§E2.26Čech 完備性

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距離空間が完備であるという条件は、すべての Cauchy 列が収束するという形で距離の値によって述べられる。実数直線の通常の距離を制限した開区間(0,1)(0,1)は完備でないが、この制限距離と同値な距離のなかには完備なものが存在する。完備であるかどうかは位相だけからは決まらないが、完備な距離をとり直すことができるかどうかは位相だけによって決まる。完備な距離をとり直すことができるという条件を距離を用いずに述べ、距離化可能とは限らない空間へも広げたものが、あるコンパクト化のなかで可算個の開集合の共通部分として表されるという条件であり、これを満たす空間を Čech 完備であるという。本記事はまず、可算個の開集合の共通部分として表される部分集合と可算個の閉集合の和集合として表される部分集合とに、GδG_\delta集合とFσF_\sigma集合という名を与える。この二つは補集合をとる操作によって移り合うから、Čech 完備性は、コンパクト化cXcXのなかでのXXの置かれ方によっても、剰余cX∖XcX\setminus Xの置かれ方によっても述べることができる。Stone–Čech のコンパクト化から任意のコンパクト化への射影が剰余を剰余へ写すことを用いると、この二通りの述べ方と、コンパクト化を一つとるか任意にとるかの区別とが、七つの同値な条件へまとまる。完備な距離空間と局所コンパクトな Hausdorff 空間はいずれも Čech 完備であり、Čech 完備性は固有な閉写像の逆像へ継承する。また、Čech 完備な空間では稠密な開集合の可算個の共通部分がふたたび稠密になる。この最後の性質は後続の記事が Baire 性として扱い、Čech 完備性はその十分条件として働く。コンパクト化cXcXのなかでのXXの内部は、XXのうちコンパクト近傍をもつ点の全体に一致する。この事実により、剰余cX∖XcX\setminus Xが Čech 完備であることは、XXからその点の全体を除いた残りがσ-コンパクトであることとして特徴づけられる。本記事では、七条件の同値、距離空間における完備距離化可能性との対応、コンパクト化の剰余のσ-コンパクト性との双対、および剰余の Čech 完備性の特徴づけを扱う。

1 G_δ 集合と F_σ 集合

定義 1.1.ZZを位相空間、A⊆ZA\subseteq Zとする。ZZの開集合からなる列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}が存在して

A=⋂n≥1UnA=\bigcap_{n\geq1}U_n

が成り立つとき、AAをZZの GδG_\delta集合 (G-delta set) という。ZZの閉集合からなる列(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}が存在して

A=⋃n≥1FnA=\bigcup_{n\geq1}F_n

が成り立つとき、AAをZZの FσF_\sigma集合 (F-sigma set) という。

補題 1.2.ZZを位相空間、A⊆ZA\subseteq Zとする。AAがZZのGδG_\delta集合であることと、Z∖AZ\setminus AがZZのFσF_\sigma集合であることとは同値である。

証明. 必要性を示す。ZZの開集合からなる列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}がA=⋂n≥1UnA=\bigcap_{n\geq1}U_nを満たすとする。各Z∖UnZ\setminus U_nはZZの閉集合であり、§E1.2 定理 3.2 (2)によりZ∖A=⋃n≥1(Z∖Un)Z\setminus A=\bigcup_{n\geq1}(Z\setminus U_n)であるから、Z∖AZ\setminus AはZZのFσF_\sigma集合である。

十分性を示す。ZZの閉集合からなる列(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}がZ∖A=⋃n≥1FnZ\setminus A=\bigcup_{n\geq1}F_nを満たすとする。各Z∖FnZ\setminus F_nはZZの開集合であり、§E1.2 定理 3.2 (1)によりZ∖(Z∖A)=⋂n≥1(Z∖Fn)Z\setminus(Z\setminus A)=\bigcap_{n\geq1}(Z\setminus F_n)である。A⊆ZA\subseteq Zであるから、§E1.2 定理 3.2 (3)により左辺はAAであり、AAはZZのGδG_\delta集合である。▨

命題 1.3.XXを正規空間とする。XXの部分集合が零集合であることと閉GδG_\delta集合であることは同値である。

証明.Z(f)Z(f)は§E2.16 命題 4.3 (1)により閉集合であり、Z(f)=⋂n∈N≥1f−1((−1/n,1/n))Z(f)=\bigcap_{n\in\NN}f^{-1}((-1/n,1/n))であるからGδG_\delta集合である。

逆に、F=⋂n∈N≥1UnF=\bigcap_{n\in\NN}U_nを閉GδG_\delta集合とし、各UnU_nを開集合とする。§E2.18 定理 3.1により、FFの上で00、X∖UnX\setminus U_nの上で11をとる連続写像fn ⁣:X→[0,1]f_n\colon X\to[0,1]が存在する。§E2.16 命題 4.3 (5)により⋂n∈N≥1Z(fn)\bigcap_{n\in\NN}Z(f_n)は零集合である。この共通部分はFFを含み、x∉Fx\notin Fならばあるnnについてx∉Unx\notin U_nであってfn(x)=1f_n(x)=1であるからxxを含まない。ゆえにF=⋂n∈N≥1Z(fn)F=\bigcap_{n\in\NN}Z(f_n)である。▨

補題 1.4. 次が成り立つ:

  1. XXを位相空間とする。(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}をXXのGδG_\delta集合の列とすると、⋂n≥1An\bigcap_{n\geq1}A_nはXXのGδG_\delta集合である。
  2. XXを位相空間とする。G1⊂XG_1\subset XをXXのGδG_\delta集合、G2⊂G1G_2\subset G_1をG1G_1のGδG_\delta集合とすると、G2G_2はXXのGδG_\delta集合である。
  3. (Xn)n∈N≥0(X_n)_{n\in\N}を可算個の位相空間の族とする。各n∈N≥0n\in\Nに対し、Un⊂XnU_n\subset X_nをXnX_nのGδG_\delta集合とする。このとき、∏n∈N≥0Un⊂∏n∈N≥0Xn\prod_{n\in\N}U_n\subset \prod_{n\in\N}X_nはGδG_\delta集合である。

証明.

(1)を示す。各n≥1n\geq1について、XXの開集合の列(Un,m)m≥1(U_{n,m})_{m\geq1}でAn=⋂m≥1Un,mA_n=\bigcap_{m\geq1}U_{n,m}を満たすものをとると

⋂n≥1An=⋂n≥1⋂m≥1Un,m\bigcap_{n\geq1}A_n=\bigcap_{n\geq1}\bigcap_{m\geq1}U_{n,m}

である。§E1.18 定理 5.2 (2)によりZ≥1×Z≥1\Z_{\geq1}\times\Z_{\geq1}は高々可算であり空でないから、§E1.18 補題 3.6により全射s ⁣:Z≥1→Z≥1×Z≥1s\colon\Z_{\geq1}\to\Z_{\geq1}\times\Z_{\geq1}が存在する。Wj=Un,mW_j=U_{n,m}(ただし(n,m)=s(j)(n,m)=s(j))とおくと、(Wj)j≥1(W_j)_{j\geq1}はXXの開集合の列であり、ssが全射であることから⋂j≥1Wj\bigcap_{j\geq1}W_jは上の右辺に等しい。▨

補題 1.5.ZZとWWを位相空間、f ⁣:Z→Wf\colon Z\to Wを閉写像とし、AAをZZのFσF_\sigma集合とする。このときf(A)f(A)はWWのFσF_\sigma集合である。

証明は演習とする(問題 5.1)。

補題 1.6.KKをコンパクト Hausdorff 空間、A⊆KA\subseteq Kとし、K∖AK\setminus AにはKKからの部分空間位相を入れる。このとき、次は同値である:

  1. AAはKKのGδG_\delta集合である。
  2. K∖AK\setminus AはKKのFσF_\sigma集合である。
  3. K∖AK\setminus Aは σ-コンパクトである。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)は補題 1.2より明らかである。また、コンパクト部分空間の閉部分空間はコンパクトであるから、(2)⇒\Rightarrow(3)が従う。逆に、Hausdorff 空間のコンパクト部分集合は閉なので、(3)⇒\Rightarrow(2)が従う。▨

2 Čech 完備空間

定義 2.1.XXを T3½ 空間とする。XXのコンパクト化cXcXが存在して、XXがcXcXのGδG_\delta集合であるとき、XXは Čech 完備 (Čech-complete space) であるという。

補題 2.2. 次が成り立つ:

  1. コンパクト Hausdorff 空間は Čech 完備である。
  2. Čech 完備空間のGδG_\delta部分集合は Čech 完備である。
  3. 局所コンパクト Hausdorff 空間は Čech 完備である。

証明.(1)は明らかである。

(2)を示すため、XXを Čech 完備、Y⊂XY\subset XをGδG_\delta集合とすると、XXはあるコンパクト化cXcXのGδG_\delta集合なので、補題 1.4 (2)よりYYはcXcXのGδG_\delta集合であり、よってYYはそのコンパクト化cl⁡cX(Y)\tpcl[cX]{Y}のGδG_\delta集合である。

(3)は§E2.24 系 1.10より局所コンパクト空間はどんなコンパクト化の中でも開、とくにGδG_\deltaなのでこれから明らかである。▨

定理 2.3.XXを T3½ 空間とする。次の七条件は同値である。

  1. XXのコンパクト化cXcXが存在して、XXはcXcXのGδG_\delta集合である。すなわち、XXは Čech 完備である。
  2. XXのコンパクト化cXcXが存在して、剰余cX∖XcX\setminus XはcXcXのFσF_\sigma集合である。
  3. 剰余βX∖X\beta X\setminus XはβX\beta XのFσF_\sigma集合である。
  4. XXはβX\beta XのGδG_\delta集合である。
  5. XXの任意のコンパクト化cXcXについて、XXはcXcXのGδG_\delta集合である。
  6. XXの任意のコンパクト化cXcXについて、剰余cX∖XcX\setminus XはcXcXのFσF_\sigma集合である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。XXのコンパクト化cXcXであってXXがcXcXのGδG_\delta集合であるものをとると、補題 1.2によりcX∖XcX\setminus XはcXcXのFσF_\sigma集合である。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。XXのコンパクト化cXcXであってcX∖XcX\setminus XがcXcXのFσF_\sigma集合であるものをとり、cXcXの閉集合からなる列(En)n≥1(E_n)_{n\geq1}でcX∖X=⋃n≥1EncX\setminus X=\bigcup_{n\geq1}E_nを満たすものをとる。π ⁣:βX→cX\pi\colon\beta X\to cXを§E2.22 系 3.5の写像とすると、π\piは連続であるから、§E2.12 命題 1.6により各π−1(En)\pi^{-1}(E_n)はβX\beta Xの閉集合である。§E1.2 定理 4.1 (1)により

π−1(cX∖X)=⋃n≥1π−1(En)\pi^{-1}(cX\setminus X)=\bigcup_{n\geq1}\pi^{-1}(E_n)

であり、§E2.22 系 5.3 (1)により左辺はβX∖X\beta X\setminus Xである。ゆえにβX∖X\beta X\setminus XはβX\beta XのFσF_\sigma集合である。

(3)⇒\Rightarrow(6)を示す。cXcXをXXの任意のコンパクト化とし、π ⁣:βX→cX\pi\colon\beta X\to cXを§E2.22 系 3.5の完全写像とすると、これは全射閉写像なので、βX∖X\beta X\setminus XがβX\beta XのFσF_{\sigma}集合であることと§E2.22 系 5.3 (2)よりπ(βX∖X)=cX∖X\pi(\beta X\setminus X) = cX \setminus XもcXcXのFσF_{\sigma}集合である。

(6)⇒\Rightarrow(5)を示す。cXcXをXXの任意のコンパクト化とすると、cX∖XcX\setminus XはcXcXのFσF_\sigma集合であるから、補題 1.2によりXXはcXcXのGδG_\delta集合である。

(5)⇒\Rightarrow(4)を示す。§E2.22 系 2.4によりβX\beta XはXXのコンパクト化であるから、このコンパクト化へ(5)を適用すると、XXはβX\beta XのGδG_\delta集合である。

(4)⇒\Rightarrow(1)を示す。§E2.22 系 2.4によりβX\beta XはXXのコンパクト化であるから、cX=βXcX=\beta Xが(1)の求めるコンパクト化を与える。▨

系 2.4.XXを T3½ 空間とする。このとき次は同値である:

  1. XXは Čech 完備である。
  2. XXのあるコンパクト化cXcXが存在して、cX∖XcX\setminus Xは σ-コンパクトである。
  3. βX∖X\beta X\setminus Xは σ-コンパクトである。
  4. XXの任意のコンパクト化cXcXに対して、cX∖XcX\setminus Xは σ-コンパクトである。

証明. いずれの同値性も定理 2.3と補題 1.6よりただちに従う。▨

系 2.5.(Xn)n∈N≥0(X_n)_{n\in \N}を可算個の Čech 完備空間の族とすると、直積空間∏n∈N≥0Xn\prod_{n\in \N}X_nは Čech 完備である。

証明.∏n∈N≥0Xn=⋂n∈N≥0(Xn×∏m≠nβXm)\prod_{n\in \N}X_n = \bigcap_{n\in \N} \left( X_n \times \prod_{m\neq n}\beta X_m\right)であり、各Xn×∏m≠nβXmX_n \times \prod_{m\neq n}\beta X_mはコンパクト Hausdorff 空間∏n∈N≥0βXn\prod_{n\in \N}\beta X_nの中でGδG_{\delta}であるから、その可算個の共通部分である∏n∈N≥0Xn\prod_{n\in \N}X_nもGδG_{\delta}である。よって主張は定理 2.3よりただちに従う。▨

定理 2.6.XXとYYを T3½ 空間、f ⁣:X→Yf\colon X\to Yを固有閉写像とする。

  1. YYが Čech 完備ならばXXは Čech 完備である。
  2. ffが完全写像であり、XXが Čech 完備であれば、YYは Čech 完備である。

証明.(1)は定理 2.3とFσF_{\sigma}集合の逆像がFσF_{\sigma}であることと§E2.22 定理 5.2より得られる等式(βf)−1(βY∖Y)=βX∖X(\beta f)^{-1}(\beta Y\setminus Y) = \beta X\setminus Xからただちに従う。(2)も同じく、定理 2.3と補題 1.5と§E2.22 定理 5.2βf(βX∖X)=βY∖Y\beta f(\beta X\setminus X) = \beta Y\setminus Yからただちに従う。▨

系 2.7.XXを Čech 完備な位相空間とする。

  1. F⊆XF\subseteq XがXXの閉集合であり、FFに部分空間位相を入れるならば、FFは Čech 完備である。
  2. KKがコンパクト Hausdorff 空間ならば、積空間X×KX\times Kは Čech 完備である。

証明.(1)は包含写像F→XF\to Xが固有閉写像であることと定理 2.6 (1)より、(2)は標準射影X×K→XX\times K\to Xが固有閉写像であることと定理 2.6 (1)よりただちに従う。▨

(2)でKKにコンパクト性だけでなく Hausdorff 性を課しているのは、Čech 完備性が T3½ 空間についてのみ定められており、X×KX\times Kが T3½ 空間であることを言う必要があるからである。

補題 2.2 (1)の逆に相当する結果として以下が成り立つ:

定理 2.8.YYを T3½ 空間、X⊆YX\subseteq YをYYで稠密な部分集合とし、部分空間位相を入れたXXは Čech 完備であるとする。このときXXはYYのGδG_\delta集合である。

証明.X⊆YX\subseteq YもY⊆βYY\subseteq \beta Yも稠密であるから、XXはβY\beta Yで稠密である。よってβY\beta YはXXのあるコンパクト化である。XXは Čech 完備なので、定理 2.3 (5)をコンパクト化X⊆βYX\subseteq\beta Yへ適用すると、βY\beta Yの開集合からなる列(Wn)n≥1(W_n)_{n\geq1}でX=⋂n≥1WnX=\bigcap_{n\geq1}W_nを満たすものが存在する。このときX=⋂n≥1(Wn∩Y)X = \bigcap_{n\geq1}(W_n\cap Y)であるから、XXはYYのGδG_\delta集合である。▨

系 2.9.YYを T3½ 空間、X⊆YX\subseteq Yを部分空間位相について Čech 完備な部分集合とする。このときXXはcl⁡Y(X)\tpcl[Y]{X}のGδG_\delta集合である。

証明.定理 2.8よりただちに従う。▨

3 完備距離空間の Čech 性

定理 3.1.(X,d)(X, d)を完備距離空間、X⊆YX\subseteq YをXXを稠密部分空間として含む Hausdorff 空間とする。このとき、XXはYYのGδG_\delta集合である。

証明.n∈N≥0n\in \Nとする。各x∈Xx\in Xに対してVn(x):=Y∖cl⁡Y(X∖BX(x,2−n))V_n(x):=Y\setminus \tpcl[Y]{X\setminus B_X(x, 2^{-n})}と置き、

Un:=⋃x∈XVn(x)U_n := \bigcup_{x\in X} V_n(x)

と定義する。任意のn∈N≥0n\in \Nとx∈Xx\in Xに対してBX(x,2−n)⊆Vn(x)B_X(x, 2^{-n})\subseteq V_n(x)が成り立つので、X⊆⋂n∈N≥0UnX\subseteq \bigcap_{n\in \N} U_nである。

y∈⋂n∈N≥0Uny\in\bigcap_{n\in \N} U_nを任意にとる。このとき、任意のn∈N≥0n\in\Nに対してあるan∈Xa_n\in Xが存在してy∈Vn(an)y\in V_n(a_n)が成り立つ。Wn:=⋂k≤nVk(ak)W_n := \bigcap_{k\leq n}V_k(a_k)とおけば、これはy∈Wny\in W_nとなるYYの開集合であり、X⊆YX\subseteq Yは稠密なので

∅≠X∩Wn⊆X∩Vn(an)=BX(an,2−n).\emptyset \neq X\cap W_n \subseteq X\cap V_n(a_n) = B_X(a_n,2^{-n}).

従って、Fn:=cl⁡X(X∩Wn)F_n:=\tpcl[X]{X\cap W_n}とおけば、§E2.5 補題 2.3より、FnF_nはdiam⁡X(Fn)≤21−n→0\operatorname{diam}_X(F_n) \leq 2^{1-n}\to 0(n→∞n\to \infty) を満たすXXの閉部分集合の減少列となるので、(X,d)(X, d)の完備性と§E2.5 定理 2.5より点x∞∈⋂n∈N≥0Fnx_\infty\in \bigcap_{n\in \N}F_nがとれる。

y=x∞y=x_\inftyを示せば良い。y≠x∞y\neq x_\inftyと仮定すると、YYは Hausdorff なので、開集合

x∞∈Wx,y∈Wy,Wx∩Wy=∅x_\infty\in W_x, \qquad y\in W_y, \qquad W_x\cap W_y = \emptyset

が取れる。すると、X∩WxX\cap W_xはx∞x_\inftyを含むXXの開集合なので、あるε>0\ep > 0が存在してBX(x∞,ε)⊆Wx∩XB_X(x_\infty, \ep)\subseteq W_x\cap Xが成り立つ。さらにx∞∈⋂n∈N≥0Fnx_\infty \in \bigcap_{n\in\N}F_nなので、diam⁡X(Fn)→0\operatorname{diam}_X(F_n)\to 0(n→∞n\to \infty) であることから、あるn∈N≥0n\in \Nが存在して

X∩Wn⊆Fn⊆BX(x∞,ε)⊆X∩Wx⊆WxX\cap W_n \subseteq F_n\subseteq B_X(x_\infty, \ep)\subseteq X\cap W_x \subseteq W_x

が成り立つ。一方、Wn∩WyW_n\cap W_yはyyを含む開集合なので、X⊆YX\subseteq Yが稠密であることから、

∅≠X∩Wn∩Wy⊆Wx∩Wy=∅\emptyset \neq X\cap W_n\cap W_y\subseteq W_x\cap W_y = \emptyset

となり、矛盾である。よってy=x∞y=x_\inftyでなければならない。▨

系 3.2 (Alexandrov の定理).(Z,d)(Z,d)を完備な距離空間、A⊆ZA\subseteq Zとし、AAにはddの制限距離dAd_Aを入れる。(A,dA)(A,d_A)が完備距離化可能であることと、AAがZZのGδG_\delta集合であることとは同値である。

証明. 必要性は定理 3.1より明らかであり、十分性は§E2.10 系 6.4より明らかである。▨

系 3.3.(X,d)(X,d)を距離空間とし、XXにはddが定める位相を入れる。このとき、(X,d)(X,d)が完備距離化可能であることと、XXが Čech 完備であることとは同値である。

証明. 必要性を示す。距離空間は T3½ である。定理 3.1よりXXは任意のコンパクト化cXcXの中でGδG_\delta集合である。ゆえに定義 2.1によりXXは Čech 完備である。

十分性を示す。(X^,d^,ι)(\widehat X,\widehat d,\iota)を(X,d)(X, d)の完備化とする。X⊆X^X\subseteq \widehat Xは稠密で、X^\widehat Xは距離空間なので T3½ であり、さらにXXは Čech 完備なので、定理 2.8より、XXはX^\widehat XのGδG_\delta部分集合である。よって§E2.10 定理 6.2よりXXは完備距離化可能である。▨

例 3.4.R\mathbb Rに通常の距離ddを入れ、R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qにはddの制限距離を入れる。このときR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは Čech 完備であるが、制限距離について完備でなく、局所コンパクトでもない。すなわち系 3.3と補題 2.2 (3)が与える二つの十分条件は、いずれも Čech 完備であるための必要条件ではない。

証明.§E2.10 例 6.6により、制限距離を入れたR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは完備距離化可能であり、かつ制限距離そのものについて完備でない。ゆえに系 3.3によりR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは Čech 完備である。

UUをR\mathbb Rの空でない開集合とし、x∈Ux\in Uをとると、§E2.2 定義 1.1によりB(x,ε)=(x−ε,x+ε)⊆UB(x,\varepsilon)=(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subseteq Uを満たす実数ε>0\varepsilon>0が存在する。§D1.4 補題 2.3によりx<r<x+εx<r<x+\varepsilonを満たす無理数rrが存在し、§D1.4 系 2.2の有理数の稠密性によりx<q<x+εx<q<x+\varepsilonを満たす有理数qqが存在する。rrとqqはともにB(x,ε)⊆UB(x,\varepsilon)\subseteq Uに属するから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QとQ\mathbb QはいずれもR\mathbb Rで稠密である。

R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qが局所コンパクトであると仮定する。§E2.12 命題 4.8により制限距離が定めるR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qの位相はR\mathbb Rからの部分空間位相であり、§E2.15 定理 3.2によりR\mathbb Rは Hausdorff であるから、§E2.24 命題 4.1によりR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QはR\mathbb Rの開集合である。したがってQ\mathbb QはR\mathbb Rの閉集合であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりcl⁡R(Q)=Q\tpcl[\mathbb R]{\mathbb Q}=\mathbb Qである。一方、Q\mathbb Qの稠密性と§E2.11 定義 2.7によりcl⁡R(Q)=R\tpcl[\mathbb R]{\mathbb Q}=\mathbb RであるからQ=R\mathbb Q=\mathbb Rとなる。しかし§D1.4 補題 2.3により0<r0<10<r_0<1を満たす無理数r0r_0が存在し、r0∉Qr_0\notin\mathbb Qである。この二つは両立しない。ゆえにR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは局所コンパクトでない。▨

4 コンパクト化の剰余とσ-コンパクト性

剰余それ自身の位相的性質を調べるには、剰余のコンパクト化を用意しなければならない。XXのコンパクト化cXcXのなかでのXXの内部がコンパクト近傍をもつ点の全体に一致することから、剰余のコンパクト化としてcXcXからその全体を除いたものをとることができる。

補題 4.1.XXを T3½ 空間、cXcXをXXのコンパクト化とする。このとき、cl⁡cX(cX∖X)=cX∖Xlc\tpcl[cX]{cX\setminus X} = cX\setminus X_{\mathrm{lc}}が成り立つ。特に、cl⁡cX(cX∖X)∖(cX∖X)=X∖Xlc\tpcl[cX]{cX\setminus X} \setminus (cX\setminus X) = X\setminus X_{\mathrm{lc}}である。

証明.§E2.24 補題 1.9によりint⁡cX(X)=Xlc\tpint[cX]{X}=X_{\mathrm{lc}}であり、§E2.11 命題 2.5 (3)によりcX∖int⁡cX(X)=cl⁡cX(cX∖X)cX\setminus\tpint[cX]{X}=\tpcl[cX]{cX\setminus X}であるから、cl⁡cX(cX∖X)=cX∖Xlc\tpcl[cX]{cX\setminus X} = cX\setminus X_{\mathrm{lc}}である。▨

剰余の側が Čech 完備であるかどうかは、XX自身のσ-コンパクト性ではなく、XXからコンパクト近傍をもつ点を除いた部分のσ-コンパクト性によって決まる。

定理 4.2.XXを T3½ 空間、cXcXをXXのコンパクト化とし、X∖XlcX\setminus X_{\mathrm{lc}}にはXXからの、剰余cX∖XcX\setminus XにはcXcXからの部分空間位相を入れる。次の二条件は同値である。

  1. X∖XlcX\setminus X_{\mathrm{lc}}はσ-コンパクトである。
  2. 剰余cX∖XcX\setminus Xは Čech 完備である。

証明.R=cX∖XR=cX\setminus Xとおく。cl⁡cX(cX∖X)\tpcl[cX]{cX\setminus X}はcX∖XcX\setminus Xのコンパクト化であり、補題 4.1によりcl⁡cX(cX∖X)∖(cX∖X)=X∖Xlc\tpcl[cX]{cX\setminus X}\setminus (cX\setminus X) = X\setminus X_{\mathrm{lc}}である。よって主張は系 2.4 (1)⇔\Leftrightarrow(2)をcX∖XcX\setminus Xへ適用することによりただちに従う。▨

系 4.3.XXをσ-コンパクトな T3½ 空間、cXcXをXXのコンパクト化とする。このとき剰余cX∖XcX\setminus Xは Čech 完備である。

証明.§E2.24 命題 1.4 (1)によりXlcX_{\mathrm{lc}}はXXの開集合であるから、X∖XlcX\setminus X_{\mathrm{lc}}はXXの閉集合である。XXはσ-コンパクトであるから、§E2.25 系 2.2 (1)により部分空間X∖XlcX\setminus X_{\mathrm{lc}}はσ-コンパクトである。ゆえに定理 4.2により剰余cX∖XcX\setminus Xは Čech 完備である。▨

例 4.4.DDを非可算集合とし、DDには離散位相を入れる。DDの一点コンパクト化αD\alpha Dの剰余αD∖D\alpha D\setminus Dは Čech 完備であるが、DDはσ-コンパクトでない。すなわち系 4.3の逆は成り立たない。

証明.§E2.24 例 5.1によりDDは局所コンパクト Hausdorff 空間であり、§E2.19 例 2.9 (3)によりDDはコンパクトでないから、§E2.24 命題 2.2 (3)によりαD\alpha DはDDの一点コンパクト化である。§E2.22 定義 1.1により剰余R=αD∖DR=\alpha D\setminus Dは一点集合であり、αD\alpha Dは Hausdorff である。ゆえに§E2.19 例 2.3によりRRはコンパクトであり、§E2.15 定理 2.1 (3)により Hausdorff である。コンパクト空間は§E2.24 例 5.1により局所コンパクトであるから、補題 2.2 (3)によりRRは Čech 完備である。一方、§E2.25 例 4.1によりDDはσ-コンパクトでない。

DDは局所コンパクトであるから§E2.24 定義 1.3によりDlc=DD_{\mathrm{lc}}=Dであり、§E2.19 例 2.3と§E2.25 例 1.4 (1)によりD∖Dlc=∅D\setminus D_{\mathrm{lc}}=\emptysetはσ-コンパクトである。すなわちDD自身はσ-コンパクトでないにもかかわらず定理 4.2 (1)は成り立っており、剰余の Čech 完備性は定理 4.2からも従う。▨

5 演習

問題 5.1.補題 1.5の証明を完成させよ。

解答.

定義 1.1により、ZZの閉集合からなる列(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}でA=⋃n≥1FnA=\bigcup_{n\geq1}F_nを満たすものが存在する。§E1.2 定理 4.2により

f(A)=⋃n≥1f(Fn)f(A)=\bigcup_{n\geq1}f(F_n)

であり、ffは閉写像であるから各f(Fn)f(F_n)はWWの閉集合である。ゆえにf(A)f(A)はWWのFσF_\sigma集合である。▨

問題 5.2.系 2.7 (1)を、定理 2.6 (1)を用いずに、XXのコンパクト化cXcXにおけるFFの閉包がFFのコンパクト化であることから直接に示せ。

解答.

定義 2.1により、XXのコンパクト化cXcXとcXcXの開集合からなる列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}でX=⋂n≥1UnX=\bigcap_{n\geq1}U_nを満たすものをとる。E=cl⁡cX(F)E=\tpcl[cX]{F}とおく。§E2.22 定義 1.1によりcXcXはコンパクト Hausdorff 空間であり、§E2.12 系 4.5によりFFがcXcXから受ける部分空間位相はXXから受けるものに一致するから、§E2.22 補題 1.4 (2)によりEEはFFのコンパクト化であり、§E2.22 命題 1.3によりFFは T3½ 空間である。

FFはXXの閉集合であるから、§E2.12 命題 4.6によりF=C∩XF=C\cap Xを満たすcXcXの閉集合CCが存在する。F⊆CF\subseteq CでありCCは閉集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりE=cl⁡cX(F)⊆CE=\tpcl[cX]{F}\subseteq Cであり、E∩X⊆C∩X=FE\cap X\subseteq C\cap X=Fである。逆にF⊆EF\subseteq EかつF⊆XF\subseteq XであるからF⊆E∩XF\subseteq E\cap Xであり、E∩X=FE\cap X=Fが成り立つ。したがって

F=E∩X=E∩⋂n≥1Un=⋂n≥1(E∩Un)F=E\cap X=E\cap\bigcap_{n\geq1}U_n=\bigcap_{n\geq1}(E\cap U_n)

であり、§E2.12 定義 4.1により各E∩UnE\cap U_nはEEの開集合である。ゆえにFFはEEのGδG_\delta集合であり、定義 2.1によりFFは Čech 完備である。▨

参考文献

  1. Eduard Čech, On bicompact spaces, Annals of Mathematics 38 (1937), 823–844.コンパクト化のなかで可算個の開集合の共通部分になるという条件による、完備性の位相的な定式化を参考にした。
  2. Pavel Alexandroff, Sur les ensembles de la première classe et les espaces abstraits, Comptes rendus hebdomadaires des séances de l'Académie des sciences 178 (1924), 185–187.完備距離空間の部分集合が完備距離化可能であることと可算個の開集合の共通部分として表されることの同値を参考にした。
  3. Ryszard Engelking, General Topology, revised and completed ed., Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, Berlin, 1989.剰余の Fσ 性を含む Čech 完備性の同値な条件、完備距離空間が自身のコンパクト化のなかで Gδ 集合になること、固有な閉写像の逆像への Čech 完備性の継承、剰余のσ-コンパクト性との関係、距離空間における完備距離化可能性と Čech 完備性の同値、および Alexandrov の定理を参考にした。
  4. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.Čech 完備空間の基本的な性質と、完備距離空間および局所コンパクト Hausdorff 空間がその例になることを参考にした。
  5. Alexander S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Graduate Texts in Mathematics 156, Springer, 1995.Polish 空間の枠組みにおける Alexandrov の定理の形と、その記述集合論での使われ方を参考にした。

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