§E6.7イデアルの根基

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可換環のイデアルの根基は、ある正の冪がそのイデアルに入る元を集めたものである。根基を取る操作は冪零性を一度に取り込み、有限個のイデアルの共通部分、積、和、準同型の逆像および局所化と整合する。

一般環では、極大左イデアルの共通部分として Jacobson 根基を定める。極大左イデアルを用いる定義は一見すると左側に偏っているが、結果として両側イデアルを与え、極大右イデアルの共通部分とも一致する。単純左右加群を用いると、左右の一致を加群への作用が消えるという形で捉えることができる。

本記事の前半ではAAを単位元をもつ可換環とし、後半ではRRを単位元をもつ結合環とする。いずれも零環を許す。環準同型は単位元を保つものとする。冪零元と被約環には§E6.4 定義 4.1、局所化には§E6.6 定義 1.1の規約を用いる。

1 可換環のイデアルの根基

定義 1.1.AAを可換環、I⊆AI\subseteq Aをイデアルとする。IIの根基 (radical of an ideal) を

I:={a∈A∣∃n≥1, an∈I}\sqrt I :=\{a\in A\mid \exists n\ge 1,\ a^n\in I\}

によって定める。特に(0)\sqrt{(0)}をAAの冪零根基 (nilradical) という。

根基がイデアルとなることの要点は、二つの元に対して選ばれた冪指数を一つの指数へまとめることである。差の冪には二項定理を適用する。

命題 1.2.AAを可換環、I,J⊆AI,J\subseteq Aをイデアルとする。次が成り立つ。

  1. I\sqrt IはAAのイデアルである。
  2. I⊆II\subseteq\sqrt Iである。
  3. I⊆JI\subseteq JならばI⊆J\sqrt I\subseteq\sqrt Jである。
  4. I=I\sqrt{\sqrt I}=\sqrt Iである。

証明.(1)を示す。x,y∈Ix,y\in\sqrt Iとする。あるm,n≥1m,n\ge1に対してxm∈Ix^m\in Iおよびyn∈Iy^n\in Iである。二項定理によって

(x−y)m+n=∑k=0m+n(m+nk)xk(−y)m+n−k(x-y)^{m+n} =\sum_{k=0}^{m+n}\binom{m+n}{k}x^k(-y)^{m+n-k}

となる。各項について、k≥mk\ge mまたはm+n−k≥nm+n-k\ge nの少なくとも一方が成り立つ。前者の場合にはその項がxmx^mの倍元であり、後者の場合にはyny^nの倍元である。したがってすべての項がIIに属し、(x−y)m+n∈I(x-y)^{m+n}\in Iである。よってx−y∈Ix-y\in\sqrt Iとなる。

a∈Aa\in Aに対して(ax)m=amxm∈I(ax)^m=a^mx^m\in Iであるため、ax∈Iax\in\sqrt Iである。また01∈I0^1\in Iであるため、0∈I0\in\sqrt Iである。以上からI\sqrt Iはイデアルである。

(2)を示す。x∈Ix\in Iならばx1∈Ix^1\in Iであるから、I⊆II\subseteq\sqrt Iである。

(3)を示す。I⊆JI\subseteq Jかつx∈Ix\in\sqrt Iならば、あるn≥1n\ge1に対してxn∈I⊆Jx^n\in I\subseteq Jであるため、x∈Jx\in\sqrt Jとなる。以上により単調性を得る。

(4)を示す。単調性とI⊆II\subseteq\sqrt IからI⊆I\sqrt I\subseteq\sqrt{\sqrt I}が従う。逆に、x∈Ix\in\sqrt{\sqrt I}とする。あるm≥1m\ge1に対してxm∈Ix^m\in\sqrt Iであり、さらにあるn≥1n\ge1に対して(xm)n=xmn∈I(x^m)^n=x^{mn}\in Iである。したがってx∈Ix\in\sqrt Iである。よってI=I\sqrt{\sqrt I}=\sqrt Iとなる。▨

有限個のイデアルについて、根基は共通部分と交換する。二つのイデアルの積は共通部分より小さいが、根基を取ると差が消える。

命題 1.3.AAを可換環とし、I1,…,Ir⊆AI_1,\ldots,I_r\subseteq Aをイデアルとする。ただしr≥0r\ge0とし、r=0r=0の場合の空共通部分と空積をともにAAと定める。このとき

⋂k=1rIk=⋂k=1rIk=∏k=1rIk\sqrt{\bigcap_{k=1}^r I_k} =\bigcap_{k=1}^r\sqrt{I_k} =\sqrt{\prod_{k=1}^r I_k}

である。特に、二つのイデアルI,J⊆AI,J\subseteq Aに対して

IJ=I∩J=I∩J\sqrt{IJ} =\sqrt{I\cap J} =\sqrt I\cap\sqrt J

である。

証明.r=0r=0の場合には、三つの集合がすべてA=A\sqrt A=Aとなる。以下ではr≥1r\ge1とする。

x∈⋂k=1rIkx\in\sqrt{\bigcap_{k=1}^r I_k}ならば、あるn≥1n\ge1に対してxn∈Ikx^n\in I_kがすべてのkkについて成り立つ。したがってx∈Ikx\in\sqrt{I_k}がすべてのkkについて成り立つ。

逆に、x∈⋂k=1rIkx\in\bigcap_{k=1}^r\sqrt{I_k}とする。各kkに対してxnk∈Ikx^{n_k}\in I_kとなるnk≥1n_k\ge1を選び、N:=n1+⋯+nrN:=n_1+\cdots+n_rと置く。N≥nkN\ge n_kであるため、

xN=xN−nkxnk∈Ikx^N=x^{N-n_k}x^{n_k}\in I_k

がすべてのkkについて成り立つ。よってxN∈⋂k=1rIkx^N\in\bigcap_{k=1}^r I_kであり、x∈⋂k=1rIkx\in\sqrt{\bigcap_{k=1}^r I_k}となる。

∏k=1rIk⊆⋂k=1rIk\prod_{k=1}^r I_k\subseteq\bigcap_{k=1}^r I_kであるため、単調性から

∏k=1rIk⊆⋂k=1rIk\sqrt{\prod_{k=1}^r I_k} \subseteq\sqrt{\bigcap_{k=1}^r I_k}

となる。逆にx∈⋂k=1rIkx\in\bigcap_{k=1}^r\sqrt{I_k}ならば、各kkに対してxnk∈Ikx^{n_k}\in I_kとなるnk≥1n_k\ge1を選ぶことができる。したがって

xn1+⋯+nr=∏k=1rxnk∈∏k=1rIkx^{n_1+\cdots+n_r} =\prod_{k=1}^r x^{n_k} \in\prod_{k=1}^r I_k

であり、x∈∏k=1rIkx\in\sqrt{\prod_{k=1}^r I_k}となる。以上の包含関係と最初に証明した共通部分の等式から、三つの集合は一致する。二つのイデアルに関する等式はr=2r=2の場合である。▨

有限性は必要である。体kk上の多項式環k[x]k[x]でIn=(xn)I_n=(x^n)と置くと、In=(x)\sqrt{I_n}=(x)である。一方、

⋂n≥1(xn)=(0)\bigcap_{n\ge1}(x^n)=(0)

である。実際、零でない多項式ffの次数をddとすると、ffはxd+1x^{d+1}で割り切れない。k[x]k[x]は整域であるため(0)=(0)\sqrt{(0)}=(0)であり、

⋂n≥1In=(0)≠(x)=⋂n≥1In\sqrt{\bigcap_{n\ge1}I_n}=(0) \ne(x)=\bigcap_{n\ge1}\sqrt{I_n}

となる。

和については、根基を取った二つのイデアルの和がそのまま根基になるとは限らない。正確な等式では、和を取った後にもう一度根基を取る。

命題 1.4.AAを可換環、I,J⊆AI,J\subseteq Aをイデアルとする。このとき

I+J=I+J\sqrt{I+J} =\sqrt{\sqrt I+\sqrt J}

である。

証明.I⊆II\subseteq\sqrt IおよびJ⊆JJ\subseteq\sqrt Jであるため、

I+J⊆I+JI+J\subseteq\sqrt I+\sqrt J

である。単調性から

I+J⊆I+J\sqrt{I+J}\subseteq\sqrt{\sqrt I+\sqrt J}

を得る。

一方、I⊆I+JI\subseteq I+JであるためI⊆I+J\sqrt I\subseteq\sqrt{I+J}であり、同様にJ⊆I+J\sqrt J\subseteq\sqrt{I+J}である。命題 1.2によりI+J\sqrt{I+J}はイデアルであるため、

I+J⊆I+J\sqrt I+\sqrt J\subseteq\sqrt{I+J}

となる。両辺の根基を取り、根基の冪等性を用いると

I+J⊆I+J=I+J\sqrt{\sqrt I+\sqrt J} \subseteq\sqrt{\sqrt{I+J}} =\sqrt{I+J}

を得る。よって等式が成り立つ。▨

外側の根基は一般には省略することができない。A=k[x,y]A=k[x,y]とし、I=(y)I=(y)、J=(y−x2)J=(y-x^2)と置く。商環A/IA/IとA/JA/Jはいずれもk[x]k[x]と同型であるため、IIとJJは素イデアルであり、I=I\sqrt I=IおよびJ=J\sqrt J=Jである。しかし

I+J=(y,x2)\sqrt I+\sqrt J=(y,x^2)

は根基イデアルではない。実際、x2x^2はこのイデアルに属するがxxは属さない。一方、

I+J=(y,x2)=(x,y)\sqrt{I+J}=\sqrt{(y,x^2)}=(x,y)

である。最後の等式は、x2,y∈(y,x2)x^2,y\in(y,x^2)から(x,y)⊆(y,x2)(x,y)\subseteq\sqrt{(y,x^2)}を得ることと、(y,x2)⊆(x,y)(y,x^2)\subseteq(x,y)およびA/(x,y)≅kA/(x,y)\cong kから逆包含を得ることによって直接確認することができる。

2 準同型および局所化との整合性

根基は環準同型の逆像と交換する。この性質は、冪を取る操作が環準同型と交換することから直接従う。

命題 2.1.f ⁣:A→Bf\colon A\to Bを可換環の準同型とし、K⊆BK\subseteq Bをイデアルとする。このとき

f−1(K)=f−1(K)\sqrt{f^{-1}(K)}=f^{-1}(\sqrt K)

である。

証明.a∈f−1(K)a\in\sqrt{f^{-1}(K)}であることは、あるn≥1n\ge1に対してan∈f−1(K)a^n\in f^{-1}(K)となることと同値である。後者の条件は

f(a)n=f(an)∈Kf(a)^n=f(a^n)\in K

と同値であり、さらにf(a)∈Kf(a)\in\sqrt K、すなわちa∈f−1(K)a\in f^{-1}(\sqrt K)と同値である。▨

局所化との等式のうち、分母を払う向きでは、局所化の等値関係に現れる積閉集合の乗数を保持する必要がある。

命題 2.2.AAを可換環、S⊆AS\subseteq Aを積閉集合、I⊆AI\subseteq Aをイデアルとする。このときS−1AS^{-1}Aのイデアルとして

S−1(I)=S−1IS^{-1}(\sqrt I)=\sqrt{S^{-1}I}

である。

証明.a/s∈S−1(I)a/s\in S^{-1}(\sqrt I)とする。あるn≥1n\ge1に対してan∈Ia^n\in Iであるから

(as)n=ansn∈S−1I\left(\frac as\right)^n=\frac{a^n}{s^n}\in S^{-1}I

となる。したがってa/s∈S−1Ia/s\in\sqrt{S^{-1}I}である。

逆にa/s∈S−1Ia/s\in\sqrt{S^{-1}I}とする。あるn≥1n\ge1に対して

ansn∈S−1I\frac{a^n}{s^n}\in S^{-1}I

である。したがって、あるb∈Ib\in Iとt∈St\in Sに対して

ansn=bt\frac{a^n}{s^n}=\frac bt

となる。局所化の等値関係の定義から、あるu∈Su\in Sが存在して

u(tan−snb)=0u(ta^n-s^nb)=0

となる。ゆえに

(ut)an=usnb∈I(ut)a^n=us^nb\in I

である。c:=ut∈Sc:=ut\in Sと置くと

(ca)n=cnan=cn−1(can)∈I(ca)^n=c^na^n=c^{n-1}(ca^n)\in I

であるためca∈Ica\in\sqrt Iである。さらに局所化の演算から

as=cacs\frac as=\frac{ca}{cs}

であり、右辺の分子はI\sqrt Iに属する。したがってa/s∈S−1(I)a/s\in S^{-1}(\sqrt I)となる。▨

零イデアルの根基は冪零元全体である。冪零根基による商を取ると、非零冪零元がすべて消える。

命題 2.3.AAを可換環とする。商環

A/(0)A/\sqrt{(0)}

は被約環である。

証明.a+(0)∈A/(0)a+\sqrt{(0)}\in A/\sqrt{(0)}が冪零であるとする。あるn≥1n\ge1に対して

(a+(0))n=an+(0)=(0)(a+\sqrt{(0)})^n=a^n+\sqrt{(0)}=\sqrt{(0)}

であるから、an∈(0)a^n\in\sqrt{(0)}である。根基の定義により、あるm≥1m\ge1に対して

(an)m=anm=0(a^n)^m=a^{nm}=0

となる。したがってa∈(0)a\in\sqrt{(0)}であり、a+(0)a+\sqrt{(0)}は商環の零元である。よって商環は被約環である。▨

例 2.4 (根基の基本例).Z\mathbb Zでは(180)=(30)\sqrt{(180)}=(30)である。実際、ana^nが180=22⋅32⋅5180=2^2\cdot3^2\cdot5で割り切れるならば、素数2,3,52,3,5はすべてaaを割るため、3030はaaを割る。逆に3030がaaを割るならば180180はa2a^2を割るため、a∈(180)a\in\sqrt{(180)}となる。

kkを体とする。k[x,y]k[x,y]では

(x2,y3)=(x,y)\sqrt{(x^2,y^3)}=(x,y)

である。イデアル(x,y)(x,y)の任意の元ffに対してf4∈(x,y)4⊆(x2,y3)f^4\in(x,y)^4\subseteq(x^2,y^3)であるから、(x,y)⊆(x2,y3)(x,y)\subseteq\sqrt{(x^2,y^3)}となる。逆に(x2,y3)⊆(x,y)(x^2,y^3)\subseteq(x,y)である。またgn∈(x,y)g^n\in(x,y)ならば、商環k[x,y]/(x,y)≅kk[x,y]/(x,y)\cong k(この場合は体)において(g+(x,y))n=0(g+(x,y))^n=0となるためg+(x,y)=0g+(x,y)=0であり、g∈(x,y)g\in(x,y)となる。よって(x,y)(x,y)は根基イデアルであり、逆包含も成り立つ。

最後にA=Z/(4)A=\mathbb Z/(4)とする。2+(4)2+(4)の平方は零であるため、0+(4)0+(4)と2+(4)2+(4)は(0)\sqrt{(0)}に属する。一方、1+(4)1+(4)と3+(4)3+(4)は単元であり、単元の正の冪は零にならない。したがって

(0)={0+(4),2+(4)}.\sqrt{(0)}=\{0+(4),2+(4)\}.

このイデアルによる商は二元体Z/(2)\mathbb Z/(2)と同型であり、実際に被約環となる。

3 極大片側イデアルと単純加群

ここからRRの乗法は可換とは仮定しない。左加群と右加群を区別し、左イデアルと右イデアルにも同じ向きの区別を設ける。加群の零化イデアルには§E6.3 命題 7.1の規約を用いる。

定義 3.1. 非零左RR加群MMが単純左加群 (simple left module) であるとは、MMの左部分加群が00とMMだけであることをいう。非零右RR加群についても、右部分加群が00と加群全体だけであるとき単純右加群 (simple right module) という。

極大片側イデアルの存在には選択公理と同値な Zorn の補題を用いる。零環には真の片側イデアルが存在しないため、次の命題は空虚に成り立つ。

真の左イデアルLLが極大左イデアルであるとは、L⊆L′⊊RL\subseteq L'\subsetneq Rを満たす左イデアルL′L'がLLだけであることをいう。極大右イデアルも同様に、真の右イデアル全体を包含関係で順序づけて定める。

命題 3.2.RRを単位元をもつ結合環とする。任意の真の左イデアルは、ある極大左イデアルに含まれる。任意の真の右イデアルは、ある極大右イデアルに含まれる。

証明. 真の左イデアルIIを一つ固定する。IIを含む真の左イデアル全体を包含関係で順序づけた集合をP\mathcal Pとする。I∈PI\in\mathcal Pであるため、P\mathcal Pは空でない。

C⊆P\mathcal C\subseteq\mathcal Pを鎖とする。C\mathcal Cが空ならばIIがその上界である。そこでC\mathcal Cは空でないとし、U:=⋃L∈CLU:=\bigcup_{L\in\mathcal C}Lと置く。各L∈CL\in\mathcal CはIIを含むため、I⊆UI\subseteq Uであり、特に0∈U0\in Uである。x,y∈Ux,y\in Uならば、あるL1,L2∈CL_1,L_2\in\mathcal Cが存在してx∈L1x\in L_1およびy∈L2y\in L_2となる。鎖であることからL1⊆L2L_1\subseteq L_2またはL2⊆L1L_2\subseteq L_1であり、x−yx-yは大きい方の左イデアルに属する。またr∈Rr\in Rに対してrxrxもxxを含む左イデアルに属する。したがってUUは左イデアルである。

1R∈U1_R\in Uならば、あるL∈CL\in\mathcal Cに対して1R∈L1_R\in Lとなり、L=RL=Rとなる。等式L=RL=RはL∈PL\in\mathcal Pに反する。よってUUは真の左イデアルであり、C\mathcal Cの上界としてP\mathcal Pに属する。Zorn の補題(§E1.20 定理 2.1)によりP\mathcal Pは極大元をもつ。この極大元はIIを含む極大左イデアルである。

RRの右イデアルは反対環RopR^{\mathrm{op}}(§E6.1 定義 4.1)の左イデアルであり、真のイデアルであることと包含関係は反対環へ移っても変わらない。したがって、すでに証明した左イデアルに関する結論をRopR^{\mathrm{op}}に適用すると、任意の真の右イデアルを含む極大右イデアルを得る。▨

4 Jacobson 根基

定義 4.1.RRを単位元をもつ結合環とする。RRのJacobson 根基 (Jacobson radical) を、極大左イデアル全体の共通部分

J(R):=⋂L は R の極大左イデアルLJ(R):=\bigcap_{L\text{ は }R\text{ の極大左イデアル}}L

によって定める。極大左イデアルが存在しない場合には、空の共通部分をRRとする。

命題 4.2.RRを単位元をもつ結合環とし、x∈Rx\in Rとする。次の二条件は同値である。

  1. x∈J(R)x\in J(R)である。
  2. すべてのr∈Rr\in Rに対して1R−rx1_R-rxは左逆元をもつ。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。x∈J(R)x\in J(R)とし、r∈Rr\in Rを任意に取る。左イデアルR(1R−rx)R(1_R-rx)が真ならば、命題 3.2によって、R(1R−rx)R(1_R-rx)を含む極大左イデアルLLが存在する。x∈J(R)⊆Lx\in J(R)\subseteq Lであり、LLは左イデアルであるためrx∈Lrx\in Lである。また1R−rx∈L1_R-rx\in Lであるから1R∈L1_R\in Lとなり、矛盾する。したがってR(1R−rx)=RR(1_R-rx)=Rであり、あるa∈Ra\in Rに対してa(1R−rx)=1Ra(1_R-rx)=1_Rとなる。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。逆に、(2)を仮定し、x∉J(R)x\notin J(R)とする。ある極大左イデアルLLに対してx∉Lx\notin Lである。左イデアルL+RxL+RxはLLを真に含むためL+Rx=RL+Rx=Rであり、あるl∈Ll\in Lとr∈Rr\in Rに対して1R=l+rx1_R=l+rxとなる。よって1R−rx=l∈L1_R-rx=l\in Lである。(2)から、あるa∈Ra\in Rに対してa(1R−rx)=1Ra(1_R-rx)=1_Rとなるが、LLは左イデアルであるため左辺はLLに属する。包含1R∈L1_R\in LはLLが真であることに反する。したがってx∈J(R)x\in J(R)である。▨

単純左加群は、極大左イデアルによる商と同じ情報をもつ。この対応を零化イデアルへ移すと、Jacobson 根基を表す二つ目の方法を得る。

定理 4.3.RRを単位元をもつ結合環とする。MMが単純左RR加群の同型類の代表を動くとき、

J(R)=⋂MAnn⁡R(M)J(R)=\bigcap_M\operatorname{Ann}_R(M)

である。単純左加群が存在しない場合には、右辺をRRとする。

証明.MMを単純左RR加群とし、0≠m∈M0\ne m\in Mを取る。左RR加群準同型

φm ⁣:RR⟶M,r⟼rm\varphi_m\colon {}_RR\longrightarrow M, \qquad r\longmapsto rm

を考える。その像RmRmはm=1Rmm=1_Rmを含む非零部分加群であるため、単純性からRm=MRm=Mである。したがってφm\varphi_mは全射である。

K:=ker⁡φmK:=\ker\varphi_mと置く。§E6.2 定理 7.1によりR/K≅MR/K\cong Mであり、MMは非零であるためKKは真の左イデアルである。K⊊L⊆RK\subsetneq L\subseteq Rとなる左イデアルLLが存在すれば、L/KL/KはR/KR/Kの部分加群である。単純性からL/K=0L/K=0またはL/K=R/KL/K=R/Kであり、前者ならL=KL=K、後者ならL=RL=Rとなる。よってKKは極大左イデアルである。

x∈J(R)x\in J(R)とする。K=ker⁡φmK=\ker\varphi_mは極大左イデアルであるためx∈Kx\in Kであり、xm=0xm=0となる。同じ議論はMMの任意の非零元mmに対して成り立ち、m=0m=0に対してもxm=0xm=0であるから、xxはMMのすべての元を零に写す。したがって

J(R)⊆⋂MAnn⁡R(M)J(R)\subseteq\bigcap_M\operatorname{Ann}_R(M)

である。

逆に、xxがすべての単純左RR加群を零化すると仮定する。LLを極大左イデアルとする。商左加群R/LR/LはLLが真であるため非零である。0≠N⊆R/L0\ne N\subseteq R/Lを部分加群とし、r+L≠Lr+L\ne Lとなる元r+L∈Nr+L\in Nを取る。r∉Lr\notin Lであるため、左イデアルL+RrL+RrはLLを真に含み、極大性からL+Rr=RL+Rr=Rとなる。任意のs+L∈R/Ls+L\in R/Lに対して、あるl∈Ll\in Lとa∈Ra\in Rが存在してs=l+ars=l+arとなるため

s+L=a(r+L)∈Ns+L=a(r+L)\in N

である。したがってN=R/LN=R/Lであり、R/LR/Lは単純左加群である。仮定からxxはR/LR/Lを零化するので

x(1R+L)=x+L=Lx(1_R+L)=x+L=L

であり、x∈Lx\in Lとなる。包含x∈Lx\in Lはすべての極大左イデアルLLについて成り立つため、x∈J(R)x\in J(R)である。

なお、すべての単純左加群は前段で示したようにRRの極大左イデアルによる商と同型である。極大左イデアルはRRの部分集合であるため、同型類ごとの代表を取る共通部分は集合として定めることができる。▨

系 4.4.J(R)J(R)はRRの両側イデアルである。

証明.§E6.3 命題 7.1により、左RR加群MMの零化イデアルAnn⁡R(M)\operatorname{Ann}_R(M)は両側イデアルである。両側イデアルの任意の共通部分も両側イデアルであるから、定理 4.3の等式によってJ(R)J(R)は両側イデアルである。▨

Jacobson 根基の元に11を加えた元の可逆性を示す。極大左イデアルの定義から最初に左逆元を構成し、その左逆元自身に同じ議論を適用して右逆元との一致を証明する。

命題 4.5.RRを単位元をもつ結合環とし、x∈J(R)x\in J(R)とする。このとき1R+x1_R+xはRRの単元である。

証明.命題 4.2をr=−1Rr=-1_Rに対して適用し、a(1R+x)=1Ra(1_R+x)=1_Rとなるa∈Ra\in Rを取る。この等式から

a=1R−axa=1_R-ax

である。命題 4.2をr=ar=aに対して適用すると、a=1R−axa=1_R-axは左逆元をもつ。すなわち、あるb∈Rb\in Rに対して

ba=1Rba=1_R

となる。

一方、a(1R+x)=1Ra(1_R+x)=1_Rであるため、1R+x1_R+xはaaの右逆元である。積の順序を保って計算すると

b=b(a(1R+x))=(ba)(1R+x)=1R+xb=b\bigl(a(1_R+x)\bigr)=(ba)(1_R+x)=1_R+x

である。したがって

(1R+x)a=ba=1R(1_R+x)a=ba=1_R

となる。すでにa(1R+x)=1Ra(1_R+x)=1_Rも得ているため、aaは1R+x1_R+xの両側逆元である。よって1R+x1_R+xは単元である。▨

補題 4.6 (Jacobson の補題).RRを単位元をもつ結合環とし、a,b∈Ra,b\in Rとする。1R−ab1_R-abが単元であることと1R−ba1_R-baが単元であることは同値である。

証明.u=(1R−ab)−1u=(1_R-ab)^{-1}とする。等式(1R−ab)u=1R(1_R-ab)u=1_Rからu−abu=1Ru-abu=1_Rを得るため、

(1R−ba)(1R+bua)=1R−ba+bua−babua=1R−ba+b(u−abu)a=1R(1_R-ba)(1_R+bua) =1_R-ba+bua-babua =1_R-ba+b(u-abu)a =1_R

である。またu(1R−ab)=1Ru(1_R-ab)=1_Rからu−uab=1Ru-uab=1_Rを得るため、

(1R+bua)(1R−ba)=1R−ba+bua−buaba=1R−ba+b(u−uab)a=1R(1_R+bua)(1_R-ba) =1_R-ba+bua-buaba =1_R-ba+b(u-uab)a =1_R

である。したがって1R+bua1_R+buaは1R−ba1_R-baの両側逆元である。逆向きはaaとbbを交換することによって従う。▨

5 極大右イデアルおよび単純右加群による特徴付け

反対環を用いると、左側について証明した両側イデアル性と可逆性を右側へ移すことができる。その後、極大性と単元の存在を用いて左右の共通部分が一致することを証明する。

定理 5.1.RRを単位元をもつ結合環とする。このとき

J(R)=⋂N は R の極大右イデアルN.J(R) =\bigcap_{N\text{ は }R\text{ の極大右イデアル}}N.

極大右イデアルが存在しない場合には、右辺をRRとする。

証明. 右辺をJr(R)J_{\mathrm r}(R)と書く。反対環RopR^{\mathrm{op}}の定義には§E6.1 定義 4.1の規約を用いる。RRの右イデアルはRopR^{\mathrm{op}}の左イデアルであり、包含関係も変わらない。したがって集合として

Jr(R)=J(Rop)J_{\mathrm r}(R)=J(R^{\mathrm{op}})

である。系 4.4をRopR^{\mathrm{op}}に適用すると、Jr(R)J_{\mathrm r}(R)はRRの両側イデアルである。また命題 4.5をRopR^{\mathrm{op}}に適用すると、z∈Jr(R)z\in J_{\mathrm r}(R)に対して1R+z1_R+zはRopR^{\mathrm{op}}の単元である。反対環と元の環では両側逆元の条件が同じであるため、1R+z1_R+zはRRの単元でもある。

x∈J(R)x\in J(R)とし、NNを極大右イデアルとする。x∉Nx\notin Nと仮定すると、右イデアルN+xRN+xRはNNを真に含むため、極大性からN+xR=RN+xR=Rとなる。したがって、あるn∈Nn\in Nとr∈Rr\in Rに対して

1R=n+xr1_R=n+xr

であり、n=1R−xr∈Nn=1_R-xr\in Nとなる。J(R)J(R)は両側イデアルであるため−xr∈J(R)-xr\in J(R)であり、命題 4.5によって1R−xr1_R-xrは単元である。右イデアルNNが1R−xr1_R-xrを含むならば、その右逆元を右から掛けて1R∈N1_R\in Nとなる。包含1R∈N1_R\in NはNNが真であることに反する。よってx∈Nx\in Nであり、J(R)⊆Jr(R)J(R)\subseteq J_{\mathrm r}(R)を得る。

逆にz∈Jr(R)z\in J_{\mathrm r}(R)とし、LLを極大左イデアルとする。z∉Lz\notin Lと仮定すると、左イデアルL+RzL+RzはLLを真に含むためL+Rz=RL+Rz=Rとなる。したがって、あるl∈Ll\in Lとr∈Rr\in Rに対して

1R=l+rz1_R=l+rz

であり、l=1R−rz∈Ll=1_R-rz\in Lとなる。Jr(R)J_{\mathrm r}(R)は両側イデアルであるため−rz∈Jr(R)-rz\in J_{\mathrm r}(R)であり、反対環から得た可逆性によって1R−rz1_R-rzは単元である。左イデアルLLが1R−rz1_R-rzを含むならば、その左逆元を左から掛けて1R∈L1_R\in Lとなる。包含1R∈L1_R\in LはLLが真であることと矛盾する。よってz∈Lz\in Lであり、Jr(R)⊆J(R)J_{\mathrm r}(R)\subseteq J(R)を得る。以上から等式が成り立つ。▨

定理 5.2.RRを単位元をもつ結合環とする。MMが単純右RR加群の同型類の代表を動くとき、

J(R)=⋂MAnn⁡R(M)J(R)=\bigcap_M\operatorname{Ann}_R(M)

である。単純右加群が存在しない場合には、右辺をRRとする。

証明.定理 5.1により、J(R)J(R)は極大右イデアル全体の共通部分である。

MMを単純右RR加群とし、0≠m∈M0\ne m\in Mを取る。右RR加群準同型

ψm ⁣:RR⟶M,r⟼mr\psi_m\colon R_R\longrightarrow M, \qquad r\longmapsto mr

の像mRmRはm=m1Rm=m1_Rを含む非零部分加群であるためMMに等しい。よってψm\psi_mは全射である。K:=ker⁡ψmK:=\ker\psi_mと置くと、§E6.2 定理 7.1によりR/K≅MR/K\cong Mである。MMは非零であるためKKは真の右イデアルである。K⊆Q⊆RK\subseteq Q\subseteq Rとなる右イデアルQQに対して、Q/KQ/KはR/KR/Kの右部分加群である。単純性からQ/K=0Q/K=0またはQ/K=R/KQ/K=R/Kであり、前者ならQ=KQ=K、後者ならQ=RQ=Rである。よってKKは極大右イデアルである。

x∈J(R)x\in J(R)ならばx∈Kx\in Kであるためmx=0mx=0である。同じ議論は任意の非零元m∈Mm\in Mに対して成り立ち、m=0m=0の場合にも同じ等式が成り立つため、x∈Ann⁡R(M)x\in\operatorname{Ann}_R(M)である。以上により

J(R)⊆⋂MAnn⁡R(M)J(R)\subseteq\bigcap_M\operatorname{Ann}_R(M)

を得る。

逆に、xxがすべての単純右RR加群を零化すると仮定する。極大右イデアルNNに対して商右加群R/NR/Nは単純である。実際、0≠P⊆R/N0\ne P\subseteq R/Nを右部分加群とし、r+N≠Nr+N\ne Nとなるr+N∈Pr+N\in Pを取る。r∉Nr\notin NであるためN+rR=RN+rR=Rである。任意のs+N∈R/Ns+N\in R/Nは、あるn∈Nn\in Nとa∈Ra\in Rによってs=n+ras=n+raと書くことができるため

s+N=(r+N)a∈Ps+N=(r+N)a\in P

となる。よってP=R/NP=R/Nであり、R/NR/Nは単純右加群である。したがって

(1R+N)x=x+N=N(1_R+N)x=x+N=N

であり、x∈Nx\in Nとなる。包含x∈Nx\in Nはすべての極大右イデアルNNについて成り立つため、定理 5.1からx∈J(R)x\in J(R)である。▨

例 5.3 (Jacobson 根基の基本例). 斜体DDの真の左イデアルは(0)(0)だけである。実際、非零元を含む左イデアルは、その元の逆元を左から掛けることによって1D1_Dを含む。したがって(0)(0)は唯一の極大左イデアルであり、

J(D)=(0)J(D)=(0)

である。

可換局所環AAの一意な極大イデアルをm\mathfrak mとする。可換環では左イデアル、右イデアルおよび両側イデアルが一致するため、定義からJ(A)=mJ(A)=\mathfrak mである。特に素数ppに対して§E6.6 命題 6.2を用いると

J(Z(p))=pZ(p)J(\mathbb Z_{(p)})=p\mathbb Z_{(p)}

となる。

体kk上の上三角行列環

T2(k)={(αβ0γ) | α,β,γ∈k}T_2(k)=\left\{ \begin{pmatrix}\alpha&\beta\\0&\gamma\end{pmatrix} \ \middle|\ \alpha,\beta,\gamma\in k \right\}

では、狭義上三角行列全体

N={(0β00) | β∈k}N=\left\{ \begin{pmatrix}0&\beta\\0&0\end{pmatrix} \ \middle|\ \beta\in k \right\}

が Jacobson 根基である。実際、x∈Nx\in Nとr∈T2(k)r\in T_2(k)に対して(rx)2=0(rx)^2=0であるため、1−rx1-rxの逆元は1+rx1+rxである。命題 4.2からN⊆J(T2(k))N\subseteq J(T_2(k))を得る。

逆にx=(αβ0γ)∉Nx=\left(\begin{smallmatrix}\alpha&\beta\\0&\gamma\end{smallmatrix}\right)\notin Nとする。α≠0\alpha\ne0ならばr=diag⁡(α−1,0)r=\operatorname{diag}(\alpha^{-1},0)、γ≠0\gamma\ne0ならばr=diag⁡(0,γ−1)r=\operatorname{diag}(0,\gamma^{-1})と取る。いずれの場合も1−rx1-rxの対角成分の一方が零となる。上三角行列の積では各対角成分が対応する対角成分の積であるため、この行列は左逆元をもたない。再び命題 4.2を用いるとx∉J(T2(k))x\notin J(T_2(k))であり、J(T2(k))=NJ(T_2(k))=Nを得る。

6 演習

問題 6.1 (根基と Jacobson 根基の確認). 次の各問に答えよ。

  1. I\sqrt Iのイデアル性とI=I\sqrt{\sqrt I}=\sqrt Iを証明せよ。
  2. 有限個のイデアルに対する共通部分・積の等式を証明し、無限族では共通部分との交換が破れる例を与えよ。
  3. 和に関する正確な等式を証明し、外側の根基を省略することができない例を与えよ。
  4. 根基が準同型の逆像および局所化と交換することを証明せよ。局所化では零因子が存在する場合の乗数を省略してはならない。
  5. A/(0)A/\sqrt{(0)}が被約環であることを証明せよ。
  6. Zorn の補題から極大片側イデアルを得て、単純左加群の零化イデアルの共通部分がJ(R)J(R)となることを証明せよ。
  7. Jacobson 根基の左可逆元判定を証明し、その判定からx∈J(R)x\in J(R)に対する1R+x1_R+xの両側逆元を構成せよ。さらに Jacobson の補題の逆元公式を示せ。
  8. 極大右イデアルおよび単純右加群によるJ(R)J(R)の特徴付けを証明し、T2(k)T_2(k)の Jacobson 根基を計算せよ。
解答 (演習の解答).
  1. xm,yn∈Ix^m,y^n\in Iに対する二項展開 (x−y)m+n=∑k=0m+n(m+nk)xk(−y)m+n−k(x-y)^{m+n}=\sum_{k=0}^{m+n}\binom{m+n}{k}x^k(-y)^{m+n-k} の各項はxmx^mまたはyny^nの倍元であるためIIに属する。さらに(ax)m=amxm∈I(ax)^m=a^mx^m\in Iであるため、I\sqrt Iはイデアルである。z∈Iz\in\sqrt{\sqrt I}ならば、あるm,n≥1m,n\ge1に対して(zm)n∈I(z^m)^n\in Iであり、z∈Iz\in\sqrt Iとなる。逆包含はI⊆II\subseteq\sqrt Iから従う。
  2. x∈⋂i=1rIix\in\bigcap_{i=1}^r\sqrt{I_i}に対してxni∈Iix^{n_i}\in I_iを選ぶと、x∑ini∈∏iIix^{\sum_i n_i}\in\prod_iI_iである。また∏iIi⊆⋂iIi\prod_iI_i\subseteq\bigcap_iI_iであるため、 ⋂iIi=⋂iIi=∏iIi\sqrt{\bigcap_iI_i}=\bigcap_i\sqrt{I_i}=\sqrt{\prod_iI_i} となる。k[x]k[x]のIn=(xn)I_n=(x^n)では⋂nIn=(0)\bigcap_nI_n=(0)であるが、⋂nIn=(x)\bigcap_n\sqrt{I_n}=(x)であるため、無限族では等式が破れる。
  3. I+J⊆I+JI+J\subseteq\sqrt I+\sqrt Jから一方の包含を得る。逆にI+J⊆I+J\sqrt I+\sqrt J\subseteq\sqrt{I+J}であり、右辺は根基イデアルであるため、 I+J=I+J\sqrt{I+J}=\sqrt{\sqrt I+\sqrt J} を得る。k[x,y]k[x,y]のI=(y)I=(y)とJ=(y−x2)J=(y-x^2)は根基イデアルであるが、I+J=(y,x2)I+J=(y,x^2)はx2x^2を含みxxを含まないため根基イデアルではない。
  4. a∈f−1(K)a\in\sqrt{f^{-1}(K)}とf(a)n=f(an)∈Kf(a)^n=f(a^n)\in Kの同値から逆像の等式を得る。局所化では、(a/s)n=b/t(a/s)^n=b/t、ただしb∈Ib\in Iなら、あるu∈Su\in Sに対してu(tan−snb)=0u(ta^n-s^nb)=0となる。c=utc=utと置けばcan∈Ica^n\in Iであり、 (ca)n=cn−1(can)∈I(ca)^n=c^{n-1}(ca^n)\in I となる。a/s=ca/(cs)a/s=ca/(cs)であるため逆包含を得る。順包含は分子の冪を取ればよい。
  5. (a+(0))n=0(a+\sqrt{(0)})^n=0ならばan∈(0)a^n\in\sqrt{(0)}である。あるm≥1m\ge1に対してanm=0a^{nm}=0となるため、a∈(0)a\in\sqrt{(0)}である。よって商環の冪零元は零元だけである。
  6. 真の左イデアルを含む真の左イデアル全体では、鎖の和集合が真の左イデアルとなるため、Zorn の補題から極大元を得る。右側は反対環へ適用する。単純左加群MMと0≠m∈M0\ne m\in Mに対してφm(r)=rm\varphi_m(r)=rmは全射であり、R/ker⁡φm≅MR/\ker\varphi_m\cong Mであるため核は極大左イデアルである。以上によりJ(R)J(R)はすべての単純左加群を零化する。逆に極大左イデアルLLに対してR/LR/Lは単純であり、すべての単純左加群を零化する元xxはx(1+L)=0x(1+L)=0からx∈Lx\in Lを満たす。よって零化イデアルの共通部分はJ(R)J(R)である。
  7. x∈J(R)x\in J(R)ならばR(1−rx)R(1-rx)が真の左イデアルであるという仮定は、その真の左イデアルを含む極大左イデアルが11を含むという矛盾を生む。逆にx∉J(R)x\notin J(R)なら、x∉Lx\notin Lとなる極大左イデアルLLに対して1−rx∈L1-rx\in Lとなるrrが存在し、この元は左逆元をもたない。以上の二方向の議論から、x∈J(R)x\in J(R)であることと、すべてのr∈Rr\in Rに対して1−rx1-rxが左逆元をもつこととの同値を得る。a(1+x)=1a(1+x)=1を取り、a=1−axa=1-axに判定を再適用してba=1ba=1を得ると、 b=b(a(1+x))=(ba)(1+x)=1+xb=b(a(1+x))=(ba)(1+x)=1+x であるため(1+x)a=1(1+x)a=1でもある。Jacobson の補題ではu=(1−ab)−1u=(1-ab)^{-1}に対し1+bua1+buaが1−ba1-baの両側逆元となる。二つの積はu−abu=1u-abu=1とu−uab=1u-uab=1をそれぞれ用いて確認する。
  8. RopR^{\mathrm{op}}に左側の結果を適用すると、極大右イデアルの共通部分Jr(R)J_{\mathrm r}(R)は両側イデアルで、その元zzに対する1+z1+zは単元である。x∈J(R)x\in J(R)と極大右イデアルNNに対してx∉Nx\notin NならN+xR=RN+xR=Rであるため1=n+xr1=n+xrと書くことができ、単元1−xr=n∈N1-xr=n\in Nを得て矛盾する。よってJ(R)⊆Jr(R)J(R)\subseteq J_{\mathrm r}(R)である。逆にz∈Jr(R)z\in J_{\mathrm r}(R)と極大左イデアルLLに対してz∉Lz\notin LならL+Rz=RL+Rz=Rであるため1=l+rz1=l+rzと書くことができる。反対環から得た可逆性により1−rz=l1-rz=lは単元となり、l∈Ll\in Lと矛盾する。よってJr(R)⊆J(R)J_{\mathrm r}(R)\subseteq J(R)である。単純右加群MMと0≠m∈M0\ne m\in Mについてr↦mrr\mapsto mrの核は極大右イデアルであるため、J(R)J(R)はMMを零化する。逆に極大右イデアルNNに対してR/NR/Nは単純であり、すべての単純右加群を零化する元は(1+N)x=0(1+N)x=0からx∈Nx\in Nを満たす。以上により右加群の零化イデアル表示を得る。T2(k)T_2(k)の狭義上三角行列全体をNNとすると、x∈Nx\in Nではすべてのrrに対して(rx)2=0(rx)^2=0であるため1−rx1-rxは可逆である。x∉Nx\notin Nでは非零の対角成分を消す対角行列rrを選ぶと1−rx1-rxは左逆元をもたない。したがってJ(T2(k))=NJ(T_2(k))=Nである。

▨

7 後続記事との関係

本記事では、可換環のイデアルの根基と一般環の Jacobson 根基を扱った。素イデアル全体の共通部分による通常の根基の特徴付けは、素スペクトルを導入する記事で扱う。有限生成加群に対する中山の補題は、加群の生成系と完全列を準備した後続記事で扱う。

参考文献

  1. M. F. Atiyah and I. G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, CRC Press, 2018, originally published 1969.イデアルの根基と局所化に関する標準的な性質を参考にした。
  2. T. Y. Lam, A First Course in Noncommutative Rings, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2001.一般環の Jacobson 根基と片側イデアルによる特徴付けを参考にした。
  3. Frank W. Anderson and Kent R. Fuller, Rings and Categories of Modules, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, 1992.単純左右加群の零化イデアルによる Jacobson 根基の特徴付けを参考にした。

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