1 定義と基本的な言い換え
定義 1.1. 位相空間Xが ポーランド空間 (Polish space) であるとは、Xが可分であり、かつXの位相を定めるXの上の完備な距離が存在することをいう。
この名称は、この種の空間を集中的に研究した Sierpiński・Kuratowski らポーランドの数学者にちなむ。
命題 1.2.(X,d)を距離空間とし、Xにdが定める位相を入れる。次の三条件は同値である。
- Xはポーランド空間である。
- Xは可分であり、(X,d)は完備距離化可能である。
- Xは可分であり、Xは Čech 完備である。
証明.(1)⇔(2)を示す。Xの位相はdが定める開集合の全体であるから、§E2.10 定義 1.1により、Xの上の距離eがXの位相を定めることとeがdと同値であることとは同じ条件である。ゆえに、Xの位相を定める完備な距離が存在することとdと同値な完備距離が存在することとは同値であり、後者は§E2.10 定義 1.8により(X,d)が完備距離化可能であることにほかならない。両者に可分性を重ねると二条件は同値である。
(2)⇔(3)を示す。§E2.26 系 3.3により、(X,d)が完備距離化可能であることとXが Čech 完備であることとは同値である。▨
系 1.3. ポーランド空間は Čech 完備である。
証明.Xをポーランド空間とし、Xの位相を定める距離をとると、命題 1.2によりXは Čech 完備である。▨
系 1.4. ポーランド空間と同相な位相空間はポーランド空間である。
証明.Xをポーランド空間、h:X→Yを同相写像とし、Xの位相を定める完備な距離dをとる。§E2.12 命題 6.7により、e(y,y′)=d(h−1(y),h−1(y′))はYの位相を定めるYの上の距離であり、この定め方からhは(X,d)から(Y,e)への等長写像であって全射であるから、§E2.6 補題 1.3により(Y,e)は完備である。hは連続な全射であるから、§E2.13 命題 6.6によりYは可分であり、Yはポーランド空間である。▨
命題 1.5. ポーランド空間は第二可算であり、Lindelöf であり、T4 空間である。
系 1.6. ポーランド空間の部分空間は、可分な距離化可能空間である。
証明.Xをポーランド空間、A⊆Xとし、Xの位相を定める距離dをとる。Aの位相は制限距離dAが定めるから、Aは距離化可能である。命題 1.5によりXは第二可算であるから、高々可算な開基Bをとると、§E2.13 命題 3.2により{B∩A∣B∈B}はAの開基であり、§E1.18 補題 3.5により高々可算である。ゆえにAは第二可算であり、§E2.13 定理 6.2により可分である。▨
命題 1.7. コンパクトな距離化可能空間はポーランド空間である。
例 1.8.
- 通常の位相を入れたRはポーランド空間である。§E2.5 命題 4.2をn=1として適用すると通常の距離は完備であり、§E2.13 例 5.2によりRは第二可算であるから、§E2.13 定理 6.2により可分である。
- 無理数全体R∖Qはポーランド空間である。§E2.10 例 6.6により、Rからの制限距離dについて(R∖Q,d)は完備距離化可能である。(1)と系 1.6によりR∖Qは可分であるから、命題 1.2を適用する。同じ例は、(R∖Q,d)が完備でないことも示している。すなわち、R∖Qの位相を定める完備な距離はdではなく、取り替えて得られる別の距離である。
- 高々可算な集合Sに離散位相を入れた空間はポーランド空間である。離散距離はこの位相を定め、§E2.5 命題 4.3により完備である。S自身はSで稠密な高々可算部分集合であるからSは可分である。
- 閉区間[0,1]はポーランド空間である。[0,1]はRの有界な閉集合であるから§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、Rの通常の距離の制限が[0,1]の位相を定めるから距離化可能であり、命題 1.7を適用する。
ポーランド空間でない空間の例を作るために、完備距離空間についての次の補題を用いる。
補題 1.9.(X,d)を完備距離空間、(Fn)n≥1をXの空でない閉集合の列とし、各n≥1についてFn+1⊆Fnが成り立つとする。さらに、0に収束する実数列(εn)n≥1で、各n≥1と各u,v∈Fnに対してd(u,v)≤εnを満たすものが存在するとする。このとき⋂n≥1Fnはちょうど一つの点からなる。
証明. 各n≥1についてpn∈Fnを選ぶ。m≥n≥1とするとpm∈Fm⊆Fnかつpn∈Fnであるからd(pn,pm)≤εnである。実数ε>0をとると、(εn)は0に収束するから、n≥Nならばεn<εを満たすN≥1が存在し、m≥n≥Nについてd(pn,pm)≤εn<εである。ゆえに(pn)は Cauchy 列であり、(X,d)は完備であるから、(pn)はあるp∈Xに収束する。
n≥1をとり、k≥1に対してqk=pn+kとおく。(qk)はFnの点列であり、収束の定義によりpに収束するから、§E2.3 定理 3.1によりp∈Fnである。ゆえにp∈⋂n≥1Fnである。
q∈⋂n≥1Fnとすると、各n≥1についてp,q∈Fnであるから0≤d(p,q)≤εnであり、(εn)が0に収束することからd(p,q)=0である。§E2.1 定義 1.1 条件 (a)によりq=pである。▨
例 1.10.
-
有理数全体QにRからの位相を入れると、Qはポーランド空間でない。Qは可算であるから可分であり、破れているのは位相を定める完備な距離が存在するという側である。Qがポーランド空間であるとし、Qの位相を定める完備な距離dをとる。
まず、Qの空でない開集合Vとq∈Qに対してV∖{q}が空でないことを見る。x∈Vをとると、§E2.12 定義 4.1によりV=V∩Qを満たすRの開集合Vが存在し、§E2.2 定義 1.1によりB(x,ε)=(x−ε,x+ε)⊆Vを満たす実数ε>0が存在する。§D1.4 系 2.2の有理数の稠密性によりx<y1<x+εを満たす有理数y1がとれ、ふたたび同じ稠密性によりx<y2<y1を満たす有理数y2がとれる。y1とy2はともにV∩Q=Vに属して互いに異なるから、少なくとも一方はqと異なる。
次に、Qの点を枚挙し、その第n項を避ける閉集合を再帰で作る。§E1.18 定理 4.1によりQは空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Qが存在する。e(n)をqnと書く。V0=Qとおき、n≥1についてQの空でない開集合Vn−1が定まっているとして、FnとVnを次のように定める。いま見たことによりxn∈Vn−1∖{qn}をとることができ、§E2.2 定義 1.1によりBd(xn,r)⊆Vn−1を満たす実数r>0が存在する。xn=qnと§E2.1 定義 1.1 条件 (a)によりd(xn,qn)>0であるから、rn=21min{r,d(xn,qn),2−n}は正であり、Fn=Bd(xn,rn)、Vn=Bd(xn,rn)とおくことができる。xnが属するからFnとVnは空でなく、§E2.2 補題 2.5によりFnはQの閉集合であってVn⊆Fnであり、rn<rからFn⊆Bd(xn,r)⊆Vn−1である。§E2.2 補題 1.2によりVnはQの開集合である。u,v∈Fnに対して§E2.1 定義 1.1 条件 (b)と§E2.1 定義 1.1 条件 (c)によりd(u,v)≤d(u,xn)+d(xn,v)≤2rn≤2−nであり、d(xn,qn)≥2rn>rnであるからqn∈/Fnである。
Fn+1⊆Vn⊆Fnであるから(Fn)n≥1はQの空でない閉集合の減少列であり、実数列(2−n)n≥1は0に収束するから、補題 1.9により⋂n≥1Fnはちょうど一つの点pからなる。eは全射であるからp=qNを満たすN≥1が存在するが、p∈FNとqN∈/FNは両立しない。
-
非可算集合Sに離散位相を入れた空間はポーランド空間でない。離散距離はこの位相を定め、§E2.5 命題 4.3により完備である。一方、離散位相ではすべての部分集合が閉集合であるから、Sで稠密な部分集合はS自身に限る。Sは非可算であるから高々可算な稠密部分集合は存在せず、Sは可分でない。
2 Hilbert 立方体への埋め込み
命題 2.1. Hilbert 立方体[0,1]N≥0はコンパクトなポーランド空間である。
系 2.2.Xを可分な距離化可能空間とすると、位相的埋め込みX→[0,1]N≥0が存在する。
定理 2.3. 位相空間Xについて、次の二条件は同値である。
- Xはポーランド空間である。
- Xは[0,1]N≥0のGδ集合と同相である。
証明.§E2.14 命題 8.2で定めた距離Dは、§E2.14 命題 8.2 (1)により[0,1]N≥0の位相を定め、§E2.14 命題 8.2 (2)により完備である。A⊆[0,1]N≥0に対してDのAへの制限距離をDAと書くと、§E2.26 系 3.2により、(A,DA)が完備距離化可能であることとAが[0,1]N≥0のGδ集合であることとは同値である。
(1)⇒(2)を示す。Xをポーランド空間とすると、Xは可分な距離化可能空間であるから、系 2.2により位相的埋め込みe:X→[0,1]N≥0が存在する。A=e(X)とおくと、§E2.12 定義 6.10によりXとAは同相であり、系 1.4によりAはポーランド空間である。ゆえに命題 1.2により(A,DA)は完備距離化可能であり、Aは[0,1]N≥0のGδ集合である。
(2)⇒(1)を示す。Aを[0,1]N≥0のGδ集合とし、XはAと同相であるとする。(A,DA)は完備距離化可能であり、命題 2.1と系 1.6によりAは可分であるから、命題 1.2によりAはポーランド空間であり、系 1.4によりXはポーランド空間である。▨
3 基本性質
定理 3.1.Xをポーランド空間、A⊆Xとする。Aがポーランド空間であることと、AがXのGδ集合であることとは同値である。
証明.Xの位相を定める完備な距離dをとり、そのAへの制限距離をdAと書く。
必要性を示す。Aをポーランド空間とすると、命題 1.2により(A,dA)は完備距離化可能であるから、§E2.26 系 3.2によりAはXのGδ集合である。
十分性を示す。AをXのGδ集合とすると、§E2.26 系 3.2により(A,dA)は完備距離化可能である。系 1.6によりAは可分であるから、命題 1.2によりAはポーランド空間である。▨
系 3.2. ポーランド空間の閉部分空間はポーランド空間である。
証明.Xをポーランド空間、F⊆Xを閉集合とし、Xの位相を定める距離をとる。§E2.10 補題 6.1によりFはXのGδ集合であるから、定理 3.1によりFはポーランド空間である。▨
系 3.3. ポーランド空間の開部分空間はポーランド空間である。
証明.Xをポーランド空間、U⊆Xを開集合とする。開集合はXのGδ集合であるから、定理 3.1によりUはポーランド空間である。▨
系 3.4.Xをポーランド空間、(An)n≥1をXの部分集合の列とし、各Anはポーランド空間であるとする。このとき⋂n≥1Anもポーランド空間である。
定理 3.5.(Xn)n≥1をポーランド空間の列とすると、直積∏n≥1Xnはポーランド空間である。
証明.H=[0,1]N≥0、P=∏n≥1Hと書き、πn:P→Hを第n成分への射影とする。m↦m+1は全単射N≥0→N≥1であるから、§E2.14 補題 1.7 (2)によりPはHN≥0と同相であり、§E2.14 命題 8.2 (3)によりHN≥0はHと同相である。ゆえに命題 2.1と系 1.4によりPはポーランド空間である。
各n≥1について、定理 2.3により、HのGδ集合Gnと同相写像hn:Xn→Gnをとる。§E2.14 補題 1.7 (1)により、(hn)n≥1が定める写像∏n≥1Xn→∏n≥1Gnは同相写像であり、§E2.14 補題 1.8 (1)により、∏n≥1Gnの積位相はPから受ける部分空間位相に一致する。
各n≥1について、Hの開集合の列(Un,m)m≥1でGn=⋂m≥1Un,mを満たすものをとると、πnは連続であるから
πn−1(Gn)=m≥1⋂πn−1(Un,m)はPのGδ集合である。x∈Pが∏n≥1Gnに属することと、すべてのn≥1についてx∈πn−1(Gn)であることとは同値であるから∏n≥1Gn=⋂n≥1πn−1(Gn)であり、§E2.26 補題 1.4 (1)によりこれはPのGδ集合である。
ゆえに定理 3.1により∏n≥1Gnはポーランド空間であり、系 1.4により∏n≥1Xnはポーランド空間である。▨
因子の族を可算集合N≥1で添字づけたことは、§E2.14 命題 8.2 (3)を適用する箇所と、∏n≥1Gnを可算個の開集合の共通部分として表す箇所の二つで効いている。
系 3.6.X1、X2をポーランド空間とすると、直積X1×X2はポーランド空間である。
証明. 一点からなる位相空間P={p}をとり、Z1=X1、Z2=X2とおき、n≥3に対してZn=Pとおく。例 1.8 (3)によりPはポーランド空間であるから、定理 3.5によりQ=∏n≥1Znはポーランド空間である。πn:Q→Znを第n成分への射影とし、Ψ:Q→X1×X2をΨ(z)=(z1,z2)で定め、Φ:X1×X2→Qを、第1成分がx1、第2成分がx2、n≥3に対する第n成分がpである族Φ(x1,x2)で定める。X1×X2の積位相は二つの射影による始位相であり、Ψの二つの成分はπ1とπ2であって連続であるから、§E2.12 定理 3.4によりΨは連続である。π1∘Φとπ2∘Φは射影であるから連続であり、n≥3についてπn∘Φは密着位相をもつ空間Pを終域とするから§E2.12 例 1.11により連続である。ゆえに§E2.14 定理 1.6によりΦは連続である。ΨとΦは互いに逆写像であるから、§E2.12 定義 6.1によりΨは同相写像であり、系 1.4によりX1×X2はポーランド空間である。▨
例 3.7.
- 通常の位相を入れたRの可算冪RN≥0はポーランド空間である。例 1.8 (1)と定理 3.5によりRN≥1はポーランド空間であり、m↦m+1は全単射N≥0→N≥1であるから、§E2.14 補題 1.7 (2)と系 1.4によりRN≥0もポーランド空間である。
- Cantor 空間はポーランド空間である。{0,1}に離散位相を入れた空間は例 1.8 (3)によりポーランド空間であるから、定理 3.5により{0,1}N≥1はポーランド空間である。m↦m+1は全単射N≥0→N≥1であるから、§E2.14 補題 1.7 (2)により{0,1}N≥1は{0,1}N≥0と同相である。N≥0は自然数全体の集合であるから{0,1}N≥0は§E2.17 定義 5.2の2ωであり、2ωと同相な位相空間は系 1.4によりいずれもポーランド空間である。
4 N≥0N≥0からの全射連続写像
定義 4.1.N≥0に離散位相を入れ、直積集合N≥0N≥0=∏n∈N≥0N≥0に積位相を入れる。n∈N≥0に対してN≥0n=∏i<nN≥0であり、s∈N≥0nに対して
[s]={x∈N≥0N≥0∣x∣n=s}とおき、[s]をsで定まる柱状集合 (cylinder set) という。
N≥0N≥0は記述集合論では Baire 空間と呼ばれるが、本単元では Baire 空間という語を別の意味で用いるので、この呼称は採らない。
補題 4.2.定義 4.1の記号のもとで、次が成り立つ。
- n∈N≥0とs∈N≥0nに対して、[s]はN≥0N≥0の開集合である。
- 集合族{[s]∣n∈N≥0, s∈N≥0n}はN≥0N≥0の積位相の開基である。
証明.πi:N≥0N≥0→N≥0を第i成分への射影とする。
(1)を示す。n=0のときは[s]=N≥0N≥0であり、これはN≥0N≥0の開集合である。n≥1とすると
[s]=i<n⋂πi−1({si})であり、N≥0は離散位相をもつから各{si}はN≥0の開集合であって、§E2.14 命題 1.2 (1)により各πi−1({si})はN≥0N≥0の開集合である。有限個の開集合の共通部分は開集合である。
(2)を示す。WをN≥0N≥0の開集合、x∈Wとすると、§E2.14 命題 1.3と§E2.13 命題 1.2により、有限集合F⊆N≥0と各i∈Fに対するN≥0の部分集合Uiで
x∈i∈F⋂πi−1(Ui)⊆Wを満たすものが存在する。Fは有限であるから、すべてのi∈Fについてi<nを満たすn∈N≥0をとることができる。y∈[x∣n]とi∈Fに対してi<nであるからyi=xi∈Uiであり、x∈[x∣n]⊆Wが成り立つ。(1)によりこの集合族は開集合からなるから、§E2.13 命題 1.2によりこの集合族は開基である。▨
命題 4.3.N≥0N≥0はポーランド空間である。
証明. 離散位相を入れたN≥0は例 1.8 (3)によりポーランド空間であるから、定理 3.5によりN≥0N≥1はポーランド空間である。m↦m+1は全単射N≥0→N≥1であるから、§E2.14 補題 1.7 (2)によりN≥0N≥1はN≥0N≥0と同相であり、系 1.4によりN≥0N≥0はポーランド空間である。▨
命題 4.4. 相異なるx,y∈N≥0N≥0に対して、xn=ynを満たす最小のn∈N≥0をn(x,y)と書き、x,y∈N≥0N≥0に対して
ρ(x,y)={02−n(x,y)(x=y),(x=y)と定める。ρはN≥0N≥0の位相を定める完備な距離である。
証明は演習とする(問題 5.3)。このρは、命題 4.3が存在を保証する完備な距離を具体的に与えるものであり、以下の議論では用いない。
補題 4.5.Aを離散位相を入れた2={0,1}またはN≥0とし、AN≥0に積位相を入れる。s∈A<ωに対して[s]={x∈AN≥0∣x∣∣s∣=s}とおく。(X,d)を空でない完備距離空間とし、各s∈A<ωに対してXの空でない閉集合Fsが与えられているとする。F⟨⟩=Xであり、すべてのs∈A<ωとa∈AについてFs⌢a⊆Fsが成り立つとする。さらに、ある整数N0≥1と0に収束する非負実数列(εn)n≥N0が存在し、すべてのn≥N0とs∈Anについてdiam(Fs)≤εnが成り立つとする。
このとき、すべてのs∈A<ωについてf([s])⊆Fsを満たす連続写像f:AN≥0→Xがただ一つ存在する。さらに、次が成り立つ。
- すべてのs∈A<ωについてFs=⋃a∈AFs⌢aが成り立つならば、すべてのs∈A<ωについてf([s])=Fsであり、fは全射である。
- すべてのs∈A<ωと相異なるa,b∈AについてFs⌢a∩Fs⌢b=∅が成り立つならば、fは単射である。
- すべてのs∈A<ωについてFs=⋃a∈AFs⌢aが成り立ち、すべてのs∈A<ωと相異なるa,b∈AについてFs⌢a∩Fs⌢b=∅であり、各FsがXの開集合でもあるならば、fは同相写像である。
証明.x∈AN≥0をとる。親子の包含関係により(Fx∣n)n∈N≥0は減少列であり、n≥N0に対してdiam(Fx∣n)≤εnである。補題 1.9をn≥N0の列へ適用すると、
n∈N≥0⋂Fx∣n=n≥N0⋂Fx∣nはちょうど一つの点からなる。その点をf(x)と定める。s∈A<ωとx∈[s]に対してf(x)∈Fx∣∣s∣=Fsであるからf([s])⊆Fsである。この包含関係をすべてのsについて満たす写像g:AN≥0→Xは、各xについてg(x)∈⋂n∈N≥0Fx∣n={f(x)}を満たすからg=fである。
A=2のときは§E2.17 補題 5.3 (2)により、A=N≥0のときは補題 4.2 (2)により、柱状集合の全体はAN≥0の開基である。VをXの開集合、x∈f−1(V)とし、Bd(f(x),δ)⊆Vを満たす実数δ>0をとる。εn<δを満たすn≥N0をとると、各y∈[x∣n]についてf(x),f(y)∈Fx∣nであるからd(f(x),f(y))≤εn<δである。したがってx∈[x∣n]⊆f−1(V)であり、[x∣n]は開集合である。ゆえにf−1(V)は開集合であり、fは連続である。
(1)を示す。s∈A<ωとp∈Fsをとる。子による被覆の仮定により、p∈Ftを満たす有限列tに対して、p∈Ft⌢aを満たすa∈Aを選ぶことができる。t=sからこの選択を再帰で繰り返すと、x∈[s]であってすべてのn≥∣s∣についてp∈Fx∣nを満たすものが得られる。n<∣s∣のときも親子の包含関係によりp∈Fx∣nであるから、p∈⋂n∈N≥0Fx∣n={f(x)}である。したがってFs⊆f([s])であり、先に得た逆包含と合わせてf([s])=Fsである。s=⟨⟩とするとf(AN≥0)=Xである。
(2)を示す。相異なるx,y∈AN≥0をとり、xk=ykを満たす最小のk∈N≥0をとる。s=x∣k=y∣kとおくと、f(x)∈Fs⌢xkとf(y)∈Fs⌢ykであり、兄弟分離の仮定により二つの集合は交わらない。したがってf(x)=f(y)である。
(3)を示す。(1)と(2)によりfは全単射であり、すべての柱状集合[s]についてf([s])=Fsは開集合である。任意のAN≥0の開集合は柱状集合の和集合であるから、そのfによる像も開集合である。したがって逆写像f−1:X→AN≥0は連続であり、fは同相写像である。▨
補題 4.6.Xを空でないポーランド空間、dをXの位相を定める距離、ε>0を実数とする。このとき、Xの空でない閉集合の族(Ck)k∈N≥0で、X=⋃k∈N≥0Ckであり、各k∈N≥0と各u,v∈Ckに対してd(u,v)≤εを満たすものが存在する。
証明.Xは可分であるから、Xで稠密な高々可算部分集合Dをとる。Xは空でない開集合であるから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりDは空でなく、§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Dが存在する。k∈N≥0に対してak=e(k+1)とおき、
Ck={u∈X∣d(ak,u)≤ε/3}とおく。ak∈CkであるからCkは空でなく、§E2.2 補題 2.5によりCkはXの閉集合である。u,v∈Ckに対してd(u,v)≤d(u,ak)+d(ak,v)≤2ε/3≤εである。
u∈Xをとる。DはXで稠密であるから、§E2.2 命題 2.6によりBd(u,ε/3)∩D=∅であり、d(b,u)<ε/3を満たすb∈Dが存在する。eは全射であるからe(k+1)=bを満たすk∈N≥0がとれ、このkについてu∈Ckである。ゆえにX=⋃k∈N≥0Ckである。▨
定理 4.7.Xを空でないポーランド空間とすると、連続な全射f:N≥0N≥0→Xが存在する。
証明.Xの位相を定める完備な距離dをとり、F⟨⟩=Xとおく。n∈N≥0とs∈N≥0nに対してXの空でない閉集合Fsが定まっているとする。系 3.2によりFsはポーランド空間であるから、補題 4.6をFsとdのFsへの制限と2−(n+1)へ適用すると、Fsの空でない閉集合の族(Ck)k∈N≥0で、Fs=⋃k∈N≥0Ckであり、各k∈N≥0と各u,v∈Ckに対してd(u,v)≤2−(n+1)を満たすものが得られる。§E2.12 命題 4.6によりCk=F∩Fsを満たすXの閉集合Fが存在し、FsもXの閉集合であるからCkはXの閉集合である。Fs⌢k=Ckとおく。
この再帰により、各n∈N≥0と各s∈N≥0nに対してXの空でない閉集合Fsが定まり、Fs=⋃k∈N≥0Fs⌢kが成り立ち、とくに各k∈N≥0についてFs⌢k⊆Fsである。またn≥1とs∈N≥0nに対して、u,v∈Fsならばd(u,v)≤2−nである。
N0=1、εn=2−nとすると、構成した閉集合の族は補題 4.5の仮定と子による被覆の条件を満たす。したがって補題 4.5 (1)により、連続な全射f:N≥0N≥0→Xが存在する。▨
系 4.8.N≥0N≥0はコンパクトでない。したがって、空でないコンパクトな位相空間Xに対して、連続な全射N≥0N≥0→Xは完全写像でない。
証明. 第0成分への射影π0:N≥0N≥0→N≥0は連続な全射である。N≥0は無限集合に離散位相を入れた空間であるから§E2.19 例 2.9 (3)によりコンパクトでなく、§E2.19 定理 4.2によりN≥0N≥0はコンパクトでない。f:N≥0N≥0→Xを連続な全射とし、fが完全写像であるとすると、§E2.20 定義 2.1によりfは固有であるからf−1(X)=N≥0N≥0はコンパクトである。これはN≥0N≥0がコンパクトでないことに反する。▨
5 演習
問題 5.1.QがRのFσ集合であることを示せ。これと例 1.10 (1)により、定理 3.1のGδ集合という条件をFσ集合という条件に置き換えることができないことを確かめよ。
解答.
§E1.18 定理 4.1によりQは可算であり、とくに空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Qが存在し、Q=⋃n≥1{e(n)}である。Rは距離空間であるから§E2.15 定理 3.2 (4)により T1 空間であり、§E2.15 命題 1.5により各一点集合{e(n)}はRの閉集合である。ゆえにQはRのFσ集合である。
例 1.8 (1)によりRはポーランド空間であり、例 1.10 (1)によりQはポーランド空間でない。ゆえに、ポーランド空間のFσ部分集合はポーランド空間であるとは限らない。▨
問題 5.2. ポーランド空間Xの部分集合の列(An)n≥1がすべてポーランド空間であっても、⋃n≥1Anがポーランド空間であるとは限らないことを、例を挙げて示せ。系 3.4と比べよ。
解答.
X=Rとすると、例 1.8 (1)によりXはポーランド空間である。§E1.18 定理 4.1によりQは可算であり、とくに空でない高々可算集合であるから、§E1.18 補題 3.6により全射e:N≥1→Qが存在する。An={e(n)}とおくと、Anは一点集合であるからAnの位相は離散位相であり、例 1.8 (3)によりAnはポーランド空間である。一方⋃n≥1An=Qであり、例 1.10 (1)によりQはポーランド空間でない。▨
解答.
ρの値は非負であり、ρ(x,y)=0であることとx=yであることとは定め方から同値である。相異なるx,y∈N≥0N≥0に対してn(x,y)=n(y,x)であるからρ(x,y)=ρ(y,x)である。x,y,z∈N≥0N≥0に対して
ρ(x,z)≤max{ρ(x,y),ρ(y,z)}が成り立つ。実際、x=zならば左辺は0である。x=zとしn=n(x,z)とおくとxn=znであるから、xn=ynまたはyn=znが成り立つ。xn=ynならばx=yかつn(x,y)≤nであるからρ(x,y)=2−n(x,y)≥2−n=ρ(x,z)であり、yn=znならば同じ議論によりρ(y,z)≥ρ(x,z)である。ρの値は非負であるから右辺はρ(x,y)+ρ(y,z)以下であり、ρは三角不等式を満たす。ゆえにρはN≥0N≥0の上の距離である。
n∈N≥0とx,y∈N≥0N≥0について、ρ(x,y)<2−nであることとy∈[x∣n+1]であることとは同値である。実際、y∈[x∣n+1]とするとi≤nを満たすiについてxi=yiであるから、x=yであるか、n(x,y)≥n+1であってρ(x,y)≤2−(n+1)<2−nである。逆にρ(x,y)<2−nとすると、x=yならばy∈[x∣n+1]であり、x=yならば2−n(x,y)<2−nからn(x,y)>nであって、i≤nを満たすiについてxi=yiである。ゆえにBρ(x,2−n)=[x∣n+1]である。またρの値は1以下であるからBρ(x,2)=N≥0N≥0である。
Uをρが定める位相の開集合、x∈Uとすると、Bρ(x,ε)⊆Uを満たす実数ε>0が存在し、2−n<εを満たすn∈N≥0をとるとx∈[x∣n+1]=Bρ(x,2−n)⊆Uである。補題 4.2 (1)により[x∣n+1]は積位相の開集合であるから、§E2.11 補題 2.6によりUは積位相の開集合である。逆にUを積位相の開集合、x∈Uとすると、補題 4.2 (2)と§E2.13 命題 1.2 (2)により、n∈N≥0とs∈N≥0nでx∈[s]⊆Uを満たすものが存在する。x∈[s]からs=x∣nであり、n≥1ならば[s]=Bρ(x,2−(n−1))、n=0ならば[s]=N≥0N≥0=Bρ(x,2)である。いずれの場合もxを中心とするρの開球がUに含まれるから、§E2.2 補題 1.2と§E2.11 補題 2.6によりUはρが定める位相の開集合である。以上によりρはN≥0N≥0の位相を定める。
(x(m))m≥1を(N≥0N≥0,ρ)の Cauchy 列とする。各n∈N≥0について、m,m′≥Mnならばρ(x(m),x(m′))<2−nが成り立つようなMn∈N≥1を、nについて単調非減少になるようにとる。上に示した同値により、m,m′≥Mnならばi≤nを満たすiについてxi(m)=xi(m′)である。xn=xn(Mn)と定めてx=(xn)n∈N≥0とおく。i≤nとするとMnとMiはともにMi以上であるからxi(Mn)=xi(Mi)=xiである。ゆえにm≥Mnならばi≤nについてxi(m)=xi(Mn)=xiであり、ρ(x(m),x)<2−nである。実数ε>0に対して2−n<εを満たすn∈N≥0をとると、m≥Mnについてρ(x(m),x)<εである。ゆえに(x(m))はxに収束し、(N≥0N≥0,ρ)は完備である。▨