1 一点における連続性
定義 1.1 (一点における連続性、連続写像).(X,dX)、(Y,dY)を距離空間、f:X→Yを写像、a∈Xとする。fがaで 連続 (continuity at a point) であるとは、
∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X,dX(x,a)<δ⇒dY(f(x),f(a))<εが成り立つことである。fがXのすべての点で連続であるとき、fを 連続写像 (continuous map) という。
命題 1.2 (開球と近傍による言い換え).a∈Xについて、次の四条件は同値である。
- fはaで連続である。
- 任意のε>0に対して、f(B(a,δ))⊆B(f(a),ε)を満たすδ>0が存在する。
- f(a)の任意の近傍Wに対して、f(V)⊆Wを満たすaの近傍Vが存在する。
- f(a)の任意の近傍Wに対して、f−1(W)はaの近傍である。
証明. 1 と 2 は開球と像の定義を展開すれば同じ量化式になる。2 を仮定し、f(a)の近傍Wをとる。B(f(a),ε)⊆Wを満たすε>0と、2 が与えるδ>0をとれば、V=B(a,δ)はaの近傍でf(V)⊆Wである。3 を仮定すると、f(V)⊆Wであるaの近傍Vはf−1(W)に含まれるから、f−1(W)はaの近傍である。4 を仮定し、W=B(f(a),ε)とする。f−1(W)はaの近傍であるから、B(a,δ)⊆f−1(W)を満たすδ>0が存在し、これは 2 である。▨
命題 1.3 (点列による一点での連続性の判定). 点列と収束は§E2.3 定義 1.1に従う。fがaで連続であることと、xn→aを満たす任意の点列に対してf(xn)→f(a)が成り立つことは同値である。
証明.fがaで連続であるとする。ε>0に対して連続性が与えるδ>0をとる。xn→aであるから、十分大きいnではdX(xn,a)<δであり、したがってdY(f(xn),f(a))<εである。
逆に、点列条件を仮定し、fがaで連続でないとする。あるε0>0に対して、各n≥1で
Sn={x∈X∣dX(x,a)<1/n, dY(f(x),f(a))≥ε0}が空でない。すべてのn≥1についてxn∈Snを満たす列(xn)n≥1をとる。1/N<εを満たすN以降ではdX(xn,a)<1/n≤1/N<εであるからxn→aである。一方、どのnでもdY(f(xn),f(a))≥ε0であるからf(xn)はf(a)に収束しない。これは仮定に反する。▨
例 1.4 (一点でだけ連続な写像). 通常の距離を入れたRで、f(x)=xをx∈Qに対して、f(x)=0をx∈/Qに対して定める。∣f(x)∣≤∣x∣であるから、δ=εとすればfは0で連続である。a=0が有理数ならば§D1.4 補題 2.3によりaに任意に近いr∈/Qがあり、∣f(r)−f(a)∣=∣a∣である。a=0が無理数ならば§D1.4 系 2.2が与える有理数の稠密性によりaに任意に近いq∈Qがあり、∣f(q)−f(a)∣を∣a∣/2より大きくすることができる。よってfは0以外で連続でない。
2 逆像による連続写像の判定
定理 2.1 (開集合の逆像による判定).fが連続写像であることと、Yの任意の開集合Vに対してf−1(V)がXの開集合であることは同値である。
証明.fが連続写像であり、VをYの開集合とする。a∈f−1(V)をとると、B(f(a),ε)⊆Vを満たすε>0がある。fのaにおける連続性から、B(a,δ)⊆f−1(B(f(a),ε))⊆f−1(V)を満たすδ>0がある。よってf−1(V)は開集合である。
逆に、開集合の逆像が開集合であるとする。B(f(a),ε)の逆像はaを含む開集合であるから、B(a,δ)⊆f−1(B(f(a),ε))を満たすδ>0が存在する。命題 1.2によりfはaで連続である。aは任意である。▨
系 2.2 (閉集合の逆像による判定).fが連続写像であることと、Yの任意の閉集合の逆像がXで閉集合であることは同値である。
証明. 逆像は補集合を保つのでf−1(Y∖B)=X∖f−1(B)である。定理 2.1を補集合に適用すれば二条件が同値になる。▨
命題 2.4 (連続写像の合成は連続である).(Z,dZ)を距離空間とし、f:X→Yとg:Y→Zを連続写像とする。このときg∘f:X→Zは連続写像である。
証明.W⊆Zを開集合とする。g−1(W)はYで開集合であり、f−1(g−1(W))はXで開集合である。§E1.1 命題 4.8によりこの集合は(g∘f)−1(W)に等しい。定理 2.1によりg∘fは連続写像である。▨
3 一様連続性と Lipschitz 条件
証明.f:X→Yを一様連続写像とし、a∈Xとε>0をとる。一様連続性から得られるδ>0に対して、dX(x,a)<δならばdY(f(x),f(a))<εとなる。したがってfは任意のa∈Xで連続である。▨
命題 3.4. ある実数L>0が存在して、すべてのx,x′∈Xに対してdY(f(x),f(x′))≤LdX(x,x′)が成り立つとする。このときfは一様連続写像であり、したがって連続写像である。
証明.ε>0を任意にとり、δ=ε/Lとおく。x,x′∈XがdX(x,x′)<δを満たすならばdY(f(x),f(x′))≤LdX(x,x′)<Lδ=εである。δはxとx′の取り方によらないから、定義 3.1によりfは一様連続写像である。命題 3.3によりfは連続写像である。▨
例 3.5 (距離から定まる連続写像).a∈Xを固定すると、φa(x)=dX(x,a)は§E2.1 命題 1.3により∣φa(x)−φa(x′)∣≤dX(x,x′)を満たすから連続である。距離を保つ写像fはdY(f(x),f(x′))=dX(x,x′)を満たす。§E2.1 定義 2.5で定めたd∞またはd1を入れた有限積∏i=1nXiからの座標射影pi(x)=xiは、di(xi,yi)≤d∞(x,y)とdi(xi,yi)≤d1(x,y)を満たす。いずれもL=1として命題 3.4の条件を満たすから連続である。
通常の距離を入れた実数直線上のx↦x2は連続だが Lipschitz 条件を満たさない。aにおける連続性はδ=min{1,ε/(2∣a∣+1)}で従う。他方、任意のL>0に対してx=L+1、x′=Lとすると∣x2−x′2∣=2L+1>L∣x−x′∣である。
4 演習
問題 4.1 (離散距離からの写像).Xに離散距離を入れ、Yを任意の距離空間とする。任意の写像f:X→Yが連続写像であることを示せ。
解答.
a∈Xとε>0をとり、δ=1とおく。dX(x,a)<1ならば離散距離の定義によりx=aである。よってdY(f(x),f(a))=0<εであるから、fは各aで連続である。▨
問題 4.2 (像が開集合になる条件との違い). 連続写像であっても、開集合の像が開集合になるとは限らないことを反例で示せ。
解答.
定数写像f:R→R、f(x)=0は Lipschitz 条件を満たすので連続である。しかし開集合Rの像は{0}であり、通常の位相では開集合でない。▨
問題 4.3 (合成の連続性から因子へ戻れない例).g∘fが連続写像であっても、fとgがともに連続写像であるとは限らない例を示せ。
解答.
例 1.4で定めたfと定数写像g(y)=0をとる。fは連続写像でないが、g∘fは定数写像であり Lipschitz 条件から連続である。▨