§E6.16射影加群

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自由加群では、基底の像を選ぶことにより、全射の終域へ向かう準同型をその始域へ持ち上げることができる。しかし、基底をもたない加群については、この写像構成を同じ方法で行うことはできない。任意の全射に沿ってこの持上げが可能な加群を射影加群という。射影加群は、自由加群の写像構成と短完全列の分裂を結ぶ最も基本的な加群のクラスの一つである。例えば、Z/6Z\Z/6\Z上のZ/2Z\Z/2\Zは射影加群であるが、自由加群ではない。本記事では、射影加群の基本的な性質と代表的な例について解説する。

本記事を通じてRRは単位元をもつ結合環とし、零環も許す。最初に左RR加群を扱う。自由加群とその普遍性には§E6.10 定義 1.1と§E6.10 補題 1.4を、Hom の左完全性には§E6.13 命題 4.1を用いる。

1 左射影加群

射影性は、全射の終域へ向かう写像を、その全射の始域へ持ち上げる性質である。

定義 1.1. 左RR加群PPが左射影RR加群 (left projective R-module) であるとは、任意の左RR加群の全射

π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow C

と任意の左RR線形写像f ⁣:P→Cf\colon P\to Cに対して、

π∘g=f\pi\circ g=f

を満たす左RR線形写像g ⁣:P→Bg\colon P\to Bが存在することをいう。このggをffのπ\piに沿う持上げ (lift) という。

短完全列

0⟶A→ i B→ π P⟶00\longrightarrow A\xrightarrow{\ i\ }B \xrightarrow{\ \pi\ }P\longrightarrow0

が 分裂するとは、π∘s=1P\pi\circ s=1_Pを満たす左RR線形写像s ⁣:P→Bs\colon P\to Bが存在することをいう。この条件からB≅A⊕PB\cong A\oplus Pが従うことも、次の特徴づけの証明で写像を構成して確認する。

命題 1.2. 左RR加群PPに対して、次の四条件は同値である。

  1. PPは左射影RR加群である。
  2. PPを終域とするすべての短完全列 0⟶A⟶B⟶P⟶00\longrightarrow A\longrightarrow B\longrightarrow P\longrightarrow0 は分裂する。
  3. ある自由左RR加群FFと左RR加群QQが存在して F≅P⊕QF\cong P\oplus Q となる。
  4. 共変関手Hom⁡R(P,−)\operatorname{Hom}_R(P,-)は完全である。すなわち、左RR加群の任意の短完全列をアーベル群の短完全列へ移す。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。短完全列

0⟶A→ i B→ π P⟶00\longrightarrow A\xrightarrow{\ i\ }B \xrightarrow{\ \pi\ }P\longrightarrow0

を取る。全射π\piと恒等写像1P ⁣:P→P1_P\colon P\to Pに射影性を適用すると、π∘s=1P\pi\circ s=1_Pを満たすs ⁣:P→Bs\colon P\to Bが得られる。したがって短完全列は分裂する。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。PPの台集合を添字集合とする自由左RR加群

F:=R(P)F:=R^{(P)}

を取り、p∈Pp\in Pに対応する基底元をepe_pと書く。自由加群の普遍性により、ep↦pe_p\mapsto pで定まる左RR線形写像ε ⁣:F→P\varepsilon\colon F\to Pが存在する。任意のp∈Pp\in Pはε(ep)\varepsilon(e_p)であるため、ε\varepsilonは全射である。K:=ker⁡εK:=\ker\varepsilonと置くと、短完全列

0⟶K→ ι F→ ε P⟶00\longrightarrow K\xrightarrow{\ \iota\ }F \xrightarrow{\ \varepsilon\ }P\longrightarrow0

を得る。(2)により、ε∘s=1P\varepsilon\circ s=1_Pを満たすs ⁣:P→Fs\colon P\to Fが存在する。

写像

α ⁣:K⊕P⟶F,α(k,p):=ι(k)+s(p)\alpha\colon K\oplus P\longrightarrow F, \qquad \alpha(k,p):=\iota(k)+s(p)

と

β ⁣:F⟶K⊕P,β(x):=(x−s(ε(x)),ε(x))\beta\colon F\longrightarrow K\oplus P, \qquad \beta(x):=(x-s(\varepsilon(x)),\varepsilon(x))

を考える。第一成分について

ε(x−s(ε(x)))=ε(x)−ε(x)=0\varepsilon(x-s(\varepsilon(x))) =\varepsilon(x)-\varepsilon(x)=0

であるため、β\betaは well-defined である。任意の(k,p)∈K⊕P(k,p)\in K\oplus Pとx∈Fx\in Fに対して

β(α(k,p))=(k,p),α(β(x))=x\beta(\alpha(k,p))=(k,p), \qquad \alpha(\beta(x))=x

となる。したがってF≅K⊕PF\cong K\oplus Pであり、PPは自由加群の直和因子である。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。最初に自由左RR加群が射影的であることを示す。F=R(I)F=R^{(I)}を基底(ei)i∈I(e_i)_{i\in I}をもつ自由加群とし、π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cを全射、f ⁣:F→Cf\colon F\to Cを左RR線形写像とする。各i∈Ii\in Iに対して、π(bi)=f(ei)\pi(b_i)=f(e_i)を満たすbi∈Bb_i\in Bを選ぶ。自由加群の普遍性により、g(ei)=big(e_i)=b_iを満たす左RR線形写像g ⁣:F→Bg\colon F\to Bが存在する。基底上で

(π∘g)(ei)=π(bi)=f(ei)(\pi\circ g)(e_i)=\pi(b_i)=f(e_i)

であるから、π∘g=f\pi\circ g=fである。よってFFは射影的である。

次にF≅P⊕QF\cong P\oplus Qとし、包含j ⁣:P→Fj\colon P\to Fと射影q ⁣:F→Pq\colon F\to Pを取る。このときq∘j=1Pq\circ j=1_Pである。全射π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cとf ⁣:P→Cf\colon P\to Cに対して、自由加群FFの射影性により

π∘h=f∘q\pi\circ h=f\circ q

を満たすh ⁣:F→Bh\colon F\to Bが存在する。g:=h∘jg:=h\circ jと置くと

π∘g=f∘q∘j=f\pi\circ g=f\circ q\circ j=f

である。したがってPPは射影的である。

(1)⇒\Rightarrow(4)を示す。左RR加群の短完全列

0⟶A′→ i A→ p A′′⟶00\longrightarrow A'\xrightarrow{\ i\ }A \xrightarrow{\ p\ }A''\longrightarrow0

を取る。§E6.13 命題 4.1により

0⟶Hom⁡R(P,A′)→ i∗ Hom⁡R(P,A)→ p∗ Hom⁡R(P,A′′)0\longrightarrow\operatorname{Hom}_R(P,A') \xrightarrow{\ i_*\ }\operatorname{Hom}_R(P,A) \xrightarrow{\ p_*\ }\operatorname{Hom}_R(P,A'')

は完全である。任意のf ⁣:P→A′′f\colon P\to A''は、射影性によってp∘g=fp\circ g=fとなるg ⁣:P→Ag\colon P\to Aをもつ。すなわちp∗p_*は全射である。したがって表示した列の右端に→0\to0を加えた列も完全である。

(4)⇒\Rightarrow(1)を示す。全射π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cと左RR線形写像f ⁣:P→Cf\colon P\to Cを取る。短完全列

0⟶ker⁡π⟶B→ π C⟶00\longrightarrow\ker\pi\longrightarrow B \xrightarrow{\ \pi\ }C\longrightarrow0

にHom⁡R(P,−)\operatorname{Hom}_R(P,-)を施すと、(4)により

Hom⁡R(P,B)→ π∗ Hom⁡R(P,C)⟶0\operatorname{Hom}_R(P,B) \xrightarrow{\ \pi_*\ } \operatorname{Hom}_R(P,C)\longrightarrow0

は完全である。したがってπ∗\pi_*は全射であり、π∘g=f\pi\circ g=fとなるg ⁣:P→Bg\colon P\to Bが存在する。よってPPは射影的である。▨

系 1.3. 任意の自由左RR加群は左射影RR加群である。また、任意の左RR加群MMに対して、ある自由左RR加群からの全射F↠MF\twoheadrightarrow Mが存在する。

証明. 自由加群の射影性は命題 1.2 (3)⇒\Rightarrow(1)の証明に含まれる。第二の主張については、MMの台集合上の自由加群R(M)R^{(M)}から、m∈Mm\in Mに対応する基底元をmmへ送る。自由加群の普遍性によって得られる写像は全射である。▨

2 射影加群の直和と反対環

命題 2.1. 左RR加群の族(Pi)i∈I(P_i)_{i\in I}に対して、次が成り立つ。

  1. すべてのPiP_iが射影的であることと、⨁i∈IPi\bigoplus_{i\in I}P_iが射影的であることは同値である。
  2. 射影加群の任意の直和因子は射影的である。

証明.(1)を示す。最初に各PiP_iが射影的であるとする。全射π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cと写像f ⁣:⨁iPi→Cf\colon\bigoplus_iP_i\to Cを取る。標準包含をji ⁣:Pi→⨁kPkj_i\colon P_i\to\bigoplus_kP_kとする。各iiに対してf∘jif\circ j_iはgi ⁣:Pi→Bg_i\colon P_i\to Bへ持ち上がる。直和の普遍性により、g∘ji=gig\circ j_i=g_iを満たすg ⁣:⨁iPi→Bg\colon\bigoplus_iP_i\to Bが存在する。すべてのiiについて

π∘g∘ji=f∘ji\pi\circ g\circ j_i=f\circ j_i

であるため、π∘g=f\pi\circ g=fである。よって直和は射影的である。

(2)を示す。次に、射影加群EEがE=P⊕QE=P\oplus Qと分解するとする。包含j ⁣:P→Ej\colon P\to Eと射影q ⁣:E→Pq\colon E\to Pに対してq∘j=1Pq\circ j=1_Pである。全射π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cとf ⁣:P→Cf\colon P\to Cを取ると、f∘q ⁣:E→Cf\circ q\colon E\to Cはh ⁣:E→Bh\colon E\to Bへ持ち上がる。g:=h∘jg:=h\circ jと置けばπ∘g=f\pi\circ g=fであるため、PPは射影的である。各PiP_iは直和の直和因子であるから、⨁iPi\bigoplus_iP_iが射影的ならば各PiP_iも射影的である。▨

命題 2.2. 右RR加群PPに対して、次の条件は同値である。

  1. 任意の右RR加群の全射π ⁣:B↠C\pi\colon B\twoheadrightarrow Cと右RR線形写像f ⁣:P→Cf\colon P\to Cに対して、π∘g=f\pi\circ g=fとなる右RR線形写像g ⁣:P→Bg\colon P\to Bが存在する。
  2. PPを左RopR^{\mathrm{op}}加群とみなした加群RopP{}_{R^{\mathrm{op}}}Pは左射影RopR^{\mathrm{op}}加群である。

したがって、右射影加群についても命題 1.2の四条件、系 1.3および命題 2.1が左右を入れ替えた形で成り立つ。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。写像f ⁣:P→Cf\colon P\to Cが右RR線形であることは、任意のr∈Rr\in Rとp∈Pp\in Pに対して

f(pr)=f(p)rf(pr)=f(p)r

となることである。ropp:=prr^{\mathrm{op}}p:=prと定めると、この等式は

f(ropp)=ropf(p)f(r^{\mathrm{op}}p)=r^{\mathrm{op}}f(p)

となり、ffの左RopR^{\mathrm{op}}線形性と同値である。全射性、核、像および写像の合成は台となるアーベル群の写像として変化しない。したがって右RR加群の持上げ図式は、同じ写像からなる左RopR^{\mathrm{op}}加群の持上げ図式と一致する。

同じ理由により短完全列とその切断写像は変化せず、Hom⁡R(P,−)\operatorname{Hom}_R(P,-)の右加群版はHom⁡Rop(P,−)\operatorname{Hom}_{R^{\mathrm{op}}}(P,-)と同じアーベル群と誘導写像をもつ。また、自由右RR加群R(I)R^{(I)}は左RopR^{\mathrm{op}}加群として自由加群(Rop)(I)(R^{\mathrm{op}})^{(I)}に一致する。したがって左RopR^{\mathrm{op}}加群について証明した四条件、自由加群、直和および直和因子の結果が、写像を変えずに右RR加群へ移る。▨

3 射影加群が自由とは限らない例

注意 3.1 (射影加群は自由加群とは限らない).R:=Z/6ZR:=\mathbb Z/6\mathbb Zとし、P:=Z/2ZP:=\mathbb Z/2\mathbb ZとQ:=Z/3ZQ:=\mathbb Z/3\mathbb Zに、剰余写像を通して左RR作用を入れる。写像

φ ⁣:R⟶P⊕Q,φ(r‾):=(r‾(2),r‾(3))\varphi\colon R\longrightarrow P\oplus Q, \qquad \varphi(\overline r):=(\overline r^{(2)},\overline r^{(3)})

は左RR線形である。逆写像は

ψ ⁣:P⊕Q⟶R,ψ(a‾(2),b‾(3)):=3a+4b‾(6)\psi\colon P\oplus Q\longrightarrow R, \qquad \psi(\overline a^{(2)},\overline b^{(3)}) :=\overline{3a+4b}^{(6)}

である。aaを22の倍数だけ変更すると3a3aは66の倍数だけ変化し、bbを33の倍数だけ変更すると4b4bは1212の倍数だけ変化するため、ψ\psiは well-defined である。また

3a+4b≡a(mod2),3a+4b≡b(mod3)3a+4b\equiv a\pmod2, \qquad 3a+4b\equiv b\pmod3

であり、任意のr∈Zr\in\mathbb Zに対して

3r+4r=7r≡r(mod6)3r+4r=7r\equiv r\pmod6

である。したがってφ\varphiとψ\psiは互いに逆であり、

R≅P⊕QR\cong P\oplus Q

となる。PPは自由加群RRの直和因子であるため、命題 1.2により射影的である。

一方、PPは自由左RR加群でない。仮にP≅R(I)P\cong R^{(I)}ならば、IIが無限集合である場合には相異なる基底元がR(I)R^{(I)}の無限部分集合を与えるため、位数22のPPと同型にならない。IIが有限集合で∣I∣=n|I|=nならば、∣R(I)∣=6n|R^{(I)}|=6^nである。n=0n=0のとき位数は11、n≥1n\ge1のとき位数は66以上であり、いずれも22でない。したがってPPは射影的であるが自由でない。

4 演習

問題 4.1 (射影加群の確認). 次の各問に答えよ。

  1. 左射影加群の持上げ性から、PPを終域とする短完全列が分裂することを証明せよ。逆に、自由加群からPPへの全射の分裂を用いてPPが自由加群の直和因子であることを、順逆写像を明示して証明せよ。さらに、自由加群の基底元の像を全射に沿って個別に持ち上げることにより自由加群が射影的であることを証明し、自由加群の直和因子へ持上げ性を移せ。最後に、持上げ性とHom⁡R(P,−)\operatorname{Hom}_R(P,-)の完全性が同値であることを示せ。
  2. 右RR線形写像が左RopR^{\mathrm{op}}線形写像と同じ写像であることを証明し、右射影性が反対環上の左射影性へ移る理由を説明せよ。
  3. R=Z/6ZR=\mathbb Z/6\mathbb ZとP=Z/2ZP=\mathbb Z/2\mathbb Zに対して、R≅P⊕Z/3ZR\cong P\oplus\mathbb Z/3\mathbb Zの同型を構成せよ。この分解からPPが射影的であることを示し、基底の添字集合の濃度を有限と無限に分けてPPが自由でないことを証明せよ。
解答 (演習の解答).
  1. 全射π ⁣:B→P\pi\colon B\to Pに恒等写像1P1_Pの持上げ性を適用すると、πs=1P\pi s=1_Pとなる切断ssを得る。自由加群F=R(P)F=R^{(P)}からPPへの全射ε\varepsilonが分裂するとき、K=ker⁡εK=\ker\varepsilonに対して (k,p)⟼k+s(p),x⟼(x−sε(x),ε(x))(k,p)\longmapsto k+s(p), \qquad x\longmapsto(x-s\varepsilon(x),\varepsilon(x)) はK⊕PK\oplus PとFFの間の互いに逆な写像である。自由加群F=R(I)F=R^{(I)}、全射ρ ⁣:B↠C\rho\colon B\twoheadrightarrow Cおよび写像f ⁣:F→Cf\colon F\to Cに対して、各i∈Ii\in Iについてρ(bi)=f(ei)\rho(b_i)=f(e_i)となるbi∈Bb_i\in Bを選ぶ。自由加群の普遍性によりei↦bie_i\mapsto b_iは写像g ⁣:F→Bg\colon F\to Bを定め、ρg=f\rho g=fとなるため、FFは射影的である。PPがFFの直和因子で、包含j ⁣:P→Fj\colon P\to Fと射影p ⁣:F→Pp\colon F\to Pがpj=1Ppj=1_Pを満たすとする。f ⁣:P→Cf\colon P\to Cに対してfp ⁣:F→Cfp\colon F\to Cを持ち上げるh ⁣:F→Bh\colon F\to Bを取り、g:=hjg:=hjと置けばρg=fpj=f\rho g=fpj=fとなる。したがって持上げ性は自由加群の直和因子へ移る。Hom の左完全性により、持上げ性を仮定したときに不足するのはHom⁡R(P,B)→Hom⁡R(P,C)\operatorname{Hom}_R(P,B)\to\operatorname{Hom}_R(P,C)の全射性だけであり、この全射性は持上げ性そのものである。逆に Hom の完全性を全射B→CB\to Cの核からなる短完全列へ適用すると、任意のP→CP\to Cが持ち上がる。
  2. ropp:=prr^{\mathrm{op}}p:=prと置けば、f(pr)=f(p)rf(pr)=f(p)rはf(ropp)=ropf(p)f(r^{\mathrm{op}}p)=r^{\mathrm{op}}f(p)と同じ等式である。全射、単射、核、像および合成は台となる加法群の写像として変化しないため、持上げ性と短完全列が反対環へ移る。
  3. 写像r‾(6)↦(r‾(2),r‾(3))\overline r^{(6)}\mapsto(\overline r^{(2)},\overline r^{(3)})の逆は(a‾(2),b‾(3))↦3a+4b‾(6)(\overline a^{(2)},\overline b^{(3)})\mapsto\overline{3a+4b}^{(6)}である。したがってPPは自由加群RRの直和因子であり、射影的である。P≅R(I)P\cong R^{(I)}と仮定すると、IIが無限ならば基底元が無限部分集合を与え、有限集合PPと矛盾する。∣I∣=n<∞|I|=n<\inftyならば∣R(I)∣=6n|R^{(I)}|=6^nであり、n=0n=0でもn≥1n\ge1でも22にならない。よってPPは自由でない。

▨

5 仮定と後続範囲の境界

左射影加群の特徴づけでは有限生成性を仮定せず、台集合上の自由加群を用いた。任意直和に対する結果でも、各元が有限台をもつことだけを用いている。右側の主張は、右線形写像を左RopR^{\mathrm{op}}線形写像として同じ写像のまま読み替えて導いた。

射影加群の平坦性と有限表示平坦加群の射影性は記事「平坦加群と普遍単射」が扱う。射影加群の持上げ性を用いる分解の構成は記事「射影分解と比較定理」が、射影性の Ext による判定は記事「Ext」が、右射影加群を用いる計算は記事「Tor と平坦性」が扱う。入射加群との対比は記事「入射加群」が、射影被覆が存在しない例は記事「本質拡大と入射包絡」が扱う。入射分解による導来関手の計算は後続の単元へ委ねる。本記事では、射影性の基本的な特徴づけ、直和、直和因子および表示した例を越える一般化を扱わない。

参考文献

  1. T. Y. Lam, Lectures on Modules and Rings, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1999.一般の非可換環上の射影加群、直和および反対環による左右の対応を参考にした。
  2. Joseph J. Rotman, An Introduction to Homological Algebra, 2nd ed., Universitext, Springer, 2009.持上げ性、分裂短完全列および Hom の完全性による特徴づけを参考にした。

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