§E2.27ポーランド空間

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距離空間が完備であるかどうかは距離に依存するが、位相を定める完備な距離を選び直すことができるかどうかは位相だけで決まる。この条件は可算性について何も述べず、そこへ可分性を重ねて得られるクラスが本記事の対象である。

1 定義と基本的な言い換え

定義 1.1. 位相空間XXが ポーランド空間 (Polish space) であるとは、XXが可分であり、かつXXの位相を定めるXXの上の完備な距離が存在することをいう。

この名称は、この種の空間を集中的に研究した Sierpiński・Kuratowski らポーランドの数学者にちなむ。

命題 1.2.(X,d)(X,d)を距離空間とし、XXにddが定める位相を入れる。次の三条件は同値である。

  1. XXはポーランド空間である。
  2. XXは可分であり、(X,d)(X,d)は完備距離化可能である。
  3. XXは可分であり、XXは Čech 完備である。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。XXの位相はddが定める開集合の全体であるから、§E2.10 定義 1.1により、XXの上の距離eeがXXの位相を定めることとeeがddと同値であることとは同じ条件である。ゆえに、XXの位相を定める完備な距離が存在することとddと同値な完備距離が存在することとは同値であり、後者は§E2.10 定義 1.8により(X,d)(X,d)が完備距離化可能であることにほかならない。両者に可分性を重ねると二条件は同値である。

(2)⇔\Leftrightarrow(3)を示す。§E2.26 系 3.3により、(X,d)(X,d)が完備距離化可能であることとXXが Čech 完備であることとは同値である。▨

系 1.3. ポーランド空間は Čech 完備である。

証明.XXをポーランド空間とし、XXの位相を定める距離をとると、命題 1.2によりXXは Čech 完備である。▨

系 1.4. ポーランド空間と同相な位相空間はポーランド空間である。

証明.XXをポーランド空間、h ⁣:X→Yh\colon X\to Yを同相写像とし、XXの位相を定める完備な距離ddをとる。§E2.12 命題 6.7により、e(y,y′)=d(h−1(y),h−1(y′))e(y,y')=d\bigl(h^{-1}(y),h^{-1}(y')\bigr)はYYの位相を定めるYYの上の距離であり、この定め方からhhは(X,d)(X,d)から(Y,e)(Y,e)への等長写像であって全射であるから、§E2.6 補題 1.3により(Y,e)(Y,e)は完備である。hhは連続な全射であるから、§E2.13 命題 6.6によりYYは可分であり、YYはポーランド空間である。▨

命題 1.5. ポーランド空間は第二可算であり、Lindelöf であり、T4 空間である。

証明.XXをポーランド空間とし、XXの位相を定める距離ddをとる。XXは可分であるから、§E2.21 定理 4.2によりXXは第二可算であり Lindelöf である。§E2.15 定理 3.2 (2)によりXXは T4 空間である。▨

系 1.6. ポーランド空間の部分空間は、可分な距離化可能空間である。

証明.XXをポーランド空間、A⊆XA\subseteq Xとし、XXの位相を定める距離ddをとる。AAの位相は制限距離dAd_Aが定めるから、AAは距離化可能である。命題 1.5によりXXは第二可算であるから、高々可算な開基B\mathcal Bをとると、§E2.13 命題 3.2により{B∩A∣B∈B}\{B\cap A\mid B\in\mathcal B\}はAAの開基であり、§E1.18 補題 3.5により高々可算である。ゆえにAAは第二可算であり、§E2.13 定理 6.2により可分である。▨

命題 1.7. コンパクトな距離化可能空間はポーランド空間である。

証明.XXをコンパクトな距離化可能空間とし、XXの位相を定める距離ddをとる。§E2.9 系 3.3により(X,d)(X,d)は完備である。§E2.21 命題 1.2によりXXは Lindelöf であるから、§E2.21 定理 4.2によりXXは可分である。ゆえにXXはポーランド空間である。▨

例 1.8.

  1. 通常の位相を入れたR\Rはポーランド空間である。§E2.5 命題 4.2をn=1n=1として適用すると通常の距離は完備であり、§E2.13 例 5.2によりR\Rは第二可算であるから、§E2.13 定理 6.2により可分である。
  2. 無理数全体R∖Q\R\setminus\Qはポーランド空間である。§E2.10 例 6.6により、R\Rからの制限距離ddについて(R∖Q,d)(\R\setminus\Q,d)は完備距離化可能である。(1)と系 1.6によりR∖Q\R\setminus\Qは可分であるから、命題 1.2を適用する。同じ例は、(R∖Q,d)(\R\setminus\Q,d)が完備でないことも示している。すなわち、R∖Q\R\setminus\Qの位相を定める完備な距離はddではなく、取り替えて得られる別の距離である。
  3. 高々可算な集合SSに離散位相を入れた空間はポーランド空間である。離散距離はこの位相を定め、§E2.5 命題 4.3により完備である。SS自身はSSで稠密な高々可算部分集合であるからSSは可分である。
  4. 閉区間[0,1][0,1]はポーランド空間である。[0,1][0,1]はR\Rの有界な閉集合であるから§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、R\Rの通常の距離の制限が[0,1][0,1]の位相を定めるから距離化可能であり、命題 1.7を適用する。

ポーランド空間でない空間の例を作るために、完備距離空間についての次の補題を用いる。

補題 1.9.(X,d)(X,d)を完備距離空間、(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}をXXの空でない閉集合の列とし、各n≥1n\geq1についてFn+1⊆FnF_{n+1}\subseteq F_nが成り立つとする。さらに、00に収束する実数列(εn)n≥1(\varepsilon_n)_{n\geq1}で、各n≥1n\geq1と各u,v∈Fnu,v\in F_nに対してd(u,v)≤εnd(u,v)\leq\varepsilon_nを満たすものが存在するとする。このとき⋂n≥1Fn\bigcap_{n\geq1}F_nはちょうど一つの点からなる。

証明. 各n≥1n\geq1についてpn∈Fnp_n\in F_nを選ぶ。m≥n≥1m\geq n\geq1とするとpm∈Fm⊆Fnp_m\in F_m\subseteq F_nかつpn∈Fnp_n\in F_nであるからd(pn,pm)≤εnd(p_n,p_m)\leq\varepsilon_nである。実数ε>0\varepsilon>0をとると、(εn)(\varepsilon_n)は00に収束するから、n≥Nn\geq Nならばεn<ε\varepsilon_n<\varepsilonを満たすN≥1N\geq1が存在し、m≥n≥Nm\geq n\geq Nについてd(pn,pm)≤εn<εd(p_n,p_m)\leq\varepsilon_n<\varepsilonである。ゆえに(pn)(p_n)は Cauchy 列であり、(X,d)(X,d)は完備であるから、(pn)(p_n)はあるp∈Xp\in Xに収束する。

n≥1n\geq1をとり、k≥1k\geq1に対してqk=pn+kq_k=p_{n+k}とおく。(qk)(q_k)はFnF_nの点列であり、収束の定義によりppに収束するから、§E2.3 定理 3.1によりp∈Fnp\in F_nである。ゆえにp∈⋂n≥1Fnp\in\bigcap_{n\geq1}F_nである。

q∈⋂n≥1Fnq\in\bigcap_{n\geq1}F_nとすると、各n≥1n\geq1についてp,q∈Fnp,q\in F_nであるから0≤d(p,q)≤εn0\leq d(p,q)\leq\varepsilon_nであり、(εn)(\varepsilon_n)が00に収束することからd(p,q)=0d(p,q)=0である。§E2.1 定義 1.1 条件 (a)によりq=pq=pである。▨

例 1.10.

  1. 有理数全体Q\QにR\Rからの位相を入れると、Q\Qはポーランド空間でない。Q\Qは可算であるから可分であり、破れているのは位相を定める完備な距離が存在するという側である。Q\Qがポーランド空間であるとし、Q\Qの位相を定める完備な距離ddをとる。

    まず、Q\Qの空でない開集合VVとq∈Qq\in\Qに対してV∖{q}V\setminus\{q\}が空でないことを見る。x∈Vx\in Vをとると、§E2.12 定義 4.1によりV=V~∩QV=\widetilde V\cap\Qを満たすR\Rの開集合V~\widetilde Vが存在し、§E2.2 定義 1.1によりB(x,ε)=(x−ε,x+ε)⊆V~B(x,\varepsilon)=(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subseteq\widetilde Vを満たす実数ε>0\varepsilon>0が存在する。§D1.4 系 2.2の有理数の稠密性によりx<y1<x+εx<y_1<x+\varepsilonを満たす有理数y1y_1がとれ、ふたたび同じ稠密性によりx<y2<y1x<y_2<y_1を満たす有理数y2y_2がとれる。y1y_1とy2y_2はともにV~∩Q=V\widetilde V\cap\Q=Vに属して互いに異なるから、少なくとも一方はqqと異なる。

    次に、Q\Qの点を枚挙し、その第nn項を避ける閉集合を再帰で作る。§E1.18 定理 4.1によりQ\Qは空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e ⁣:N≥1→Qe\colon\NN\to\Qが存在する。e(n)e(n)をqnq_nと書く。V0=QV_0=\Qとおき、n≥1n\geq1についてQ\Qの空でない開集合Vn−1V_{n-1}が定まっているとして、FnF_nとVnV_nを次のように定める。いま見たことによりxn∈Vn−1∖{qn}x_n\in V_{n-1}\setminus\{q_n\}をとることができ、§E2.2 定義 1.1によりBd(xn,r)⊆Vn−1B_d(x_n,r)\subseteq V_{n-1}を満たす実数r>0r>0が存在する。xn≠qnx_n\neq q_nと§E2.1 定義 1.1 条件 (a)によりd(xn,qn)>0d(x_n,q_n)>0であるから、rn=12min⁡{r, d(xn,qn), 2−n}r_n=\frac{1}{2}\min\{r,\,d(x_n,q_n),\,2^{-n}\}は正であり、Fn=B‾d(xn,rn)F_n=\overline B_d(x_n,r_n)、Vn=Bd(xn,rn)V_n=B_d(x_n,r_n)とおくことができる。xnx_nが属するからFnF_nとVnV_nは空でなく、§E2.2 補題 2.5によりFnF_nはQ\Qの閉集合であってVn⊆FnV_n\subseteq F_nであり、rn<rr_n<rからFn⊆Bd(xn,r)⊆Vn−1F_n\subseteq B_d(x_n,r)\subseteq V_{n-1}である。§E2.2 補題 1.2によりVnV_nはQ\Qの開集合である。u,v∈Fnu,v\in F_nに対して§E2.1 定義 1.1 条件 (b)と§E2.1 定義 1.1 条件 (c)によりd(u,v)≤d(u,xn)+d(xn,v)≤2rn≤2−nd(u,v)\leq d(u,x_n)+d(x_n,v)\leq2r_n\leq2^{-n}であり、d(xn,qn)≥2rn>rnd(x_n,q_n)\geq2r_n>r_nであるからqn∉Fnq_n\notin F_nである。

    Fn+1⊆Vn⊆FnF_{n+1}\subseteq V_n\subseteq F_nであるから(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}はQ\Qの空でない閉集合の減少列であり、実数列(2−n)n≥1(2^{-n})_{n\geq1}は00に収束するから、補題 1.9により⋂n≥1Fn\bigcap_{n\geq1}F_nはちょうど一つの点ppからなる。eeは全射であるからp=qNp=q_Nを満たすN≥1N\geq1が存在するが、p∈FNp\in F_NとqN∉FNq_N\notin F_Nは両立しない。

  2. 非可算集合SSに離散位相を入れた空間はポーランド空間でない。離散距離はこの位相を定め、§E2.5 命題 4.3により完備である。一方、離散位相ではすべての部分集合が閉集合であるから、SSで稠密な部分集合はSS自身に限る。SSは非可算であるから高々可算な稠密部分集合は存在せず、SSは可分でない。

2 Hilbert 立方体への埋め込み

命題 2.1. Hilbert 立方体[0,1]N≥0[0,1]^{\N}はコンパクトなポーランド空間である。

証明.[0,1][0,1]はR\Rの有界な閉集合であるから§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、§E2.19 定理 8.2により[0,1]N≥0[0,1]^{\N}はコンパクトである。§E2.14 命題 8.2 (1)により[0,1]N≥0[0,1]^{\N}は距離化可能であるから、命題 1.7によりポーランド空間である。▨

系 2.2.XXを可分な距離化可能空間とすると、位相的埋め込みX→[0,1]N≥0X\to[0,1]^{\N}が存在する。

証明.XXの位相を定める距離をとると、§E2.15 定理 3.2 (3)によりXXは T3½ 空間である。XXは可分であるから、§E2.21 定理 4.2によりXXは第二可算である。ゆえに§E2.15 定理 4.3 (4)により、位相的埋め込みX→[0,1]N≥0X\to[0,1]^{\N}が存在する。▨

定理 2.3. 位相空間XXについて、次の二条件は同値である。

  1. XXはポーランド空間である。
  2. XXは[0,1]N≥0[0,1]^{\N}のGδG_\delta集合と同相である。

証明.§E2.14 命題 8.2で定めた距離DDは、§E2.14 命題 8.2 (1)により[0,1]N≥0[0,1]^{\N}の位相を定め、§E2.14 命題 8.2 (2)により完備である。A⊆[0,1]N≥0A\subseteq[0,1]^{\N}に対してDDのAAへの制限距離をDAD_Aと書くと、§E2.26 系 3.2により、(A,DA)(A,D_A)が完備距離化可能であることとAAが[0,1]N≥0[0,1]^{\N}のGδG_\delta集合であることとは同値である。

(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。XXをポーランド空間とすると、XXは可分な距離化可能空間であるから、系 2.2により位相的埋め込みe ⁣:X→[0,1]N≥0e\colon X\to[0,1]^{\N}が存在する。A=e(X)A=e(X)とおくと、§E2.12 定義 6.10によりXXとAAは同相であり、系 1.4によりAAはポーランド空間である。ゆえに命題 1.2により(A,DA)(A,D_A)は完備距離化可能であり、AAは[0,1]N≥0[0,1]^{\N}のGδG_\delta集合である。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。AAを[0,1]N≥0[0,1]^{\N}のGδG_\delta集合とし、XXはAAと同相であるとする。(A,DA)(A,D_A)は完備距離化可能であり、命題 2.1と系 1.6によりAAは可分であるから、命題 1.2によりAAはポーランド空間であり、系 1.4によりXXはポーランド空間である。▨

3 基本性質

定理 3.1.XXをポーランド空間、A⊆XA\subseteq Xとする。AAがポーランド空間であることと、AAがXXのGδG_\delta集合であることとは同値である。

証明.XXの位相を定める完備な距離ddをとり、そのAAへの制限距離をdAd_Aと書く。

必要性を示す。AAをポーランド空間とすると、命題 1.2により(A,dA)(A,d_A)は完備距離化可能であるから、§E2.26 系 3.2によりAAはXXのGδG_\delta集合である。

十分性を示す。AAをXXのGδG_\delta集合とすると、§E2.26 系 3.2により(A,dA)(A,d_A)は完備距離化可能である。系 1.6によりAAは可分であるから、命題 1.2によりAAはポーランド空間である。▨

系 3.2. ポーランド空間の閉部分空間はポーランド空間である。

証明.XXをポーランド空間、F⊆XF\subseteq Xを閉集合とし、XXの位相を定める距離をとる。§E2.10 補題 6.1によりFFはXXのGδG_\delta集合であるから、定理 3.1によりFFはポーランド空間である。▨

系 3.3. ポーランド空間の開部分空間はポーランド空間である。

証明.XXをポーランド空間、U⊆XU\subseteq Xを開集合とする。開集合はXXのGδG_\delta集合であるから、定理 3.1によりUUはポーランド空間である。▨

系 3.4.XXをポーランド空間、(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}をXXの部分集合の列とし、各AnA_nはポーランド空間であるとする。このとき⋂n≥1An\bigcap_{n\geq1}A_nもポーランド空間である。

証明. 各AnA_nは定理 3.1によりXXのGδG_\delta集合であるから、§E2.26 補題 1.4 (1)により⋂n≥1An\bigcap_{n\geq1}A_nもXXのGδG_\delta集合であり、ふたたび定理 3.1を適用する。▨

定理 3.5.(Xn)n≥1(X_n)_{n\geq1}をポーランド空間の列とすると、直積∏n≥1Xn\prod_{n\geq1}X_nはポーランド空間である。

証明.H=[0,1]N≥0H=[0,1]^{\N}、P=∏n≥1HP=\prod_{n\geq1}Hと書き、πn ⁣:P→H\pi_n\colon P\to Hを第nn成分への射影とする。m↦m+1m\mapsto m+1は全単射N≥0→N≥1\N\to\NNであるから、§E2.14 補題 1.7 (2)によりPPはHN≥0H^{\N}と同相であり、§E2.14 命題 8.2 (3)によりHN≥0H^{\N}はHHと同相である。ゆえに命題 2.1と系 1.4によりPPはポーランド空間である。

各n≥1n\geq1について、定理 2.3により、HHのGδG_\delta集合GnG_nと同相写像hn ⁣:Xn→Gnh_n\colon X_n\to G_nをとる。§E2.14 補題 1.7 (1)により、(hn)n≥1(h_n)_{n\geq1}が定める写像∏n≥1Xn→∏n≥1Gn\prod_{n\geq1}X_n\to\prod_{n\geq1}G_nは同相写像であり、§E2.14 補題 1.8 (1)により、∏n≥1Gn\prod_{n\geq1}G_nの積位相はPPから受ける部分空間位相に一致する。

各n≥1n\geq1について、HHの開集合の列(Un,m)m≥1(U_{n,m})_{m\geq1}でGn=⋂m≥1Un,mG_n=\bigcap_{m\geq1}U_{n,m}を満たすものをとると、πn\pi_nは連続であるから

πn−1(Gn)=⋂m≥1πn−1(Un,m)\pi_n^{-1}(G_n)=\bigcap_{m\geq1}\pi_n^{-1}(U_{n,m})

はPPのGδG_\delta集合である。x∈Px\in Pが∏n≥1Gn\prod_{n\geq1}G_nに属することと、すべてのn≥1n\geq1についてx∈πn−1(Gn)x\in\pi_n^{-1}(G_n)であることとは同値であるから∏n≥1Gn=⋂n≥1πn−1(Gn)\prod_{n\geq1}G_n=\bigcap_{n\geq1}\pi_n^{-1}(G_n)であり、§E2.26 補題 1.4 (1)によりこれはPPのGδG_\delta集合である。

ゆえに定理 3.1により∏n≥1Gn\prod_{n\geq1}G_nはポーランド空間であり、系 1.4により∏n≥1Xn\prod_{n\geq1}X_nはポーランド空間である。▨

因子の族を可算集合N≥1\NNで添字づけたことは、§E2.14 命題 8.2 (3)を適用する箇所と、∏n≥1Gn\prod_{n\geq1}G_nを可算個の開集合の共通部分として表す箇所の二つで効いている。

系 3.6.X1X_1、X2X_2をポーランド空間とすると、直積X1×X2X_1\times X_2はポーランド空間である。

証明. 一点からなる位相空間P={p}P=\{p\}をとり、Z1=X1Z_1=X_1、Z2=X2Z_2=X_2とおき、n≥3n\geq3に対してZn=PZ_n=Pとおく。例 1.8 (3)によりPPはポーランド空間であるから、定理 3.5によりQ=∏n≥1ZnQ=\prod_{n\geq1}Z_nはポーランド空間である。πn ⁣:Q→Zn\pi_n\colon Q\to Z_nを第nn成分への射影とし、Ψ ⁣:Q→X1×X2\Psi\colon Q\to X_1\times X_2をΨ(z)=(z1,z2)\Psi(z)=(z_1,z_2)で定め、Φ ⁣:X1×X2→Q\Phi\colon X_1\times X_2\to Qを、第11成分がx1x_1、第22成分がx2x_2、n≥3n\geq3に対する第nn成分がppである族Φ(x1,x2)\Phi(x_1,x_2)で定める。X1×X2X_1\times X_2の積位相は二つの射影による始位相であり、Ψ\Psiの二つの成分はπ1\pi_1とπ2\pi_2であって連続であるから、§E2.12 定理 3.4によりΨ\Psiは連続である。π1∘Φ\pi_1\circ\Phiとπ2∘Φ\pi_2\circ\Phiは射影であるから連続であり、n≥3n\geq3についてπn∘Φ\pi_n\circ\Phiは密着位相をもつ空間PPを終域とするから§E2.12 例 1.11により連続である。ゆえに§E2.14 定理 1.6によりΦ\Phiは連続である。Ψ\PsiとΦ\Phiは互いに逆写像であるから、§E2.12 定義 6.1によりΨ\Psiは同相写像であり、系 1.4によりX1×X2X_1\times X_2はポーランド空間である。▨

例 3.7.

  1. 通常の位相を入れたR\Rの可算冪RN≥0\R^{\N}はポーランド空間である。例 1.8 (1)と定理 3.5によりRN≥1\R^{\NN}はポーランド空間であり、m↦m+1m\mapsto m+1は全単射N≥0→N≥1\N\to\NNであるから、§E2.14 補題 1.7 (2)と系 1.4によりRN≥0\R^{\N}もポーランド空間である。
  2. Cantor 空間はポーランド空間である。{0,1}\{0,1\}に離散位相を入れた空間は例 1.8 (3)によりポーランド空間であるから、定理 3.5により{0,1}N≥1\{0,1\}^{\NN}はポーランド空間である。m↦m+1m\mapsto m+1は全単射N≥0→N≥1\N\to\NNであるから、§E2.14 補題 1.7 (2)により{0,1}N≥1\{0,1\}^{\NN}は{0,1}N≥0\{0,1\}^{\N}と同相である。N≥0\Nは自然数全体の集合であるから{0,1}N≥0\{0,1\}^{\N}は§E2.17 定義 5.2の2ω2^{\omega}であり、2ω2^{\omega}と同相な位相空間は系 1.4によりいずれもポーランド空間である。

4 N≥0N≥0\N^{\N}からの全射連続写像

定義 4.1.N≥0\Nに離散位相を入れ、直積集合N≥0N≥0=∏n∈N≥0N≥0\N^{\N}=\prod_{n\in\N}\Nに積位相を入れる。n∈N≥0n\in\Nに対してN≥0n=∏i<nN≥0\N^{n}=\prod_{i<n}\Nであり、s∈N≥0ns\in\N^{n}に対して

[s]={x∈N≥0N≥0∣x∣n=s}[s]=\{x\in\N^{\N}\mid x|_{n}=s\}

とおき、[s][s]をssで定まる柱状集合 (cylinder set) という。

N≥0N≥0\N^{\N}は記述集合論では Baire 空間と呼ばれるが、本単元では Baire 空間という語を別の意味で用いるので、この呼称は採らない。

補題 4.2.定義 4.1の記号のもとで、次が成り立つ。

  1. n∈N≥0n\in\Nとs∈N≥0ns\in\N^{n}に対して、[s][s]はN≥0N≥0\N^{\N}の開集合である。
  2. 集合族{[s]∣n∈N≥0, s∈N≥0n}\{[s]\mid n\in\N,\ s\in\N^{n}\}はN≥0N≥0\N^{\N}の積位相の開基である。

証明.πi ⁣:N≥0N≥0→N≥0\pi_i\colon\N^{\N}\to\Nを第ii成分への射影とする。

(1)を示す。n=0n=0のときは[s]=N≥0N≥0[s]=\N^{\N}であり、これはN≥0N≥0\N^{\N}の開集合である。n≥1n\geq1とすると

[s]=⋂i<nπi−1({si})[s]=\bigcap_{i<n}\pi_i^{-1}(\{s_i\})

であり、N≥0\Nは離散位相をもつから各{si}\{s_i\}はN≥0\Nの開集合であって、§E2.14 命題 1.2 (1)により各πi−1({si})\pi_i^{-1}(\{s_i\})はN≥0N≥0\N^{\N}の開集合である。有限個の開集合の共通部分は開集合である。

(2)を示す。WWをN≥0N≥0\N^{\N}の開集合、x∈Wx\in Wとすると、§E2.14 命題 1.3と§E2.13 命題 1.2により、有限集合F⊆N≥0F\subseteq\Nと各i∈Fi\in Fに対するN≥0\Nの部分集合UiU_iで

x∈⋂i∈Fπi−1(Ui)⊆Wx\in\bigcap_{i\in F}\pi_i^{-1}(U_i)\subseteq W

を満たすものが存在する。FFは有限であるから、すべてのi∈Fi\in Fについてi<ni<nを満たすn∈N≥0n\in\Nをとることができる。y∈[x∣n]y\in[x|_{n}]とi∈Fi\in Fに対してi<ni<nであるからyi=xi∈Uiy_i=x_i\in U_iであり、x∈[x∣n]⊆Wx\in[x|_{n}]\subseteq Wが成り立つ。(1)によりこの集合族は開集合からなるから、§E2.13 命題 1.2によりこの集合族は開基である。▨

命題 4.3.N≥0N≥0\N^{\N}はポーランド空間である。

証明. 離散位相を入れたN≥0\Nは例 1.8 (3)によりポーランド空間であるから、定理 3.5によりN≥0N≥1\N^{\NN}はポーランド空間である。m↦m+1m\mapsto m+1は全単射N≥0→N≥1\N\to\NNであるから、§E2.14 補題 1.7 (2)によりN≥0N≥1\N^{\NN}はN≥0N≥0\N^{\N}と同相であり、系 1.4によりN≥0N≥0\N^{\N}はポーランド空間である。▨

命題 4.4. 相異なるx,y∈N≥0N≥0x,y\in\N^{\N}に対して、xn≠ynx_n\neq y_nを満たす最小のn∈N≥0n\in\Nをn(x,y)n(x,y)と書き、x,y∈N≥0N≥0x,y\in\N^{\N}に対して

ρ(x,y)={0(x=y),2−n(x,y)(x≠y)\rho(x,y)= \begin{cases} 0&(x=y),\\ 2^{-n(x,y)}&(x\neq y) \end{cases}

と定める。ρ\rhoはN≥0N≥0\N^{\N}の位相を定める完備な距離である。

証明は演習とする(問題 5.3)。このρ\rhoは、命題 4.3が存在を保証する完備な距離を具体的に与えるものであり、以下の議論では用いない。

補題 4.5.AAを離散位相を入れた2={0,1}2=\{0,1\}またはN≥0\Nとし、AN≥0A^{\N}に積位相を入れる。s∈A<ωs\in A^{<\omega}に対して[s]={x∈AN≥0∣x∣∣s∣=s}[s]=\{x\in A^{\N}\mid x|_{|s|}=s\}とおく。(X,d)(X,d)を空でない完備距離空間とし、各s∈A<ωs\in A^{<\omega}に対してXXの空でない閉集合FsF_sが与えられているとする。F⟨⟩=XF_{\langle\rangle}=Xであり、すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}とa∈Aa\in AについてFs⌢a⊆FsF_{s^{\frown}a}\subseteq F_sが成り立つとする。さらに、ある整数N0≥1N_0\geq1と00に収束する非負実数列(εn)n≥N0(\varepsilon_n)_{n\geq N_0}が存在し、すべてのn≥N0n\geq N_0とs∈Ans\in A^nについてdiam⁡(Fs)≤εn\operatorname{diam}(F_s)\leq\varepsilon_nが成り立つとする。

このとき、すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}についてf([s])⊆Fsf([s])\subseteq F_sを満たす連続写像f ⁣:AN≥0→Xf\colon A^{\N}\to Xがただ一つ存在する。さらに、次が成り立つ。

  1. すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}についてFs=⋃a∈AFs⌢aF_s=\bigcup_{a\in A}F_{s^{\frown}a}が成り立つならば、すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}についてf([s])=Fsf([s])=F_sであり、ffは全射である。
  2. すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}と相異なるa,b∈Aa,b\in AについてFs⌢a∩Fs⌢b=∅F_{s^{\frown}a}\cap F_{s^{\frown}b}=\emptysetが成り立つならば、ffは単射である。
  3. すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}についてFs=⋃a∈AFs⌢aF_s=\bigcup_{a\in A}F_{s^{\frown}a}が成り立ち、すべてのs∈A<ωs\in A^{<\omega}と相異なるa,b∈Aa,b\in AについてFs⌢a∩Fs⌢b=∅F_{s^{\frown}a}\cap F_{s^{\frown}b}=\emptysetであり、各FsF_sがXXの開集合でもあるならば、ffは同相写像である。

証明.x∈AN≥0x\in A^{\N}をとる。親子の包含関係により(Fx∣n)n∈N≥0(F_{x|_n})_{n\in\N}は減少列であり、n≥N0n\geq N_0に対してdiam⁡(Fx∣n)≤εn\operatorname{diam}(F_{x|_n})\leq\varepsilon_nである。補題 1.9をn≥N0n\geq N_0の列へ適用すると、

⋂n∈N≥0Fx∣n=⋂n≥N0Fx∣n\bigcap_{n\in\N}F_{x|_n}=\bigcap_{n\geq N_0}F_{x|_n}

はちょうど一つの点からなる。その点をf(x)f(x)と定める。s∈A<ωs\in A^{<\omega}とx∈[s]x\in[s]に対してf(x)∈Fx∣∣s∣=Fsf(x)\in F_{x|_{|s|}}=F_sであるからf([s])⊆Fsf([s])\subseteq F_sである。この包含関係をすべてのssについて満たす写像g ⁣:AN≥0→Xg\colon A^{\N}\to Xは、各xxについてg(x)∈⋂n∈N≥0Fx∣n={f(x)}g(x)\in\bigcap_{n\in\N}F_{x|_n}=\{f(x)\}を満たすからg=fg=fである。

A=2A=2のときは§E2.17 補題 5.3 (2)により、A=N≥0A=\Nのときは補題 4.2 (2)により、柱状集合の全体はAN≥0A^{\N}の開基である。VVをXXの開集合、x∈f−1(V)x\in f^{-1}(V)とし、Bd(f(x),δ)⊆VB_d(f(x),\delta)\subseteq Vを満たす実数δ>0\delta>0をとる。εn<δ\varepsilon_n<\deltaを満たすn≥N0n\geq N_0をとると、各y∈[x∣n]y\in[x|_n]についてf(x),f(y)∈Fx∣nf(x),f(y)\in F_{x|_n}であるからd(f(x),f(y))≤εn<δd(f(x),f(y))\leq\varepsilon_n<\deltaである。したがってx∈[x∣n]⊆f−1(V)x\in[x|_n]\subseteq f^{-1}(V)であり、[x∣n][x|_n]は開集合である。ゆえにf−1(V)f^{-1}(V)は開集合であり、ffは連続である。

(1)を示す。s∈A<ωs\in A^{<\omega}とp∈Fsp\in F_sをとる。子による被覆の仮定により、p∈Ftp\in F_tを満たす有限列ttに対して、p∈Ft⌢ap\in F_{t^{\frown}a}を満たすa∈Aa\in Aを選ぶことができる。t=st=sからこの選択を再帰で繰り返すと、x∈[s]x\in[s]であってすべてのn≥∣s∣n\geq|s|についてp∈Fx∣np\in F_{x|_n}を満たすものが得られる。n<∣s∣n<|s|のときも親子の包含関係によりp∈Fx∣np\in F_{x|_n}であるから、p∈⋂n∈N≥0Fx∣n={f(x)}p\in\bigcap_{n\in\N}F_{x|_n}=\{f(x)\}である。したがってFs⊆f([s])F_s\subseteq f([s])であり、先に得た逆包含と合わせてf([s])=Fsf([s])=F_sである。s=⟨⟩s=\langle\rangleとするとf(AN≥0)=Xf(A^{\N})=Xである。

(2)を示す。相異なるx,y∈AN≥0x,y\in A^{\N}をとり、xk≠ykx_k\neq y_kを満たす最小のk∈N≥0k\in\Nをとる。s=x∣k=y∣ks=x|_k=y|_kとおくと、f(x)∈Fs⌢xkf(x)\in F_{s^{\frown}x_k}とf(y)∈Fs⌢ykf(y)\in F_{s^{\frown}y_k}であり、兄弟分離の仮定により二つの集合は交わらない。したがってf(x)≠f(y)f(x)\neq f(y)である。

(3)を示す。(1)と(2)によりffは全単射であり、すべての柱状集合[s][s]についてf([s])=Fsf([s])=F_sは開集合である。任意のAN≥0A^{\N}の開集合は柱状集合の和集合であるから、そのffによる像も開集合である。したがって逆写像f−1 ⁣:X→AN≥0f^{-1}\colon X\to A^{\N}は連続であり、ffは同相写像である。▨

補題 4.6.XXを空でないポーランド空間、ddをXXの位相を定める距離、ε>0\varepsilon>0を実数とする。このとき、XXの空でない閉集合の族(Ck)k∈N≥0(C_k)_{k\in\N}で、X=⋃k∈N≥0CkX=\bigcup_{k\in\N}C_kであり、各k∈N≥0k\in\Nと各u,v∈Cku,v\in C_kに対してd(u,v)≤εd(u,v)\leq\varepsilonを満たすものが存在する。

証明.XXは可分であるから、XXで稠密な高々可算部分集合DDをとる。XXは空でない開集合であるから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりDDは空でなく、§E1.18 補題 3.6により全射e ⁣:N≥1→De\colon\NN\to Dが存在する。k∈N≥0k\in\Nに対してak=e(k+1)a_k=e(k+1)とおき、

Ck={u∈X∣d(ak,u)≤ε/3}C_k=\{u\in X\mid d(a_k,u)\leq\varepsilon/3\}

とおく。ak∈Cka_k\in C_kであるからCkC_kは空でなく、§E2.2 補題 2.5によりCkC_kはXXの閉集合である。u,v∈Cku,v\in C_kに対してd(u,v)≤d(u,ak)+d(ak,v)≤2ε/3≤εd(u,v)\leq d(u,a_k)+d(a_k,v)\leq2\varepsilon/3\leq\varepsilonである。

u∈Xu\in Xをとる。DDはXXで稠密であるから、§E2.2 命題 2.6によりBd(u,ε/3)∩D≠∅B_d(u,\varepsilon/3)\cap D\neq\emptysetであり、d(b,u)<ε/3d(b,u)<\varepsilon/3を満たすb∈Db\in Dが存在する。eeは全射であるからe(k+1)=be(k+1)=bを満たすk∈N≥0k\in\Nがとれ、このkkについてu∈Cku\in C_kである。ゆえにX=⋃k∈N≥0CkX=\bigcup_{k\in\N}C_kである。▨

定理 4.7.XXを空でないポーランド空間とすると、連続な全射f ⁣:N≥0N≥0→Xf\colon\N^{\N}\to Xが存在する。

証明.XXの位相を定める完備な距離ddをとり、F⟨⟩=XF_{\langle\rangle}=Xとおく。n∈N≥0n\in\Nとs∈N≥0ns\in\N^{n}に対してXXの空でない閉集合FsF_sが定まっているとする。系 3.2によりFsF_sはポーランド空間であるから、補題 4.6をFsF_sとddのFsF_sへの制限と2−(n+1)2^{-(n+1)}へ適用すると、FsF_sの空でない閉集合の族(Ck)k∈N≥0(C_k)_{k\in\N}で、Fs=⋃k∈N≥0CkF_s=\bigcup_{k\in\N}C_kであり、各k∈N≥0k\in\Nと各u,v∈Cku,v\in C_kに対してd(u,v)≤2−(n+1)d(u,v)\leq2^{-(n+1)}を満たすものが得られる。§E2.12 命題 4.6によりCk=F∩FsC_k=F\cap F_sを満たすXXの閉集合FFが存在し、FsF_sもXXの閉集合であるからCkC_kはXXの閉集合である。Fs⌢k=CkF_{s^{\frown}k}=C_kとおく。

この再帰により、各n∈N≥0n\in\Nと各s∈N≥0ns\in\N^{n}に対してXXの空でない閉集合FsF_sが定まり、Fs=⋃k∈N≥0Fs⌢kF_s=\bigcup_{k\in\N}F_{s^{\frown}k}が成り立ち、とくに各k∈N≥0k\in\NについてFs⌢k⊆FsF_{s^{\frown}k}\subseteq F_sである。またn≥1n\geq1とs∈N≥0ns\in\N^{n}に対して、u,v∈Fsu,v\in F_sならばd(u,v)≤2−nd(u,v)\leq2^{-n}である。

N0=1N_0=1、εn=2−n\varepsilon_n=2^{-n}とすると、構成した閉集合の族は補題 4.5の仮定と子による被覆の条件を満たす。したがって補題 4.5 (1)により、連続な全射f ⁣:N≥0N≥0→Xf\colon\N^{\N}\to Xが存在する。▨

系 4.8.N≥0N≥0\N^{\N}はコンパクトでない。したがって、空でないコンパクトな位相空間XXに対して、連続な全射N≥0N≥0→X\N^{\N}\to Xは完全写像でない。

証明. 第00成分への射影π0 ⁣:N≥0N≥0→N≥0\pi_0\colon\N^{\N}\to\Nは連続な全射である。N≥0\Nは無限集合に離散位相を入れた空間であるから§E2.19 例 2.9 (3)によりコンパクトでなく、§E2.19 定理 4.2によりN≥0N≥0\N^{\N}はコンパクトでない。f ⁣:N≥0N≥0→Xf\colon\N^{\N}\to Xを連続な全射とし、ffが完全写像であるとすると、§E2.20 定義 2.1によりffは固有であるからf−1(X)=N≥0N≥0f^{-1}(X)=\N^{\N}はコンパクトである。これはN≥0N≥0\N^{\N}がコンパクトでないことに反する。▨

5 演習

問題 5.1.Q\QがR\RのFσF_\sigma集合であることを示せ。これと例 1.10 (1)により、定理 3.1のGδG_\delta集合という条件をFσF_\sigma集合という条件に置き換えることができないことを確かめよ。

解答.

§E1.18 定理 4.1によりQ\Qは可算であり、とくに空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e ⁣:N≥1→Qe\colon\NN\to\Qが存在し、Q=⋃n≥1{e(n)}\Q=\bigcup_{n\geq1}\{e(n)\}である。R\Rは距離空間であるから§E2.15 定理 3.2 (4)により T1 空間であり、§E2.15 命題 1.5により各一点集合{e(n)}\{e(n)\}はR\Rの閉集合である。ゆえにQ\QはR\RのFσF_\sigma集合である。

例 1.8 (1)によりR\Rはポーランド空間であり、例 1.10 (1)によりQ\Qはポーランド空間でない。ゆえに、ポーランド空間のFσF_\sigma部分集合はポーランド空間であるとは限らない。▨

問題 5.2. ポーランド空間XXの部分集合の列(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}がすべてポーランド空間であっても、⋃n≥1An\bigcup_{n\geq1}A_nがポーランド空間であるとは限らないことを、例を挙げて示せ。系 3.4と比べよ。

解答.

X=RX=\Rとすると、例 1.8 (1)によりXXはポーランド空間である。§E1.18 定理 4.1によりQ\Qは可算であり、とくに空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e ⁣:N≥1→Qe\colon\NN\to\Qが存在する。An={e(n)}A_n=\{e(n)\}とおくと、AnA_nは一点集合であるからAnA_nの位相は離散位相であり、例 1.8 (3)によりAnA_nはポーランド空間である。一方⋃n≥1An=Q\bigcup_{n\geq1}A_n=\Qであり、例 1.10 (1)によりQ\Qはポーランド空間でない。▨

問題 5.3.命題 4.4の証明を完成させよ。

解答.

ρ\rhoの値は非負であり、ρ(x,y)=0\rho(x,y)=0であることとx=yx=yであることとは定め方から同値である。相異なるx,y∈N≥0N≥0x,y\in\N^{\N}に対してn(x,y)=n(y,x)n(x,y)=n(y,x)であるからρ(x,y)=ρ(y,x)\rho(x,y)=\rho(y,x)である。x,y,z∈N≥0N≥0x,y,z\in\N^{\N}に対して

ρ(x,z)≤max⁡{ρ(x,y),ρ(y,z)}\rho(x,z)\leq\max\{\rho(x,y),\rho(y,z)\}

が成り立つ。実際、x=zx=zならば左辺は00である。x≠zx\neq zとしn=n(x,z)n=n(x,z)とおくとxn≠znx_n\neq z_nであるから、xn≠ynx_n\neq y_nまたはyn≠zny_n\neq z_nが成り立つ。xn≠ynx_n\neq y_nならばx≠yx\neq yかつn(x,y)≤nn(x,y)\leq nであるからρ(x,y)=2−n(x,y)≥2−n=ρ(x,z)\rho(x,y)=2^{-n(x,y)}\geq2^{-n}=\rho(x,z)であり、yn≠zny_n\neq z_nならば同じ議論によりρ(y,z)≥ρ(x,z)\rho(y,z)\geq\rho(x,z)である。ρ\rhoの値は非負であるから右辺はρ(x,y)+ρ(y,z)\rho(x,y)+\rho(y,z)以下であり、ρ\rhoは三角不等式を満たす。ゆえにρ\rhoはN≥0N≥0\N^{\N}の上の距離である。

n∈N≥0n\in\Nとx,y∈N≥0N≥0x,y\in\N^{\N}について、ρ(x,y)<2−n\rho(x,y)<2^{-n}であることとy∈[x∣n+1]y\in[x|_{n+1}]であることとは同値である。実際、y∈[x∣n+1]y\in[x|_{n+1}]とするとi≤ni\leq nを満たすiiについてxi=yix_i=y_iであるから、x=yx=yであるか、n(x,y)≥n+1n(x,y)\geq n+1であってρ(x,y)≤2−(n+1)<2−n\rho(x,y)\leq2^{-(n+1)}<2^{-n}である。逆にρ(x,y)<2−n\rho(x,y)<2^{-n}とすると、x=yx=yならばy∈[x∣n+1]y\in[x|_{n+1}]であり、x≠yx\neq yならば2−n(x,y)<2−n2^{-n(x,y)}<2^{-n}からn(x,y)>nn(x,y)>nであって、i≤ni\leq nを満たすiiについてxi=yix_i=y_iである。ゆえにBρ(x,2−n)=[x∣n+1]B_\rho(x,2^{-n})=[x|_{n+1}]である。またρ\rhoの値は11以下であるからBρ(x,2)=N≥0N≥0B_\rho(x,2)=\N^{\N}である。

UUをρ\rhoが定める位相の開集合、x∈Ux\in Uとすると、Bρ(x,ε)⊆UB_\rho(x,\varepsilon)\subseteq Uを満たす実数ε>0\varepsilon>0が存在し、2−n<ε2^{-n}<\varepsilonを満たすn∈N≥0n\in\Nをとるとx∈[x∣n+1]=Bρ(x,2−n)⊆Ux\in[x|_{n+1}]=B_\rho(x,2^{-n})\subseteq Uである。補題 4.2 (1)により[x∣n+1][x|_{n+1}]は積位相の開集合であるから、§E2.11 補題 2.6によりUUは積位相の開集合である。逆にUUを積位相の開集合、x∈Ux\in Uとすると、補題 4.2 (2)と§E2.13 命題 1.2 (2)により、n∈N≥0n\in\Nとs∈N≥0ns\in\N^{n}でx∈[s]⊆Ux\in[s]\subseteq Uを満たすものが存在する。x∈[s]x\in[s]からs=x∣ns=x|_{n}であり、n≥1n\geq1ならば[s]=Bρ(x,2−(n−1))[s]=B_\rho(x,2^{-(n-1)})、n=0n=0ならば[s]=N≥0N≥0=Bρ(x,2)[s]=\N^{\N}=B_\rho(x,2)である。いずれの場合もxxを中心とするρ\rhoの開球がUUに含まれるから、§E2.2 補題 1.2と§E2.11 補題 2.6によりUUはρ\rhoが定める位相の開集合である。以上によりρ\rhoはN≥0N≥0\N^{\N}の位相を定める。

(x(m))m≥1(x^{(m)})_{m\geq1}を(N≥0N≥0,ρ)(\N^{\N},\rho)の Cauchy 列とする。各n∈N≥0n\in\Nについて、m,m′≥Mnm,m'\geq M_nならばρ(x(m),x(m′))<2−n\rho(x^{(m)},x^{(m')})<2^{-n}が成り立つようなMn∈N≥1M_n\in\NNを、nnについて単調非減少になるようにとる。上に示した同値により、m,m′≥Mnm,m'\geq M_nならばi≤ni\leq nを満たすiiについてxi(m)=xi(m′)x^{(m)}_i=x^{(m')}_iである。xn=xn(Mn)x_n=x^{(M_n)}_nと定めてx=(xn)n∈N≥0x=(x_n)_{n\in\N}とおく。i≤ni\leq nとするとMnM_nとMiM_iはともにMiM_i以上であるからxi(Mn)=xi(Mi)=xix^{(M_n)}_i=x^{(M_i)}_i=x_iである。ゆえにm≥Mnm\geq M_nならばi≤ni\leq nについてxi(m)=xi(Mn)=xix^{(m)}_i=x^{(M_n)}_i=x_iであり、ρ(x(m),x)<2−n\rho(x^{(m)},x)<2^{-n}である。実数ε>0\varepsilon>0に対して2−n<ε2^{-n}<\varepsilonを満たすn∈N≥0n\in\Nをとると、m≥Mnm\geq M_nについてρ(x(m),x)<ε\rho(x^{(m)},x)<\varepsilonである。ゆえに(x(m))(x^{(m)})はxxに収束し、(N≥0N≥0,ρ)(\N^{\N},\rho)は完備である。▨

参考文献

  1. Alexander S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Graduate Texts in Mathematics 156, Springer, 1995.ポーランド空間の定義と名称の由来、Hilbert 立方体への埋め込み、Gδ 部分空間による特徴づけ、および可算直積での安定性を参考にした。
  2. Ryszard Engelking, General Topology, revised and completed ed., Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, Berlin, 1989.完備距離化可能な空間の部分空間と直積についての結果、および可分な距離化可能空間の Hilbert 立方体への埋め込みを参考にした。
  3. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.第二可算な正則空間を Hilbert 立方体へ埋め込む議論を参考にした。
  4. 松坂和夫『集合・位相入門』新装版, 岩波書店, 2018.距離空間における可分性・第二可算性・Lindelöf 性の一致を参考にした。

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