§E6.43Hom の Künneth の定理と普遍係数定理

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二つの鎖複体の間の Hom 複体では、ホモロジー群の間に誘導される写像だけでは、そのホモロジーを記述し尽くすことができない。例えば、Z→×2Z\Z\xrightarrow{\times2}\Zを次数1,01,0に置いた二項複体をCCとし、MMをZ/2Z\Z/2\Zとすると、H1(C)=0H_1(C)=0である一方、H1Hom⁡Z(C,M)≅Z/2ZH^1\Hom_{\Z}(C,M)\cong\Z/2\Zである。この差を第一 Ext が捉え、PID 上では Hom 複体のホモロジーと各次数のホモロジー群の間の Hom を結ぶ自然な短完全列が得られる。この関係は、鎖複体から係数加群へのコホモロジーを元のホモロジーによって理解するうえで重要である。本記事では、Hom の Künneth の定理と普遍係数定理を確立し、双対複体とのテンソル積による表示の成立範囲を示す。

1 Hom 複体

定義 1.1 (Hom 複体).RRを可換環、C,DC,DをRR-加群の鎖複体とする。Hom 複体 (Hom complex)Hom⁡R(C,D)\Hom_R(C,D)を

Hom⁡R(C,D)n=∏p∈ZHom⁡R(Cp,Dp+n),(∂f)p=dp+nDfp−(−1)nfp−1dpC\Hom_R(C,D)_n=\prod_{p\in\Z}\Hom_R(C_p,D_{p+n}), \qquad (\partial f)_p=d^D_{p+n}f_p-(-1)^n f_{p-1}d^C_p

によって定める。ここでf=(fp)p∈Zf=(f_p)_{p\in\Z}は次数nnの元である。

dD2=dC2=0d_D^2=d_C^2=0より、

∂2f=dD(dDf−(−1)nfdC)−(−1)n−1(dDf−(−1)nfdC)dC=−((−1)n+(−1)n−1)dDfdC=0\begin{aligned} \partial^2 f &=d_D\bigl(d_Df-(-1)^nfd_C\bigr) -(-1)^{n-1}\bigl(d_Df-(-1)^nfd_C\bigr)d_C\\ &=-\bigl((-1)^n+(-1)^{n-1}\bigr)d_Dfd_C=0 \end{aligned}

である。したがって、上の式は微分を定める。鎖写像u ⁣:C′→Cu\colon C'\to Cとv ⁣:D→D′v\colon D\to D'は、前合成と後合成によって鎖写像

Hom⁡R(C,D)⟶Hom⁡R(C′,D′),f⟼vfu\Hom_R(C,D)\longrightarrow\Hom_R(C',D'),\qquad f\longmapsto vfu

を与える。実際、u,vu,vが微分と可換であることから∂(vfu)=v(∂f)u\partial(vfu)=v(\partial f)uとなる。

補題 1.2.RRを可換環、PPを微分が零で各項が射影的なRR-加群の鎖複体、DDを任意のRR-加群の鎖複体とする。各n∈Zn\in\Zに対して自然な同型

HnHom⁡R(P,D)→∼∏p∈ZHom⁡R(Pp,Hp+n(D))H_n\Hom_R(P,D)\tosim\prod_{p\in\Z}\Hom_R(P_p,H_{p+n}(D))

が存在する。同型はサイクルf=(fp)f=(f_p)を、各fpf_pとZp+n(D)→Hp+n(D)Z_{p+n}(D)\to H_{p+n}(D)の合成へ送る。

証明.PPの微分は零であるから、∂f=dDf\partial f=d_Dfである。したがって、サイクルの加群は

ZnHom⁡R(P,D)=∏pHom⁡R(Pp,Zp+n(D))Z_n\Hom_R(P,D)=\prod_p\Hom_R(P_p,Z_{p+n}(D))

である。射影加群からの Hom の完全性§E6.16 命題 1.2 (4)により、各写像Pp→Bp+n(D)P_p\to B_{p+n}(D)はDp+n+1→Bp+n(D)D_{p+n+1}\to B_{p+n}(D)に沿って持ち上がる。各ppの持上げを一つずつ選んで直積の元とすれば、

BnHom⁡R(P,D)=∏pHom⁡R(Pp,Bp+n(D))B_n\Hom_R(P,D)=\prod_p\Hom_R(P_p,B_{p+n}(D))

を得る。同じ完全性を0→Bp+n(D)→Zp+n(D)→Hp+n(D)→00\to B_{p+n}(D)\to Z_{p+n}(D)\to H_{p+n}(D)\to0に適用すると、主張の写像は全射であり、その核は表示した境界の加群である。商を取れば求める同型となる。商写像との合成による構成は、P,DP,Dの鎖写像に関して可換であるから自然である。▨

2 Künneth の定理

定理 2.1 (Hom の Künneth の定理).RRを単項イデアル整域、CCを各項が自由なRR-加群の鎖複体、DDを任意のRR-加群の鎖複体とする。各n∈Zn\in\Zに対して短完全列

0⟶∏p∈ZExt⁡R1(Hp(C),Hp+n+1(D))→ ι HnHom⁡R(C,D)→ ρ ∏p∈ZHom⁡R(Hp(C),Hp+n(D))⟶00\longrightarrow \prod_{p\in\Z}\operatorname{Ext}^1_R(H_p(C),H_{p+n+1}(D)) \xrightarrow{\ \iota\ } H_n\Hom_R(C,D) \xrightarrow{\ \rho\ } \prod_{p\in\Z}\Hom_R(H_p(C),H_{p+n}(D)) \longrightarrow0

が存在する。写像ρ\rhoは、次数nnのサイクルffの類を、[z]↦[fp(z)][z]\mapsto[f_p(z)]によって定まる写像の族へ送る。この列は、項別自由な複体の間の鎖写像C′→CC'\to Cと任意の鎖写像D→D′D\to D'に関して自然である。CCの階数およびC,DC,Dの次数の範囲に有限性は仮定しない。

証明.Zp=Zp(C)Z_p=Z_p(C)、Bp=Bp(C)B_p=B_p(C)と置き、零微分をもつ複体Z,QZ,QをZpZ_pとQp=Bp−1Q_p=B_{p-1}によって定める。包含と微分の値域への制限により、複体の自然な短完全列

0⟶Z→ j C→ π Q⟶00\longrightarrow Z\xrightarrow{\ j\ }C\xrightarrow{\ \pi\ }Q\longrightarrow0

を得る。§E6.42 補題 1.2によりZp,BpZ_p,B_pは自由であり、この列は各次数で分裂する。したがって、反変 Hom の左完全性§E6.13 命題 4.1 (2)と切断への合成により、複体の短完全列

0⟶Hom⁡R(Q,D)→ π∗ Hom⁡R(C,D)→ j∗ Hom⁡R(Z,D)⟶00\longrightarrow\Hom_R(Q,D)\xrightarrow{\ \pi^*\ } \Hom_R(C,D)\xrightarrow{\ j^*\ }\Hom_R(Z,D)\longrightarrow0

を得る。右端の全射性は、各Zp→Dp+nZ_p\to D_{p+n}をレトラクションCp→ZpC_p\to Z_pとの合成で延長し、延長の族を直積に取ることで従う。

この短完全列のホモロジー長完全列§E6.37 定理 2.2の連結写像をδn\delta_nと書く。自由加群は射影的であるから、§E6.16 系 1.3と補題 1.2によって

HnHom⁡R(Z,D)=∏pHom⁡R(Zp,Hp+n(D)),Hn−1Hom⁡R(Q,D)=∏pHom⁡R(Bp,Hp+n(D))H_n\Hom_R(Z,D)=\prod_p\Hom_R(Z_p,H_{p+n}(D)), \qquad H_{n-1}\Hom_R(Q,D)=\prod_p\Hom_R(B_p,H_{p+n}(D))

と同一視することができる。

この同一視の下で、δn\delta_nは(−1)n+1(-1)^{n+1}倍の制限写像である。実際、ap ⁣:Zp→Zp+n(D)a_p\colon Z_p\to Z_{p+n}(D)をサイクルの族とする。各次数の分裂を選び、Cp=Zp⊕Bp−1C_p=Z_p\oplus B_{p-1}、dC(z,b)=(b,0)d_C(z,b)=(b,0)と表示する。aaの持上げをa~p(z,b)=ap(z)\widetilde a_p(z,b)=a_p(z)とすると、

(∂a~)p(z,b)=(−1)n+1ap−1(b).(\partial\widetilde a)_p(z,b)=(-1)^{n+1}a_{p-1}(b).

連結写像の持上げによる公式から、δn\delta_nは各ppでZpZ_p上の写像をBpB_pへ制限し、(−1)n+1(-1)^{n+1}倍する写像である。

各ppに対する自由分解

0⟶Bp⟶Zp⟶Hp(C)⟶00\longrightarrow B_p\longrightarrow Z_p\longrightarrow H_p(C)\longrightarrow0

と Hom の左完全性§E6.13 系 5.1より、任意のRR-加群NNについて

ker⁡(Hom⁡R(Zp,N)⟶Hom⁡R(Bp,N))=Hom⁡R(Hp(C),N)\ker\bigl(\Hom_R(Z_p,N)\longrightarrow\Hom_R(B_p,N)\bigr) =\Hom_R(H_p(C),N)

となる。また Ext の定義§E6.39 定義 1.3により、

coker⁡(Hom⁡R(Zp,N)⟶Hom⁡R(Bp,N))=Ext⁡R1(Hp(C),N)\coker\bigl(\Hom_R(Z_p,N)\longrightarrow\Hom_R(B_p,N)\bigr) =\operatorname{Ext}^1_R(H_p(C),N)

である。直積写像の核は各成分の核の直積である。像についても、像の各成分の原像を一つずつ選べば、直積写像の像が各成分の像の直積に一致する。したがって、直積の商から各商の直積への自然な写像は同型となる。δn\delta_nの符号は核と像を変えないので、

ker⁡δn=∏pHom⁡R(Hp(C),Hp+n(D)),coker⁡δn+1=∏pExt⁡R1(Hp(C),Hp+n+1(D))\ker\delta_n=\prod_p\Hom_R(H_p(C),H_{p+n}(D)), \qquad \coker\delta_{n+1}=\prod_p\operatorname{Ext}^1_R(H_p(C),H_{p+n+1}(D))

を得る。長完全列の該当部分を核と余核によって書き直すと、主張の短完全列となる。右側の写像はj∗j^*による制限をZp/BpZ_p/B_pへ因子化した写像であるから、ρ\rhoの表示も従う。

鎖写像C′→CC'\to Cはサイクルと境界を保ち、上の自然短完全列の間の射を与える。鎖写像D→D′D\to D'による後合成も Hom の短完全列の間の射を与える。長完全列の自然性§E6.37 命題 2.3によって核と余核へ得られる列は可換である。さらに、Bp′→BpB'_p\to B_pとZp′→ZpZ'_p\to Z_pはHp(C′)→Hp(C)H_p(C')\to H_p(C)の自由分解間の持上げであるから、§E6.39 定理 1.4により余核上の写像は Ext の誘導写像である。以上から、主張の短完全列は両変数について自然である。▨

注意 2.2. PID 上では、任意の加群A,NA,Nとq≥2q\ge2に対してExt⁡Rq(A,N)=0\operatorname{Ext}^q_R(A,N)=0である(§E6.42 命題 1.1)。

3 普遍係数定理

系 3.1 (普遍係数定理).RRを単項イデアル整域、CCを各項が自由なRR-加群の鎖複体、MMを任意のRR-加群とする。各k∈Zk\in\Zに対して自然な短完全列

0⟶Ext⁡R1(Hk−1(C),M)⟶HkHom⁡R(C,M)→ ρ Hom⁡R(Hk(C),M)⟶00\longrightarrow\operatorname{Ext}^1_R(H_{k-1}(C),M) \longrightarrow H^k\Hom_R(C,M) \xrightarrow{\ \rho\ }\Hom_R(H_k(C),M) \longrightarrow0

が存在する。ここで余鎖複体の微分はδk(φ)=φdk+1C\delta^k(\varphi)=\varphi d^C_{k+1}とする。この列は分裂するが、分裂をC,MC,Mの両変数について自然に選ぶことは一般にはできない。

証明.M[0]M[0]を次数零の項がMMで、他の項が零である複体とする。定理 2.1においてD=M[0]D=M[0]、n=−kn=-kと置くと、Hom の直積にはp=kp=kの項だけが残り、Ext の直積にはp=k−1p=k-1の項だけが残る。Hom 複体の次数−k-kを余鎖次数kkと読み替えたとき、微分はφ↦(−1)k+1φdk+1C\varphi\mapsto(-1)^{k+1}\varphi d^C_{k+1}である。この微分とδk\delta^kは同じ核をもち、一つ前の次数からの微分も同じ像をもつ。したがって、恒等写像によってホモロジーを既存の Hom 余鎖複体のコホモロジーと自然に同一視することができ、表示した短完全列を得る。

§E6.42 補題 1.2により包含Zk(C)→CkZ_k(C)\to C_kのレトラクションrk ⁣:Ck→Zk(C)r_k\colon C_k\to Z_k(C)を選ぶ。商写像をqk ⁣:Zk(C)→Hk(C)q_k\colon Z_k(C)\to H_k(C)とし、

s ⁣:Hom⁡R(Hk(C),M)⟶HkHom⁡R(C,M),s(u)=[uqkrk]s\colon\Hom_R(H_k(C),M)\longrightarrow H^k\Hom_R(C,M), \qquad s(u)=[u q_k r_k]

と定める。dk+1Cd^C_{k+1}の像はBk(C)B_k(C)に含まれ、rkr_kはZk(C)Z_k(C)上で恒等写像であるから、uqkrkdk+1C=0u q_k r_k d^C_{k+1}=0である。よってssはRR-線形写像として定まり、サイクルへ制限すればρs(u)=u\rho s(u)=uとなる。この切断により列は分裂する。両変数に関する自然な選択が存在しないことは、次の例で示す。▨

例 3.2. 整数m≥2m\ge2に対し、R=ZR=\Z、M=Z/mZM=\Z/m\Zとする。複体CCを

C1=Za⊕Zb,C0=Zc,d(a)=mc,d(b)=0C_1=\Z a\oplus\Z b,\qquad C_0=\Z c,\qquad d(a)=mc,\qquad d(b)=0

と定め、他の項を零とする。このときH1(C)=ZbH_1(C)=\Z b、H0(C)=Z/mZH_0(C)=\Z/m\Zである。MM上でmm倍写像は零なので、

H1Hom⁡Z(C,M)=M⊕M,ρ(u,v)=vH^1\Hom_{\Z}(C,M)=M\oplus M,\qquad \rho(u,v)=v

となる。CCの自己同型ttをt(a)=a+bt(a)=a+b、t(b)=bt(b)=b、t(c)=ct(c)=cと定める。ttはホモロジーに恒等写像を誘導するが、コホモロジーには(u,v)↦(u+v,v)(u,v)\mapsto(u+v,v)を誘導する。

もし普遍係数列の切断がCCについて自然なら、その値s(1)=(u,1)s(1)=(u,1)はt∗t^*によって不変でなければならない。しかし、t∗(u,1)=(u+1,1)≠(u,1)t^*(u,1)=(u+1,1)\ne(u,1)である。したがって、すべてのCCに対して自然な切断を選ぶことはできない。

4 双対複体とのテンソル積

補題 4.1.RRを可換環、PPを有限生成射影RR-加群、NNを任意のRR-加群とする。評価写像

ev⁡P,N ⁣:Hom⁡R(P,R)⊗RN⟶Hom⁡R(P,N),φ⊗y⟼(x↦φ(x)y)\ev_{P,N}\colon\Hom_R(P,R)\otimes_R N\longrightarrow\Hom_R(P,N), \qquad\varphi\otimes y\longmapsto\bigl(x\mapsto\varphi(x)y\bigr)

は同型である。この同型はPPについて反変、NNについて共変に自然である。

証明.PPの有限生成系に対応する全射Rr→PR^r\to Pを取る。PPの射影性により全射は分裂するので、あるRR-加群QQに対してRr≅P⊕QR^r\cong P\oplus Qとなる(§E6.16 命題 1.2 (2))。

F=RrF=R^rの標準基底をe1,…,ere_1,\ldots,e_r、座標写像をe1∗,…,er∗e_1^*,\ldots,e_r^*とする。ev⁡F,N\ev_{F,N}の逆写像は

g⟼∑i=1rei∗⊗g(ei)g\longmapsto\sum_{i=1}^r e_i^*\otimes g(e_i)

である。実際、x=∑ixieix=\sum_i x_i e_iに評価すれば∑ixig(ei)=g(x)\sum_i x_i g(e_i)=g(x)となり、逆の合成ではφ=∑iφ(ei)ei∗\varphi=\sum_i\varphi(e_i)e_i^*を用いればφ⊗y\varphi\otimes yが戻る。純テンソルはテンソル積を生成するため、両合成は恒等写像である。

有限直和に関する Hom の分解とテンソル積の直和との交換§E6.14 命題 9.1により、F=P⊕QF=P\oplus Qに対するev⁡F,N\ev_{F,N}はev⁡P,N⊕ev⁡Q,N\ev_{P,N}\oplus\ev_{Q,N}と同一視される。直和写像が同型なら各成分も単射かつ全射であるから、ev⁡P,N\ev_{P,N}は同型である。前合成と後合成は評価の式と可換であるため自然性も従う。▨

命題 4.2.RRを可換環、C,DC,DをRR-加群の鎖複体とし、C∨=Hom⁡R(C,R[0])C^\vee=\Hom_R(C,R[0])と置く。自然な鎖写像

Θ ⁣:C∨⊗RD⟶Hom⁡R(C,D)\Theta\colon C^\vee\otimes_R D\longrightarrow\Hom_R(C,D)

が存在する。φ∈Hom⁡R(Cp,R)=(C∨)−p\varphi\in\Hom_R(C_p,R)=(C^\vee)_{-p}、y∈Dqy\in D_qに対して、Θ(φ⊗y)\Theta(\varphi\otimes y)は次数q−pq-pの写像の族であり、そのpp成分は

x⟼(−1)pqφ(x)yx\longmapsto(-1)^{pq}\varphi(x)y

で、他の成分は零である。CCが有界で各CpC_pが有限生成射影加群なら、Θ\Thetaは複体の同型である。特に、各項が有限生成自由加群である有界複体についてこの同型が成り立つ。

証明. 各p,qp,qの表示式はRR-双線形であるから、テンソル積の普遍性によってΘ\Thetaを定める。次数nnではq=p+nq=p+nであり、始域の各元はppに関して有限個の成分をもつため、直和から直積への写像として定まる。

φ\varphiの双対複体における微分は(−1)p+1φdC(-1)^{p+1}\varphi d_Cである。テンソル積の微分を施してからΘ\Thetaを施すと、CpC_p上の成分は

(−1)p(−1)p(q−1)φ(x)dDy=(−1)pqφ(x)dDy(-1)^p(-1)^{p(q-1)}\varphi(x)d_Dy =(-1)^{pq}\varphi(x)d_Dy

であり、Cp+1C_{p+1}上の成分は

(−1)p+1+(p+1)qφ(dCx)y(-1)^{p+1+(p+1)q}\varphi(d_Cx)y

である。一方、Θ\Thetaを施してから Hom の微分を施すと、CpC_p上の成分は同じ式となり、Cp+1C_{p+1}上の成分の符号は

−(−1)q−p(−1)pq=(−1)pq+q−p+1-(-1)^{q-p}(-1)^{pq}=(-1)^{pq+q-p+1}

となる。二つの指数の差は2p2pなので符号は一致する。他の成分はともに零である。よってΘ\Thetaは鎖写像であり、評価と合成の可換性から自然性も従う。

CCが有界で各CpC_pが有限生成射影加群なら、各次数nnにおいて

(C∨⊗RD)n=⨁p(Hom⁡R(Cp,R)⊗RDp+n)→∼⨁pHom⁡R(Cp,Dp+n)=∏pHom⁡R(Cp,Dp+n)(C^\vee\otimes_R D)_n =\bigoplus_p\bigl(\Hom_R(C_p,R)\otimes_R D_{p+n}\bigr) \tosim\bigoplus_p\Hom_R(C_p,D_{p+n}) =\prod_p\Hom_R(C_p,D_{p+n})

となる。中央の同型は補題 4.1に各成分の符号を掛けたものであり、最後の等号は非零のCpC_pが有限個であることによる。したがって、Θ\Thetaは各次数で同型であり、複体の同型である。有限生成自由加群は射影的なので、最後の主張も従う。▨

例 4.3.RRを単項イデアル整域、F=R(N≥0)=⨁i∈N≥0ReiF=R^{(\N)}=\bigoplus_{i\in\N}Re_iとし、C=D=F[0]C=D=F[0]とする。このとき比較写像は

Hom⁡R(F,R)⊗RF⟶End⁡R(F)\Hom_R(F,R)\otimes_R F\longrightarrow\End_R(F)

であり、全射ではない。テンソル積の各元は有限和∑j=1rφj⊗yj\sum_{j=1}^r\varphi_j\otimes y_jとして表される(§E6.14 命題 5.3)。対応する準同型の像は、有限個の元y1,…,yry_1,\ldots,y_rが生成する部分加群に含まれる。

各yjy_jの基底に関する台は有限であるから、これらの元が生成する部分加群は、ある有限集合I⊂N≥0I\subset\Nに対して⨁i∈IRei\bigoplus_{i\in I}Re_iに含まれる。id⁡F\id_Fの像はFF全体であり、i∉Ii\notin Iに対するeie_iはこの部分加群に属さない。したがって、id⁡F\id_Fは比較写像の像に属さない。

注意 4.4. 直積を含むテンソル積についても、自然な写像

ZN≥0⊗ZZN≥0⟶ZN≥0×N≥0,a⊗b⟼(aibj)i,j\Z^{\N}\otimes_{\Z}\Z^{\N}\longrightarrow\Z^{\N\times\N}, \qquad a\otimes b\longmapsto(a_i b_j)_{i,j}

は全射ではない。行列(cij)(c_{ij})をZ(N≥0)→ZN≥0\Z^{(\N)}\to\Z^{\N}、ei↦(cij)je_i\mapsto(c_{ij})_jという準同型とみなすと、有限和∑ℓ=1raℓ⊗bℓ\sum_{\ell=1}^r a_\ell\otimes b_\ellが与える準同型の像は⟨b1,…,br⟩\langle b_1,\ldots,b_r\rangleに含まれる。

単位行列が像に属すると仮定する。最初のr+1r+1座標への射影を取れば、Zr+1\Z^{r+1}のすべての標準基底ベクトルがrr個の元pr⁡(b1),…,pr⁡(br)\pr(b_1),\ldots,\pr(b_r)によって生成されることになる。しかし、非零可換環の強ランク条件§E6.10 系 2.11により、rr個の元でZr+1\Z^{r+1}を生成することはできない。この矛盾から単位行列は像に属さない。したがって、無限直積を含む Hom の公式を、直積とテンソル積の交換によって書き換えることは一般にはできない。

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