1 部分加群の基底
定理 1.1.Rを単項イデアル整域、Iを集合、Fを基底(ei)i∈Iをもつ自由R-加群、NをFの部分加群とする。このとき、ある部分集合J⊆Iで添字付けられたNの基底が存在する。したがってNは自由であり、基底の濃度を階数とすると
rankRN≤rankRFが成り立つ。
証明.§E1.20 定理 2.1 (2)によりIに整列順序を入れ、§E1.16 定理 3.1により順序数κと順序同型θ:κ→Iを取る。eθ(α)をuαと書き、各α≤κに対して
Fα=β<α⨁Ruβ,Nα=N∩Fαとおく。特にN0=0、Nκ=Nである。
各α<κに対し、uαの係数を取るR-線形写像をpα:Fα+1→Rとする。Aα=pα(Nα+1)はRのイデアルであり、pαのNα+1への制限の核はNαである。S={α<κ∣Aα=0}とおく。Rは単項イデアル整域なので、各α∈Sに対してAα=dαRとなるdα=0が存在し、pα(xα)=dαとなるxα∈Nα+1が存在する。選択公理により、そのような対(dα,xα)をすべてのα∈Sについて選ぶ。
各α≤κに対して、族(xβ)β∈S∩αはNαに値を取る。§E6.10 補題 1.4により、この族を標準基底の像とするR-線形写像
φα:R⊕(S∩α)⟶Nαが一意に定まる。
φ0は零加群から零加群への同型である。α<κとし、φαが同型であると仮定する。α∈/SならばAα=0なのでNα+1=Nαであり、S∩(α+1)=S∩αからφα+1=φαである。α∈Sならば、任意のy∈Nα+1に対してpα(y)=adαとなるa∈Rが存在する。y−axα∈NαであるからNα+1=Nα+Rxαである。また、axα∈Nαならばadα=0となる。Rは整域でdα=0なのでa=0であり、写像R→Rxα,a↦axαは同型である。したがって
Nα+1=Nα⊕Rxαであり、φαが同型であることと合わせてφα+1も同型である。
0<λ≤κを極限順序数とし、すべてのα<λでφαが同型であると仮定する。任意のy∈Nλは基底(uβ)β<λに関して有限台をもつ。λは極限順序数なので、その台のすべての添字より大きいα<λを取ることができる。台が空の場合はα=0とする。するとy∈Nαであり、φαの全射性からyはφλの像に属する。一方、z∈kerφλもS∩λ上の有限台をもつので、あるα<λに対してz∈R⊕(S∩α)である。φλのこの部分加群への制限は、φαと包含Nα⊆Nλの合成に等しい。φαは単射なのでz=0であり、φλは同型である。
§E1.17 定理 1.1 (1)と§E1.17 定理 1.1 (3)を順序数κ+1に適用すると、すべてのα≤κに対してφαは同型である。特に§E6.10 定義 1.6 (3)より(xα)α∈SはNの基底であり、J=θ(S)⊆Iとおけば(xθ−1(j))j∈Jが所要の基底となる。非零可換環上の基底の濃度は§E6.10 系 2.11により不変なので、#J≤#Iが階数不等式を与える。▨
例 1.3.F=⨁n∈N≥0Zenとし、Nを係数の和が偶数である元全体とする。係数の和を2で割った余りを取る準同型F→Z/2Zの核がNなので、NはFの部分加群である。このとき
x0=2e0,xn=en−e0(n∈N≥1)はNの基底となる。実際、y=∑n∈N≥0anen∈Nに対して、有限和∑n∈N≥0anは偶数なので
y=2∑n∈N≥0anx0+n∈N≥1∑anxnと書くことができる。右辺の係数は、n∈N≥1に対するenの係数を比較し、次にe0の係数を比較すると一意に定まる。各enはNに属さないので、この基底はFの標準基底の部分族ではない。さらにNはFの直和因子ではない。実際、F=N⊕Qと書くことができるならば、e0=n+q(n∈N,q∈Q)と分解すると、2q=2e0−2n∈N∩Q=0となる。Fの元の係数は整数なので2q=0からq=0が従い、e0=n∈Nとなるが、e0の係数の和は奇数である。
2 射影加群への帰結
系 2.1.Rを単項イデアル整域とする。任意の射影R-加群は自由である。
証明.Pを射影R-加群とする。§E6.16 命題 1.2 (3)により、ある自由R-加群FとR-加群Qに対してF≅P⊕Qとなる。この同型によりPをFの部分加群と同一視すると、定理 1.1よりPは自由である。▨