1 定義
定義 1.1. 位相空間Xが σ-コンパクト (sigma-compact space) であるとは、コンパクトな部分集合の列(Kn)n∈Z≥1が存在して
X=n∈Z≥1⋃Knを満たすことをいう。
命題 1.3. 位相空間Xが σ-コンパクトであることと、コンパクトな部分集合の増加列(Ln)n∈Z≥1が存在して
Ln⊆Ln+1(n∈Z≥1),X=n∈Z≥1⋃Lnを満たすことは同値である。
証明.(Ln)n∈Z≥1が上の条件を満たすならば、定義 1.1によりXは σ-コンパクトである。逆にX=⋃n∈Z≥1Knを満たすコンパクト部分集合の列をとる。各n∈Z≥1に対して
Ln=K1∪⋯∪Knとおく。§E2.19 補題 2.8によりLnはコンパクトであり、Ln⊆Ln+1である。また、各KnはLnに含まれるから
n∈Z≥1⋃Ln=n∈Z≥1⋃Kn=Xが成り立つ。▨
例 1.4. 次の空間は σ-コンパクトである。
- コンパクト空間は σ-コンパクトである。
- 台集合が高々可算である任意の位相空間は、一点集合の高々可算な和であるため、σ-コンパクトである。特に、Qは§E1.18 定理 4.1により可算であるから、Q⊆Rに通常の位相の相対位相を入れた位相空間は σ-コンパクトである。
- d∈Z≥1とし、Rdに Euclid 距離d2から生じる位相を入れる。Rd=⋃n∈Z≥1[−n,n]dであり、各[−n,n]dはd2に関して有界かつ閉であるから、§E2.9 定理 4.3によりコンパクトである。したがってd次元 Euclid 空間Rdは σ-コンパクトである。
2 基本性質
定理 2.1.X、Yを位相空間、f:X→Yを固有写像とする。Yが σ-コンパクトならばXは σ-コンパクトである。
証明.定義 1.1により、Yのコンパクト部分集合の列(Kn)n∈Z≥1でY=⋃n∈Z≥1Knを満たすものが存在する。fは固有であるから§E2.20 定義 1.1により各f−1(Kn)はXのコンパクト部分集合であり、§E1.2 定理 4.1 (1)によりX=f−1(Y)=⋃n∈Z≥1f−1(Kn)である。ゆえに定義 1.1によりXは σ-コンパクトである。▨
系 2.2.Xを σ-コンパクトな位相空間とする。
- F⊆XがXの閉集合であり、Fに部分空間位相を入れるならば、Fは σ-コンパクトである。
- Kがコンパクトな位相空間ならば、積空間X×Kは σ-コンパクトである。
証明.(1)を示す。§E2.20 命題 1.2 (3)により包含写像ιF:F→Xは固有であるから、定理 2.1をιFへ適用するとFは σ-コンパクトである。
(2)を示す。§E2.20 命題 4.5により射影prX:X×K→Xは固有であるから、定理 2.1をprXへ適用するとX×Kは σ-コンパクトである。▨
定理 2.3. σ-コンパクト空間からの連続写像の像は σ-コンパクトである。
証明.Xを σ-コンパクトな位相空間とし、X=⋃n∈Z≥1Kn、各Knをコンパクトとする。f:X→Yを連続写像とする。包含写像Kn→Xは§E2.12 定理 4.4により連続であるから、制限f∣Kn:Kn→Yは連続であり、§E2.19 定理 4.2によりf(Kn)はYのコンパクトな部分集合である。§E2.19 補題 2.7により、f(Kn)はf(X)の部分空間としてもコンパクトである。さらに
f(X)=fn∈Z≥1⋃Kn=n∈Z≥1⋃f(Kn)である。したがってf(X)は σ-コンパクトである。▨
命題 2.4. 位相空間Xが部分集合A1,…,Amの有限和であり、各Aiが部分空間として σ-コンパクトであるならば、Xは σ-コンパクトである。
証明は演習とする(問題 5.1)。
3 可算性条件との比較
定理 3.1. σ-コンパクトな位相空間は Lindelöf である。
証明.X=⋃n∈Z≥1Knとし、各Knをコンパクトとする。(Ui)i∈IをXの開被覆とする。各n∈Z≥1に対して、k∈Z≥0と写像u:{1,…,k}→I(k=0のとき定義域は空集合である)の対(k,u)であって
Kn⊆1≤j≤k⋃Uu(j)を満たすもの全体をSnとおく。Knのコンパクト性と§E2.19 命題 2.6により、Knを覆う有限部分族が存在する。その添字集合は有限であるから、あるkに対して{1,…,k}からこの添字集合への全単射が存在し、それをIへの写像とみなすとSnの元を得る。ゆえにSnは空でない。すべてのnについて(kn,un)∈Snを満たす列((kn,un))n∈Z≥1をとる。
各nに対してRn={un(j)∣1≤j≤kn}とおくと、Rnは有限集合である。i∈Rnにmin{j∈{1,…,kn}∣un(j)=i}を対応させる写像は単射Rn→Z≥0であり、選んだ列(un)n∈Z≥1からnについて一つの族として定まる。したがって
I0=n∈Z≥1⋃Rnとおくと、§E1.18 定理 6.3によりI0は高々可算である。また
X=n∈Z≥1⋃Kn⊆n∈Z≥1⋃1≤j≤kn⋃Uun(j)=i∈I0⋃Uiが成り立つ。したがって(Ui)i∈I0は高々可算な部分被覆であり、Xは Lindelöf である。▨
命題 3.2. ZF 上で、「任意の σ-コンパクト空間は Lindelöf である」ことと可算選択公理が成り立つこととは同値である。
証明は演習とする(問題 5.2)。定理 3.1の証明が可算選択公理を用いる箇所は、この同値により取り除くことができない。
定理 3.3.Xを局所コンパクトな Lindelöf 空間とすると、Xは σ-コンパクトである。
証明.OをXの開集合系とする。
I={(U,K)∣U∈O, K⊆X はコンパクトであり、U⊆K}と置き、f:I→Oをf(U,K)=Uと定義する。各x∈Xに対して、局所コンパクト性によりコンパクトな近傍Kが存在し、その内部Uはxを含む開集合でU⊆Kを満たすから、(f(i))i∈IはXの開被覆である。よってXが Lindelöf であることから、ある高々可算な部分集合I0⊆Iが存在して、(f(i))i∈I0はまたXの開被覆となる。X=∅ならば、各nに対してKn=∅と置けば、(Kn)n∈Z≥1はコンパクト集合の列である。X=∅とするとI0=∅であり、§E1.18 補題 3.6により全射φ:Z≥1→I0が存在する。各nに対してφ(n)=(Un,Kn)と書く。このとき、(Un)n∈Z≥1がXを覆うこととUn⊆Knから、⋃nKn⊇⋃nUn=Xとなる。各Knはコンパクトであるから、以上よりXは σ-コンパクトである。▨
系 3.5. 局所コンパクト空間Xについて、次は同値である。
- Xは σ-コンパクトである。
- Xは Lindelöf である。
系 3.6. 第二可算な局所コンパクト空間は σ-コンパクトである。
命題 3.7. 位相空間Xが σ-コンパクトかつ可算コンパクトならば、Xはコンパクトである。
例 3.8.D=Z≥1に離散位相を入れると、Dは σ-コンパクトだが可算コンパクトではない。
証明.Dの台集合Z≥1は可算であるから、例 1.4 (2)によりDは σ-コンパクトである。
Un={n}とおくと、(Un)n∈Z≥1はDの可算開被覆である。任意のN∈Z≥1に対してU1∪⋯∪UN={1,…,N}=Dである。したがってこの開被覆は有限部分被覆をもたず、Dは可算コンパクトでない。▨
4 例
例 4.1. 非可算集合Dに離散位相を入れると、Dは、コンパクト性、Lindelöf 性、σ-コンパクト性および Hausdorff 性をすべてもつ空間の開部分空間であるが、D自身は Lindelöf でも σ-コンパクトでもない。
証明.§E2.24 例 5.1によりDは局所コンパクト Hausdorff 空間である。Dは無限集合であるから、§E2.19 例 2.9によりDはコンパクトでない。よって§E2.24 命題 2.2 (3)により1点コンパクト化αDが存在する。αDはコンパクトであるから例 1.4 (1)により σ-コンパクトであり、§E2.21 命題 1.2により Lindelöf である。DはαDにおいて添加した一点の補集合であるから、αDの開部分空間である。
一点集合の族({x})x∈DはDの開被覆である。この開被覆の部分被覆の添字集合はD全体でなければならない。したがって高々可算な部分被覆は存在せず、Dは Lindelöf でない。定理 3.1の対偶により、Dは σ-コンパクトでもない。▨
補題 4.2. 順序数空間ω1について、C⊆ω1がコンパクトなら、C⊆[0,β]を満たすβ<ω1が存在する。
証明.C=∅の場合はβ=0と置けばよい。実際、0<ω1であり∅⊆[0,0]である。以下ではC=∅とする。
§E2.17 定義 1.1により、0<α<ω1に対して(−∞,α)はω1の基本開集合である。ω1の順序位相は基本開集合の全体が生成する位相であるから、(−∞,α)はω1の開集合である。[0,α)=(−∞,α)であるから、族([0,α))0<α<ω1はω1の開被覆である。この開被覆とCのコンパクト性に§E2.19 命題 2.6を適用して、Cを覆う有限部分族[0,α1),…,[0,αm)を取る。C=∅であり、この有限部分族はCを覆うから、m≥1である。そこでβ=max1≤i≤mαiと置く。βはα1,…,αmのいずれかであるからβ<ω1であり、初期区間[0,α1),…,[0,αm)は包含について全順序であってその合併は[0,β)に等しいから、C⊆[0,β)⊆[0,β]が成り立つ。▨
定理 4.3. 順序数空間ω+1、ω1、ω1+1のうち σ-コンパクトなのはω+1とω1+1であり、ω1は σ-コンパクトではない。
証明.ω+1とω1+1は§E2.19 定理 7.2によりコンパクトであるから、例 1.4 (1)により σ-コンパクトである。
反対にω1が σ-コンパクトであると仮定し、ω1=⋃n∈Z≥1Cnを満たすコンパクト集合の列(Cn)n∈Z≥1をとる。各Cnは補題 4.2によりある初期区間[0,βn]に含まれる。§E1.22 補題 3.1によりβn+1<ω1である。可算集合{βn+1∣n∈Z≥1}は§E2.17 補題 4.2によりあるδ<ω1以下に収まる。δ+1∈ω1であるが、各nでβn<δ+1だからδ+1∈/Cnとなる。すなわちδ+1はどのCnにも属さない。一方、ω1=⋃n∈Z≥1Cnでありδ+1∈ω1であるから、δ+1はあるCnに属する。この二つは両立しない。したがってω1は σ-コンパクトでない。▨
例 4.4.N≥0は σ-コンパクトであるが、その可算個の直積空間N≥0N≥0は σ-コンパクトでない。可算個のコンパクト部分空間の族(Kn)n∈N≥0を任意にとる。各n∈N≥0に対し、πn:N≥0N≥0→N≥0を標準射影とすると、πn(Kn)⊂N≥0はコンパクトなので、N≥0が離散であることからこれは有限集合である。よってxn∈N≥0∖πn(Kn)をとることができる。このとき、もし点x:=(xn)n∈N≥0があるKmに属していれば、πm(x)=xm∈πm(Km)となるので、これはxmの取り方に矛盾する。特にx∈⋃n∈N≥0Knが成り立ち、N≥0N≥0は可算個のコンパクト部分空間の族の和にならない。
5 演習
問題 5.1.命題 2.4の証明を、各Aiのコンパクト被覆から直接完成させよ。
解答.
各i∈{1,…,m}に対してAi=⋃n∈Z≥1Ki,nと書く。包含写像Ai→Xは§E2.12 定理 4.4により連続であるから、§E2.19 定理 4.2により各Ki,nはXのコンパクト部分集合でもある。Ln=K1,n∪⋯∪Km,nとおくと、§E2.19 補題 2.8によりLnはコンパクトであり、
X=i=1⋃mAi=n∈Z≥1⋃Lnが成り立つ。したがってXは σ-コンパクトである。▨
解答.
可算選択公理を仮定すると、定理 3.1の証明がそのまま ZF 上で遂行され、任意の σ-コンパクト空間は Lindelöf である。
逆に、任意の σ-コンパクト空間が Lindelöf であると仮定する。可算な集合Xに離散位相を入れると、例 1.4 (2)によりXは σ-コンパクトである。よって仮定により任意の可算離散空間は Lindelöf である。したがって§E2.21 補題 6.1により可算選択公理が成り立つ。▨