A)⟶Aut⁡K-alg(A),uK×⟼Int⁡(u)\begin{aligned} \operatorname{PGL}_1(A) &\longrightarrow\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A),\\ uK^\times&\longmapsto\operatorname{Int}(u) \end{aligned}

は群同型である。

証明. Skolem–Noether の定理定理 5.1でB=AB=A、φ=id⁡A\varphi=\operatorname{id}_A、ψ=σ\psi=\sigmaと置く。あるu∈A×u\in A^\timesが存在して

σ=Int⁡(u)\sigma=\operatorname{Int}(u)

となるため、すべての単位的KK-代数自己同型は内部的である。

命題命題 1.2により

Int⁡ ⁣:A×⟶Aut⁡K-alg(A)\operatorname{Int}\colon A^\times \longrightarrow\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A)

は群準同型であり、前段落によって全射である。u∈A×u\in A^\timesが核に属することは、すべてのa∈Aa\in Aに対してuau−1=auau^{-1}=a、すなわちua=auua=auとなることと同値である。Z(A)=K1AZ(A)=K1_Aであるから

ker⁡(Int⁡)=Z(A)×=K×\ker(\operatorname{Int})=Z(A)^\times=K^\times

である。

u,v∈A×u,v\in A^\timesに対して、Int⁡(u)=Int⁡(v)\operatorname{Int}(u)=\operatorname{Int}(v)であることは、すべてのa∈Aa\in Aについてuau−1=vav−1uau^{-1}=vav^{-1}となることと同値である。左からv−1v^{-1}、右からuuを掛けると、条件は

(v−1u)a=a(v−1u)(a∈A)(v^{-1}u)a=a(v^{-1}u) \qquad(a\in A)

となる。したがって、二つの内部自己同型が一致することはv−1u∈Z(A)×=K×v^{-1}u\in Z(A)^\times=K^\timesと同値であり、さらにuK×=vK×uK^\times=vK^\timesと同値である。この同値性により、剰余類から内部自己同型への写像は代表元の選び方に依存せず、単射である。全射性は前段落までに示したInt⁡\operatorname{Int}の全射性から従う。商の積の定義と

Int⁡(uv)=Int⁡(u)∘Int⁡(v)\operatorname{Int}(uv)=\operatorname{Int}(u)\circ\operatorname{Int}(v)

により、この写像は積を保つ。よって所要の群同型を得る。▨

A=Mn(K)A=M_n(K)の場合にはA×=GL⁡n(K)A^\times=\operatorname{GL}_n(K)であり、K×K^\timesは非零スカラー行列全体に一致する。したがって上の定義は通常の

PGL⁡1(Mn(K))=GL⁡n(K)/K×=PGL⁡n(K)\operatorname{PGL}_1(M_n(K)) =\operatorname{GL}_n(K)/K^\times =\operatorname{PGL}_n(K)

を与える。

8 仮定を外した場合の反例

主定理の中心性、定義域の単純性、KK線形性および単位性は、それぞれ結論に必要である。次の反例は、ほかの条件を保ったまま各条件を外している。

例 8.1 (中心性を外した反例).K=RK=\mathbb R、A=B=CA=B=\mathbb Cとし、φ(z)=z\varphi(z)=z、ψ(z)=z‾\psi(z)=\overline zと置く。AAは有限次元単純実代数であるが、§E6.33 例 4.4のとおり中心はC\mathbb Cであり、中心実代数ではない。BBは単純実代数であり、φ\varphiとψ\psiは単位的実代数自己同型である。一方、AAは可換であるため内部自己同型は恒等写像だけである。複素共役は恒等写像ではないため、φ\varphiとψ\psiは内部自己同型によって移り合わない。

例 8.2 (定義域の単純性を外した反例).KKを可換体、A=M3(K)A=M_3(K)、B=K×KB=K\times Kとする。二つの単位的KK-代数埋め込みを

φ(a,b):=diag⁡(a,b,b),ψ(a,b):=diag⁡(a,a,b)\varphi(a,b):=\operatorname{diag}(a,b,b), \qquad \psi(a,b):=\operatorname{diag}(a,a,b)

によって定める。定理§E6.33 定理 4.1によりAAは有限次元中心単純KK-代数であるが、BBは非零真の両側イデアルK×0K\times0をもつため単純ではない。

e:=(1,0)∈Be:=(1,0)\in Bとすると、φ(e)\varphi(e)の階数は11、ψ(e)\psi(e)の階数は22である。可逆行列による共役は行列の階数を保つため、ψ(e)=uφ(e)u−1\psi(e)=u\varphi(e)u^{-1}となるu∈A×u\in A^\timesは存在しない。したがって、単純でない定義域からの二つの単位的埋め込みは共役とは限らない。

例 8.3 (K 線形性を外した反例).K=CK=\mathbb C、A=M2(C)A=M_2(\mathbb C)、B=CB=\mathbb Cとする。単位的環準同型

φ(z):=zI2,ψ(z):=z‾I2\varphi(z):=zI_2, \qquad \psi(z):=\overline zI_2

を考える。AAは有限次元中心単純C\mathbb C-代数、BBは単純C\mathbb C-代数である。φ\varphiはC\mathbb C線形であるが、ψ\psiはC\mathbb C線形ではない。すべての内部自己同型は中心CI2\mathbb CI_2の各元を固定するため、φ\varphiとψ\psiは内部自己同型によって移り合わない。

例 8.4 (単位性を外した反例).KKを可換体、A=M2(K)A=M_2(K)、B=KB=Kとする。KK線形で加法と乗法を保つ二つの写像を

φ(c):=cI2,ψ(c):=cE11\varphi(c):=cI_2, \qquad \psi(c):=cE_{11}

によって定める。AAは有限次元中心単純KK-代数、BBは単純KK-代数である。φ\varphiは単位元を保つが、ψ(1)=E11≠I2\psi(1)=E_{11}\neq I_2であるためψ\psiは単位元を保たない。任意のu∈A×u\in A^\timesに対して

uφ(1)u−1=uI2u−1=I2≠E11=ψ(1)u\varphi(1)u^{-1}=uI_2u^{-1}=I_2\neq E_{11}=\psi(1)

である。したがって、単位性を外すと共役の結論は成り立たない。

9 演習

問題 9.1. 次の十項目を、本記事の定義と定理から証明する。

  1. AAを単位的KK-代数、S⊆AS\subseteq Aとする。CA(S)C_A(S)が単位的KK-部分代数であり、CA(S)×=CA(S)∩A×C_A(S)^\times=C_A(S)\cap A^\timesであることを示せ。
  2. u,v∈A×u,v\in A^\timesに対してInt⁡(u)Int⁡(v)=Int⁡(uv)\operatorname{Int}(u)\operatorname{Int}(v)=\operatorname{Int}(uv)を示せ。また、Int⁡(u)=id⁡A\operatorname{Int}(u)=\operatorname{id}_Aとなるための必要十分条件がu∈Z(A)×u\in Z(A)^\timesであることを示せ。
  3. 補題補題 3.1の最小テンソル長による証明で、第一係数を1C1_Cにした後、1B⊗c1_B\otimes cとの交換子が零になる理由を説明せよ。
  4. R=B⊗KDopR=B\otimes_KD^{\mathrm{op}}の作用 (b⊗dop)⋅φv=φ(b)(vd)(b\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v=\varphi(b)(vd) がKK上で平衡であり、RRの積と両立することを示せ。
  5. VφV_\varphiが有限長左RR加群であることをKK上の次元から示せ。さらに、単純 Artin 環上の有限長加群の分類を用い、dim⁡KVφ=dim⁡KVψ\dim_KV_\varphi=\dim_KV_\psiからVφ≅VψV_\varphi\cong V_\psiを導け。
  6. 左RR加群同型T ⁣:Vφ→VψT\colon V_\varphi\to V_\psiが右DD線形であり、Tφ(b)=ψ(b)TT\varphi(b)=\psi(b)Tを満たすことを示せ。Skolem–Noether の共役式を導け。
  7. 一つの共役元u0u_0を固定したとき、共役元全体がu0CA(φ(B))×u_0C_A(\varphi(B))^\timesであることを証明せよ。左剰余類による表示も導け。
  8. H\mathbb Hにおいてjij−1=−i\mathbf j\mathbf i\mathbf j^{-1}=-\mathbf iを計算し、実代数埋め込みC→H\mathbb C\to\mathbb Hのうち、複素共役によって異なる二つの埋め込みが内部自己同型によって移り合うことを示せ。
  9. 有限次元中心単純KK-代数AAについて、Int⁡ ⁣:A×→Aut⁡K-alg(A)\operatorname{Int}\colon A^\times\to\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A)が全射であり、核がK×K^\timesであることを示せ。Aut⁡K-alg(A)≅PGL⁡1(A)\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A)\cong\operatorname{PGL}_1(A)を導け。
  10. 中心性、定義域の単純性、KK線形性、単位性をそれぞれ外した四つの反例について、残りの仮定が満たされることと、共役を妨げる不変量を特定せよ。
解答 (演習の解答).
  1. x,y∈CA(S)x,y\in C_A(S)、c∈Kc\in Kおよびs∈Ss\in Sに対して

    (x−y)s=xs−ys=sx−sy=s(x−y),(x-y)s=xs-ys=sx-sy=s(x-y), (xy)s=x(ys)=x(sy)=(xs)y=(sx)y=s(xy),(xy)s=x(ys)=x(sy)=(xs)y=(sx)y=s(xy),

    さらに(cx)s=c(xs)=c(sx)=s(cx)(cx)s=c(xs)=c(sx)=s(cx)である。1As=s=s1A1_As=s=s1_Aでもあるため、CA(S)C_A(S)は単位的KK-部分代数である。x∈CA(S)∩A×x\in C_A(S)\cap A^\timesならばxs=sxxs=sxの左からx−1x^{-1}、右からx−1x^{-1}を掛けてx−1s=sx−1x^{-1}s=sx^{-1}を得る。よってx−1∈CA(S)x^{-1}\in C_A(S)であり、xxは中心化代数の単元である。逆に、x∈CA(S)×x\in C_A(S)^\timesならば、xxと中心化代数内の逆元はともにAAに属し、その積は1A1_Aである。したがってx∈CA(S)∩A×x\in C_A(S)\cap A^\timesである。

  2. a∈Aa\in Aに対して

    Int⁡(u)(Int⁡(v)(a))=u(vav−1)u−1=(uv)a(uv)−1\operatorname{Int}(u)(\operatorname{Int}(v)(a)) =u(vav^{-1})u^{-1} =(uv)a(uv)^{-1}

    である。したがって合成の式が成り立つ。またInt⁡(u)=id⁡A\operatorname{Int}(u)=\operatorname{id}_Aであることは、すべてのa∈Aa\in Aに対してuau−1=auau^{-1}=aであることと同値であり、さらにua=auua=auと同値である。よって必要十分条件はu∈Z(A)×u\in Z(A)^\timesである。

  3. 非零両側イデアルIIに含まれる非零元の最小テンソル長をrrとし、正規化後の元を

    y=∑i=1rbi⊗ci′,c1′=1Cy=\sum_{i=1}^rb_i\otimes c_i', \qquad c_1'=1_C

    とする。任意のc∈Cc\in Cに対する交換子は

    y(1B⊗c)−(1B⊗c)y=∑i=2rbi⊗(ci′c−cci′)y(1_B\otimes c)-(1_B\otimes c)y =\sum_{i=2}^rb_i\otimes(c_i'c-cc_i')

    であり、IIに属する。右辺は高々r−1r-1個の純テンソルの和である。非零ならばrrの最小性に反するため、交換子は零である。b2,…,brb_2,\ldots,b_rの一次独立性から各ci′c_i'はCCの中心に属する。

  4. c∈Kc\in Kに対して

    φ(cb)(vd)=cφ(b)(vd)=φ(b)(v(cd))\varphi(cb)(vd)=c\varphi(b)(vd) =\varphi(b)(v(cd))

    であるため、作用はKK上で平衡である。DopD^{\mathrm{op}}の積はdopeop=(ed)opd^{\mathrm{op}}e^{\mathrm{op}}=(ed)^{\mathrm{op}}である。φ(b)\varphi(b)が右DD線形であることを用いると

    (b⊗dop)⋅φ((b′⊗eop)⋅φv)=φ(b)(φ(b′)(ve)d)=φ(bb′)(v(ed))\begin{aligned} (b\otimes d^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi} ((b'\otimes e^{\mathrm{op}})\mathbin{\cdot_\varphi}v) &=\varphi(b)(\varphi(b')(ve)d)\\ &=\varphi(bb')(v(ed)) \end{aligned}

    となり、テンソル積代数の積と一致する。単位元の作用も恒等写像であるため左加群作用を得る。

  5. RRのKKスカラーはVVの通常のKKスカラーとして作用するため、RR部分加群はKK部分空間である。VVのKK次元は有限であるから、部分加群の昇鎖と降鎖はともに停止する。したがってVφV_\varphiは Noether 加群かつ Artin 加群であり、有限長である。RRは単純 Artin 環であるため、ある単純左RR加群SSと正の整数qφ,qψq_\varphi,q_\psiによって

    Vφ≅S⊕qφ,Vψ≅S⊕qψV_\varphi\cong S^{\oplus q_\varphi}, \qquad V_\psi\cong S^{\oplus q_\psi}

    と書くことができる。RR加群同型はKK線形であるから

    dim⁡KV=qφdim⁡KS=qψdim⁡KS\dim_KV=q_\varphi\dim_KS=q_\psi\dim_KS

    である。S≠0S\neq0よりqφ=qψq_\varphi=q_\psiとなり、二つの加群は同型である。

  6. 1B⊗dop1_B\otimes d^{\mathrm{op}}に関するRR線形性から

    T(vd)=T(v)dT(vd)=T(v)d

    を得るため、TTは右DD線形である。TTは加群同型であるからA=End⁡D(VD)A=\operatorname{End}_D(V_D)の単元である。またb⊗1Dopb\otimes1_D^{\mathrm{op}}に関するRR線形性から

    T(φ(b)(v))=ψ(b)(T(v))T(\varphi(b)(v))=\psi(b)(T(v))

    を得る。よってTφ(b)=ψ(b)TT\varphi(b)=\psi(b)Tであり、TTの逆写像を右から合成すると

    ψ(b)=Tφ(b)T−1\psi(b)=T\varphi(b)T^{-1}

    となる。

  7. uuとu0u_0がともにφ\varphiをψ\psiへ移すならば

    uφ(b)u−1=u0φ(b)u0−1u\varphi(b)u^{-1}=u_0\varphi(b)u_0^{-1}

    である。したがってu0−1uu_0^{-1}uはすべてのφ(b)\varphi(b)と可換し、u∈u0CA(φ(B))×u\in u_0C_A(\varphi(B))^\timesとなる。逆にc∈CA(φ(B))×c\in C_A(\varphi(B))^\timesならばu0cu_0cは同じ共役を与える。さらにψ(B)=u0φ(B)u0−1\psi(B)=u_0\varphi(B)u_0^{-1}から

    CA(ψ(B))×=u0CA(φ(B))×u0−1C_A(\psi(B))^\times =u_0C_A(\varphi(B))^\times u_0^{-1}

    となるため、共役元全体はCA(ψ(B))×u0C_A(\psi(B))^\times u_0とも書くことができる。

  8. j−1=−j\mathbf j^{-1}=-\mathbf j、ji=−k\mathbf j\mathbf i=-\mathbf kおよびkj=−i\mathbf k\mathbf j=-\mathbf iから

    jij−1=(−k)(−j)=kj=−i\mathbf j\mathbf i\mathbf j^{-1} =(-\mathbf k)(-\mathbf j) =\mathbf k\mathbf j=-\mathbf i

    を得る。実数は中心に属するため

    j(a+bi)j−1=a−bi\mathbf j(a+b\mathbf i)\mathbf j^{-1} =a-b\mathbf i

    となる。したがって二つの実代数埋め込みはInt⁡(j)\operatorname{Int}(\mathbf j)によって移り合う。

  9. Skolem–Noether の定理でB=AB=A、φ=id⁡A\varphi=\operatorname{id}_Aと置くと、任意のσ∈Aut⁡K-alg(A)\sigma\in\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A)はInt⁡(u)\operatorname{Int}(u)と書くことができる。よってInt⁡\operatorname{Int}は全射である。核はすべてのa∈Aa\in Aと可換する単元全体であり、中心性から

    ker⁡(Int⁡)=Z(A)×=K×\ker(\operatorname{Int})=Z(A)^\times=K^\times

    となる。u,v∈A×u,v\in A^\timesについて、Int⁡(u)=Int⁡(v)\operatorname{Int}(u)=\operatorname{Int}(v)はInt⁡(v−1u)=id⁡A\operatorname{Int}(v^{-1}u)=\operatorname{id}_Aと同値であり、核の計算によってuK×=vK×uK^\times=vK^\timesと同値である。したがって剰余類から内部自己同型への写像は代表元によらず、単射である。Int⁡\operatorname{Int}の全射性により、この写像も全射である。商の積(uK×)(vK×)=(uv)K×(uK^\times)(vK^\times)=(uv)K^\timesとInt⁡(uv)=Int⁡(u)∘Int⁡(v)\operatorname{Int}(uv)=\operatorname{Int}(u)\circ\operatorname{Int}(v)により、この写像は積を保つ。よって

    Aut⁡K-alg(A)≅PGL⁡1(A)\operatorname{Aut}_{K\text{-alg}}(A) \cong\operatorname{PGL}_1(A)

    を得る。

  10. 中心性を外した例ではA=CA=\mathbb Cは単純有限次元実代数であり、複素共役も単位的実代数自己同型である。しかし可換環の内部自己同型は恒等写像だけである。定義域の単純性を外した例ではA=M3(K)A=M_3(K)は中心単純であり、B=K×KB=K\times Kからの二つの写像も単位的KK-代数埋め込みであるが、冪等元(1,0)(1,0)の像の階数が11と22で異なる。共役は階数を保つため、二つの写像は内部自己同型で移り合わない。KK線形性を外した例ではA=M2(C)A=M_2(\mathbb C)とB=CB=\mathbb Cは所要の中心単純性と単純性を満たすが、複素共役でねじった写像はC\mathbb C線形ではない。二つの像は中心にあり、内部自己同型は中心を各点で固定する。単位性を外した例ではA=M2(K)A=M_2(K)とB=KB=Kが所要の条件を満たし、二つの写像はKK線形で加法と乗法を保つが、単位元の像がI2I_2とE11E_{11}で異なる。内部自己同型はI2I_2を固定するため、二つの写像は内部自己同型で移り合わない。

▨

10 範囲と後続記事への接続

本記事は、固定した可換体KK上の有限次元中心単純代数AAと有限次元単純代数BBを対象とし、二つの単位的KK-代数埋め込みB→AB\to Aが内部自己同型によって移り合うことを証明した。共役元の非一意性は埋め込みの像の中心化代数によって記述される。B=AB=Aと置くことにより、AAの単位的KK-代数自己同型群をPGL⁡1(A)\operatorname{PGL}_1(A)と同一視した。

証明では、A≅End⁡D(VD)A\cong\operatorname{End}_D(V_D)と書いた後、B⊗KDopB\otimes_KD^{\mathrm{op}}が単純 Artin 環であることだけを用いた。補題補題 3.1は、この証明に必要な単純性を与える局所的な結果である。本記事は、二つの中心単純代数のテンソル積が再び中心単純になることを主張せず、その中心も計算しない。

後続記事「Brauer 群の定義」は、中心単純代数一般のテンソル積による閉性、

A⊗KAop≅End⁡K(A)A\otimes_KA^{\mathrm{op}} \cong\operatorname{End}_K(A)

というKK-代数同型、Brauer 同値ならびに Brauer 類の積と逆元を扱う。本記事は、これらの主張を Skolem–Noether の定理の根拠として用いない。体拡大の構造、分離性および Galois 理論も本記事では扱わない。

参考文献

  1. Richard S. Pierce, Associative Algebras, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1982.Skolem–Noether の定理、中心単純代数の斜体因子および双加群による証明を参考にした。
  2. Nathan Jacobson, Basic Algebra II, 2nd ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2009, originally published 1989.単純代数と中心単純代数のテンソル積の単純性、および内部自己同型の記述を参考にした。
  3. Philippe Gille and Tamás Szamuely, Central Simple Algebras and Galois Cohomology, 2nd ed., Cambridge Studies in Advanced Mathematics 165, Cambridge University Press, Cambridge, 2017.中心単純代数の自己同型群を PGL_1 と同一視する規約と、後続の Brauer 群との境界を参考にした。

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