1 定義
定義 1.1 (擬コンパクト空間). 位相空間Xが 擬コンパクト (pseudocompact) であるとは、任意の連続写像f:X→Rが有界であること、すなわちある実数Mが存在してすべてのx∈Xについて∣f(x)∣≤Mが成り立つことをいう。
補題 1.3.Xを空でない位相空間とする。次の四条件は同値である。
- Xは擬コンパクトである。
- 任意の有界な連続写像f:X→Rについて、像f(X)はRの閉集合である。
- 任意の有界な連続写像f:X→Rは最大値をとる。
- 任意の有界な連続写像f:X→Rは最小値をとる。
補題 1.4.Xを擬コンパクトな位相空間、Yを位相空間とし、f:X→Yをf(X)がYで稠密であるような連続写像とする。このときYは擬コンパクトである。とくに、擬コンパクトな位相空間から位相空間への連続な全射の終域は擬コンパクトである。
証明.g:Y→Rを連続写像とする。A=f(X)とおく。AはYで稠密であるから§E2.11 定義 2.7によりA=Yであり、§E2.12 命題 1.7 (2)により
g(Y)=g(A)⊆g(A)=(g∘f)(X)である。§E2.12 命題 1.10によりg∘f:X→Rは連続であり、Xが擬コンパクトであるから有界である。有界な集合の閉包は有界であるからg(Y)は有界であり、gは有界である。fが全射ならばf(X)=YはYで稠密であるから、後半は前半から従う。▨
2 可算コンパクト性との関係
補題 2.1. 可算コンパクトな位相空間は擬コンパクトである。
証明.Xを可算コンパクトな位相空間、f:X→Rを連続写像とし、n∈Z≥1に対してFn={x∈X∣∣f(x)∣≥n}とおく。§E2.16 補題 1.2 (2)により∣f∣は連続であり、[n,∞)はRの閉集合であるから、§E2.12 命題 1.6によりFnはXの閉集合であり、F1⊇F2⊇⋯である。x∈⋂nFnとするとすべてのnについて∣f(x)∣≥nとなり、∣f(x)∣より大きい整数が存在することに反するから、⋂nFn=∅である。ゆえに§E2.23 系 2.3により、あるNについてFN=∅である。すなわちすべてのx∈Xについて∣f(x)∣<Nであり、fは有界である。▨
補題 2.2. T4 空間については、擬コンパクトであることと可算コンパクトであることは同値である。
証明.Xを T4 空間とする。可算コンパクトならば擬コンパクトであることは補題 2.1である。
逆を対偶で示す。Xが可算コンパクトでないとする。§E2.15 定義 1.8 (3)によりXは正規かつ T1 であるから、§E2.23 系 5.2 (2)の対偶により、集積点をもたない可算無限部分集合D⊆Xが存在する。§E1.18 補題 3.6により、相異なる項からなる枚挙D={dn∣n∈Z≥1}をとる。
§E2.23 命題 5.1 (1)によりDはXの閉集合であり、§E2.23 命題 5.1 (2)により部分空間Dの位相は離散位相であるから、写像h:D→R、h(dn)=nは連続である。Xは正規空間でありDは閉集合であるから、§E2.18 定理 5.2により、すべてのz∈DについてH(z)=h(z)を満たす連続写像H:X→Rが存在する。H(dn)=nであるからHは有界でなく、Xは擬コンパクトでない。▨
系 2.3. 距離化可能な位相空間については、擬コンパクトであることとコンパクトであることは同値である。
定理 2.4.Xを空でない T3½ 空間とする。Xが擬コンパクトかつ実コンパクトであるための必要十分条件は、Xがコンパクトであることである。
3 局所有限な族による特徴づけ
定義 3.1 (局所有限な族).Xを位相空間、(Ai)i∈IをXの部分集合の族とする。Xの任意の点xに対して、xの近傍VであってV∩Ai=∅を満たすi∈Iが有限個であるものが存在するとき、(Ai)i∈Iを 局所有限 (locally finite) な族という。
命題 3.2. 次が成り立つ。
- Xを位相空間、(Ai)i∈IをXの局所有限な族とし、各i∈IについてBi⊆Aiとする。このとき(Bi)i∈Iは局所有限である。
- X、Yを位相空間、f:X→Yを連続写像とし、(Bj)j∈JをYの局所有限な族とする。このとき(f−1(Bj))j∈JはXの局所有限な族である。
- X、Yを位相空間、f:X→Yを閉写像かつ固有である連続写像とし、(Ai)i∈IをXの局所有限な族とする。このとき(f(Ai))i∈IはYの局所有限な族である。
証明.(1)を示す。x∈Xに対して定義 3.1が与える近傍Vをとる。V∩Bi=∅ならばBi⊆AiからV∩Ai=∅であるから、V∩Bi=∅を満たすiはV∩Ai=∅を満たすiより多くない。ゆえに有限個である。
(2)を示す。x∈Xに対して、定義 3.1がf(x)に与えるYの近傍Vをとり、f(x)∈O⊆Vを満たすYの開集合Oをとる。f−1(O)はxを含むXの開集合であり、f−1(O)∩f−1(Bj)=∅ならばO∩Bj=∅であるから、そのようなjはV∩Bj=∅を満たすjの中にあり、有限個である。
(3)を示す。y∈Yをとる。{y}は§E2.19 例 2.3によりコンパクトであるから、fが固有であることによりF=f−1({y})はXのコンパクト部分集合である。各x∈Fに対して、定義 3.1が与える近傍Vxと、x∈Ox⊆Vxを満たす開集合Oxをとる。Fはコンパクトであるから、有限個のx1,…,xm∈FでF⊆O=Ox1∪⋯∪Oxmを満たすものが存在する(F=∅のときはO=∅とする)。fは閉写像であるから、§E2.12 定理 5.10の条件§E2.12 定理 5.10 (3)により、y∈Vかつf−1(V)⊆Oを満たすYの開集合Vが存在する。V∩f(Ai)=∅ならば、f(a)∈Vを満たすa∈Aiが存在し、a∈f−1(V)⊆Oであるから、あるkについてOxk∩Ai=∅、したがってVxk∩Ai=∅である。各kについてそのようなiは有限個であるから、Vは有限個のf(Ai)としか交わらない。▨
補題 3.3.Xを位相空間、(Ui)i∈Iを局所有限なXの開集合の族とし、(fi)i∈IをC(X,R)の族であって、各i∈IについてfiがX∖Uiのすべての点で0をとるものとする。このとき、各x∈Xについてfi(x)=0を満たすi∈Iは有限個であり、
(i∈I∑fi)(x)=i∈I∑fi(x)によって定まる写像∑i∈Ifi:X→Rは連続である。
証明.x∈Xをとり、定義 3.1が与える近傍Vと、x∈W⊆Vを満たす開集合Wをとる。J={i∈I∣W∩Ui=∅}とおくと、W⊆VであるからJは有限である。
y∈Wとi∈/Jをとる。W∩Ui=∅であるからy∈/Uiであり、仮定によりfi(y)=0である。したがってy∈Wについてfi(y)=0を満たすiはJに含まれ、有限個である。とくにxについてこれが成り立ち、和は有限和として定まる。さらにy∈Wについて
(i∈I∑fi)(y)=i∈J∑fi(y)である。
∑i∈Ifiが連続であることを§E2.12 補題 1.9により確かめる。x∈Xとε>0をとり、上のWとJをとる。s=∑i∈Jfiは§E2.16 補題 1.2 (1)によりX上の連続写像であるから、xを含む開集合W′で、すべてのy∈W′について∣s(y)−s(x)∣<εを満たすものが存在する。W∩W′はxを含む開集合であり、その点yでは(∑i∈Ifi)(y)=s(y)かつ(∑i∈Ifi)(x)=s(x)であるから、(∑i∈Ifi)(y)−(∑i∈Ifi)(x)<εである。ゆえに∑i∈Ifiは連続である。▨
定理 3.4.Xを T3½ 空間とする。次の二条件は同値である。
- Xは擬コンパクトである。
- Z≥1で添字づけられたXの局所有限な族(Un)n∈Z≥1であって、すべてのUnが空でない開集合であるものは存在しない。
証明.(1)⇒(2)を対偶で示す。そのような族(Un)n∈Z≥1が存在するとし、各nについてxn∈Unをとる。Xは T3½ 空間であるから§E2.15 定義 1.8により完全正則であり、X∖Unはxnを含まない閉集合であるから、§E2.15 定義 1.7 (2)により、gn(xn)=0であってX∖Unのすべての点で1をとる連続写像gn:X→[0,1]が存在する。§E2.12 定理 4.4 (1)と§E2.12 命題 1.10によりgnはXからRへの連続写像とみなすことができ、§E2.16 補題 1.2 (1)によりfn=n(1−gn)はC(X,R)に属する。fnの値は0以上であり、fnはX∖Unのすべての点で0をとり、fn(xn)=nである。補題 3.3によりF=∑n∈Z≥1fnは連続であり、すべてのfmの値が0以上であるからF(xn)≥fn(xn)=nである。ゆえにFは有界でなく、Xは擬コンパクトでない。
(2)⇒(1)を示す。f:X→Rを連続写像とし、n∈Z≥1に対してAn=R∖[−n,n]とおく。AnはRの開集合であり、族(An)n∈Z≥1はRで局所有限である。実際、t∈Rに対して開区間(t−1,t+1)はtの近傍であり、(t−1,t+1)∩An=∅ならばn<∣t∣+1であるから、そのようなnは有限個である。fは連続であるから各f−1(An)はXの開集合であり、命題 3.2 (2)により(f−1(An))n∈Z≥1はXの局所有限な族である。したがって(2)により、あるNについてf−1(AN)=∅である。すなわちすべてのx∈Xについて∣f(x)∣≤Nであり、fは有界である。▨
系 3.5. 次が成り立つ。
- X、Yを T3½ 空間とし、f:X→Yを開写像かつ閉写像かつ固有である連続写像とする。Yが擬コンパクトならば、Xも擬コンパクトである。
- Kをコンパクト Hausdorff 空間、Yを擬コンパクトな T3½ 空間とすると、K×Yは擬コンパクトな T3½ 空間である。
証明.(1)を対偶で示す。Xが擬コンパクトでないとすると、定理 3.4 (2)により、Xの局所有限な族(Un)n∈Z≥1であってすべてのUnが空でない開集合であるものが存在する。fは開写像であるから各f(Un)はYの空でない開集合であり、fは閉写像かつ固有であるから命題 3.2 (3)により(f(Un))n∈Z≥1はYの局所有限な族である。ゆえに定理 3.4 (2)によりYは擬コンパクトでない。(2)はKがコンパクトであるとき射影K×Y→Yが開かつ閉かつ固有な連続写像であることからただちに従う。▨
4 z-閉写像と射影
擬コンパクト性も Kuratowski 型の定理によって特徴付けることができる。
定義 4.1 (z-閉写像). 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yに対して、fが z-閉 (z-closed map) であるとは、Xの任意の零集合Zに対してf(Z)がYの閉集合であることをいう。
補題 4.3.X、Yを位相空間、Z⊆X×Yを零集合とし、y0∈Yがy0∈/prY(Z)を満たすとする。
- 連続写像f:X×Y→[0,1]で、Z=f−1({0})かつすべてのx∈Xについてf(x,y0)=1を満たすものが存在する。
- さらにy0∈prY(Z)であるとする。このとき、Xの空でない開集合の列(Un)n∈Z≥1とYの空でない開集合の列(Vn)n∈Z≥1で、(Un×Vn)n∈Z≥1がX×Yの局所有限な族であるものが存在する。
証明.(1)を示す。Z=Z(h)を満たすh∈C(X×Y,R)をとり、g=min{∣h∣,1}とおく。y0∈prY(Z)であるから、任意のx∈Xに対してg(x,y0)>0である。よって
f(x,y)=min{1, g(x,y0)g(x,y)}は連続写像f:X×Y→[0,1]を定め、f−1(0)=Z(g)=Z,f(x,y0)=1(∀x∈X) を満たす。
(2)を示す。(1)が与える連続写像f:X×Y→[0,1]をとる。W1=Yとおき、n∈Z≥1についてy0∈Wnを満たす開集合Wnが定まっているとして、Un、Vn、Wn+1を次のように選ぶ。
y0∈prY(Z)でありWnはy0の近傍であるから、§E2.11 命題 7.2 (2)によりWn∩prY(Z)=∅であり、yn∈Wnを満たす(xn,yn)∈Zが存在する。f(xn,yn)=0であり[0,1/3)は[0,1]の開集合であるから、§E2.14 補題 1.11と§E2.13 命題 1.2により、xn∈Un′、yn∈Vn⊆Wnを満たす開集合Un′⊆X、Vn⊆Yで
f(Un′×Vn)⊆[0,1/3)を満たすものが存在する。同様にf(xn,y0)=1であり(2/3,1]は[0,1]の開集合であるから、xn∈Un′′、y0∈Wn+1⊆Wnを満たす開集合Un′′⊆X、Wn+1⊆Yで
f(Un′′×Wn+1)⊆(2/3,1]を満たすものが存在する。Un=Un′∩Un′′とおくとxn∈Unであり、
f(Un×Vn)⊆[0,1/3),f(Un×Wn+1)⊆(2/3,1]が成り立つ。xn∈Unとyn∈VnからUnとVnは空でない。列(Wn)は包含について減少する。
(Un×Vn)n∈Z≥1が局所有限であることを示す。(x,y)∈X×Yをとる。f(x,y)>1/3ならば、N=f−1((1/3,1])は(x,y)を含むX×Yの開集合であり、f(Un×Vn)⊆[0,1/3)からすべてのnについてN∩(Un×Vn)=∅である。f(x,y)≤1/3ならば、f−1([0,2/3))は(x,y)を含む開集合であるから、§E2.14 補題 1.11と§E2.13 命題 1.2により、x∈Ox、y∈Oyを満たす開集合Ox⊆X、Oy⊆Yでf(Ox×Oy)⊆[0,2/3)を満たすものが存在する。Ox×OyがUm×VmとUn×Vn(m<n)の両方と交わったとすると、Ox∩Um=∅かつOy∩Vn=∅であり、(Wk)が減少列であることからVn⊆Wn⊆Wm+1であるので、(Ox×Oy)∩(Um×Wm+1)=∅である。この共通部分の点でfは[0,2/3)と(2/3,1]の両方に値をとることになり、両立しない。ゆえにOx×Oyは高々一つのUn×Vnとしか交わらない。いずれの場合にも(x,y)は有限個のUn×Vnとしか交わらない近傍をもつから、(Un×Vn)n∈Z≥1は局所有限である。▨
定理 4.4.X、Yを空でない位相空間とし、X×Yに積位相を入れる。次の三条件は同値である。
- 射影prY:X×Y→Yは z-閉である。
- 任意のu∈Cb(X×Y)に対して、v(y)=supx∈Xu(x,y)によって定まる写像v:Y→Rは連続である。
- 任意のu∈Cb(X×Y)に対して、u∗(y)=u(⋅,y)によって定まる写像u∗:Y→Cb(X)は連続である。
証明.(1)⇒(2)を示す。u∈Cb(X×Y)をとり、v:=supx∈Xu(x,−):Y→Rとおく。定義より、任意のa∈Rに対してv−1((−∞,a])⊂Yは閉部分集合である。一方、
v−1([a,∞))=ε>0⋂prY(u−1([a−ε,∞)))である。§E2.16 命題 4.3 (4)により、各u−1([a−ε,∞))は零集合である。prYは z-閉であるから各射影は閉集合であり、これらの共通部分も閉集合である。よってvは連続である。
(2)⇒(1)を背理法で示す。prYが z-閉でないとし、prY(Z)が閉集合でないような零集合Z⊆X×Yと点y0∈prY(Z)∖prY(Z)をとる。補題 4.3 (1)により、Z=f−1(0)かつすべてのx∈Xについてf(x,y0)=1を満たす連続写像f:X×Y→[0,1]が存在する。このときu:=1−f∈Cb(X×Y)とおけば、仮定よりv(y):=supx∈Xu(x,y)で定まる関数v:Y→Rは連続である。よって、任意のε>0に対してv−1((−ε,ε))⊂Yは開である。一方、y0∈prY(Z)∖prY(Z)であるから、点y1∈v−1((−ε,ε))∩prY(Z)をとることができる。このとき、あるx∈Xが存在して(x,y1)∈Z=u−1(1)である。よって特にv(y1)=1であり、これはv(y1)∈(−ε,ε)に反する。以上で示された。
(2)⇒(3)を示す。u∈Cb(X×Y)、y0∈Y,ε>0を任意にとる。u0(x,y):=∣u(x,y)−u(x,y0)∣、v0:=supx∈Xu0(x,−)とおけば、任意のy∈Yに対して∥u∗(y)−u∗(y0)∥=v0(y)が成り立ち、さらに仮定よりv0は連続であるから、
{y∈Y∣∥u∗(y)−u∗(y0)∥<ε}=v0−1((−ε,ε))⊂Yは開である。これはu∗が連続であることを意味している。
(3)⇒(2)はsupx∈X(−):Cb(X)→Rが 1-Lipschitz であることから明らかである。▨
命題 4.5.Xを空でない位相空間とする。次の三条件は同値である。
- Xは擬コンパクトである。
- 任意の空でないコンパクト空間Kに対して、射影prK:K×X→Kは z-閉である。
- 射影prω+1:(ω+1)×X→ω+1は z-閉である。
証明.(1)⇒(2)を示す。ZをK×Xの零集合とし、Z=Z(h)を満たすu∈Cb(K×X)をとる。Kはコンパクトであるから§E2.20 定理 4.2 (2)により射影prX:K×X→Xは閉写像、特に z-閉である。ゆえに定理 4.4 (3)よりu∗:X→Cb(K)、u∗(x)=u(⋅,x)は連続である。A=u∗(X)とおけば、Xの擬コンパクト性と補題 1.4からAは擬コンパクトであり、Cb(K)は距離空間なので系 2.3よりAはコンパクトである。よって射影p:K×A→Kは閉写像である。ZA=(idK×u∗)(Z)⊂K×Aと置くと、ZAは評価写像evK:K×Cb(K)→RのK×Aへの制限による零集合であるから、特に閉である。よってp(ZA)=prK(Z)⊂Kも閉である。
(2)⇒(3)は明らかである。
(3)⇒(1)の対偶を示す。Xが擬コンパクトでないとし、有界でない連続写像f:X→Rをとる。帰納的に、各n∈ωに対して∣f(xn)∣≥max{∣f(xn−1)∣+1}を満たすxn∈Xをとることができる。このとき∣f(xn)∣≥nが成り立つ。写像g:(ω+1)×X→Rを
g(n,x)=min{1,∣f(x)−f(xn)∣}(n∈ω),g(ω,x)=1で定める。このとき、gは連続である。実際、連続性が問題となるのは(ω,x)の形の点の近傍であるが、a:=∣f(x)∣+1/2とおいて、∣f(xn)∣>a+1となるn∈ωをとれば、任意のn<m≤ωと任意のx′∈f−1((−a,a))に対して
∣f(x′)−f(xm)∣≥∣f(xm)∣−∣f(x′)∣>a+1−a=1が成り立つため、gは点(ω,x)の開近傍(n,ω]×f−1((−a,a))上で1をとる。これはgが点(ω,x)で連続であることを意味している。
Z=Z(g)は(ω+1)×Xの零集合である。g(ω,x)=1であるからprω+1(Z)⊆ωであり、g(n,xn)=0であるからn∈prω+1(Z)である。ゆえにprω+1(Z)=ωである。一方g(ω,X)={1}であるからω∈prω+1(Z)であり、よってprω+1は z-閉でない。▨
5 直積の擬コンパクト性
定理 5.1 (Glicksberg の定理).X、Yをともに擬コンパクトな空でない T3½ 空間とし、X×Yに積位相を入れる。次の三条件は同値である。
- X×Yは擬コンパクトである。
- 包含写像X×Y→βX×βYの引き起こす自然な連続写像φ:β(X×Y)→βX×βYは同相写像である。
- 射影prY:X×Y→Yは z-閉である。
証明.XとYは T3½ 空間であるから、§E2.15 定理 2.8 (2)と§E2.15 定理 2.8 (5)によりX×Yも T3½ 空間である。またX、Yのいずれかが空であるとき主張は明らかであるから、XとYはどちらも空でないと仮定してよく、このときX×Yも空でない。
(1)⇒(3)を示す。対偶を示す。prYが z-閉でないとし、prY(Z)が閉集合でないような零集合Z⊆X×Yとy0∈prY(Z)∖prY(Z)をとる。補題 4.3 (2)により、空でない開集合の列(Un)、(Vn)で(Un×Vn)n∈Z≥1が局所有限であるものが存在する。§E2.14 補題 1.11により各Un×VnはX×Yの空でない開集合であり、添字集合Z≥1は無限であるから、定理 3.4 (2)によりX×Yは擬コンパクトでない。
(3)⇒(2)を示す。u∈Cb(X×Y)をとる。§E2.22 定理 3.2より、uがβX×βY上の連続関数へ延長できることを示せばよい。定理 4.4 (3)によりu∗:Y→Cb(X)は連続である。Yは擬コンパクトであるから、補題 1.4よりu∗(Y)は擬コンパクトであり、Cb(X)は§E2.16 定義 2.1により距離化可能なので、系 2.3によりu∗(Y)はコンパクト Hausdorff 空間である。よって§E2.22 定理 3.2により、Yからu∗(Y)への連続写像u∗は連続写像u:βY→u∗(Y)⊆Cb(X)へ一意に延長される。自然なC(βX)(−)∣XCb(X)は§E2.22 系 3.4により同型射であり、u:βY→u∗(Y)⊆Cb(X)≅C(βX)に対応する連続写像u:βX×βY→Rは構成からuの延長である。
(2)⇒(1)を示す。u∈Cb(X×Y)をとる。補題 1.3 (2)より、u(X×Y)⊆Rが閉集合であることを示せばよい。仮定によりuはβX×βY上の連続写像へ延長されるから、そのβX×Yへの制限をuと書く。系 3.5 (2)よりβX×Yは擬コンパクトなので、u(βX×Y)⊆Rは有界閉集合である。さらにXは擬コンパクトなので、任意のy∈Yに対してu(X×{y})=u(βX×{y})⊆Rであり、よって
u(X×Y)=y∈Y⋃u(X×{y})=y∈Y⋃u(βX×{y})=u(βX×Y)⊆Rは有界閉集合である。以上で示された。▨
6 例
例 6.1.
- §E2.23 系 6.2によると、ω1は可算コンパクトなので、補題 2.1よりω1は擬コンパクトである。Kをコンパクト Hausdorff 空間とすると、系 3.5 (2)よりX=ω1×Kは擬コンパクトな T3½ 空間であり、定理 5.1と§E2.22 命題 7.4によりβX≅βω1×K≅(ω1+1)×Kなので、βX∖X≅Kである。
- Yを空でない T3½ 空間とする。§E2.22 系 2.4と(1)より、ω1×βYは擬コンパクトな T3½ 空間であり、(1)よりβ(ω1×βY)≅(ω1+1)×βYである。Y1=(ω1×βY)∪({ω1}×(βY∖Y))⊆(ω1+1)×βYとおけば、ω1×βY⊆Y1⊆β(ω1×βY)なので補題 1.4によりY1は擬コンパクトであり、さらに§E2.22 系 3.6によりβY1=(ω1+1)×βYとなる。よってβY1∖Y1≅Yとなる。
- ω1×(ω+1)は(1)より擬コンパクトであり、さらにβ(ω1×(ω+1))≅(ω1+1)×(ω+1)となる。端点を抜いた Tychonoff の板T=((ω1+1)×(ω+1))∖{(ω1,ω)}はω1×(ω+1)⊆Tを稠密部分空間にもつので補題 1.4により擬コンパクトであり、よって§E2.22 系 3.6によりβT=(ω1+1)×(ω+1)である。
7 演習
解答.
補題 1.3 (1)⇒(2)を示す。f:X→Rを有界な連続写像とし、f(X)が閉集合でないと仮定する。§E2.11 命題 2.5 (2)によりf(X)=f(X)であるから、r∈f(X)∖f(X)をとることができる。すべてのx∈Xについてf(x)=rであるから
g(x)=∣f(x)−r∣1は定まり、§E2.16 補題 1.2 (1)と§E2.16 補題 1.2 (2)によりg:X→Rは連続である。n∈Z≥1をとる。r∈f(X)であり(r−1/n,r+1/n)はrの近傍であるから、§E2.11 命題 7.2 (2)により∣f(x)−r∣<1/nを満たすx∈Xが存在し、このxについてg(x)>nである。ゆえにgは有界でなく、Xが擬コンパクトであることに反する。
補題 1.3 (2)⇒(3)を示す。f:X→Rを有界な連続写像とする。X=∅であるからf(X)=∅であり、fの有界性によりf(X)は上に有界である。§D1.4 定義 1.2によりs=supf(X)が定まる。ε>0をとると、s−εはf(X)の上界でないからs−ε<t≤sを満たすt∈f(X)が存在し、t∈(s−ε,s+ε)である。ゆえにsの任意の近傍はf(X)と交わり、§E2.11 命題 7.2 (2)によりs∈f(X)である。仮定によりf(X)は閉集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (2)によりs∈f(X)であり、f(x)=sを満たすx∈Xが存在する。このxでfは最大値をとる。
補題 1.3 (3)⇒(4)を示す。f:X→Rを有界な連続写像とすると、§E2.16 補題 1.2 (1)により−fも有界な連続写像である。仮定により−fはx0∈Xで最大値をとる。すべてのx∈Xについて−f(x)≤−f(x0)、すなわちf(x0)≤f(x)であるから、fはx0で最小値をとる。
補題 1.3 (4)⇒(1)を示す。Xが擬コンパクトでないとし、有界でない連続写像f:X→Rをとる。
g(x)=max{1,∣f(x)∣}1とおく。§E2.16 補題 1.2 (2)によりmax{1,∣f∣}は連続であり、その値は1以上であるから、§E2.16 補題 1.2 (1)によりgは連続である。gの値は(0,1]に含まれるからgは有界である。n∈Z≥1をとると、fが有界でないことから∣f(x)∣>nを満たすx∈Xが存在し、このxについて0<g(x)<1/nである。ゆえにgの値の下限は0である。一方gの値はつねに0より大きいから、gは最小値をとらない。したがってXは補題 1.3 (4)を満たさない。▨
解答.
Xを距離化可能な空間とし、Xの位相を定める距離を一つ固定する。コンパクトならば§E2.23 定理 1.3と補題 2.1により擬コンパクトである。逆にXが擬コンパクトであるとする。§E2.15 定理 3.2 (2)によりXは T4 空間であるから、補題 2.2によりXは可算コンパクトであり、§E2.9 定理 3.1 (4)によりXはコンパクトである。▨
問題 7.3. T4 空間の閉部分空間について擬コンパクト性が遺伝することを示せ。
解答.
Xを擬コンパクトな T4 空間、F⊆Xを閉集合とし、Fには部分空間位相を入れる。補題 2.2によりXは可算コンパクトであり、§E2.23 系 4.2 (1)によりFは可算コンパクトである。ゆえに補題 2.1によりFは擬コンパクトである。▨
問題 7.4. 位相空間X、Yと連続写像f:X→Yについて、Yの任意の零集合Zに対してf−1(Z)がXの零集合であることを示せ。
解答.
§E2.16 定義 4.1によりZ=Z(h)を満たすh∈C(Y,R)をとる。§E2.12 命題 1.10によりh∘f∈C(X,R)であり、
Z(h∘f)={x∈X∣h(f(x))=0}=f−1({y∈Y∣h(y)=0})=f−1(Z)であるから、ふたたび§E2.16 定義 4.1によりf−1(Z)はXの零集合である。▨
問題 7.5.Xを空でない位相空間とする。Xが擬コンパクトであることと、すべての点で正の値をとる任意の連続写像f:X→Rについてinff(X)>0が成り立つこととは同値であることを示せ。
解答.
Xが擬コンパクトであるとし、f:X→Rをすべての点で正の値をとる連続写像とする。§E2.16 補題 1.2 (1)により1/fは連続であるから、擬コンパクト性により1/f(x)≤Mをすべてのxについて満たす実数Mが存在する。1/fの値は正であるからM>0であり、f(x)≥1/Mがすべてのxについて成り立つ。X=∅であるからf(X)=∅であり、inff(X)≥1/M>0である。
逆を示す。g:X→Rを連続写像とし、f=1/(1+∣g∣)とおく。§E2.16 補題 1.2 (1)と§E2.16 補題 1.2 (2)によりfは連続であり、1+∣g∣≥1であるからfはすべての点で正の値をとる。仮定によりc=inff(X)>0である。すべてのxについて1/(1+∣g(x)∣)≥c、すなわち∣g(x)∣≤1/c−1であるからgは有界である。ゆえにXは擬コンパクトである。▨
問題 7.6.Kを T1 空間、Xを位相空間とする。K×Xが正規であり、射影prK:K×X→Kが z-閉ならば、prKは閉写像である。
解答.
F⊆K×Xを閉集合、k∈K∖prK(F)とする。Kは T1 なので{k}×Xは閉集合であり、Fと交わらない。§E2.18 定理 3.1により、連続写像f:K×X→[0,1]でf∣F=0、f∣{k}×X=1を満たすものが存在する。零集合Z=f−1({0})はFを含み、{k}×Xと交わらない。
射影が z-閉であることからprK(Z)はKの閉集合であり、k∈/prK(Z)である。したがってK∖prK(Z)はkの開近傍でprK(F)と交わらない。K∖prK(F)は開集合なので、prK(F)は閉集合である。▨